各国・地域情報

インド

作成年月日:2015年7月

海外情報プラス

インド情報 2015年6月

モディ政権の頭痛の種
3つの内政問題

外交に重点をおいて、順風満帆とみえたモディ政権の1年であったが、懸念されたように内政問題で政権の土台を揺るがすような出来事が浮上してきている。有識者は次の3件を指摘しており、モディ首相が対応を誤れば、有権者の支持は次の選挙では代わるのではないか、と論評する気の早い評論家も出てきている。

一つ目は、連日、新聞・テレビを賑わしているインド版ウォーターゲートの「Lalitgate」。インドで最も人気のあるスポーツ、クリケットのインディア・プレミア・リーグ((IPL)を支配している男、ラリット・モディ氏を巡る問題。 IPLは時価40億ドルの価値があるとも言われ、ラリットの影響力は政財界に及び、特にBJPのラジェ・ラジャスタン州首相との繋がりは自他ともに認めるところ。

ドル箱のIPLを巡る覇権争いは、日本人では追跡できないほどインド流の複雑怪奇な展開になっている。同氏は2010年、前UPA中央政権でパスポートを没収されたが、2014年、モディ首相のBJPが政権を取った後、返却されている。同氏は現在ロンドンに居住していて、インドに戻って来ていない。

野党、国民会議派は賄賂があったとして、ラジェ・ラジャスタン州首相とスシュマ・スワラジ外相の罷免を求めているが、国民会議派の中でも、ラリット氏から有形無形の恩恵を受けている者も多数居るようで、追及も今一つ精彩がない。国民会議派は、ラジェ州首相とスワラジ外相の更迭と引き換えに、現在、ねじれ国会で宙に浮いた形になっている物品税法案と土地法案を通す提案をしたと報じられるほど、事態は混沌として来ている。

その間、モディ首相はこの件に関して、“だんまり”を決め込んでいる。ラジェとスワラジはBJP、 モディ政権の女性看板政治家であるので、モディ首相も迂闊には動けないのであろう。

インドのクリケットは、日本の野球、サッカーを合わせた以上に庶民の間で最も人気のあるスポーツだ。庶民のクリケットに対する愛着は日本人の想像を超えたものがある。某有識者は、モディ首相、BJPが本件の扱いを間違えると、ラリット氏はIPLを巡る紛争・賄賂の受難者として、庶民感情に火をつける役割をすることも考えられると筆者に語っていた。

デリー州でAAP(庶民党)が政権を取ったのも“賄賂撲滅”が唯一とも言えるスローガンであったので、クリケットと賄賂が結びつくと、庶民、有権者の中にどのような反応が出て来るか、予断を許さない。

宗教間対立も問題

二つ目は、ヒンドゥ教徒とイスラム教徒の対立。5月25日、デリーから30キロしか離れていない首都圏のハリヤナ州ファリダバド、バラブガールで起きた衝突。2,000人のヒンドゥ教徒が以前から所有権を巡って争っていたモスクを襲い破壊し、400人のイスラム教徒が警察署に逃げ込んだ。事態はまだ収拾されていない。ハリヤナ州は最近、BJPが州政権を取った。

ヒンドゥ教では牛肉を食することはタブーとされており、最近、外国人が最も多いハリヤナ州グルガオンでは、レストランで牛肉を提供することが禁じられ、閉店を強制された韓国レストランも出てきている。

そして、今回の宗教対立。モディ首相は“メイク・イン・インディア”促進のため、外資企業の受け入れに躍起になっているが、ヒンドゥ過激派の動きがお膝元の首都圏で活発化してきており、それを抑えきれないモディ首相に対し、有識者のみならず進出外国企業の間でも憂慮が広がっているようだ。

NGOに対する締め付けが厳しくなった

三つ目として、上記の某有識者はNGOに対する締め付けが厳しくなってきたことを挙げている。前UPA政権はNGOに対する許認可などの監督権を各州政府に渡し、NGOが持っていた既得権を削ずる政策を取ったが、モディ政権もNGOの活動を制限する方向に向かっている。例えば、人権問題を扱うことはアンチ・ナショナル。汚職賄賂を追及することもアンチ・ナショナル。外国から援助を受けている慈善事業団体もアンチ・ナショナルとして締め付けが厳しくなってきたとのこと。NGOの中には問題とされる団体もあるが、インドが国際化する上で、NGOの果たす役割は非常に大きなものがある。愛国主義的な考えの台頭、反政府的言動を抑える動きを注視しなければならない。

