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作成年月日:2015年9月

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インド情報 2015年8月

国家安保顧問会合 キャンセル
印パで非難の応酬

7月、ロシアのウファで、インドのモディ首相とパキスタンのシャリフ首相が会談した際、両国の国家安全保障顧問の会合をニューデリーで開くことが合意された。会合は8月24日に予定されていたが、22日土曜日の夜になって、パキスタン側からキャンセルの連絡があった。アシフ・パキスタン国防相はキャンセルの理由として、「インド側が事前に提示してきた協議事項は一方的なもので受け入れることが出来ない。」として、インド側が意図的に会合をキャンセルに導いたとインド側を非難した。一方、ラジナト・シン印内相は、「キャンセルを申し入れしてきたのはパキスタン側だ。インドではない。」と強く反駁した。その後、両政府高官の間で、マスコミを通し、相手を批難する発言が続いたが、問題はカシミール地域の取り扱いにあったようだ。

カシミールの帰属問題

両国間の長年に渡る懸案事項は、インド北部のカシミール地域の帰属問題にある。パキスタンの建国は1947年、イスラム教徒の多い地域が英国植民地から独立した。当時、カシミール地域の住民の多数はイスラム教徒であったが、蕃王がヒンドゥ教徒であったので、カシミールはインドに組み入れられた。

それに反対するパキスタンはインドと3回、カシミールに侵攻し戦火を交えたが、国連の介入もあり、小康状態を保って現在に至っている。この状況は半世紀近く続いている。

領土問題は一朝一夕にして解決に至る問題でないことは分かる。特に印パの場合、どちらかの政権が代わるごとに、話し合いの機会が持たれる。しかし、当事者自体、容易に解決に至る問題でないことは十分に認識しており、あくまでも国民に対するパーホーマンスで、何ら実質的な進展はなかった。印パ会談が順調に進むように見える時には、必ずと言って良いほど、カシミール地域でパキスタン側からのテロ攻撃があり、会談はお流れになってしまう。今では両国国民、地元カシミールの人達の中で、本当にカシミール問題が解決出来ると思っている人はいないようだ。

元凶はパキスタン軍部

今回の場合、パキスタンの首相は久し振りに軍人上がりで無い、ビジネスマン出身のシャリフ氏、インドはモディ首相で、両者とも民間人なので、新しい展開が期待されたが、やはり壁は越えられなかったようだ。 

ウファで両国首相が会談し、国家安全保障顧問会合を開くことに合意したが、意図的かもしれないが、問題になるカシミールという文字は共同声明の中に無かった。難しい問題は脇に置いて、両国間の友好振りを内外に示すことで、外資導入増加を図ろうとする両国首相の一致した思惑であったことが想像できる。

しかし、共同声明を持ち帰ったパキスタンでは、軍部が存在感をかけて、国家安全保障顧問会合の議題にカシミールを入れることに圧力をかけたようだ。 インドメディアの論調を見る限りは、半分諦めた感じで、印パの真の友好関係樹立はパキスタン軍部の改善が無い限り無理としている。印パ関係は当分、現状のままということであろう。

庶民レベルの交流は健在

国家安全保障顧問会合キャンセルのニュースが流れた頃、パキスタンと国境を接している、カシミールの隣州、パンジャブ州の州都チャンディガールで、パキスタンの衣料展が開かれていた。会場はインド人女性で賑わっており、インドでは60年代、70年代に無くなってしまったインド伝統の織物が展示され、飛ぶように売れていたと、報道していたインドメディアがあった。メディアは、「印パの繋がりは国家のトップ同士の思惑に関係なく、庶民レベルでは友好的で健在。」と報じていた。印パ関係の救いは庶民レベルにあるようだ。

(了)

期待外れ 目新しいもの無し
モディ首相 第69回独立記念日演説

8月15日、モディ首相は第69回独立記念日を迎え、デリー、レッドフォートでヒンディ語による1時間半に渡る演説を行った。首相就任以来、15カ月で2度目の独立記念日の演説であった。翌日のインド各紙の論調は、「期待外れ、目新しいもの無し。」と失望感を表している記事が多かった。

