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作成年月日:2014年11月

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インド情報2014年10月

ハリヤナ、マハラシュトラ州選挙
2州にBJP新政権誕生

内外から関心が高かったハリヤナ州とマハラシュトラ州の州議会選挙はBJPの勝利で終わり、BJP新州政権が誕生した。両州とも従来は国民会議派が政権を担っていた。

特にスズキ、ホンダなど、日系企業やら外国企業が最も多く進出しているグルガオン、マネサール地区は首都デリーに隣接したハリヤナ州に位置しており、その選挙結果は日系企業のみならず外国企業間でも注目されていた。

中央でBJPのモディ政権が誕生し、モディ・ブームは国民会議派の地盤とされている両州にも起こると予想されていたが、モディ中央政権誕生100日の9月に行われた重要州のウッタルプラデシュ、ラジャスタン、グジャラート3州の州議会補欠選挙でBJPが敗北を期したので、モディ効果も終わりと評価する評論家も出ていた。しかし蓋を開けてみれば、モディ人気は健在で、ハリヤナ州では90選挙区の過半数を超える47を制した。マハラシュトラ州では288選挙区の122を勝利した。

BJPは2州を制したことで、モディ中央政権の基盤が盤石になったと見る評論家は多い。

ハリヤナ州首相にカタール氏

過半数を制したハリヤナ州では問題なく史上初のBJP政権が誕生し、マノハール・ラル・カタール氏(60)が州首相に就任した。

有権者の21%を占めるジャーツ・コミュニティから州首相が出るか、さもなければ、18年振りにジャーツ以外から出るか、地元メディアの関心はそちらに移っていたが、ジャーツでないパンジャビ・コミュニティに属する州会議員初当選の、しかも独身のカタール氏が選ばれた。このことは、モディ首相が外国企業に対し、ハリヤナ州をグジャラート州の成功に倣って、コミュニティに配慮した従来型政治から脱皮して、外国企業誘致のモデル州にするという強い決意を示したものとインド実業界でも歓迎されている。

一部では行政経験の浅いカタール氏の手腕に疑問を投げかける向きもあるが、議員としては初当選であるが、党務ではベテランで、2014年の下院選挙ではBJPのハリヤナ州選挙対策委員長として活躍した。父親は労働者の貧しい家庭に生まれ、支持母体のRSS党員として頭角を現し、ハリヤナ州首相に上り詰めたカタール氏の経歴は、モディ首相と類似している。質素、クリーン、生真面目イメージを持つカタール氏にかけるモディ首相の期待は大きいようだ。

マハラシュトラ州首相はファドナビス氏

一方、インド第二の都市ムンバイを州都に持つマハラシュトラ州ではBJPが第一党になったが、過半数に届かないため連立を組まなければならなかった。

右派のシブ党と連立を組むとメディアは見ていたが、連立構想は選挙前から難航していた。予想を裏切って、前会議派連立政権に参加していたNCP党が選挙後直ちに「無条件閣外協力」を発表し、BJP政権が誕生し、ブラーミン出自の若手政治家、デベンドラ・ファドナビス氏(44)が州首相に就任した。

RSS党員として順調に当選3回を重ね、州政府閣僚の経験は無いファドナビス氏であるが、27才でナグプール市長を経験しており、良家出身のクリーンイメージが定着している若手政治家の代表的存在であった。モディ首相も、若手登用で世代交代のイメージを強く出し、複雑な同州政界でモディ改革を推し進める覚悟のようだ。

今後のインド政界の焦点はデリー州

国民の関心は目下首都デリー州の選挙に移っている。汚職追放のスローガンで州選挙を勝利し組閣したAAP党が2月に49日間で政権を投げ出してから早や8か月が経った。その間、州知事が大統領の命を受け行政を行って来たが、政治的には空白状態であった。 第一党のBJPも州知事からの組閣要請を断ることを決定し、BJP、AAP、国民会議派の主要3党は州知事に対し議会を解散し、選挙を行うことを要請した。このような例はインドの政治上でも珍しいことであり、前例は2005年のビハール州に見るのみである。

BJPとしては新たに選挙を行うことで、ハリヤナ、マハラシュトラ両州勝利の余勢を駆って、デリー州でも過半数を制し、安定政権を樹立する戦略のようだ。多くのメディアは、選挙に大きな影響力を持つ中間層の支持はモディ首相への期待感もありAAPからBJPに移ることが確実として、選挙、BJP州政権誕生を予測している。(了)

37%のGDPはBJP政権の州から
5州に外国投資が集中するか

現在、BJPが州政権を握っている州、マハラシュトラ、ハリヤナ、グジャラート、ラジャスタン、マディア・プラデッシュの5州はインドの西部に位置し、日本政府も力を入れているデリー・ムンバイ貨物新幹線(DMIC)が通過する州である。

外国企業にとって、新たに工場を設けることを検討する場合の関心事は、土地、労働力、電力、税法、許認可であるが、いずれも州政府の管轄下にある。

現実の問題として、工場設立、運営となれば、州の労働監督官、消費税徴収官、警察官などとの関係が重要になってくる。中央政府が約束したことでも、州レベルではまた別のルールに従わなければならないことが多い。特に州政権が中央政権と違った政党である場合は難しさが増してくる。

モディ政権は次の改革で、上記5点を最重要事項として取り上げ、実行に移すことは間違いないと見る評論家は多い。進出外国企業にとって、中央政府と同じ政党が政権を握っている州に進出することは、中央で約束されたことは州でも守られるメリットがあると考えるのは当然のことになるだろう。州政府との再交渉の煩わしさは半減する。  

更にデリー州にもBJP政権が樹立されれば、物流一つを取ってもデリーからムンバイまで、州境間の煩わしい手続き、課税も無くスムースに物が動くことは明確であり、外国企業進出はこれら州に集中することは容易に予想できる。

そうなるとBJP政権でない東海岸のタミル・ナドウ、アンドラ・プラデシュ、西ベンガル、オリッサ、また東部のウッタル・プラデシュ、ジャルカンド、ビハールなどの大きな人口を抱えている州との経済格差が大きくなってくることが予測される。  

現時点でインドGDPの37%は西部5州が産出している。これが40%、50%と増えてくることが予想される。マハラシュトラ州の場合、現在、税収入は、 1億3千万ルピー(消費税8千万ルピー)があり、断トツに他州を引き離している。BJP政権の誕生により、外国企業の同州への進出が増えれば経済が活発化し更に税収入が増えることになる。

外国投資家がインド投資のネックとして挙げているのは、インフラ整備、政府・規制当局への不信感、教育制度の遅れ、労働問題などであるが、税収が増えればインフラ整備や教育投資も進む。中央と州政権が同じ政党であれば政府・規制当局への不信感も払拭されるだろう。労働力に関しては、モディ首相は人口の多い東海岸、東部州から労働力を西部5州に移す政策を取ることで、東海岸・東部州には雇用の創出、西部州には労働力の確保という一石二鳥の効果を狙うものと見られる。日本の高度成長期に起きた東北地方から都市圏に移動した労働力の例が想起できる。同時に選挙地盤の弱い東海岸・東部州に雇用創出をもたらすことで、BJP州政権を樹立するメリットに繋がる戦略と見ることが出来る。

これらの動きは、外国投資家に取っても歓迎すべきことかもしれない。(了)