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タイ

作成年月日:2011年5月23日

海外情報プラス

タイ国情報−日系企業へのインタビューから−

日本の親会社倒産後の現地企業と日本人社員との雇用契約

日本の親会社の倒産と子会社の存続
 日タイ合弁による広告会社(上場企業)の日本側の親会社が倒産した。同社の財務担当役員として同社の上場を手伝い、後に経営方針の違いから独立して会社を設立した現会長が外国ファンドと共同し、日本側の株式を購入して経営を肩代わりした。
 一昨年のリーマンショック以後、広告業界には冬の時代が到来して日本の親会社の経営が苦しくなり、香港の子会社などを整理した。しかしながら、同社はタイ国において既に上場しており、タイに進出する大手日系企業からの信頼も厚く経営が自立していた。そこで、日本側企業の創業家との関係から、未知のファンドへの売却を避け、かつて財務担当役員として経営陣の一角にいた現会長に相談があった。関係するシンガポールのファンドが協力してくれたこともあり、日本の所有する株式を購入した。創業家が日本国内で大きな損失を蒙ったので、できるだけ妥当な価格で折り合ったことになる。

経営陣の交代、従業員の退職などの問題
 日本人の幹部やタイ人の古い社員は自分が在職時代から旧知の関係であるため、殆どのスタッフが残り、日本からの出向社員は失職することなく、全員がタイに転籍して現地で働くことになった。
 このような場合、日本人出向者から選別して採用するケースが多いが、株式買取の際に日本側から要請されていたこともあり、ひとまず穏便に経営陣の交代を済ませるため、全員を受け入れることとした。自身が関わった会社でもあり、幹部も旧知であることから、スムースに経営を移行させることがお客様にも迷惑をかけないとも考えた。


日本人出向者との雇用契約
 日本では、終身雇用で定年まで働けるという甘えがある。ここでは、1年契約で年俸制とする。当初は従来の年俸を維持するが、毎年契約を更新する際に貢献度、期待度、実績を考慮して査定をする予定である。厚生年金や社会保険など日本の制度は関係がなくなるので、個人で国民年金に加入してもらう。グループとして海外傷害保険は加入しているが、自分の生活は給与、ボーナスの中でまかなってもらう。駐在員は住居や自動車など与えられるのが当然のように考えているが、これもコストだと理解してもらう。


今後の展望
 従来の経営の問題点を洗いなおして新しい体質の会社に切り替えることとし、従業員の意識改革を行わざるを得ないと考えている。
 従来は、日本が親会社だという甘えがあった。何か問題があれば日本側が助けてくれるという構造である。ところが、親会社が倒産してなくなったため、本当の意味で独立した会社であり、タイから世界市場を狙うという気持の切り替えが必要だと全員に認識をしてもらいたい。タイ人スタッフも同様である。
 具体的には、例えば10年近く前にインドに進出した際、インド市場で人材がいないことからやむなく撤退した経緯があり、それを再構築したい。また、タイにおいても主な顧客は日系企業だったが、地場の会社や欧米企業を取り込みたい。更に、インドに次いで欧州市場を攻めることを考えている。


海外で働く日本人駐在員への助言
 タイに駐在している日本人でも現地語や英語ができない者もいる。少なくとも現地語か英語、中国語など最低1つの外国語ができないと海外で生き抜くことは難しい。

自動車部品業界における労働者不足への対応と震災後の変化

会社概況
 日本が親会社で、チョンブリ県のアマタナコーン工業団地第1工場のほか、現在、第5工場まで稼動。グループ会社としては、米国、中国、インドネシアに関係会社があり、それ以外にも技術供与先が韓国、台湾、インドにある。
 現在、日本人赴任者が9名。その他、技術陣も新しい製品立ち上げに招いているが、1995年の操業開始当初にタイ人社員を日本で半年から1年研修させたため、通常の業務はタイ人だけで回せる。


