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作成年月日:2019年5月
インドネシア共和国

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インドネシア国情報2019年4月

今月のテーマ

「大統領選挙を終えて」


2019年4月17日、投票日として国の祝日に制定されるなか、インドネシア大統領選挙が行われました。現職大統領であるジョコ・ウィドド−マルフ・アミン組とプラボウォ・スビアント−サンディアガ・サラフディン・ウノ組の2組が、5年間の任期を務める正副大統領の席をかけて、有権者1億9,200万人の票を争います。インドネシア国内80万箇所以上の投票所および海外のインドネシア大使館・領事館で行われた投票は、投票翌日の18日から5月22日までかけて開票作業が続けられています。5月10日時点で全体の76.54%まで開票作業が進んでおり、選挙直後に発表された速報のとおり、ジョコウィ・マルフ組がおよそ1,400万票の差で優勢な状況となっています。

 

ジョコウィ・マルフ組 

56.29%(6,598万5,898票)

プラボウォ・サンディ組 

43.71%(5,123万7,274票)

正副大統領として当選するには、全体の過半数の票を得るほか、インドネシア全34州の半分である17州以上で20%以上の票を得なければなりません。まだ正式な当選結果の発表が行われていませんが、投票日当日から起こっている騒動と当選の見通しが強くなったジョコウィ大統領の今後の動きについて見ていきたいと思います。

 

●プラボウォの勝利宣言

選挙を終えた直後に複数の民間調査機関が開票速報を発表すると、54.5%を得票したとしてジョコウィ大統領の続投が濃厚となり、ジョコウィ大統領は選挙結果を見守りたいと話しつつも、事実上の勝利宣言を行いました。しかし、一方のプラボウォも敗北を認めず、独自調査によると62%を得票したとして同じく勝利宣言を行ったのです。この流れはまさに2014年の大統領選挙と同じです。5月22日には正式な開票結果が発表されるのですが、プラボウォは今回の選挙において「大規模な不正があった」、「不正な選挙の結果は受け入れられない」として、大統領選挙の不正と自身の勝利を主張しており、民衆運動を展開しかねない状況になっています。警察は不正があるのであれば、証拠の提供を求めるとして事態の悪化を警戒して、選挙管理委員会の事務所周辺などの中心に警備を強化しており、緊張が高まっています。

 

●開票作業による大量の過労死

選挙結果やプラボウォの不穏な動きに注目が集まっているなか、実は他にも信じられない事態が発生しています。4月17日の投票日とその後の開票作業に関わった職員19〜76歳が5月8日までに468名も亡くなっているのです。今回の選挙から導入された一斉選挙の厳しいタイムスケジュールによる過労、炎天下での長時間にわたる作業による熱中症や心臓発作、職員の事前の健康チェックを怠ったことによる既往症の発症などが原因とされていますが、今回の事態は異常としか言いようがありません。事態の原因を究明し、今後の選挙で同じことが繰り返されないように開票スケジュールやシステムを見直しを求める声が高まっています。

 

●ジョコウィ大統領が首都移転を発表

5月22日に集計作業が終えたのちも、10月20日に新たな正副大統領による就任演説が行われるまでは、プラボウォは選挙結果を受け入れず、緊張状態がしばらく続くものと見られますが、大統領当選の見通しが立ったジョコウィ・マルフ組は、次の5年に向けた動きをすでに始めています。投票が終わって間もない4月29日には、ジョコウィ大統領は首都をジャカルタからジャワ島外に移転する方針を決めたと発表しました。首都移転はジャカルタの渋滞、洪水、地盤沈下などの慢性的な問題を解決する手段として、これまでにも歴代大統領のもとに度々議論されてきましたが、2020年から2025年の国家中期開発計画のひとつに盛り込むとして、ジョコウィ大統領は5月7日にカリマンタン島のカルタヌガラを候補地として視察しました。候補地は、空港や道路などのインフラがある程度整備されていること、海岸の近くに位置していること、災害に強いことが条件に挙げており、地域間の経済格差を埋めるためジャワ島外で選出する方針です。

ジョコウィ大統領は、1.人材育成、2.生産的で自立した競争力のある経済構造、3.公平かつ平等な発展、4.持続可能な環境の実現、5.国民性が反映される文化の前進、6.汚職文化から開放された尊厳・信頼のある法システムの確立、7.弱い立場にある国民を保護し、全ての国民に安心を感じさせること、8.清潔、効果的で信頼される政府の運営、9.統一国家における地方政府とのシナジーを今回の選挙における公約で使命として掲げています。1期ではインフラ整備が評価されるも経済成長は期待されたようにまでいきませんでしたが、これからのデジタル化による第四次産業革命やスマートフォンがあるのが当たり前の時代に育ったミレニアム世代など、プラボウォ陣営と比較して、社会・経済構造の変容を敏感に捉えているジョコウィ陣営が次の5年を担うことで、これまでの5年を基盤にインドネシアの成長を加速していくことが期待されます。

 

以 上

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