昨年の独立記念日演説の時は、会場は超満員で、モディ首相は矢継ぎ早に目新しい政策を発表し、演説の切れ目に“モディ、モディ”の連呼で盛り上がっていたが、今年は空席も目立ち、“モディ”の連呼は2、3回しかなかった。 演説が終わらない内に席を立つ者もあった。

演説の大半は、昨年同じ場所で発表した政策の経過報告であった。得意とするスローガンも、昨年の“Make in India”、“Digital India”から、今年は、“Start-up India”と”Stand up India”に代わっただけだ、と批判的に報道するメディアもあった。

カーストと民族主義台頭に警告

モディ首相は、演説をカーストと民族主義的傾向の台頭による危険性に警鐘を鳴らすことから始めた。インドの発展には、「弱者層が立ち上がることが不可欠であり、全国民が助け合い協調して行かねばならない。」ことを強調した。特にインド東部、北東部地域の開発は格差是正の面から重要であり、具体的には部族や下層カーストに起業の機会を与えるために、銀行には融資を、企業にはビジネスチャンスを与えることを要請した。

15カ月の政策経過報告

演説の大部分は昨年発表した政策の経過報告であった。@全国民に銀行口座を持たせる政策で1億7,280万口が新規開設された AMake in India政策で外資導入は48%増加 BSkill India 政策で技術開発省が新設された CDigital India政策で2万4,156村落がブロードバンドで結ばれた D全国清掃運動で4千360万家庭、2万2,419コミュニティセンターにトイレが設置された E退役軍人に対する年金改革 F税金逃れの隠匿資金に対する厳しい法律制定 G汚職撲滅などであった。

汚職で摘発された者はいない

特に汚職撲滅に関しては、モンスーン議会で、野党が中央政府、BJPが政権を握っている州の汚職問題の追及で紛糾し、実質的審議が行われず閉会となったが、モディ首相は「汚職はシロアリだ。常に薬を注入していかねばならない。しかし、この15カ月、政府関係者で汚職摘発されたものは一人もいない。」と胸を張って述べていた。

メディアは好意的に見ている

どのメディアも、モディ首相がいまだ国民的人気があり、どの政治指導者よりも卓越していることは認めている。しかし、危険な兆候として指摘している2点がある。一つは政策公約実行に対する信頼性。もう一つは統治力にふらつきが見えることを挙げている。ただ、明るい兆しはある。昨年来の石油製品の増税などによる4月〜6月期の間接税収入の大幅増。原油安による補助金の削減。31日に発表された4〜6月期のGDP成長率は前年同期対比で7%と高水準を維持した、ことなどが挙げられる。

下院では与党が議席の過半数を占めるものの、上院では2割しか押さえられない「ねじり国会」では、モディ首相がモディノミクスを思うように進められないことに、メディアは理解を示しているようで、今のところ正面切ってモディを批判していない。(了)

8‐10%成長達成可能
ジェイトレイ財務相

 商工会議所で講演 アルン・ジェイトレイ財務相は23日、インド商工会議所で講演し、「世界経済が低調な中でも、インドは8−10%の成長率達成は可能である。」と語った。 「私は達成出来ると信じている。正しい方向に向かって、正しい方策を取れば、これ以上世界経済が悪化しない限り達成は可能だ。我々は投資に対しオープンであるべきだ。」とも語った。

法人税を25%に

インドの場合、高い直接税は経済にとってプラスに働かないとして、「すでに予算案で発表してあるが、来年度より減税を始め、数年以内に法人税率を現行の30%から25%にまで下げる。この約束を守る。」と語った。

統一物品税法案の行方

モンスーン国会で野党の抵抗に会い、葬り去られた統一物品税(GST)法案に関し、財務相は「インドの政治システムの成熟度が問われている。先の国会の結果には失望したが、勉強させられたところはあった。失望したのは全会一致の賛成を取れなかったことだ。しかし分かったことは政府のみならず、多くの地域政党が法案を支持していることだ。一つの政党が自党の政治的利益を優先して法案通過の邪魔をした。時間はかかるが、国民はGSTの必要性を理解してくれるだろう。」と語った。

(了)