モディ首相に対する国民の期待は消えてない

モディ首相が、これらの動きを自らが主導したものでないことは確かであろうが、グジャラート州首相時代、イスラム教徒をターゲットした暴動を放置したという疑いは今でも欧米のメディア間では払拭されていない。 紅茶売りから、BJPの支持母体であるヒンドゥ至上主義のRSS(民族義勇団)の組織を利用し、首相まで上り詰めた能力は非凡なものであることは誰もが認めるところ。卓越した外交手腕でインドを世界に認めさせた1年であったが、これからは世界にも誇れる官僚組織を駆使して、インドは外国企業の投資先として安全で、将来性があることを内外に理解させ実行させなければならない。 全ての分野で広大なインドでは、睡眠時間をいくら削っても一人で統治することは出来ない。官僚組織を利用した間接統治。そのノウハウは持っているはず。インド国民の熱い期待はまだ消えていない。

首都圏に第2空港
航空省承認 州の同意は未だ

首都圏のUP(ウッタル・プラデシュ)州西部に第2空港を建設する計画は10数年前から歴代の州政府から提案されてきたが、実現の運びになっていなかった。デリーのIGI(インディラ・ガンディー)国際空港にまだ余力があるので、第2空港の必要性は無いという意見が大勢を占めていた。

今回、航空省は第2空港をUP州のGautam Budh Nagar, Jewarに建設することを承認し、閣議の承認に廻されるとのこと。Jewarはデリーに近い大規模工業団地があるグレーター・ノイダと言った方が分かり易いだろう。

しかし、UP州政府はIGI国際空港から238.9キロ離れたアグラに近いFirozabad地区Hirangaonに建設することに固執しており、州政府の同意が取れるかは定かでない。

マヘシュ・シャルマ航空閣外相は記者会見で、Jewarにはすでに空港用地として2,200エーカーの土地がIGI国際空港の運営会社であるGMRグル―プによって確保されているので、Jewarを最優先としたい、と述べた。

Jewarはマヤワティ前州政権から提案され、UPA前中央政権で検討が進められていた。しかし、IGI国際空港から150キロ圏内に位置しているので、それがネックになっていた。

IGI国際空港には乗客、貨物の取り扱い余力がまだあることは、議論の余地が無いが、もう一つの空港が首都デリーを挟んでグレーター・ノイダに出来ることは、首都圏産業の適切配置という観点からも歓迎すべきだろう。

10年前まではノイダの方がグルガオンより進出外国企業数は多かった。

オンライン・リクルートメント
32%の伸び

エコノミック・タイムス紙によれば、インドのオンライン・リクルートメントは年間、32%のペースで拡大しているとのこと。

The Monster Employment Indexによると、6月は今年最大の伸び率を記録した。特に銀行、金融、保険分野の増加は大きく前年対比72%を記録した。

この分野は2014年11月以来2桁の伸びを毎月記録している。ちなみに2014年12月〜15年6月で36%増加している。

製造業は6月前年度対比67%の伸びを記録した。しかしながら、2015年5月の伸びは前年同月対比マイナス3%であった。 メディア・エンターティメント分野は前年度対比2%の伸びであったが、2014年10月以降マイナス成長が続いている。

物販・外食産業分野は横ばいだが、直近3か月はマイナス成長が続いている。 ITハード・ソフト分野では、コールセンターが61%、ソフト開発が28%成長となっている。

化成品・プラスチック・ゴム、ペンキ、肥料分野は前年対比マイナス29%。 物流関連のオンライン・リクルートメントも6%の伸びを示している。 地域的に見た場合、13大都市の伸び率は順調である。バンガロールは42%。ムンバイ36%、ハデラバード33%増となっている。チャンディガールが最も低く22%となっている。

中都市の伸び率も健全で、コーチが47%、バローダ37%、コインバートレ42%増となっている。

(了)