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インド

作成年月日:2014年4月

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インド情報2014年3月

スズキに続きトヨタでも
労使紛争、解決策は?

賃上げ交渉を巡り、労使が対立していたトヨタのインド子会社、トヨタ・キルロスカル・モーターは、会社側の2工場ロックアウトという事態までに一時、悪化したが、組合側との話し合いに目途が付き、一週間でロックアウトを解除し、通常稼働に戻った。

インド進出日系企業にとっては、一年半前の2012年7月の死者まで出した、スズキのインド子会社、マルチ・スズキのマネサール工場の労働争議の印象がいまだ強く残っているので、トヨタの労使紛争の行方を最大の関心を持って見守っていた。

スズキとトヨタではインド進出の経緯が違っている。マルチ・スズキは中央政府とスズキの合弁で公営企業としてスタートし、その後の民営化で、スズキの子会社になった。一方、トヨタはインドの民間同族企業と組んで、最初から民間企業としてスタートしている。

マルチ・スズキの場合、民営化でスズキの子会社になったが、公営企業時代の政府庇護下の“ぬるま湯”的労使関係に、労働者は慣れ切っていた。

マネサール工場は、スズキが日本の最新の施設、設備、工場経営ノウハウを持ち込んだ最新鋭工場であったが、労働者が品質・コスト・納期など厳しい日本レベルの管理について行けず、経営陣の意気込みと労働者の実情とのギャップが大きくなり、それが労働者の暴発になって表れたと見ることができる。

電気も無く、ランプで暮らしているような貧しい僻地の村から、生きんがために、その日の食べ物を求めて、都会に出てきた労働者の労働意識と、恵まれた環境で育ったスズキ幹部の企業意識の差が不幸な事態を招いたともいえる。

一方、トヨタの場合はスズキとは少し様子が違うようだ。4月投票の総選挙が公布され、選挙運動が始まった時であり、また右派政党BJPの飛躍的な優勢が各メディアの世論調査で示され、中央政権の交代が確実と報道されている時の労働争議発生であったので、左翼政党が勢力挽回を図る選挙戦の一手段として仕掛けたと見られる向きもある。トヨタにとっては、とばっちりを受けたとも言えそうだ。左翼政党にとって、日系企業とのつながりは薄い。30数年、西ベンガル州の州政権を担って存在感を示していたが、その間、同州に進出した日系企業は無きに等しかった。その州政権も先の選挙で敗れ、失ってしまい、今度の総選挙でも退潮が予想されており、存在感を示す必要があった。

来る総選挙で勝利し、次期中央政権の首相就任が予想されているインド人民党(BJP)のモディ・グジャラート州首相は、日本接近を強力に図ることで経済活性化を推し進める政策を打ち出している。左翼は、これに対抗する意図で代表的な日系企業トヨタをターゲットにしたと見るのは窺いすぎだろうか。

トヨタの労働争議はマスコミの注目を集めている。当地の最有力経済紙のエコノミックス・タイムス紙は、トヨタの記事に関連して、スズキの新しい労使関係を紹介する記事を載せている。インド人がモデルケースとして日系企業に期待している労使関係を窺い知ることが出来そうなので引用する。

「マルチ・スズキの古い労使関係は、自社の正社員と下請け会社から派遣された契約労働者の2本立てから成り立っていた。暴動後の新しい労使関係は、自社の正社員と自社雇用の臨時工の二本立てにすることなった。出来るだけ下請け経由の労働者を失くし、正社員を70%、自社雇用臨時工を30%にすることを目指している。臨時工は6か月働いて、5か月休み、そして6か月働くというパターン。新しいパターンの下での臨時工は2,000人で、すでに2度目の6か月労働に入っている。復職率は70%。臨時工はマルチ・スズキの直雇用であるので、労働者の労働意欲も高いようだ。外部調査会社の査定によれば、90%の臨時工の勤務評定はAA+とのこと。会社幹部の話によれば、臨時工の福利厚生にも力を入れており、特に工場近隣の村に社宅を手配し、故郷と同様な生活環境を与えるよう努力しており、住宅ローンの金利負担も進めている。」

