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作成年月日:2018年11月
インドネシア共和国

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インドネシア国情報2018年10月

今月のテーマ

「社会問題化するデマ情報」


科学と情報通信の目覚しい進歩により私たちの生活は急速に便利になりました。インターネットが整備されたおかげで、あらゆる情報へのアクセスが簡単になりましたが、一方でその変化による悪影響も無視できなくなっています。そのなかでもインドネシアで今、社会問題となっているのが、HOAXと呼ばれるデマ情報です。デマ情報とは、真実でない偽の情報で、根拠がなく、事実をよそおい、人を混乱させる情報のことを指します。このようなデマ情報は、ソーシャルネットワークを通して簡単に拡散できてしまいます。そのため、瞬く間に多くの人に拡散されてしまうのです。多くの人に間違った情報を与え、その間違った情報に影響を受けてしまうと最悪の場合には紛争を引き起こしてしまう喫緊の問題として、ジョコ・ウィドド大統領も国民に対してデマ情報の拡散に注意し、デマ情報を撲滅するようにと呼びかけています。

 

デマ情報の拡散はあらゆる所で、あらゆるメディアを通して、あらゆる人に対して発生しています。なかでも最もデマ情報の拡散のために利用されているのがソーシャルメディアで、Facebook、whatsapp、Google、Youtubeなどがその標的にされています。ソーシャルメディアは、現在流通しているほとんど携帯電話から簡単にアクセスすることができ、インドネシアには1億7,000万人以上の携帯電話利用者がいると言われています。この状況に対して、情報通信省のルディアンタラ大臣は、ソーシャルメディアの価値を認めながらも、これらソーシャルメディアの提供者がデマ情報に対して対策を取らなければ閉鎖することもやむを得ないと話しており、デマ情報の問題が深刻であることがこの発言からうかがえます。

 

こうしたデマ情報による問題は政治、宗教、民族、健康、ビジネス、犯罪、災害など幅広い分野で起こっています。記憶に新しいところでは、ロンボク地震、パル・ドンガラ津波、ライオンエアーJT610便の墜落事故などでも発生しています。少し以前になりますが、2017年1月には、FPI(イスラム擁護戦線)のメンバーが(GMBI)インドネシア国民運動の社会組織員によって刃物で刺され、誘拐されたというデマ情報が流され、その情報の事実確認を行わずに信じきったFPIメンバーがGMBIビルを放火するという事件が発生しました。時としてデマ情報は情報を捏造して人々を騙すだけでなく、ヘイトスピーチの拡散を目的とする場合もあります。インドネシアの国是に「多様性のなかの統一」とあるように、インドネシアは多種多様な文化、言語、宗教、民族が混在している国です。このような事実を装ったヘイトスピーチの拡散により、異なることに対する敵対心を植え付け、寛容さが失われることが懸念されているのです。

 

人々は、個人の考えや態度と一致する情報を受け取ると、デマ情報を真実の情報として信じ込みやすい傾向があると言われています。実際に自分の考えや意見を肯定する情報に対しては、その情報が本当かどうかを確認することなく、その情報を他の人に発信してしまうことがよく起こっています。しかし、このような情報に対してもデマ情報なのかをしっかりと判断し対処しなくては、先に話したFPIのような事件をまた繰り返すことにつながり、最悪の場合には紛争を引き起こすことになりかねません。

 

ソーシャルメディアはデマ情報に弱く、インドネシアの民主主義や団結に簡単に影響を及ぼしてしまいます。こうしたデマ情報の影響を防ぐためには、ソーシャルメディアの利用者に対してメディアリテラシーについての教育を行う必要があります。メディアリテラシーを学ぶことには2つの目的があります。1つは、デマ情報をはじめとしたマスメディアから流されるネガティブな影響からソーシャルメディア利用者を守るため。もう1つは、影響を受けやすい若者をはじめとしたソーシャルメディア利用者が、危険がともなうインターネット環境を使いこなすための準備です。デマ情報の被害者にならないためのメディアリテラシーとして、情報通信省はデマ情報を見極めるための5ステップについて以下のように紹介しています。

 

1. 挑発的なタイトルに注意する デマ情報は特定の立場の人を非難するような挑発なタイトルがつけられることが多いのが特徴です。また内容も公式なメディアの情報をデマ情報の発信者の都合のよい内容に変えて使われることがあります。そのため挑発的なタイトルの情報を見つけた場合は、その情報の元となった公式な情報がないか検索し、内容に違いがないかを確認するようにしましょう。

 

2. ページアドレスを確認する ウェブサイトやリンクから得た情報である場合は、ページアドレスを確認してみましょう。ブログなど公式なメディア機関で認証されたものでない場合には疑う余地があります。インドネシアには43,000ほどの情報ポータルサイトがあるといわれますが、公式な情報サイトとして認証されたものは300ほどしかありません。

 

3. 事実を確認する 情報の拠出元や発信者は明らかどうか、またその情報が事実として発信されているのか、意見として発信されているのかを確認しなければなりません。省庁や警察のような機関であれば信頼度は高まりますが、政治家や評論家のような個人が発信している場合、個人が発信している情報は完全性に欠けているため注意が必要です。

 

4. 写真の出所を確認する デジタル技術の進歩した現在では、文章だけでなく写真や動画といった情報さえも複製・加工できてしまいます。デマ情報に使われた元になった写真や動画がないか確認してみる必要があります。

 

5. 反デマ情報のディスカッショングループに参加する Facebookには反デマ情報を共有するグループが存在しています。そのグループに参加することで、情報が正しいか確認することができます。

 

情報通信省は、インドネシア共和国警察本部の協力を得てデマ情報の調査に当たっており、情報通信省に設置されたコンテンツ情報調査員が24時間体制で情報の認証を行っていますが、膨大な情報が急速に広がってしまうインターネット環境では、一つ一つの情報の正確性を確認するのに時間がかかってしまい、デマ情報を速やかに防ぎ、ソーシャルメディアから未然にデマ情報を防ぐことは困難です。最近ではメディアでデマ情報に関する報道が多く見られ、社会のデマ情報に対する認識も強まってきていますが、いまだ緊急時など情報が限られる状況では被害が広がりやすいのが実態です。政府、ソーシャルメディア提供者、そして私たち個人個人が意識を強めて、デマ情報に備えていかなければなりません。

 

以 上

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