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タイ

作成年月日:2011年8月

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タイ国情報−日系企業へのインタビューから−

1.タイ新政権の労働政策について(最低賃金の引き上げ)

7/3 総選挙で、最低賃金を300THB/day引き上げを公約の一つに掲げたPhueThai 党(党首 Ms.YinluckShinawatra女史)が圧勝。

7/8 外国人記者との懇談会では、最低賃金を300THBに引き上げることは、産業界に大きな影響を与えることは自分のビジネス経験から承知している。そのため、政府の新年度が始まる201110月から実施はしない。ただし、法人税を25-30%から20%に引き下げる政策を検討しているため、20121月以降に実施する可能性はある。産業界には十分な検討する余裕を与える、と発言(日経 ネット版2011.7.8

7/4 昨日の総選挙の結果をうけての意見聴取。  

(1)日系の労働集約型業界 縫製業界T社 バンコク西部のN

1)会社概要 : 染色、生地生産、縫製業、従業員2500

2同社は創業20年以上経過し、従業員の大半は勤続年数が長く、すでに賃金水準は300THB/日を超えている。また、総コストのうち人件費コストは数%程度であり、今回の最低賃金引き上げによって、さらに上昇する恐れもあるが、コストの吸収は可能である、とみている。また、一部の加工部門は、周辺国にも移転する研究もしている。

3)同社が所在する地域では5名の国会議員のうち4名がPhueThai党。つまり、従業員の80%近くが、最低賃金引き上げの政党を支持している、と見なければならない。今後の政策と同社の賃金政策を見直す際には、この点も注意が必要と認識をしている。

(2)電力系エンジニアリング会社 J

1)会社概要:2003年に従来の駐在員事務所から現地法人となる。

2)従業員:日本人15名 タイ人100

3)事業内容:エネルギー開発、電力系エンジニアリング

4)同社は、タイの電力系の会社と合弁事業を行っており、エンジニアリング系の会社であるため、従業員は大半が大卒のエンジニア。総務、経理の女性スタッフも大卒が中心で、事務所もバンコク市内の中心部に位置している関係で、最低賃金300THB/日はまったく関係が無い。むしろ、政府系の電力会社と比べても給与水準が高く、定着性も高い。お客様である工場関係では、最低賃金近くで働く方が多いので、新政権の最低賃金引き上げには影響を受けるのではないか。

(3)自動車部品製造業F社、国内3工場体制から、第4工場を

1)会社概要:自動車の特定の商品分野では独自の技術をもち市場占拠率が高い。

 そのため、日系自動車進出する北米、中国、東南アジアではタイとインドネシアとベトナムにも関連会社がある。タイ国内には3(2工場、1統括会社)があり、3工場目をどこに建設するか、市場調査中である。

2製品分野と適正従業員規模:同社の方針は1社で1000名を超える会社にはしない。500名以内の従業員規模の会社が適当だとの考えである。それは1名の社長が管理できる規模がある。

 最初の工場、2つ目の工場で従業員が500名を超えた段階で、労働争議が起こった。そのため、本社と相談をして製品別に工場管理の手法の違いがあるため、ある規模以上になると労務管理上の問題と経営効率が落ちるとみて大規模な工場は縮小をしてきた。そのため、新しい製品導入には従来の工場を拡張せず、新工場を建設することが課題として、タイ国内の地方の工業団地も巡回、調査を重ねてきた。

3)最低賃金300バーツの影響:最終段階になってきたが、新しいプアタイ党が政権を握って、最低賃金300バーツを打ち出していることから、国内のバンコク周辺と地方との賃金格差が無くなれば、地方展開をする意味がなくなると懸念をしている。そのため、新しくタイ周辺国の情報も集めて、その上で、3工場をどうするか、考える。すでにベトナムにも2011年から工場を作ったが、この工場とは製品の種類が異なることから、ベトナムでの工場拡張の考えは無い。

 