日系企業のインド進出は増大の一途を辿っている。しかし、通常の日本人とインド人労働者との生活格差、ビジネスや企業に対する意識格差は数十倍も違うことを忘れてはならない。スムースな進出を図り、良好な労使関係を築くには、スズキの新しい対労働者対策は大いに参考になるのではないか。

最大民主主義国の総選挙始まる
開票日は5月16日

有権者8億1千4百万人の世界最大の民主主義国家インドの総選挙(下院選挙)が4月7日の投票を皮切りに、543選挙区で9回に分け行われる。最終投票日は5月12日。デリー・ハリヤナ州の投票日は4月10日。投票所は全土で93万か所、電子投票機器、140万台が使用される。開票は5月16日に行われ、結果は即日に判明し、543人の新下院議員が選出される。新議会は5月31日までに召集され、次期首相が決まる。

各メディアが世論調査を行い、結果を発表しているが、例外無く、最大野党のインド人民党(BJP)の圧勝、現与党の国民会議派の惨敗を予想している。 しかし、BJPも過半数を制することは出来ないとの予想が多く、次期政権が連立になることを見越して、選挙後の勢力拡張を視野に入れて、各党間の駆け引きは激烈を極めている。左翼や地域政党が集まり、第3勢力を結成する動きもあり、これに昨年末のデリー州選挙で勝利したが、汚職撲滅法案が議会で否決されたことで辞任した庶民党(AAP)の動きも加わり、予想通りに次期政権はBJP主導のNDA連立政権になると決めるのは現時点では早計かもしれない。今回の選挙は有権者が前回(2009年)より1億人増えるため、この初回投票の若い有権者の投票動向が勝敗の行方に影響を与えると見る向きは多い。

某インド人評論家が筆者に対し語ったことを参考までに紹介する。

「最近、ピュー・リサーチ・センターが発表した全国幸福度調査によると、70%のインド人はどの政党が政権を担おうとも、インドが向かう方向に希望を見いだせない。89%はインフレが最大の問題としている。85%は失業問題、82%が貧富の格差、73%は経済システムは金持ちを富ますだけとし、83%は汚職の蔓延に失望している。BJP、国民会議派、どちらが政権を担っても事態は変わらないと思っている。特にこれらの不満を強く持っているのは、今回初めて投票する若者たちだ。彼らは親の時代より高い教育を受けており、海外からの情報を容易に入手出来るようになっているので、いくら既存政党がバラ色の公約を連呼しても、彼らに現実脱皮の期待感を持たせるのは難しい。2013-14のGDPは4.9%に落ち込んだ。もし、次期政権が安定政権でなく、また今年のモンスーンが不調であった場合、食糧品の値上がりは必至であり、庶民生活は最悪になるだろう。若者たちの失望感がどういう形で出てくるか心配だ。」

インドの政権は、主義主張よりも利権とポストを巡る合従連衡で決められることは良く知られている事実だ。果たして、今度の総選挙で若者たちに夢を与えられる政権が誕生するだろうか。

 

インドの観光産業
2014年、7.3%成長予想

インド観光省の発表によれば、インドの観光・旅行業界の成長率は2014年、前年度対比7.3%の成長を予想している。訪問外国人観光客数は736万人を予想。しかし、外国人観光客の支出額は減少する傾向にあるとしている。

国内旅行は堅調で、2014年の成長率は8.2%を予測している。前年度は5.1%であった。2013年、外国人観光客の支出は総額180億米ドルであったが、2014年は2.9%の成長に止まるとしている。10年後の2024年には1,343万人の外国人観光客誘致を目標としている。

2013年、インド観光産業のGDPの寄与率は2%、総額355億2千万米ドルであった。2024年には712億米ドル達成が目標。

 

(了)