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インドネシア

作成年月日:2018年5月
インドネシア共和国

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インドネシア国情報2018年4月

今月のテーマ

「2019年の大統領選挙に向けたプラボウォ氏の動き」


2019年に迫る大統領選挙。現職大統領であるジョコ・ウィドド(ジョコウィ)氏とプラボウォ・スビアント氏の対決に早くから注目が集まっています。巷では各大統領候補には、どの副大統領を擁立するのが良いと思うかというアンケートの結果まで出回っています。2019年の選挙戦で決する二人ですが、この二人が大統領選挙で対決するのは実は今回が初めてではありません。2014年に行われた前回の大統領選挙では、ユスフ・カラ氏を副大統領に擁立したジョコウィ氏が53%の票を得て、46%を得たプラボウォ氏を接戦の末、下しています。

 

プラボウォ氏は、インドネシア国軍仕官学校を卒業した後、国軍で中将まで務めた軍人あがりの政治家です。インドネシアの第二代大統領であるスハルト氏の次女と結婚し、政治的な権力を持つようになり、2004年に行われた大統領選挙ではゴルカル党の候補者を決める党大会で立候補し、アメリカの選挙コンサルタントや広報アドバイザーと契約して、排外的なナショナリズムを訴えましたが、この党大会では敗北してしまいます。ですが、これがきっかけで大統領就任を目指して本格的な政界進出を決めたとされています。大衆からの支持を集めるためにインドネシア全国農民協会やプンチャック・シラットのインドネシア全国連盟の会長に就任しており、2008年にはグリンドラ党を自ら立ち上げました。翌年2009年にはメガワティ氏とペアを組み、副大統領候補として初めて大統領選挙に出馬します。このときもユドヨノ氏に敗れてしまいますが、ユドヨノ政権下で汚職が蔓延するなか、政権に参加していないプラボウォ氏は清廉であることをアピールし、支持率を高めていきました。ジャカルタ州知事選挙でもジョコウィ氏が知事候補に上がると、副知事候補にキリスト教徒であるバスキ・プルナマ(アホック)氏を推薦し、庶民派のジョコウィ氏と手を組むことで、軍人時代に暴力的なイスラム組織を扇動してマイノリティーを迫害したマイナスイメージを払拭しようとしました。ところが、知事に当選したジョコウィ氏は行政改革を推進するなかで知名度と支持率を高めることとなり、2014年の大統領選挙に出馬することになったジョコウィ氏に僅差で敗れてしまったのです。

 

来年の2019年4月に行われる大統領選挙では、当初プラボウォ氏が副大統領としてジョコウィ現職大統領と立候補する、またはプラボウォ氏が別の人物を大統領候補として擁立するという憶測が飛んでいましたが、グリンドラ党はこのような計画はないと否定しました。ジョコウィ氏とプラボウォ氏では方針の違う部分が多くあるため、この二人がタッグを組むことはないとグリンドラ党の副党首は話し、プラボウォ氏は農業分野の成長、農家、漁師、労働者など国民の経済を最優先する考えです。

 

先日、インドネシアの祝日である5月1日のメーデーの日に、グリンドラ党の党首であるプラボウォ氏はKSPI(インドネシア労働組合連盟)が開催するメーデーのイベントに参加し、KSPIは2019年の大統領選挙でプラボウォ氏を支持することを表明しました。プラボウォ氏は2014年の選挙の際にも労働組合の支持を得て出馬しており、グリンドラ党は、立場が弱く、貧しく、抑圧されてきた層と一緒に闘うと宣言し、プラボウォ氏が大統領選挙に見事に勝利し、2019−2024年の任期に大統領に就いた暁には、KSPIが求める10の要求を果たすという約束事が書かれた政治的契約に署名しました。

■政治的契約に書かれた10の約束事

1. 労働者や国民の購買力を高め、賃金に関する政令2015年18号を破棄した上で、最低賃金を算出するために考慮されている適性生活基準に選ばれている品目数を現在の60品目から84品目に増やし、最低賃金を引き上げる。

2. 年金保険に関する政令2015年45号を改定し、労働者の保険料を見直し、受給年金額を最低でも賃金の60%に設定する。

3. 貧しい労働者、臨時労働者、国民にとっても公平な保険制度を構築し、すべてのインドネシア国民のための健康保険を実現する。

4. アウトソーシング、臨時雇用、延長雇用といった近代的奴隷制度をなくす。

5. 雇用を創出し、インドネシア労働者に不利益を与える外国人労働者に関する大統領令2018年20号を廃止する。

6. 臨時教師や二級臨時職員を国家公務員に登用し、私立学校、早期幼児教育、イスラム宗教学校、財団の教員に最低賃金を適用させる。

7. 12年間の義務教育を実現し、優秀な生徒が無料で高等教育まで進学できるよう労働者の子供のために国家予算を分配する。

8. 貧しい労働者や国民のために安価な移動手段を準備するとともに、二輪車を一般交通手段として法的に確立し、パートナーであるオンライン二輪運転手が労働組合を結成する権利、労働協約を保有する権利を保証する。

9. 貧しい労働者や国民のために、頭金0%で安い住宅を準備する

10. 貧しい労働者や国民の負担を減らす税制改革を行い、税収や税率を向上させ、協同組合、国営企業、地方公共企業を国の経済を強化するための源とする。また天然資源を国の保有物に戻し、インドネシア国民の繁栄のために最大限に利用する。

 

以上のように、プラボウォ氏は2019年から2024年のインドネシア共和国大統領に選ばれた場合には、労働者をはじめとする国民の福利厚生を向上させる政策やプログラムを実行することを約束しています。グリンドラ党の副党首は、プラボウォ氏は約束を守る男だと強調し、労働者層からの支持を取り込んでいきたい意向のようですが、実際にこの政治的契約が実現されると企業の負担は大きくなる一方と見られ、外国投資を抑えてしまう恐れもあります。

 

調査によると、現在のところジョコウィ氏とプラボウォ氏が大統領候補の筆頭として注目されており、他の候補と比較して選出の可能性が高いと見られています。2018年1月にインド・バロメータによって行われた調査では、プラボウォ氏の支持が22.3%に対し、ジョコウィ氏が48.8%。また、ポルトラッキングの調査では、プラボウォ氏が33.7%に対し、ジョコウィ氏が57.6%、メディアンの調査では、プラボウォ氏が21.2%、ジョコウィ氏が35%となっており、全体的に現職大統領であるジョコウィ氏が優勢の状況でプラボウォ氏が追う展開が続いています。そのほかには、現ジャカルタ州知事であるアニス氏など名前もあがっていますが、その支持率はいずれも3%以下にとどまっています。

 

メーデー以降も、毎週日曜日の午前中にジャカルタのタムリン通りからスディルマン通りで実施されるカーフリーデーで、ジョコウィ大統領を支持する勢力と大統領の交代を主張する勢力の小競り合いが発生しています。このときは現場の警察が対処し、大きな混乱には至りませんでしたが、2019年の大統領選挙を控え、過熱傾向にあり、別の日には独立記念広場(モナス)近くでも大統領の交代を主張する勢力が決起大会を呼びかけました。ジョコウィ氏とプラボウォ氏を除く他の候補者の支持率は低いため、大統領の交代を主張は同時にプラボウォ氏の支持ととることもできます。今後、ますます選挙にかかわる運動が活発になり、両候補者は各政党の支持の確保に動き出します。インドネシアの成長がかかった次の5年間、誰が大統領として国を牽引することになるのでしょうか。

以 上