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作成年月日:2012年6月

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海外情報5月分  インド

1.日本・インド社会保障協定
二重払い負担軽減で実質合意

 5月28日から東京で開催されていた第4回政府間交渉を経て、日本政府とインド政府は、日本・インド社会保障協定(仮称)について実質合意した。
 日印両国からそれぞれ相手国に派遣される被用者は、両国の社会保障制度への加入が義務付けられることによる社会保険料の二重払いなどの問題が生じており、個人および企業に経済的負担となっている。日本・インド社会保障協定(仮称)の締結は、これらの問題を解決し、個人および企業の負担を軽減し、両国間の人的交流および経済交流を促進することを目的としている。今後両国は、協定案文の確定など必要な作業および調整を行い、協定の早期署名を目指す。

2.11-12年度の成長率、6.5%に急低下
9年ぶりの低い伸び

 印政府の統計・計画実行省(MOSPI)は5月31日、2011-12年度(11年4月〜12年3月)の実質国内総生産(GDP、要素費用ベース、04-05年度=04年4月〜05年3月価格、改定推計値:RE)が52兆251億4千万ルピーとなり、前年比で6.5%増加したと発表した。成長率は10-11年度(10年4月〜11年3月、速報値:QE)の同8.4%から1.9%ポイント低下。2月に公表された事前推計値(AE)の同6.9%も0.4%ポイント下回り、水準としては現基準で統計を取り始めて以来の最低を記録したのみならず、旧基準(1999-2000年度=99年4月〜00年3月価格)の時代にのさかのぼっても、02-03年度の同3.8%以来、9年ぶりの低さだった。

「鉱業・採石業」と「製造業」の生産が低迷、「投資」と「消費」需要が減退

 産業別に伸び率を見ると、「鉱業・採石業」が1年前の前年比5.0%から同(-)0.9%へ転落。「製造業」は同7.6%から同2.5%へ急落し、「農業・林業・漁業」も1年前のレベルが高かった反動という統計上のテクニカルな要因(いわゆる“Base Effect”)が現れて、同7.0%から同2.8%へ大幅に下降しており、これら3部門の鈍化が特に顕著だった(第1表)。
 需要項目別では、「総固定資本形成(=投資、GFCF)」の伸び率が同じ期間に前年比7.5%から同5.5%へダウンしたほか、「民間最終消費支出(PFCE)」が同8.1%から同5.5%へ、「政府最終消費支出(GFCE)」が同7.8%から同5.1%へ減速。以上の3分野を主体とする「内需」の成長に対する寄与度が9.9%ポイントから5.9%ポイントへ縮小した。
 また、「財貨・サービスの輸出」の増加率が同22.7%から同15.3%へ下がる一方、「財貨・サービスの輸入」は同15.6%から同18.5%へ上昇しており、「輸出」から「輸入」を差し引いた「外需」の寄与度は0.4%ポイントから(-)1.9%ポイントへ悪化。「内需」と「外需」がともに経済全体の成長率を押し下げる方向へ作用した(第2表)。

国内の高インフレと連続利上げ、海外景気減速のトリプル・パンチ

  成長の勢いが急激に鈍った主因は、@国内インフレ率が高止まりし、実質可処分所得の目減りが個人消費、投入コストの高騰が企業活動の停滞を招いた、Aインド準備銀行(中央銀行、RBI)が10年3月から11年10月まで金融引き締め政策を断続的に強化しており、金利の上昇を受けた資金調達コストの増加で、借入依存度の高い家計の耐久消費財購入や企業による設備投資に下押し圧力がかかった、B欧米経済の勢いが弱く、両地域向けの輸出が年度後半から急速にスローダウンした、の3点。加えて、天然ガス産出量の継続的な減少など、一部のセクターで供給側の制約が働いたほか、用地取得の難航や環境認可の遅れといった手続き面のハードルが投資プロジェクトの進行を妨げた点も、成長の下押し要因として作用したようだ。

12年1〜3月の成長率は5.3%、29四半期ぶりの低水準

  なお、11-12年度通年のデータと同時に公表された同年度第4四半期(12年1〜3月期)の実質GDPは13兆9,507億1千万ルピーで、前年同期比では5.3%増加した。成長率は1年前(10-11年度第4四半期=11年1〜3月)の同9.2%から3.9%ポイントのダウン。1四半期前(11-12年度第3四半期=11年10〜12月)の同6.1%も0.8%ポイント割り込んだ。10-11年度第1四半期(10年4月〜6月)以降、6四半期連続の下降。世界的な金融危機と同時不況に見舞われていた08-09年度第3四半期(08年10〜12月)の同5.8%にも届かず、04-05年度第3四半期(04年10〜12月)の同5.3%以来、実に29四半期ぶりの低水準にとどまった。

12-13年度、若干の回復か

 最大の理由はGFCFの伸びが前年同期比3.6%と、引き続き低迷したところから、「製造業」の成長率が前年同期比(-)0.3%に沈んだこと。国内物価上昇率や金利のレベルは依然として高く、ユーロ圏で発生した公的債務危機の再燃に起因する金融・資本市場の混乱と海外景気情勢の悪化も加わって、国内外双方の要因から内需が押し下げられた結果だ。
 RBIは4月に3年ぶりの利下げに踏み切ったものの、足下におけるルピー安の進行や食料の値上がりを受けて、国内のインフレには再び高進する兆しがうかがえるため、同行による追加利下げの余地は今のところ限定的と考えられる。加えて、欧州周縁諸国を震源地とする信用不安は今後も景気の下ぶれリスクであり続けると見込まれ、印成長率は12-13年度(12年4月〜13年3月)に入ると、11-12年度より幾分かは回復すると期待できるものの、通年では前年比6.5〜7%程度に着地する見通しだ。


第1表 産業別国内総生産(2004-05年価格)


第2表 需要項目別国内総生産(2004-05年)