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作成年月日:2013年5月

海外情報プラス

印中関係の改善図れるか
李首相 訪印

インド政府にとって最大の頭痛の種は外交面では対パキスタン・中国問題、内政面では対ナクサライト(共産系ゲリラ)問題であるが、外交面で大きな動きがあった。

5月20日、シン首相は中国の李克強首相をニューデリーに迎えた。李首相は首相就任初の外遊先にインドを選び、インドへの友好の姿勢を示したが、数週間前に、両国間で長年、国境問題で紛争を続けているカシミール地方で、中国軍による越境・侵入事件が起きたばかりで、インドメディアや世論は中国に対する警戒感を強めていた矢先の李首相の訪印であった。

インドは非同盟・全方位外交を独立以来、基本政策としてきたが、かつて戦火を交え、領土を不法に占拠している中国に対する不信感は根強く、この時期の李首相の訪印は中国側の緻密に計算された外交的・軍事的な行動の一環であるとして、シン政府の対応に対してメディアでは批判の論調が多く見られる。

インディアン・エクスプレス紙では著名な外交評論家の寄稿を載せ、「インド政府は、中国は現在東アジアでの対応に手一杯であり、西側のインドとの国境問題は小康状態を保っているので、中国側からの新たな挑発はないと気を緩めているようだ。これは領土拡張を是とする中国新政権の決意を過小評価するものだ」とシン政権の対中国対応に対する生温さを批判している。

李首相はメディアとの会見で、「国境問題は両国で知恵を出し合って相互が受け入れられる解決案を探さなければならない。両国は面倒な問題から逃げてはならない」と述べ、経済人との会合では「中国政府は中国企業のインド投資増加を支援する。現在インドの赤字が300億ドルになっている両国間貿易の不均衡を解消するため、インド製品の中国市場への参入を支援する」と語った。

日系企業の印進出本格化 
安倍首相、シン首相とプライベート夕食

29日、東京で行われた日印首脳会談では、原子力協定交渉再開、地下鉄整備などインドの大規模な社会インフラ整備に向け、両国が経済連携を強化していくことを確認した。また軍事的拡張を進める中国関係に対し安全保障面での協力強化でも一致した。しかし、インドを入れて中国包囲網を築きたい日本と伝統的に非同盟・全方位外交を基本とするインドとの間には温度差があるようだ。

共同声明には、海上自衛隊の救難飛行艇の輸出、インド洋のシーレーン安全確保の協力関係強化などが盛り込まれたが、これらはインド洋に勢力増強を図っている中国を念頭に置いたものであることは明らかだ。
日印共同声明のビジネス関連要旨は次の通り。
・ムンバイ地下鉄建設に円借款。
・インド工科大学ハイデラバード校整備に円借款。
・ムンバイ〜アーメダバード間新幹線共同調査に共同出資。
・デリー・ムンバイ間産業大動脈構想の進展歓迎。
・日印原子力協定の早期妥結に向けた交渉加速など。

インドの主要紙はシン首相の訪日を1面トップ記事などで報じ、日印関係の強化を歓迎する論調であった。インドはカシミール地方で中国軍の越境・侵入事件があったばかりで、中国の軍事的脅威に対抗するため、日印の連影強化を訴える論調が目立った。

今回の首脳会談で安倍首相の異例の対応があった。首脳会談前日の28日夜、安倍首相はシン首相夫妻を公邸に招き、昭恵夫人と共に少人数で非公式の夕食会を開いた。29日夜の公式夕食会と合わせて2晩連続して同じ外国人要人を会食でもてなすことは異例であり、安倍首相のインドへの期待感の表れといえよう。安倍首相の異例といえるプライベートな対応は、おそらくシン首相に深い感銘を与えたに違いない。特に外国での大規模プロジェクトの推進には両国トップの信頼関係構築が絶対的に必要であるので、「アベノミックス」のインド版は安倍首相のプライベート夕食という決断で、順調なスタートを切ったようにみえる。

次はインド政界最大の実力者、ソニア・ガンディーを日本に招待することだろう。(了)

 

以 上