2.金融サービス業、15年間   を経験して   E

1) 会社概況: 1997年7月の経済危機前に設立。親会社は、金融サービス会社A社。
2) タイ代表になるまで : 設立の準備委員会に参画していたことと、初代、2代社長が 離任したため、会社設立1.5年後に3代目の社長に就任。当時の社員30名。退任する2009年には全国の拠点300箇所、2500名の従業員、総資産数百億バーツの金融サービス会社。
1982年A社に入社。営業所の1営業マンからスタート。退職者が多い業界にあって、入社半年である営業所の最古参となることもあった。その当時から、消費者金融業の経営が近代化していった。クレジット債権の分析技術、債務者の支払い能力の科学的な評価など各種経営手法は日本で開発されてきた。
1990年代に、タイに進出前に新規事業開発部門に配属され、今までの日本での金融サービス業のビジネスモデルをタイ流に定着させることが課題であった。
3) タイに進出する経緯 : 1990年代に本社会社の新規事業開発部隊に配属。アジアのどこに進出するか、という課題を担って、最終的にタイ法人、サイアムA社を設立。時代の流れにも乗って、全国展開をしてきた。幹部は、採用の時点からすべて知っている者ばかりである。
4) タイへの愛着 : 同社の社会貢献活動を通じて地方の学校に行くと、貧しい中でも強い連帯感、はじけるような強さがあると感じた。ところが、日本では医療水準、水道設備、公共交通など社会基盤は世界水準だが、人間としては世知辛い。一方、タイでは貧しいと見えた小学校の児童を見守る父兄、祖父母の眼差しが優しいことに感じ入った。

 

3.輸送機器販売会社T社、製造部門の検討はまだ先

1) 会社概要:親会社 日本 創業1949年 2001年タイ法人 設立
2) 事業内容:物流関係輸送機器製造、販売。
タイ法人はアジア統括の販売会社
3) 従業員:日本人2名 タイ人 スタッフ、ワーカー10名
4) 物流倉庫、事務所設置の場所、

背景:
 S県の工業団地に進出を決めたのは、同社がタイ国内だけではなく、アジアの物流管理、特にベトナムをフォローアップするため。従業員確保については、バンコク近郊ということから、比較的集めやすい。
 現在、納入した製品の故障,補修部品の提供サービスをしているが、輸送機器製造業、またアッセンブル部門を現地に作るかどうか、本社と協議をするまえに資料収集の段階。現在地での拡張が可能であれば、工場の移転が不要となる。また、取引先として運輸関係の会社が多いため、以前あったバンコク市内からそれほど遠くない地区に設置をしている。
 2011年8月には、バンコク市内からS県の西地区まで高架鉄道BTSが延伸することからバンコクとの連絡はさらに便利になった。それによって、ビジネスもまた従業員確保も容易になることを期待している。

 

4.人材紹介業J社、日系企業の採用希望とタイ人求職者のミスマッチ

1)会社概要:2004年現地法人設立 創業1975年英国 1998年日本法人設立

2)従業員:日本人6名 現地人 30名、支店 Chonburi

3)日系企業の求人募集:会社のモットーは必要な企業に必要な人材を、スピーデイに紹介すること。現実にはタイ人求職者の登録数は数千名を越えているが、日系企業の要望に100%答えきれない。
 その理由は、登録された人材が、そのまま登録してあること。必要な人材募集に対して、該当する人材に問い合わせをしても、すでに就職をして、勤務先など条件に合わないことが多い。

4)支店設置の理由:現在、東部臨海地域に進出する日系企業が多いため、バンコクで求人登録をする会社には現地で登録された人材を紹介することで、勤務地域のミスマッチが少なくなっている。

5)日系大手人材紹介会社P社やT社が撤退している理由 : 

 日系企業の需要開拓はできたが、タイ人の求職者の登録、募集とのミスマッチが続けば、顧客の信頼を失う。この点、日本での成功体験が海外では通用しなかったから大手の2社が撤退をしたのではないか。欧米系の大手は、独自の方法で展開をしてタイでも相当大きな人材紹介会社に育っている。

5.自動車用部品商社M社が、現地に製造会社の工場を建設

1)会社概要: 創業は四国。大正時代に法人化。数年前に、事業分野を持ち株会社、製造子会社2つに分離。主要な商品は自動車の部品。
 タイに2つ目の子会社を 従来の商社機能はそのまま。ある自動車メーカーの要請で、自動車部品製造の子会社を設立することになった。

2)工場選定の背景:得意先への納入距離、工場周辺の労働者の確保、労働組合運動が活発かどうか、日本人駐在員の生活環境など、総合的に判断して東部臨海地区の中小企業の進出が多い地区を選定した。

3)賃金コスト上昇への対策:同社は、北米、中国、インドにはすでにグループ会社が進出して労働コストの上昇は避けられないと、承知。そのため、機械化など、設備投資の検討により、より効率的な経営ができるように検討を進めている。

 以上