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タイ

作成年月日:2011年10月

海外情報プラス

タイ国情報 −洪水と日系企業の状況−

1. 自動車業界拡大の中での現地生産開始 S社の販売体制、販売員教育

1)会社概要: 同社は海外展開については非常に積極的で、1967年に同社初の海外二輪生産工場「タイS社」を設立。4輪は、現在新しい工場を建設し、2012年から現地生産を開始する予定。

2)業種: 自動車製造、販売業

3)従業員: 2輪工場1000名 4輪工場1500名。4輪の販売会社には日本人は社長と販売部長の2名、他はタイ人。新しくエンジン工場も建設。

4)取材内容: 2010年から新工場を建設に着工し、2012年から現地生産の車を販売するためには、従来の販売体制をどの様に変更して、同社として販売員教育などをどうされるのか、取材。

@2010年に販売会社を日本の資本100%のS販売会社にした。2輪、4輪の相乗効果といわれるか、現状はそう簡単ではない。

A現在の、販売網から新規に直営店など加えて、全国60店体制に持ってゆきたい。

B教育については、日本の販売員教育、販売店教育の仕組みを持ち込んで、外部講師も使いながら実施している。

C有効な販売促進戦略としては、本社から販売店への販売促進費などの資金の援助支援が必要だと考えている。

5)取材した10月の下旬に、洪水のため2輪工場も一時休業、4輪の販売会社も一時的に移転している(臨時)

2. 労働者の供給不足だと言われる地区で、労働者をどう確保するか E社

1)会社概要:1962年本社が東京にて創業。1997年にタイ子会社、設立。

2)業種: 金型製造業。

3)従業員: 127名、内契約社員23名

4)取材内容: タイの中央部、バンコクの北、アユタヤ県では進出企業は大企業が多く、県内では労働者不足。そのような労働者の需給バランスから、同社がどのように労働者確保に活動しているか、取材。

 @同社は従来から勤務する従業員の出身地から募集するとともに、ネットを活用して高学歴の従業員を採用している。20−28歳の専門学校卒、または経験2年以下の若い社員を募集している。

 A最近の業績をみるとリーマンショックの2009年には全世界の子会社とも業績が低下したが、2010年から業績は持ち直している。このため、従業員の雇用調整を行うためには、業務委託は避けられないと考えている。
  また、海外の工場では、労働集約産業と言うよりも、設備集約産業として、労働者の数は各国とも500名以下に抑えている。

 B中長期的に成長が期待される高付加価値事業及び新規事業開発に重点を置き、併せて生産の合理化、省力化及び製品の信頼性向上のために投資を行っている。

 C品質管理に重きを置いて、ISOマネジメントシステムの向上に力を入れている。よりよい品質、安定した品質を実現するために同社は、最新の測定機器・評価装置を導入し、パーツの特性に合わせた評価技術の確立に努めている。

 D品質を見極め、品質の安定を図るために品質保証に対して同社は多くの時間と経営資源を投入している。各生産工程に厳しい検査を実施するだけではなく、全社的品質保証機構を設け、常に安定した品質維持に努めている。

3. ゴム金型製造業(中小企業)の労務政策 T社

1)会社概要:1977年愛知県で親会社創業。2003年にタイ子会社、設立。

2)業種: ゴム金型製造業。

3)従業員: 12名、内日本人2名。

4)取材内容  

 @設立のいきさつと構想 : 自動車産業が、ますます生産拠点を海外に進出する等、グローバル化が進む中で、同社の主たる生産金型も、海外向けの比率が高くなってきた。こうした中で、金型も現地調達化が大きな流れとなった。
 同社は、このような状況を踏まえて、(1)国内受注の減少(2)グローバル化に対する対応として、逸早く、海外へのサポーティング体制の確立を経営方針として打ち出した。

 その具体的なアクションが、タイ工場の設立。タイ工場では、金型を製造、金型のチューニング、設変改修、金型メンテ等をタイムリーに行うことで、お客様に貢献できる体制を整えた。将来的にはタイ国から日本や欧米などへの輸出も視野に入れた構想を持っている。

 A労務管理政策  : 立地する工業団地には大手工場がないため、労働者確保には苦労はない。設立当初から、従業員教育のため、日本での研修を行い、操業開始後は現地にて日本人が直接、OJTにて指導をしている。従業員規模が小さいため、人間関係が密で、何でも相談できる体制にある。コミュニケーションは、日本語の通訳はいるが、英語と片言のタイ語、および直接現場で指導をしている。

 B客先との、商談は日系企業が多いため、どうしても日本人が担当となる。

 

4. 洪水と日系工業団地

 10/20現在の全国の77県の内62県が被災。280万世帯が冠水し、900万人以上が影響を受けている。労働省労働福祉保護局の調べでは20県、14172工場が冠水し、66万人以上が影響を受けている。ちなみに、工場では休業補償が給与の75%使用者が支払う必要があるが、労働省は見舞金として3,000バーツの支給を政府に要請をしている。

