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作成年月日:2012年7月

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政策金利と預金準備率、据え置き

印準備銀
 インド準備銀行(中央銀行、RBI)は6月18日に開催した定例の金融政策決定会合で、最重要の政策金利である流動性調節制度(LAF)のレポ金利を現行の8.00%で据え置いた。  
 これに伴い、レポ金利に1.00%ポイントを上乗せした水準に設定される限界スタンディング・ファシリティの金利とバンク・レートは9.00%、レポ金利を1.00%下回る位置へ自動的にスライドするリバース・レポ金利は7.00%と、それぞれ現状維持。
 預金準備率(CRR)も現在の4.75%から変更されなかった。同行は2012年に入り、CRRを1月28日から0.50%ポイント(6.00%→5.50%)、3月10日から0.75%ポイント(5.50%→4.75%)、それぞれ引き下げた後、4月17日には約3年ぶりの利下げを断行。レポ金利を一挙に0.50%ポイント引き下げたが(8.50%→8.00%)、今回は金融緩和政策の強化を求める各方面の大合唱に呼応せず、様子見の姿勢を取った。

インフレ率の高止まりを問題視
  国内外の景況悪化を示す指標が相次いで明らかとなり、事前の予想ではRBIは少なくとも0.25%ポイントの利下げに踏み切るとの見方が支配的な中、同行が金利の引き下げを見送ったのは、インフレ率が依然として経済成長の維持に悪影響を及ぼす高レベルで推移し、軟化する気配がうかがえない上、さらに物価を押し上げかねない諸要因が存在すると見ているため。まず、14日に発表された2012年5月の総合卸売物価指数(WPI)は前年同月比で7.55%上昇しており、1カ月前(12年4月)の同7.23%からさらにアップした。
 加えて、5月31日に公表された12年4月の工業労働者向け消費者物価指数(CPI-IW)が前年同月比10.22%高に、また6月18日にリリースされた同年5月の全国総合CPIは10.36%高となるなど、CPIで測ったインフレ率はWPIよりも一段と高く、総じて二ケタ台に達している。

期待インフレの強さも警戒
  RBIが需要サイドの物価上昇圧力を示すものとして重視しているWPIに基づくコア・インフレ率(価格変動の激しい食料とエネルギー類を除いたインフレ率)は12年4月で前年同月比4.90%程度と5.00%を下回る範囲に収まっている点は良い兆候と評価しながらも、同じコア・インフレ率をCPIで算出すると、10.00%を突破するほか、食品類とエネルギーも含めた総合インフレ率が高止まりしているのは、深刻な供給不足とインフレ期待の強さを示すものとRBIは判断したようだ。
 実際、同行が12年1〜3月に実施した調査によれば、家計が想定する3カ月後の期待インフレ率は前年比11.70%と引き続き高い。高率のインフレ期待は賃上げ圧力を強化するとともに、企業が人件費を含む投入コストの増加を産出価格へ転嫁しやすい環境を醸成するところから、賃金の引き上げと商品・サービスの値上がりが相互に繰り返し発生する物価上昇のスパイラルを招きかねないとRBIは考えているようだ。

ルピー安も物価に悪影響
 さらに、国際的な原油相場が12-13年度初めから足下までの期間で20.87%下落しているにもかかわらず、同じ期間にルピーは米ドルに対して9.30%安くなっており、石油の値下がりに伴う物価の押し下げ効果を半分近く帳消しにしてしまったとRBIは認識したようだ。
 また、政府は低所得層を保護する目的で、ディーゼル油)や家庭用LPG、灯油の国内小売価格を安値で統制しており、国営石油元売り会社は売価が原価を割り込み、多額の損失を計上している。当該損失の解消には小売価格の大幅な上方改定が必要なことも、物価の潜在的な高騰要因としてRBIは警戒している。

成長の鈍化、高金利に起因せず
  一方、RBIが10年3月から11年10月まで政策金利を断続的に合計で3.75%ポイント引き上げた点が企業の投資活動を抑制し、引いては経済成長の鈍化を招いたと政府や産業界が見なし、利下げを強く求めていたことに関しては、RBIは景気の減速にはさまざまなファクターが作用しているとの見方を示し、金利が経済情勢の悪化に果たしている役割は小さいと反論した。同行の推計によると、物価変動の影響等を除去したSCBの実質実効貸出金利は現在、高成長が持続していた03〜08年に比べて低い。この結果は金利以外の理由が成長のスローダウンに大きく寄与している状況の裏付けとRBIは認定したようだ。上述した物価の現状や先行きの見通しと併せ考え、現時点での利下げは成長をテコ入れするよりも、インフレ圧力を高進させるマイナス面の方が大きいと同行は総合的に判断したようだ。

内外情勢次第で一層の金融緩和も
  RBIは今後も流動性の管理を優先課題と捉え、資金需給がタイト化した際には、必要に応じてOMOを実行する方針。また、金利の調整面では、内外の経済・金融動向を常にモニターし、インフレの上ぶれリスクが軽減するかどうかを見守りつつ、次の行動を決定していく意向のようだ。
17日に投開票が行われたギリシャ国会のやり直し選挙では、厳しい緊縮財政措置の導入と引き換えに国際的な金融支援を取り付けていた旧政権与党の新民主主義党(ND)が獲得議席数で首位に立ち、緊縮賛成派が新たな連立政権を樹立する可能性が濃くなった。
 従って、同国がユーロ圏を離脱する恐れはひとまず後退。しかし、スペインの信用不安が強まっており、イタリアにも飛び火する気配があって、ユーロ圏の公的債務問題は当面、予断を許さない状況が継続する見込み。万一、同問題が世界的な経済・金融危機に発展した場合、インドも多大の影響を免れえない。そのような緊急事態が発生した際、RBIは他国の中央銀行と協調する形で、金融政策を一段と緩和する方向へかじを切る見通しだ。(了)