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インドネシア

作成年月日:2013年2月
インドネシア共和国

海外情報プラス

インドネシア国情報2012年2月

海外駐在員の安全についてその2(インドネシアの日常生活の安全)

 前回、日揮のアルジェの事件、インドネシアの洪水被害に接し、「海外駐在員の安全」
について、考察する機会を得た。
  前回お示しした、アジェンダに従い、今回は、「インドネシアの日常生活の安全」について、考察したい。
1. 前回お示ししたアジェンダ
(1)今回のインドネシアの洪水の被害は、人災か?
(2)日常生活の安全について
1)職場の安全
2)日常生活の安全
a) 運転手
b) お手伝いさん
c) 最近の日系人殺害事件について
(3)インドネシア駐在の安全について
1)テロと宗教対立
2)鳥インフルエンザ
3)地震と津波
4)これからの政治の不安定要素
(4)最後に

2. 日常生活の安全について

こちらに生活の長い友人A が、ある時、ふと「インドネシアで生活するには、優秀な運転手と良いお手伝いさんに巡り会える事が、第一関門である。」と、しみじみ語った。彼は、こちらに10年以上駐在しているが、実は運転手とお手伝いさんには、相当苦労した経験(愚痴)を聞かされたことがある。

彼の発言は、頗る的を射た教訓で、日常生活で「人を使うこと」に慣れていない我々は、当初(数年たっても)戸惑うことが多い。

(1)運転手

1)1997年の通貨危機当時、ジャカルタの大混乱を経験した友人Bは、「運転手には、命を預けている。あの大混乱の中で、当時の運転手は、銃弾とデモの間をかいくぐって、ジャカルタ中心街から裏道を抜け、スカルノハッタ空港まで、無事送ってくれた。運転手の家族の安全をも優先して。」と語った。

2)こんな優秀な運転手は、最近はいないかもしれないが、友人Bが、言ったように、「自分の命を預けている」という意識が、最近の駐在員には少し欠けているのではないかと心配している。
運転手を単なる使用人と見做し、顎で使うような駐在員が、社用車の後部座席で、踏ん反り返っている姿を散見するに及び、少し悲しくなる。

3)少し説教じみたが、次のことを心構えとして列挙したい。

a) 運転手には、「自分の命を預けている事」を肝に銘じること。

b) 日常会話の基本的なインドネシア語を早く身に付け、運転手と良いコミュニケーションをとること。

c) 宗教上の配慮(例えば、とくに運転手が、イスラム教徒の場合、金曜日のお祈りの時間を優先させる等)、当地の慣習(例えば、物を手渡しする時、右手のみを使う等→当地では、左手は不浄の手とされている)を忘れないこと。

d) 運転手も同じ人間であり、ロボットではないのだから、彼の体調管理に気を配ること。居眠り運転のリスクもある。(これを避ける為に、敢えて助手席に乗車し、時々運転手に話しかけるというような工夫をしている人もいる。)

4)個人的なお勧めであるが、インドネシアの運転免許証(インドネシア語でSIM=Surat Izin Mengemudi)を万が一の場合に備え取得しておくことである。(ただし、日本領事館からは、日本人は運転しないようにとの勧告が出ており、日系の会社では、本社の通達で運転を禁止しているところが多い。)
これは、例えば、子供が深夜急病を患った時、或いは、急に日本から親族の危篤の知らせが来た時、運転手は帰宅してしまい、タクシーがすぐに捕まらないといった事態への対応で必要な場合がある。
極めて特殊なケースではあるが、いざというとき、救急病院まで、或いは、空港まで、駆けつける覚悟(準備)が、必要なこともあり、実際そのような事例で苦労していた友人もいた。
尚、副次的効用であるが、当地では、高層ビルや、空港での本人確認で、インドネシア運転免許証は、身分証明として活用でき便利である。運転免許証がないと、パスポートを要求されて、筆者自身も困ったことがある。(パスポートは、喪失を恐れて、通常コピーしか携帯していない。)

(2)お手伝いさん

この10年、当地に駐在しているが、お手伝いさんに関するトラブルは、枚挙に暇が無い。
例えば、
@ 盗難(宝石から、タオルまで)
A 遅刻
B 突然の労働拒否
C 逆に日本人から、お手伝いさんを突然解雇した後のトラブル
D お手伝いさんの病気、妊娠
等々

1)筆者の配偶者は、オランダ系インドネシア人であるが、上述で挙げた事例をはじめとして、我が家も色々なトラブルに巻き込まれた。 一方で配偶者は、生まれたときからお手伝いさんに囲まれた環境で育っているので、彼女の使用人に対する厳しさに驚いた。
しかし、21世紀の今日、彼女は表では厳しい態度で接しながらも、人間の尊厳を重んじて、裏では、当意即妙にフォローしていた。(例えば、本人も気づいていない、お手伝いさんの妊娠をすばやく察知して、近所の診療所へ、連れて行ったことなど。)
このような真似は、使用人を日常生活で接する訓練を受けていない、我々日本人には、そう簡単に出来るものではない。

2)我々として、心掛ける事は、運転手の箇所で述べたことの繰り返しになるが、相手の気持ちを慮り、同じ人間として、お手伝いさんと接することではなかろうか?

(3)最近の日系人の殺害事件について

2012年6月、その事件は起こった。

1)Sさん(当時66歳)は、家の補修工事を、親戚を通じてインドネシア人に依頼した。補修工事に従事していた犯人は、Sさんの頭などを角材で殴った後、口と鼻に粘着テープを貼り付け、殺害した。
死因は、警察によると窒息死。動機は、犯人の供述によると、「Sさんから、仕事振りが怠慢だと叱られ、いやな思いをしたから。」と報道されている。

2)Sさんは、約40年前に当地に来られ、戦後賠償留学生のご主人(インドネシア人、故人)と結婚し、インドネシア国籍を取得されていた。 インドネシア人男性と結婚した日本人女性の集まり「ひまわりの会」や、福祉友の会婦人部でも活躍されていた。 筆者も、5年前に縁があり、一時間程、お話をお伺いしたことがある。そのときの印象は、穏やかで、人間味あふれた方であったのだが。

3)それだけに、筆者はこの報道に接した時に大変驚いた。Sさんは、当然ではあるが、流暢なインドネシア語も話され、インドネシア人とのコミュニケーションには何の問題も無い。
(1)、(2)で議論を展開したことは、百も承知の方が、何故こんな事件に巻きこまれてしまうのか?もしかすれば、犯人は精神的に問題があったのかもしれない。
そのように特異な事件と片付けることもできかもしれないが。

4)筆者は、次のことを指摘して、今回の結びとしたい。
@ 駐在員として、対人関係には注意しても注意しすぎることは無い事。
A 我々日本人は、当地で縁あって生活させていただいているという感謝の気持ちを常に持つ事。

以 上