労働者確保策
 現在の従業員数は850名で、正規従業員が450名、サブコントラクト経由が400名。過去数年の推移を見ると、2009年秋のリーマンショックで受注が半減し、2010年以降回復して2011年の2月まで受注が拡大したため、コントラクト先を3社から4社に増やして従業員を増員した。自動車業界の景気の波が大きいため、従業員の急な増員の際においては正規従業員の確保が難しく、コントラクトワーカーを増やしている。
 もうひとつの理由が労働組合対策。5工場のうち1つはコントラクトワーカーだけで運営できるように考えている。当社の労働組合は、活動面では労使協調路線にあるが、労使が対立する場合は残業拒否など、ストライキまでは行かないまでも操業率が低下することがあるためである。コントラクトワーカーは、タイ政府労働省の指導により同じ職務内容では同じ賃金とするため、福利厚生面では正規従業員とコントラクトワーカーは同じ扱いとなる。違うのはボーナスだけであるが、コントラクトワーカーに対しても少しだがボーナスを支払っている。

日本の東日本大地震の影響
一般論として、例えば1トンピックアップは99%がタイ国内の現地調達だとされる。残り1%は主に電子部品で日本から輸入される。災害発生とともに操業を1交代制に戻し、残業禁止、定時出勤、定時退社にした。これにより残業代を当てにする労働者が自己退職すると見られているが、当面、その補充をする予定はない。

自動車業界の部品不足による操業率低下への懸念
−自動車用ランプメーカー

原料・部品等の調達
 原料や素材関係については、1次納入先だけではなく、2次、3次の納入先の状況を調べて、ストックの有無などを○、×、△で表示し、社員が情報を全員共有できるようにしている。緊急事態では情報の見える化が重要。
 現地調達については、現在、85-90%までになっており、問題は少ないと思われる。標準部品であれば日本だけではなくEUからも調達が可能。問題は、RESINなどの原料在庫で、ポリカーボネートなど日本からしか入らない一部の原料の調達で納入先にご迷惑をかけることはできない。
自動車各社の回復状況と労働者の雇用
 公表された情報(4/23の新聞報道)では、T自動車は、月曜日と金曜日は操業を休止し、火曜日から木曜日まで50%の操業と発表し、納入する自動車部品会社にも大きな影響がでるとみられる。T社、H社以外では、通常通りの生産が行われていることもあり、業界内部でも部品納入の違いによってメーカーの操業度は異なっている。この状況下、労働者不足が若干収まったと見られる。
これまで、4月から6月は異常事態だが、7月以降は通常体制を組むようにとの納入先から指導されているが、それが近いうちに変更されるのではないかと見ている。
 現在、3,000人の従業員を雇用し、うち2,300名の通常勤務従業員と700名のフレックスタイム制の従業員である。現況の回復状況を踏まえ、毎月50名程度ある退職者の補充を行わないこととした。
 日本の、宇都宮、秦野、広島工場に15名のタイ人研修生を派遣しているが、研修生自身には安全だと説明して勤務させていたが、タイの家族から帰国させてほしいとの要請を受けて帰国させた。日本の工場では、インドネシアなど各国から来ている研修生の中で、帰国させたい研修生もあるが、良く働いてくれるので帰国させたくない研修生がいる。タイ工場から送り出している研修生は帰国させたくないと言われたほどだ。タイでも金型設計などで一定程度技能レベルが上がり、磨きをかけるために日本に送り出したところだが、一度帰国すると日本には送り出すことができない。


現地労働者の技術レベル
 日本の技術レベルを100とすると、タイは80から90。ただし、納入先によっては、タイでしか開発、生産しないものもあり、特に二輪の業界では現地で設計開発しているため単純な比較はできない。
 今後は地域別に得手不得手を考慮して、どの工場で何を作るかを考える時代になる。単車だけを言うと、インドは年間1000万台、インドネシアは300万台を生産している。とはいえ、インドの品質が高いかと言えば、国内市場向けであり世界レベルではまだ時間がかかるとみている。
 車には機能部品、外観部品があり、安全面に影響する部品とそうでない部品がある。機能部品は安全面で重要な役割を果たすため不良品の評価が異なる。現在、業界では3PPM(100万分の3)を目指しており、安いから不良率は10〜20PPMでも良いとは言えない。納入先と部品会社とが共通の理解を以って、モノづくりや人づくりを行なうことが必要であり、人材育成には時間がかかる。技術の高さを評価いただけるなら、それは今までの人材育成の積み重ねによるものである。(2010.4TMO)