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インドネシア

作成年月日:2016年3月
インドネシア共和国

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インドネシア国情報2016年2月

今月のテーマ

なぜ有能な社員から退職するのか?」


筆者は「なぜ有能な社員から退職するのか?」と日系企業のご担当者より相談を受けることがあります。ちょうどこの時期、春闘と言われる昇給時期(インドネシアの日系企業は1月と4月が多い)になりますので、それに絡めて解説いたします。

インドネシアの2016年最低賃金(1月1日より施行)が、一部の地域を除き、多くは11.5%の上昇で決定しました。最低賃金は政府決定であるものの、最低賃金を超えた賃金を支給するホワイトカラーの従業員に対する昇給を決めなめればなりません。この昇給が、有能な人材を残すこととなるか、または離職を促してしまうかの分岐点とも言えます。

 

◇昇給の実態について

インドネシアでは給与決定の制度を導入している企業の場合、最低賃金の上昇率に対し全ての社員が影響を受けます。その制度に基づく昇給原資から、各々の評価結果に基づいた昇給率(額)が割り出されます。この運用は、会社が持つ制度を根拠とすることから、経営者の独断で昇給が決定することはありません。

一方、人事制度を導入していない企業では、そのほとんどは経営者の裁量で昇給が決定されています。要するに、好きか嫌いか、または周りの日系企業や同業同士で横の一線を確認し合い、昇給を決めています。

 

◇昇給率について◇

以下は、人事制度を導入していない企業の一般的な昇給幅の一例です。

 

■最低賃金クラス:11.5〜15.0%

■スタッフ:8.0〜10.0%

■スーパーバイザー:6.0〜8.0%

■アシスタント・マネジャー :4.0〜6.0%

■マネジャー:3.0〜5.0%

■ゼネラル・マネジャー:2.0〜3.0%

 

役職が上位になるにつれて、既存の給与そのものが大きいことから昇給率を低くする方法です。

ただし、この方法にはそれぞれの従業員の評価が含まれていないため、いわゆるベア(ベースアップ)にすぎません。よって、経営者が評価する従業員に対しては、この昇給幅を超えて昇給させることになりますが、その根拠づくりに経営者は頭を抱えます。

しかも、従業員規模が多いと経営者だけで個別の評価を行うことに無理が生じます。

また、本社に対して“何を根拠に評価するのか”、“どう説明するのか”、という悩みが付きまといます。結局、“全員、一律昇給” となることがあり、評価を受けるべき従業員にとって不服な結果となるのです。

 

◇有能な人材が日系企業を離れる最大の理由◇

日系企業で働く有能な人材が、欧米系企業やローカル系大手企業へ転職する、またはヘッドハントされることが問題となっています。「せっかく育ててきたのに…」、「しっかりと毎年、昇給させていたのに…」と嘆かれる声を聞きますが、日系企業から離職する当人にしてみると、「会社に貢献したのに、周りの凡人と同じ昇給や賞与の支給を受け、がっかりした。」、「より高く評価され、高給を目指せる会社へ転職する意思を決めた」という意見が多いようです。

要するに、有能な人材ほど、特別な評価が与えられることを求めており、バランス重視型の評価では満足しないということです。逆に、無能な人材は、この“バランス重視型”の評価は好都合で、ただ座っているだけで、毎年一律の昇給や賞与が与えられるため、その会社を離れる理由が薄れてしまいます。

結果として、良い人材が抜け、無能な人材が残ってしまう現象が続いてしまうのです。

「解雇」には退職金も労力もかかります。解雇後、労働局や裁判所に駈け込まれると、簡単に雇用関係を断ち切れなくなるのがインドネシアです。 そのため「評価」と「報酬」で経営者のメッセージを個人に伝え、自然な新陳代謝を引き起こすことが、長期に渡って会社経営を行う重要なカギになると考えます。

(了)