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作成年月日:2012年4月

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インド最大州の選挙結果  ネルー家の威信に傷がついた

 有権者数1億2700万人という日本の総人口に匹敵する規模の北インド、ウッタルプラデシュ(UP)州の州議会選挙が終わり、開票が3月6日に行われた。結果は社会主義党(SP)が単独で過半数の議席を獲得する圧勝だった。SPは、全403議席中、前回2007年の127議席を大きく上回る224議席を獲得した。そしてムラヤム・シン・ヤダヴ党首の息子アキレシュ・ヤダヴが州首相に就任した。与党の大衆社会党(BSP)は80議席で、前回の206議席から大きく議席を減らし、政権を失った。マヤワティ女性州首相による低カースト重視政策が上位カーストの離反を招いたことが原因との見方が強い。
インド人民党(BJP)は国民会議派を上回る第3党を維持し、最低限の目標は達成したものの、SPが州政権に就くことにより州政治での影響力を失うことになった。
国民会議派は前回からわずかに議席数を伸ばしたものの、第4党から脱せなかった。早くから今回の選挙を重視し、ラフル・ガンディー総務幹事らが先頭に立って大規模な選挙活動を進めてきただけに、この結果は痛手となった。

中央政界に大きな影響
  今回の結果は中央の政局にも影響があるとみられている。現在、SPは州での会議派の協力の見返りに、中央で政権を担う会議派らの統一進歩連合(UPA)に閣外協力を行っているが、SPが州で単独過半数を獲得したことで会議派の協力が不要になり、中央でUPAに協力する必要がなくなった。今後、SPのUPAへの協力をめぐって、中央の政局が流動的になる可能性がある。同州で長らく野党に甘んじている中央政権を保持している国民会議派は、昨年から活発な選挙運動を進めてきた。その先頭に立つのはソニア・ガンディー総裁とラフル・ガンディー総務幹事。ラフルの曽祖父でインド初代首相のジャワハルラル・ネルーをはじめ歴代首相を輩出してきたネルー(ガンディー)家の2人だ。さらに2月からはラフルの妹プリヤンカ・ヴァドラも現地入りして一家を挙げて選挙戦を戦った。UP州はインド最大の州として国政に及ぼす影響は重要なものがあるが、ネルー家にとってはどうしても勝ちたい別の理由もあった。

ネルー家ゆかりのアラハバード
  ネルー家はカシミール地方のパンディット(同地域のヒンドゥー教バラモン)出身で、18世紀初め頃にデリーに移住してきた。1870年にジャワハルラルの伯父が法律業を始めるため、現在のUP州にあたる北西辺境州のアグラに移り住んだのをきっかけに、ネルー家とUP州との関係が始まった。ジャハワルラルの父モーティラル・ネルーが当時州都だったアラハバードで弁護士になったのをきっかけとして同地に移り住み、以来、ジャワハルラルもアラハバード高裁で弁護士になるなど、アラハバードはネルー家ゆかりの街として知られている。

ネルー家の庭
  UP州は政治的にもネルー家の拠点で、中でも国会下院のアメティ選挙区とラエ・バレーリー選挙区はネルー家の庭ともいえる存在になっている。前者は、1980年にラジヴ・ガンディー元首相の弟サンジャイ・ガンディーが当選したのを皮切りに、ラジヴ、ソニアが引き継ぎ、現在はラフルが2期目。後者は51年にインディラ・ガンディー元首相の夫フィーローズ・ガンディーが当選したあと、インディラが2回当選している。その後、しばらくネルー家を離れていたが、2004年にソニアが当選、現在2期目を務める。今回の選挙でもラフルやプリヤンカはこれらの選挙区を拠点に選挙運動を行った。

カースト政治の壁
  ネルー家にとって重要なUP州だが、会議派は1989年を最後に州政権の座から離れている。特に最近、国民会議派は「カースト政治」の壁にはね返され続けている。大衆社会党(BSP)や社会主義党(SP)などが展開する、特定カーストに訴えかけて支持を固めるカースト政治に対し、宗教やカーストを問わずすべての人々に訴えるという政治理念の会議派は対抗できないでいる。
  こうした中、会議派も次第にカースト政治に巻き込まれつつあるようにみえる。会議派は、今回の選挙でのイスラム教徒向けの政策として、公職や公立学校の入学で「その他後進諸階層(OBC)」に27%の枠を設ける留保制度で、留保枠の中にさらにムスリム向けに4.5%の留保枠を設ける提案を行った(選挙管理委員会はこれを選挙法違反とした)。また、昨年12月には、州西部に強固な地盤を持つアジット・シン党首の民族ロク・ダル(RLD)を中央の連立政権に迎えている。
  従来の方針を曲げ、なりふり構わぬ感がある会議派だが、ネルー家の力で復活はあるとの観測が強かったが結果はSP党の圧勝に終わり、ネルー家の威信に傷が付き、今後国民会議派は中央でも難しい政局運営を強いられるであろう。(了)