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タイ

作成年月日:2012年1月

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タイ国情報2011年12月−洪水からの復旧と新しい動き−

 今月は、タイの労働政策、洪水のフォロー、労働者不足を見越して海外に展開した企業など3つの課題にテーマを絞って、報告します。

1. タイ政府労働省の幹部は洪水の現状や2012年の最低賃金引き上げの企業の対策をどのように見て、政策を打ち出そうとしているのか? ―12/19のCRJAのセミナーでの労働省事務次官の講演から―

(1)洪水復旧の現状は、12月に入ると、アユタヤ、パトムタニ地区で冠水した7つの工業団地の排水がほぼ終わって、企業の復旧の動きが紹介されている。労働省としても、復旧の遅れている工場の従業員の失業対策をするとともに、アユタヤ地区の働けない労働者がチョンブリの労働者不足を訴える企業に紹介している。また、洪水にもかかわらず、労働者に休業補償を実施する企業に支援策を講じている。

(2)最低賃金の引き上げは、現政権の公約でもあり、労働者からも強い要望を受けていた。農民の所得保障と合わせて、実施することになった。勿論、これへの対応が追いつかない中小企業を中心として、企業には法人税の段階的な引き下げや、生産性向上に対して政府としての応援策を考えている。

(3)労働生産性の向上には、さまざまな対策があるが、労働省として3つの観点から検討をしてきた。 @ 労働スキルの開発をどうするのか? A 労働スキルの開発目標はどうあるべきか? B 労働スキルの方向性と政策はどのように遂行すべきか?

(4)労働スキルの開発は、教育とも関係するため、平行して遂行している。義務教育レベル、職業教育レベル、高等教育レベルにより、個人としての決定が最優先されるが、産業界が求める人材と、供給する側の人材の考えが重要なファクターである。

(5)学ぶ機会、教育訓練の機会を増やすことにより、労働者は新たな知識、スキルを取得できる。そのため、就業の後、知識を拡大するため教育訓練の場に送り込めるようにすることもひとつのあり方となる。

(6)グローバルなレベルで標準化と競争力を高めるように、あらゆる職業分野において、プロとしての職業標準、労働スキル標準を開発、改善する。

(7)人材開発を量・質の両面から策定して、国家の労働力ニーズに合致させる、など2015年のASEAN経済共同体地域内の熟練労働者の自由な移動に対応できるように、国内の労働生産性を高める。

(8)感想 : 開催後の、アンケートにかかれた質問をフォローアップして、内容の理解を深めることになった。

2.洪水被災企業とその取引先の実情

(1) A社(精密金型製造業)

@ 半導体装置および金型を製造する会社。工場がアユタヤ県にあるR団地に立地して、最高3mの水に冠水。団地から、かつて大規模な洪水にも耐えたので、大丈夫だと言い続けられていた。しかし、冠水する直前に難しいといわれたので、持ち出すべき重要書類が持ち出せなかった。

A 現状については、取材した12/1には工場がほぼ水が引いた状態であるが、機械設備はすべて冠水して、どれだけの被害か、精査している途中。 復旧作業は、現地のスタッフに任せているので、取材した本社幹部としては従業員対策など困ったときには会社として出来るだけ社員を応援したい。

B 復旧を現地でするのか、海外に移転するのか、12/1時点では、判断に迷っている。

(2)S社(半導体基盤メーカー。従業員2500名)

@ 創業の土地は大阪。電子部品の商社であったが、海外展開をする中で、1992年分社した。

A タイの工場は1988年現在地に設立して、グループの拠点となっている。

B たまたま、主要な取引先が被災されたことから、同社の2階にある会議室を提供して、半導体の組み立てがされている。従業員は、S社と取引先とは区別した状態であるが、食堂などは共有している。

C 先方の工場の復旧は2012年の春が予定されており、その時点で元に戻ると見ている。

D 現在地の貸与に当たっては、賃料など請求せず、永年の取引先が困った状態では応援するのが当然だと考えている。

E なお、同社の製品は、電子部品業界だけではなく、自動車のブレーキ製造部品にも応用されており、米国、欧州にも出荷されている。

(3) O社(機械メーカー)

@ 明治時代創業の同社では、1987年の米国での生産拠点設置をはじめ、欧米、中国、アジアでの営業、サービス体制を築いてきた。

A タイ法人は2000年の設置であるが、それまでにも代理店を数社設置して納入先へのフォローアップを行ってきた。

B 今回のタイの洪水により、主要な顧客の工場の多くが冠水したため、従来以上に技術者を派遣して復旧の手伝いをしている。

C 本来の営業活動を行うタイでの最大の機械展示会にも出展する予定であったが、復旧優先のため、キャンセルして、次への展開を考えている。

3. 労働者確保のため、タイからラオスに展開した縫製業 (C社)

(1)会社概要 : 日本では繊維産業が成り立たないと思い、若くして海外に展開してきた。   最初はタイで開業をしたが、賃金上昇と、労働者確保のため、タイ語の通じるラオスにも子会社を設立して、タイとラオスの2つの工場で分業体制を確立。 現在は、ラオスでは創業者のT氏夫婦が経営を見て、タイはご子息が経営を見る体制になった。

(2)業種   :  衣類縫製業、

(3)従業員  :  タイ工場70名。ラオス工場80名。

(4)タイでは、2012年4月から最低賃金が40%、バンコクおよび周辺では300THBになる。ラオスでも同様の最低賃金引き上げと同時に、法人税が今まで外国企業が20%、地場企業が35%であったが、26%に一律となる。その意味では、タイの場合は、法人税の引き下げが一方であるため、緩和策もあると思える。

(5)取材内容 :T社長 今回の取材は、なぜ、早々とタイからラオスに展開されたのか、背景を伺った。 「最初の創業の土地は、バンコク市内であり、従業員確保が難しくなってきたことから、タイの地方に出るか、タイ語の通じるラオスに出るか、さまざまな検討を行った。カンボジアやベトナム、ミャンマーも検討をした。たまたま、ラオスでは、外資100%の工場が出来ることから、タイとラオスに2工場を持つことで、リスク分散が出来ると考えた。特に、わが社は、刺繍など手間のかかる仕事が多いため、ラオス人の粘り強い仕事ぶりが適していると思っている。また、ラオスでは、タイ語の通じること、タイの熟練従業員がラオス人を指導できることも海外展開のきっかけとなった。」

(6)他業種への展開 : T氏は、縫製業だけではなく、醸造業、レストラン業など、タイとラオスを結ぶような仕事も展開されている。最近の事例では、ラオス人の知人に頼まれて2011.11に、タイの和食レストランチェーンのビエンチャン1号店を誘致することにも貢献をされた。

(7)ラオス人の教育 :  タイの法人から派遣された日本人の調理主任とタイ人調理人、およびフロア教育の専門家を招いて指導した結果、タイの店にも負けない接客応対が出来るまでになった。この点は、ラオス人の教育が難しいといわれるが、教育にどれだけ日数と費用をかけるかによる。

以 上