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作成年月日:2016年9月

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インド情報 2016年8月

●モディ政権の労働法制緩和政策に反対し9月2日にゼネスト実施を表明

2014年の総選挙にて、モディ首相は経済再生計画の一環として、雇用創出や成長加速につながる労働法の改正を公約した。

この労働改革案は、採用、解雇や請負労働などの従来の硬直した規制に柔軟性を持たせるなどして緩和し、企業側は雇用調整などが容易となることで歓迎している。また、採算の取れない国有企業の民間への売却ないし閉鎖が織り込まれている。

これに対し、労働組合は、解雇や非正規社員の雇用が容易になるとし反対し、9月2日ゼネストを全国的に実施すると表明した。8月下旬には政府と労働組合の交渉が繰り返され、与党(BJP党)の支持組織である「インド労働者連盟(BMS)」にゼネスト不参加の了解を取り付けたものの、野党系労組は同意せず強硬態度をとり続けているので、9月2日のストライキの回避は不可能な思われる。

*9月2にはゼネストが全国的に実施され、全人口の10%以上の1億5,000万人の労働者が参加した。

●政府は最低賃金を引き上げ、非熟練労働者の日給を350ルピーに

政府は、8月30日、最低賃金諮問機関の提言もあり非農業非熟練労働者の最低賃金を現行の240ルピーから350ルピーに引き上げた。 これは、9月2日に予定されているゼネスト対応であり、労働組合対策と見られている。野党の労働組合は「賃金改定だけが我々の要求ではなく、国有企業の民営化・閉鎖などを止めないかぎりストは決行する」と表明。

●自動車3社、非正規雇用増加が生産性低下や技術流出の懸念

インドの自動車上位メーカーが、非正規雇用の従業員を増やしている。マルチ・スズキは、今年3月末時点で前年同月比25%増の1万626人を非正規として採用。タタ・モーターズは2割、マヒンドラ&マヒンドラ(M&M)も5%増やした。非正規雇用を増やす背景には、増産に対応している側面が大きい。専門家は、非正規雇用の増加で生産性低下や技術流出の懸念が出る可能性に言及した。

マルチの非正規従業員は2年連続で増加した。今年3月末時点で、従業員全体に占める非正規の割合は 42%と前年同月比の 38%から拡大。北部ハリヤナ州の2カ所で操業する工場をフル稼働していることが背景にあるとみられる。

タタも非正規雇用が単体ベースで 20%増の2万 6,594人に膨らんだ。トラックの買い替え需要増や新工場の稼働で人手が必要となったためだ。一方、同社は人件費削減を目的に自主退職を促すことで、正規雇用者も5%減らした。M&Mも非正規雇用を1万 9,176 人と、前年同月から5%増やした。

一方、製造会社にとって非正規雇用を増やすことはリスクを生む。インド在住でナカジマ・コンサルタンシー・サービスの創業者である中島敬二氏は、「非正規雇用は人件費を抑えることができ正規雇用の従業員を増やさないで済むため、労働組合対策になる」と説明。

しかし、「非正規雇用の従業員は期間限定で業務するために知識の蓄積ができず、結果的に生産性や品質低下の恐れがある」と指摘した。契約満了後に他社に移動することで、技術流出や企業情報の漏洩なども起こりうるという。中島氏は、非正規雇用を増やしすぎると、正規雇用者は「仕事を奪われる」と感じる可能性があると指摘。「従業員全体で非正規雇用の割合が拡大するほど、こうしたデメリットがより浮き彫りになるリスクがある」と述べた。【出典:8月22日付け「The Daily NNAインド版」】

マルチ・スズキの技術者育成、職業訓練校(ITI)と提携

マルチ・スズキは、現在100のITIと提携し、自社で養成した講師により定期的に最新の製品知識や技術に関する実践的な授業を実施している。昨年は提携校から約 1,400 人を採用し、本年は約 2,000人を雇用する予定である。マルチ・スズキは毎年約6,000人の技術者を新規採用しているが、提携校含むITIからの採用者数は全体の半数以上(約3,500 人)に達している。

技能人材育成にITI(職業訓練所)の設備老朽化と教師の質問題

インドでの工業発展のためには技能人材の育成が不可欠であるが、この人材を育成する 政府機関であるインド職業訓練所(ITI)のレベルが問題視されている。殆どのITIでは資金不足のため設備は老朽化しているのにもかかわらず新規設備は導入できず、旧式設備で、かつ一つの設備を大勢の訓練生で共用している。これでは十分な訓練が難しい。次に、指導者の質と量の問題だ。これではITIの卒業生を採用しても役に立たない。せっかくITIにて訓練を受けても就職できる卒業生は極めて多いと聞く。

人口が増え続けるインドでは、雇用創出が政策の最大課題となっており、全国に1.2万校もあるITIを活用し2022年までに3億人近い新規労働人口に対し技能教育を施すと政府は公約しているが、ITIの設備拡充と指導員の質向上と量増大に政府は手を打てていない。

このため、インド企業の中にはITIに頼らず自社解決を目指す会社も出ている。日系企業では、マルチ・スズキやトヨタ自動車は人材育成の会社を設立している。

(了)