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インドネシア

作成年月日:2014年11月
インドネシア共和国

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インドネシア国情報2014年10月

今月のテーマ

「従業員の離職」


今回は、日本人が不思議に感じる「インドネシア人従業員の離職」について、その離職の理由や背景に何があるのかについて、詳しくお話をしたいと思います。

◇インドネシア人にとって『仕事』とは?◇

インドネシア人に対し、「あなたにとって『仕事』とは、何ですか?」と聞くと、大多数の者は以下を挙げます。

@家族のため(両親を養う、子供のため など)

A自身のキャリア構築のため

インドネシア人は一般に、会社に対する愛社精神を持つ者は少ないとされ、上記の2点を叶えることができる会社を求める傾向があります。そのため、それにそぐわない会社に就職した場合は、離職の可能性が高くなるといえます。 しかし、実際には次に挙げる事情による離職が際立って多くあります。

◇離職の背景◇

インドネシア人従業員は、会社を離職する理由として以下の点をよく挙げます。

(1) スタッフクラス

 @仕事がきつい割に給料が少ない

 A日本人上司がよく怒る

スタッフクラスについては、ストレス耐性が日本人の考えるものとギャップがあり、日本人側が日本のスタンダードで仕事を要求すれば、「それだけの高いレベルを要求するのであれば、給料を上げてほしい」と申し出たり、もっと楽な仕事に就きたいと他社への転職に目を向けてしまいがちです。

分からないことを前提に、仕事の方法を教えることが必要で、ただ叱るだけでは従業員の離職が絶えず続いていくことがあります。「叱る」という行為が「怒られた」と認識され、気持ちを害してしまうようです。

そのため、“知らない” ことを前提として、作業方法を指導する。そしてそれを継続させるために指導を続けていくことが重要です。知らないから、と頭ごなしに叱っては、従業員はなすすべもありません。 この点こそ、指導者として日本から赴任された方々の能力が発揮される場面ではないでしょうか。

(2) 役職者(マネジャークラスなど)

@日本人が上のポジションを占めるため、昇格できない

A日本人が定期的に帰任し、新任者が来るたびに方針が変わるのでついていけない

日系企業は、欧米系と異なり、簡単にはマネジャーを超える役職に、インドネシア人従業員を就かせることがないようです。その理由に、ゼネラルマネジャー(部長)職以上は、日本人だけで占められているのが現状で、設立から10年経ってもその体制が変わっていない会社がほとんどと言えます。

その結果、有能な役職希望者ほど、見切りをつけて離職/転職します。

また、日本人駐在員は任期や辞令があれば帰任し、新任者が赴任しますが、多くのケースで会社の方針が変えられ、また、前任者には評価されていた従業員も、新任者には評価されないこともしばしばおきます。スタッフクラスと異なり、待遇面での不満よりも、日系企業の体質に対し、離職の意識が芽生える傾向があるようです。 そこで、日本人にとって当たり前の「叱る」という行為について、次に詳しくご説明します。

◇叱る行為には注意が必要◇

日系企業で起きがちなのは、ミスを犯したインドネシア人従業員に対し、日本人が “叱る” 際、叱り方によっては、インドネシア人従業員のプライドが傷つけられ、想像しえない事態へ発展してしまうことです。インドネシア人にとって、“叱られる” という行為は「怒られた」として受け止められ、感情を大きく傷つけられるとされます。ましてや他の従業員の前で叱られれば “侮辱” となり、翌日から出社しなくなった、などの事例は尽きません。同僚たちの目の前で日本人がインドネシア人従業員を叱ったことで労働争議となり、当事者の日本人が帰任させられたという事例もあるほどです。

そのため、叱る際には「本人を別室に呼ぶ」という手段は、インドネシアに赴任して間もない日本人が、前任者やインドネシアに赴任する先輩方より指導される注意点のひとつとなっています。

◇なぜ叱られることが侮辱として受け止められるのか◇

家庭や学校教育において、日本と異なり “しつけ” の概念が大きく異なることが原因として挙げられます。日本では、「相手に失礼がないように」、「世間で恥ずかしくない行動をするために」と親が子に対し、しつけを行っています。誤った行いをすれば、傷つけた相手に対し、謝る、という教育が成されています。そのため、大人は時に子供を厳しく叱ることがあります。一般に、日本人は “叱られる” という行為に耐性を持っているといえます。

一方、インドネシアでは放任/自由主義に近いしつけが一般的で、「子供であるからこそ、自由に遊ばせる」、「子それぞれ個性があって良い。大人が縛りつけるものではない」という考えが強いようです。そのため、大人が子供に対し叱ることは少なく、よって、叱られることに対する耐性は強くないと考えられます。

◇アメとムチ◇

これまでインドネシアで指導者として携わった数多くの日本人に、よく「インドネシア人の指導方法」についてお話を伺うことがありますが「時々褒める」「信賞必罰の徹底」と、様々な意見を頂戴します。要約すると、“アメとムチ” を徹底させるということがインドネシア人従業員に適した指導方法だというのです。

叱る、プレッシャーを与え続けるのでは単に従業員の離職を促すようなもので、それに対しフォローを行うことがインドネシア人の感情を傷つけず、時に褒めてあげることでその従業員の能力を引き出すきっかけを作ってあげることになるのです。

会社に対し伝える離職理由は、「親族が亡くなったので/病気となったので田舎に帰る」という理由が代表的とされますが、実際にはこれまでに挙げた理由であったり、または既に転職先を見つけている等で、正直な理由を会社へ伝えないのがインドネシア人の典型的な特長ともいえます。

現代の日本の若者も叱られる耐性が低いとされ、簡単に離職する従業員が増える中、日本でも上司の指導方法に工夫が求められている現状があると思います。

インドネシアでも同様に、インドネシア人の気質を理解した上での指導方法を習得する必要があるのでしょう。そのためには先ずインドネシア人を理解し、従業員が会社に何を会社に求めているかを正確に把握する能力が、指導をする立場に求められる能力であり、日本人駐在員の必要なスキルであるのではないかと考えます。

                                      以 上