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インドネシア

作成年月日:2015年1月
インドネシア共和国

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インドネシア国情報2014年12月

今月のテーマ

「人事の不正」


インドネシアでは「人事」に外国人が携わることが法律で禁じられています。そのため日本人駐在員の多くは、技術・営業・経理・財務の出身であることが一般的とされています。人事業務には深く介入されていない会社も多いと言え、そして、そこに外国人が関与できない、或いは赴任する駐在員も専門外の業務に関わろうとしないことから、「人事」が不正の温床となっている実態をここで解説します。

◇縁故採用◇

従業員約30人のある日系商社にて、従業員の1人が遠く離れた田舎で結婚式を挙げるとして、年次有給休暇を申請してきました。ほかにも数人の従業員が同じ時期に休暇を申請したため、不審に思った日本人社長が従業員を問いただしたところ、全員が人事マネジャーの親族だったことが分かりました。インドネシアの多くの民族では苗字を持たないことから、親戚関係であるか否かの確認が取れません。そしてその会社は、採用活動をすべて人事マネジャーに一任していたことから、このように縁故採用が多くなったと言えます。

また、ある日系製造会社では、求人広告を掲載し応募者に筆記テストを実施した上で採用していたにもかかわらず、人事マネジャーが裏で採用活動をコントロールして、親族の採用を優先していました。そのことを良く思わなかった他の従業員から、経営者に対する密告があったため問題が発覚しました。

上記いずれの会社でも、人事マネジャーも含め関与した全従業員の解雇を検討しましたが、これまで継承してきた業務知識を持った複数の従業員を失ってしまう悪影響を考え、人事マネジャーのみの解雇を実施し、他の縁故関係にあった従業員には厳重注意にて対処したそうです。

◇採用時のリベート◇

ある日系製造会社での工場作業員の採用面接にて、たまたま日本人責任者が面接に同席した際「入社するにはいくら支払うのが相場ですか? 周りの者からお金を払えば入社できると聞いたもので…」と応募者が尋ねたため、横にいた人事担当者が慌てふためいたという事例がありました。日本人責任者も、簡単なインドネシア語のやり取りは分かっていましたので、それが金銭の話だと気づき、人事マネジャーを問いただしたところ、どうやら人事担当者が応募者ごとに数万円の “入社手数料” を受け取っていたことが分かり、懲戒解雇としました。

ある日系サービス会社では、日ごろ利用している派遣会社に「派遣費用は支払うが、派遣社員への給料から天引きし、それを個人的な見返として欲しい」と迫り、キックバックを受け取っていたことが、同僚が経営者に対し密告したことで判明。その後、派遣会社へ確認をしたところキックバックの事実が発覚した事例があります。

◇スクラップ業者との癒着◇

特に、製造業で多い事例となりますが、モノを製造すれば切りくずや破片が発生するため、それを適した業者へ販売をすることは日本でも同様に行われます。いい意味では “リサイクル” です。しかし、それが不正の温床となるケースがあり、インドネシアではそれが古くからの慣習として行われていること。また廃棄物を買い取るスクラップ業者が、近年マフィア化し巨大化していることなどから、癒着を拒んだ人事マネジャーが刺される、などの事例もあるほどの問題となってきています。

また、ある日系製造会社では、会社の設立メンバーとして入社した10年目の人事マネジャーが、近年、高級車に乗って通勤するようになり、身なりも高級品を身に着けてくるようになりました。明らかにお金の使い方が激しくなっていることから、何かしらの不正に関与していないかと疑いをもった経営者が、探偵に依頼し調査をしました。すると、3年ほど前に切り替えた新しいスクラップ業者と癒着関係にあり、都度、業者からリベートとして車や金銭を受けていることが判明しました。そのほかに、会社に通勤で使用している高級車以外にも3台(いずれも高級車)を所有していることが判明したことから、会社側は、その人事マネジャーから廃棄物に関わる権限をはく奪した上で、スクラップ業者とのやり取りの権限すべてを経営者の息がかかった製造マネジャーへ譲渡したところ、その人事マネジャーは突然失踪しました。2週間以上も連絡が取れないことから、会社は就業規則に則り、人事マネージャーを自主退職として雇用を終了させました。そしてその後、スクラップ業者を他の業者へ変更しました。

以上のような事例は氷山の一角でしかありませんが、特に製造業において、当初雇用をする人事マネジャーには絶大の信用を置いてしまうのは事実で、その人事マネジャーにスクラップの権限を与えてしまう、採用を一任してしまうという状況になるため、同様の問題が起きる可能性を経営者は認識する必要があります。

経営者も多忙であるため、すべてを管理することは物理的に不可能であったとしても、特にお金が関係する業務に対し、組織で牽制する仕組みや第三者がチェックできる仕組みを導入することにより、社員の退職や懲戒などの不幸な結果を招く確立を減らす努力が必要です。また、経営者自ら業務のチェックを行うことにより「よく見ている」というメッセージを従業員へ与えるとともに、インドネシアで不正が発生するポイントを知ることが重要です。良い意味で一人に権限を集中させて任せるようなことはせず、どうしても任せざるをえない場合は、経営者自らが「不正は発生する」という考えの下、組織や業務フローを構築し運用すべきだと考えます。