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インドネシア

作成年月日:2019年3月
インドネシア共和国

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インドネシア国情報2019年2月

今月のテーマ

感染が広がるデング熱


インドネシアでは、例年雨季を迎えると蚊の繁殖が盛んになるため、デング熱の発生が増える傾向にあります。なかでも発症率がもっとも激増するのが1月と2月。今年は2月19日までに23,305件が発生し、このうち207名がデング熱によって命を落としたと保健省は発表しました。デング熱はインドネシアの風土病の一つで、1960年代から各地で流行するようになりました。デング熱が流行している地域は赤道付近に分布しており、東南アジア、南アジア、中南米など、当時は9カ国でしか報告されていませんでしたが、現在では5大陸141カ国と世界中でデング熱の発症が報告されています。インドネシア国内でもほぼ全域で発生しており、インドネシアでの発生率は1960年から2010年のあいだに30倍にも増加し、発症件数はブラジルに次いで世界で2番目になっています。

 

デング熱は、蚊の吸血活動によって人から人にデングウイルスが感染することで発症する疾患で、ウイルスを媒介するネッタイシマカやヒトスジシマカという種類の蚊が多く生息してる熱帯地域で発生します。これらの蚊はもともと標高1,000メートル以下の雑木林や竹林で繁殖していましたが、都市化・人口増加・海外旅行の増加・地球温暖化といった社会をとりまく環境の変化の影響を受けて蚊の生息エリアが広がり、世界で年間1億人近くが感染しているといわれています。

 

デング熱に感染すると、3日から14日ほどの潜伏期間を経て、突然40度近い発熱を起こし、2日から7日ほど高熱が続きます。そのときに発疹、頭痛、骨関節痛、嘔気、嘔吐などの症状がみられ、白血球や血小板が減少するのが特徴です。デング熱は一過性で、通常は7日ほどすると熱が下がり始め、順調に回復にむかいます。ですが、まれに血しょう漏出と出血傾向を主症状とするデング出血熱を発症する場合があります。デング熱を起こすウイルスには、4種類あり、同じ型のウイルスに再び感染しても軽症ですみますが、異なる型のウイルスに感染すると免疫が過剰に働き重症化することがあります。インフルエンザと同様に流行する地域や時期がありますが、インフルエンザに比べると致死率はかなり低いといえます。

 

現在のところ、デングウイルスに対する認可されたワクチンはなく、経口補水治療や点滴、輸血などの対症療法しか行えないため、ウイルスを媒介する蚊に刺されないようにすることが一番の対策です。デング熱を媒介する蚊は比較的小さく、4ミリほどの大きさで、黒い体に白い縞が入っているのが特徴です。蚊は日中から夕方ごろまでの温かい時間帯に活動的になるため、屋外の蚊が多くいる場所にいく場合は、できるだけ肌を露出しない長袖、長ズボンを着用したり、露出する部分には蚊除けローションを使用し、屋内でも蚊取り線香を焚いたり、窓に蚊除けネットを張るなどすることが望ましいでしょう。また、部屋の中に長く服を干していると蚊が寄りつきやすいため、長く干さないようにすることも大切です。

 

もうひとつ、根本的なデング熱の感染予防として、媒介元である蚊を駆除する必要があります。蚊を駆除するためには、蚊の幼虫であるボウフラを発生させないようにしなければなりません。雨季にデング熱が流行するのは、降雨量が増えたことにより水溜りができ、蚊が卵を産みつける場所が増えるためです。都市化が進んだ現在では、雑木林や竹林だけでなく、人家周辺の桶、水槽、バケツ、空き缶、花びん、鳥のエサ皿などの小さな水溜りでも繁殖してしまいます。そのため水の入った容器を空にしたり、防除剤を撒くなどしなければならないのです。

 

インドネシアでは、蚊を撲滅するための社会対策として、貯水容器に水を貯めずに流すこと、貯水容器のふたは開けっ放しにせずに閉めること、使っていない貯水容器はリサイクルをして置きっぱなしにしないこと、そしてその他の小さな心がけを総称した「3M PLUS」という取り組みを行っています。蚊は卵を産みつけてから飛び立つまで8日から10日かかるため、1週間に1度貯水容器を清掃すれば蚊の繁殖を抑えられることになります。

 

また、このような小さな心がけは徹底が難しいため、ボウフラ監視員と呼ばれる、近所でボウフラが発生しそうな水溜りができていないか近隣住民の家を訪れて啓蒙活動を続けている人もいます。活動の効果もあり、南ジャカルタのある地域では1,115世帯のうち796名もの家長がボウフラ監視員のメンバーに加わり、住宅の内外22箇所を自ら確認するようになりました。ただし、より大規模に、そして継続的に実施しなければ成果につながらないため、各家庭だけでなく、学校、会社、市場、病院、礼拝所などの公共機関でも、デング熱の発症が少しでもなくなるよう地道な取り組みが期待されています。

 

以 上