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作成年月日:2014年1月

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シン首相退任表明、総選挙後
後継はガンディー王朝御曹司

マンモハン・シン首相は首相就任10年になるが、珍しく3度目の記者会見を開き、今年5月に予定されている総(下院)選挙で与党が勝利した暁には首相職をラフル・ガンディー国民会議派副総裁に引き渡すと述べた。ラフル・ガンディー氏はネルー、インディラ・ガンディー、ラジブ・ガンディーと3代に渡って首相を出したネルー・ガンディー王朝の御曹司。暗殺された故ラジブ・ガンディーと現会議派総裁のソニアガンディーの長男。43才、未だ独身。

会議派に対抗する最大野党、インド人民党(BJP)の首相候補はナレンドラ・モディ現グジャラート州首相。 モディ氏は自州での道路・港湾整備、電力供給拡大など成功した改革路線を評価されて、国民と産業界の人気を集めている。12月に行われたばかりの5州の州議会選挙で、政党人気バロメターと見られている首都デリー州でBJPは会議派を大きく引き離し第1党となった。(ただし、州政権は過半数を制した政党が無かったため、市民運動から派生して誕生したばかりの第2党の庶民党(AAP)が組閣した)。このことは10年続いた国政、州政レベルでの会議派支配の政治に対し、物価上昇、閣僚の汚職問題の噴出もあり、国民の間に不満が高まっている表れと言えるようだ。

今春5月に予定されている総選挙では、会議派の敗退、BJPの躍進を予想する向きが多い。最近行われたマスコミの世論調査では、首相適任者としてモディ氏が一番人気で、モディ首相のBJP政権が実現する可能性も濃厚となってきている。 モディ氏の唯一の弱点であった2002年のイスラム教徒に対する暴動扇動容疑に対する無罪判決も12月に出て、後顧の憂いが無くなったようだ。

会議派は81才のシン首相から43才のラフル・ガンディー氏に首相候補をシフトすることで、世代交代をアッピールし、巻き返しを狙っている。ラフル・ガンディー氏の政治手腕や経済政策実行力に疑問視する向きが多いが、中道政党である会議派にはインド全土に根強い支持層があり、若いラフル氏の下で挙党態勢一致の体制が取れれば支持回復も期待出来なくはない。

記者会見で、日頃穏健な人格者と知られ、個人攻撃をしたことのないシン首相が珍しくモディ氏に対し、「グジュラート州首相が首相になったら国家に悲惨な結果をもたらすだろう。無辜の人の大量虐殺に関係したことは力の誇示ではない」と批判した。

デリー州で10年振り政権交代
庶民党、ケジリワル氏が州首相

12月に行われたデリー州議会選挙で、インド人民党(BJP)の32議席に次いで、28議席を獲得し第2党となった庶民党(AAP)はアービンド・ケジリワル氏を首相とするデリー州政府を組閣した。選挙の結果70議席の過半数を制する政党がなく、第1党のBJPは多数派工作が上手くゆかず、AAPは第3党の会議派(8議席)の支持を得て組閣に成功した。デリーは10年間、シーラ・ デキシット州首相の下、会議派政権が統治を行っていた。 就任したばかりのケジリワル州首相は、早々と公約の貧困層に対する水道水無料の政策を発表した。一日当たり667リットル、一月20キロリットルの水道水を無料とするもの。従来は月、791ルピーかかったもの。デリー州では334万世帯が水道料を支払っているが、2014年1月1日から、約半分に相当する170万世帯が恩恵に浴することになる。

AAP(庶民党)とは?
市民運動から派生誕生した政党

デリー州政権を組閣したアーム・アドミー党(AAP, 庶民党)は2011年退役軍人の社会運動家アンナ・ハザレ氏汚職防止対策法の制定を求めるハンストという形で開始されたものだ。ハザレ氏の行動に対する国民の支持は日を追うごとに大きくなり、マスコミもハザレ氏をマハトマ・ガンディーの再来として連日ハンストを大々的に取り上げたため、政府もハザレ氏の要求を受け入れる形で、汚職防止対策法案の起草委員会の設置を決定したほどの影響力を持った。

AAP(庶民党)は、アンナ・ハザレ氏とともに反汚職運動を行っていたアービンド・ケジリワル氏を中心とするグループが、ハザレ氏と袂を分かつ形で2012年11月に結成した政党である。 AAPは今回の州選挙で70議席のうち、26議席を確保して第2党に躍り出たが、このような出自を考慮すると、デリー州議会選挙で庶民党が躍進を果たしたのは、会議派とBJPという既存の政党に対する人々の不満の現れであると言えるかもしれない。投票直後に行われた世論調査によれば、AAP党に投票したと答えた有権者の多くが、投票の理由として「変化を望んでいるから」というものを挙げた。庶民党に投票した有権者の中に、既存の政治システムにおける何らかの変化を望んだ者が多かったようだ。

AAPはデリー州の選挙結果に気を良くして、今春5月の総選挙に向け他州にも候補者を擁立して勢力を広げようとしている。社会運動から派生して出来た政党にどれだけの力があるか疑問視する向きも多いが、会議派、BJPという2大既成政党に飽き足らない有権者は多いので、総選挙ではキャスティング・ボートを持つ存在にまで成長するかもしれない。

(了)