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インドネシア

作成年月日:2015年3月
インドネシア共和国

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インドネシア国情報2015年2月

今月のテーマ

社会保障


インドネシアには社会保障はあるものの、これまでは労働者として働いている国民を対象としたものだけで、日本と異なり全国民を対象としたものは存在しませんでした。

しかし、経済成長の最中、それが見直されることとなり、2019年までに全国民が医療保障に加入することを義務付けられ、その実施に向けて官民共同で進めている過程にあります。

今回は、インドネシアの社会保障を分かりやすく解説します。

◇社会保障プログラムについて◇

公務員・軍隊を除き、一般国民に対し保証され、運用されている社会保障は、以下4つのプログラムとなります。そして、それを運用する社会保障機関をBPJSといいます。

@ 労働災害補償 (JKK)

A 死亡補償 (JKM)

B 老齢保障 (JHT)

C 医療保障 (JK)

◇保険料について◇

会社(雇用主)および従業員は以下の料率に基づき負担します。

@ 労働災害補償 :固定給の0.24〜1.74%

A 死亡補償 :固定給の0.3%

B 老齢保障 :固定給×(会社負担3.7%+従業員負担2%)

C 医療保障 :固定給×(会社負担4%+従業員負担0.5%)

 

@労働災害補償の料率は、業務危険度の高低によりBPJSによって決定されます。

B老齢保障は、日本の年金システムとは異なり、積立てた金額に金利を加算したそれが一括で支給されるものとなります。

C医療保障のみ、算定根拠となる固定給に上限額が設定されており、その額はRp.4,725,000となります。この上限額は賃金の上昇に伴い、都度修正されます。また、2015年7月1日より、従業員負担分が0.5%から1%へ変更となります。

◇社会保障の問題点について◇

4つのプログラムのうち、C医療保障においては「医療機関が充実していない」、「十分な治療を受けられない」といった加入者側からの不満が強く、また、政府もCを上回る医療サービスを従業員に対し提供していれば、Cの保険料を支払う義務を持たない旨、法律で制定していました。そのため、民間医療保険や、会社独自で運用する医療サービス(実費精算制など)を従業員に対し行っていた会社が多くありました。

しかし、2013年にCへの加入が必須であると法律によって改定され、2014年1月1日からの施行となりました。既に民間医療保険や他の医療サービスを提供していた企業にとって二重の負担となるために、それらの企業を悩ませました。

実際のところは、法律が施行された後も加入が低調であったため、BPJSは2015年1月1日までに改めて加入を行うよう再度促しました。

しかしながら、それでも加入が遅れているのが現状のため、2014年12月、政府と経営者団体(APINDO)の話し合いにより、医療保障による医療サービスの充実化を急ぐことを条件に、2015年7月まで、保険料支払いの猶予が持たれることで合意となりました。

◇何を持って “使い勝手が悪い“ のか◇

 この医療保障は、以下のプロセスを経て治療を受けることが可能となるため、使い勝手が悪いとされています。

@ 保障加入者は、BPJSに加盟するクリニック/保健所を1つだけ指定する。

A 上記@にて指定した医療機関にて一次診療を受ける。 (病院での治療が必要と診断された場合、紹介状の作成依頼をする) ※病院へは、他の日に治療を受けに行くこととなる

B BPJSに加盟する病院へ紹介状を持参し、治療を受ける。 ※病院側も、BPJS利用患者を後回しにする傾向があるため、数時間待たされるのが現状

C 別の病気が発症した際は、上記@に戻って一次診療を受ける。  

この制度の問題点は、主に以下4点と考えられます。

1. BPJSに加盟する医療機関(クリニック/保健所/病院)がそもそも少ない。 とりわけ知名度の高い私立病院の加盟が乏しい。

2. 指定した医療機関にて一次診療を受けなければ、病院での治療を受けられない。

3. 一次診療を受ける医療機関は1つしか指定できないため、 渡航先での診療を必要とした場合は、指定先まで戻らなければならない。

4. 指定した以外の医療機関で一次診療を受けた、一次診療を経ずに病院にて治療を受けたなど規定に反した場合、治療費は自己負担となる。(実費精算もできない)

◇外国人の加入義務◇

この医療保障は、6か月以上インドネシアに滞在する外国人にも加入義務が課せられています。

この医療保障の一人当たりの保険料は最大Rp.189,000/月(年間合計 Rp.2,268,000)となりますが、使い勝手の悪さとサービスの悪さを理由に、大半の外国人は利用しないことが予想されるために、「従業員の加入は行うが、行政指導が入るまでは日本人駐在員には加入させない」とする日系企業が存在しているのが現状です。

一人あたりの保険料負担は決して大きくなくとも、所帯の大きい会社にとって経費負担は膨らみます。そして、それが従業員に喜ばれないシステムであれば、加入を躊躇するのは当然のことです。

今後、加入をする企業が増えるのか否かは現時点ではわかりませんが、2015年はこの加入の有無について、日系企業でホットな話題となるでしょう。