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作成年月日:2014年5月

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インド情報2014年4月

インド総選挙、政権交代の可能性大

有権者8億1,450万人の世界最大の民主主義国家インドの総選挙(下院選挙)が4月7日の投票を皮切りに、543選挙区で9回に分け行われており、選挙戦は白熱化している。4月末時点で、438選挙区の投票が終了し、残すは後2回、105選挙区となった。

最終投票日は5月12日。開票は5月16日に行われ、結果は即日に判明し、543人の新下院議員が選出される。 4月のインドは全ての分野で選挙戦一色であり、有権者の選挙に対する意識は高く、今まで行われた438選挙区の投票率は66.20%で、2009年の57.61%から大きく上がっている。全国民が固唾を飲んで16日の開票日を待っている状態と言っても良い。 

最近行われた各メディア、調査会社の世論調査を見ると、どこも例外なく、現野党のインド人民党(BJP)の優勢を伝えているが、BJP単独で過半数を制するとするところは無く、BJP主導の国民民主同盟(NDA)連立が次期政権を担うとしている。NDAが過半数を握るには地域政党や少数派との協力、妥協が不可欠である。特に地域政党は地元選挙民の利益を優先させねばならず、経済改革、規制緩和を選挙公約に掲げているBJPもその辺を考慮に入れ、小売業への外資参入は認めないとしている。産業界は小売業への外資参入を経済活性化や物価引下げの観点から強く要望している。

国民は10年続いた国民会議派政権に飽きが来ているようだ。国民のガンディー王朝に対する崇拝に似た感情は残っているようだが、汚職、物価上昇、失業、貧富格差の拡大など、有権者の不満が限度に来ており、政権交代に期待感を持っていることは投票率の上昇を見れば分る。

予想通り、NDA連立政権が誕生した場合、首相にはナレンドラ・モディ現グジャラート州首相が就任する。モディ氏は州の経済改革に成功した実績を持っており、内外からの期待感は大きい。しかし、連立を組む相手の地域・少数派政党との話し合いは、ポスト、利権を巡り簡単ではなく、またBJP内部での反モディ勢力の存在も強く、モディ氏の指導力いかんでは短期政権で終わる可能性も否定できない。

インド進出成功のカギは?
「会社コミュニティ」を作れば

三共第一製薬が5,000億円を投じて、後発薬大手のランバクシー・ラバラトリーズを買収したのは2008年のことであったが、4月、進出5年余で最大手のサン・ファーマに実質的に売却し、インドから撤退してしまった。続いて2009年にインド最大の財閥タタ・グループの傘下企業に2,600億円出資し、インド進出を図ったNTTドコモも4月に撤退を発表した。

日立、東芝、ヤンマー、ホンダ、パナソニックなど日本を代表する大手企業がインド事業の拡大を発表する中での撤退であったので、インド進出に対する対応に明暗が分かれたようだ。日本経済新聞は、「インド定着、ハードル高く」という見出しで、人口12億の巨大市場進出成功のハードルとして、インド独自の「政策」、「品質」、「時間」を挙げている。

確かに3つのハードルは、実際にインドビジネスに関係した日本人ビジネスマンが体験することだが、筆者は、これらに加えて、「帰属意識」の違いを挙げたい。日本の場合、多くの企業人にとって「帰属先」は当然のごとく「会社」であるが、インド人の場合、「帰属先」は自分が属している民族、宗教、職業集団である「カースト」、言葉を換えれば「コミュニティ」であると言っても良い。

日系企業で働くインド人労働者は例外なく、どれかの「コミュニティ」に属している。日本の場合、経営者も社員も自分が属している「会社」に対し、忠誠心を持ち、その一員であることに誇りを持っているが、インド人の場合、同じような忠誠心と誇りは「コミュニティ」に対し持っている。

インド人にとって、「コミュニティ」は数千年にわたる外国勢力の植民地支配下で、自分の身を守る唯一の拠り所であったので、その重要性は骨身に染みついており、簡単に抜け出せるものではないようだ。 

インドにおける企業・会社の歴史は浅く、現在でも日本的な感覚で考える組織的な会社は国営企業を除くと非常に少ない。上場企業といえどもに、オーナーの一言で即刻解雇されるような同族企業が多く、インド人労働者に「会社」に対し、「コミュニティ」並みの忠誠心を求めても無理があるというものだ。

日系企業が最新の設備、技術、経営を持ち込んで、インド人労働者の「会社」に対する忠誠心を当てにして、日本並みの成果を期待しても思うような結果が得られないのも当然かもしれない。

インド人は勤勉で、優秀で、家族の絆、そして自分たちを守ってくれるコミュニティに対する忠誠心は強い。日系企業の最新の設備、技術、経営にインド人の忠誠心が加われば、素晴らしい製品、成果が期待できる。もし進出企業が、インド人労働者が「自分を守ってくれる」と思える、例えば、「終身雇用」などを取り入れた「会社コミュニティ」を作り上げ、定着させればインド事業は成功するのではないか。それには「時間」がかかる。スズキのように30年我慢する覚悟が必要だろう。

 

自動車販売は2年連続減少
二輪車販売は好調

インド自動車工業会の発表によると、2013-14年度の四輪自動車の国内販売は前年度対比4.65%減の178万6,899台であった。2012-13年度は187万4,055台で前年度対比6.69%減であったので、2年連続して減少を記録した。

2014年4月も減少傾向が続き、物品税軽減などの政府のテコ入れがあったが、 最大メーカーのマルティ・スズキの販売台数は前年同月比、12.6%減の79,119台。現地メーカー大手のマヒンドラ・マヒンドラは15%減の34,107台、トヨタは16,04%減の7,562台、GMは35.30%減の5,302台であった。一方、新車を発売したメーカーは好調で、現代は8.7%増の35,248台、ホンダはセダンシティが貢献し30%増の11,040台。フォードは66.15%増の6,651台であった。

四輪車販売は減少傾向であるが、二輪車は好調であった。2013-14年度の合計販売台数は前年度対比7.31%増の1,480万5,701台。前年度は1,379万7,185台。内訳はオートバイが1,047万9,817台。前年度の1千8万5,000台から3.19%増。スクーターが前年度の292万3,424台から23.24%増の360万2,744台となっている。2014年4月販売はホンダが20.92%増の31万3,942台。ヤマハが42.39%増の5万1,158台を記録している。

四輪車販売は過去10年、上昇を続けていたが、ここ2年連続減少したことは最近のインド経済減速が長期化していることを示しているものと指摘されている。

しかし、四輪車販売も新車を出したメーカーは好調であり、また二輪車販売が増加を続けていることは、一般庶民の購買力はいまだ底固く、総選挙が終わり、5月に政権交代でもあれば、インド経済は回復し、四輪車販売も回復するとする見方も有力だ。全ては総選挙の結果待ちとも言えそうだ。

 

(了)