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インドネシア

作成年月日:2018年12月
インドネシア共和国

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インドネシア国情報2018年11月

今月のテーマ

「e-KTP(電子住民登録証)の偽造発覚」


先日、西ジャワ州のスカブミでe-KTPの偽造が見つかり、偽造のためのe-KTPの用紙がオンラインショッピングで販売されていることがニュースで取り上げられました。偽造は今年5月にもスマトラ島のメダンで見つかっています。偽造が見つかったe-KTPとは、電子住民登録証を意味し、インドネシアで利用されている身分証明書のことです。以前からあったKTP(住民登録証)が2012年に電子化され、KTPの偽造や複数枚所持による脱税、汚職、テロリストの身元隠しなどの犯罪を抑止するために、全国で段階的に適用が開始されました。これまでのKTPは全国で住民データが十分に統合されていなかったため、偽造や個人の複数枚所持が蔓延しており、e-KTPの導入はこれらの問題の解決に繋がるとして期待が寄せられていました。インドネシアでは2019年4月に大統領選挙を控えており、選挙における投票権もe-KTPでどの地域の住民であるかを確認して行われるため、偽造されたe-KTPの流通によって適切な選挙運営が行われない恐れがあり、選挙監視委員会も取り締まりを強化する必要があるとして対策を講じています。

 

KTPは、成人した者に対して住民・民事戸籍登録局が発行する公的な身分証明書です。住民が17歳以上であること、または結婚したことがあることを条件とし、その条件を満たす全ての住民はKTPの所持義務が定められています。銀行口座の開設、運転免許証や納税番号の発行から、就職活動やオフィスビルへの入館など、様々な場面で身分証として提示が求められますが、これまでのKTPはプラスチック製のカードに個人情報(氏名、住所、生年月日、性別、宗教など)と指紋、署名が印刷されたシンプルな造りのものでした。さらにデータはコンピュータへの入力により全国で一括管理こそされていましたが、データを改ざんされると同一人物として識別することが難しく、異なる地域で別のKTPを所有していても判別できない状況でした。

 

e-KTPは、全国の国民のデータベースに基づいた行政および情報技術のセキュリティー・コントロールシステムを含む電子住民登録書です。e-KTPには、それぞれの住民に一生涯にわたって有効となる1つの住民登録番号(NIK)が記載されており、このe-KTPに記載されている住民登録番号は、パスポート、運転免許証、納税番号、保険契約、土地権利証明書などの発行にも用いられます。これまでのKTPでは5年ごとにKTPの更新手続きが必要でしたが、新たなe-KTPでは一生涯有効であるため、記載内容に変更がない限りは更新の必要がなくなりました。また、e-KTPには電子チップが埋め込まれていて、個人識別のための指紋データが登録されており、完全な個人識別が可能になったため、システム上では1名の住民登録書が複数枚作成することができなくなりました。さらにe-KTPは安全性を高めるために9層構造でデザインされており、特殊な印刷技術が使われているほか、電子チップから周波を出す仕組みになっているため、カードリーダーを利用すると本人が利用しているのかどうかを感知することができます。これにより「身分証明書」、「全国一括管理」、「KTPの偽造および複数所有の防止」、「成長政策を支える正確な住民データ」という4つの大きな役割を果たせるような仕組みが出来上がったのです。

 

e-KTPは、前述したように特殊な技術が使われているため偽造や複数枚所持が難しく、信頼できる唯一無二の身分証と考えられていました。そのため選挙の際には地域に住む住民であることの証とし、一人が複数回の投票することはなくなると認識されていたのです。しかし、全ての投票会場でで十分なe-KTP識別用のカードリーダーが設置されておらず、偽造されたe-KTPが流通していたのが実態でした。選挙管理委員会はカードリーダーの設置を進めるとともに、偽造が疑われるものについては住民登録番号の確認を行い、不正な投票を取り締まる考えです。ですが、あらゆるところでe-KTPは利用されており、偽造e-KTPの被害に遭わないよう意識的に注意することが求められます。政府は仲介人を通さず、住民・民事戸籍登録局でKTP、家族証明書、出生証明書などの証明書を手続きするように国民に呼びかけています。

 

もともと、インドネシアで住民登録システムが開始されたのは19世紀とされています。1815年にイギリス人のラッフルズが土地税のシステムを適用させるために導入したのが始まりでした。イギリスがインドネシアから離れると、今度はオランダが住民登録を引き継ぎましたが、19世紀中頃まではそれほど多くのデータは必要とされませんでした。1850年以降、オランダ政府が住民登録に関心を持ち始め、1880年から週間住民登録報告システムを行い始めました。その後、日本が植民地とする時代になると、オランダの制度は廃止され、住民の出生、死亡、結婚、離婚に関連させるシステムに変更されました。インドネシアが独立した後は、これまでの制度を郡単位で行うようになり、村で1週間のうちにあった住民の変更情報を、毎週、村長が郡で集計し、提出するというものになりました。はじめて住民登録システムがインドネシアに持ち込まれて200年が経ち、現在では住民登録は電子化され最先端の技術が使われるようになりましたが、未だに昔から抱える問題は大きく変わっていないということです。完全に不正をなくすためには、まだ課題が多そうです。

 

以 上