 日系企業の多く立地する工業団地のうちサハラタナナコン(42社)ロジャナ(218)ハイテク(143)バンパイン(84)ファクトリーランド(14)ナワナコン(190)バンガデー(34)が冠水をした。これ以外にも必死になり洪水を阻止しようとしているラッカバン(283)ウエルグロー、バンプー(120)各工業団地がある。

 多くが自動車、電機関連で、サプライチェーンに支障が出ている。このため、タイ国内だけではなく日本および北米の自動車メーカーが生産停止など相当大きな影響がある。

 補足:11/30現在、サハラタナとナワナコンを除く、5工業団地は水が引き、工場再開の動きもある。残る2工業団地も2012年1月には水が引いて、工場再開の動きになる見込みである。 

. 日系企業の洪水による3つの労務対策(内容)

 バンコク日本人商工会議所が10月27―31日に会員企業を対象に実施した洪水被害に関する調査(回答114件)で、今後どう対応するかという質問(複数回答可)への回答は、「休業補償を支払って従業員は解雇しない」が62・2%(71件)、「整理解雇を含めた人員削減」が14・9%(17件)、「タイ国内の代替工場への人員振り替え」が7・9%(9件)、「海外(日本など)の代替工場への人員振り替え」が11・4%(13件)、「被災地にて全く違う業務へ従事させる」が5・2%(6件)だった。

 休業期間中に従業員に補償を「支給する」との回答は全体の89・4%、「支給しない」は4・4%で、無回答が6・2%だった。

 「賞与を支給する」との回答は44・7%で、支給額の平均値は3・16カ月分。「見舞金を支給する」は36・8%で、平均額は7423バーツだった。

(1)次の3つのケースに分けて説明をする。

 @従業員を解雇せず、主要な要員をこの機会に日本の親会社で研修をさせる。(日本の就労ビザ、タイ労働省の海外就労の事前許可)

 A従業員を自宅待機などさせて、復旧時に勤務させる(休業補償の扱い)

 B従業員を、一旦整理解雇する(解雇手当と天災の扱い)

(2)日本政府、タイ労働省の政策と、具体的な事例を紹介する。

 @タイ人の日本研修

  ・経済産業省の所管課に対する説明

今回の措置では「受け入れ企業が日本国内において同様の業務に従事する者を過去3年以内に大量に非自発的離職をさせていないこと」との要件があり、同要件への適合性を経済産業省が調査する。

    このため、事前に経済産業省の所管課への説明をしておく。

  ・タイ側での労働者の出国手続き

労働者の出国にあたっては、タイ労働省の許可証が必要。

  ・具体例

自動車部品製作のJ社(本社、神奈川県)では、工場自体の被災は無いが、主要な顧客が減産体制に入ったため、この機会にタイ人の要員を再度、日本の親会社に派遣することにした。具体的な手続きは、親会社の支援を得てタイ労働省と、日本大使館と相談をして進めている。日本政府、経済産業省はタイの洪水の影響を受けた日系企業の現状を鑑みて、タイ人労働者の受け入れを法務大臣の裁量による受け入れとしていくつかの条件を元に6ヶ月限定で受け入れる。

 A従業員の自宅待機

 タイの日系企業の多くは2009年のリーマンショックにより多くが従業員を整理した。ところが、2010年の半ばから景気が回復した段階では、元の従業員が復帰せず、労働者不足に陥った経緯がある。このため、今回も安易な労働者の整理をせず、休業補償の対象として、自宅待機をさせている企業が多い。

 

 B10/25のJETROセミナーでは以下の見解が紹介された。(概要)

i)労働者保護法75条1項により、会社側は「事業を休止する前に労働者が得ていた。労働日の賃金の75%以上」の金銭を支給する必要がある。

ii)今回の大洪水が「不可抗力」だと判断されれば支給する義務はないが、前回の洪水発生時に最高裁判所が洪水は「不可抗力」ではないと判決を下したため、今回も不可抗力によるものではないと判断される可能性は否定できない。

iii)従業員を、一旦整理解雇された事例

 10.25の決算報告でC社はタイ洪水被害によるマイナスの影響を見積もった。具体的には、タイにある主力工場は浸水で生産停止中。デジタルカメラも現地の部品メーカーの工場が被災したため「年末商戦への影響は避けられない状況」(同社のHP)

 そこで、冠水したハイテク工業団地に勤務する従業員に@新工場へ配置転換するか、A退職か、と個別に質問した結果、1400名の従業員を整理することになった。これに伴い、従業員の解雇手当が発生する(地元紙)日系企業では、今後も労働者の整理、解雇が続くと懸念をされるが、同社は早い対応を打ち出したことになる。

 今後もタイ洪水被害を受けた自動車や電機大手各社が決算発表を控えており、下方修正に追い込まれる企業も出る
(サンケイbiz)

以 上