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インド

作成年月日:2012年2月

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携帯電話免許割り当て不正事件

最高裁、免許取り消し判決

 インドの携帯電話累計加入者数は中国に次ぐ世界第2位の規模であり、携帯事業者に与えられる免許は入札によるものであり、その落札は大きな利権とされていた。  最高裁は2月2日、2008年に行われた第2世代携帯電話(2G)周波数帯免許交付は違法だったとして、当時交付されたすべての免許を取り消す判決を下した。  NGOの公益訴訟センター、スブラマニアン・スワミ・ジャナタ党総裁らが、A.ラージャ元通信相が在任中に交付された2G免許の取り消しなどを訴えていた裁判で、最高裁は取り消しの訴えを認め、ラージャ元通信相が在任中の08年1月10日以降に交付された11社122件の免許すべてを取り消す判決を下した。取り消しはユニテック・ワイヤレス(現ユニノール)22件、ループ・テレコム21件、ビデオコン21件、スワン・テレコム(現エティサラットDB)15件など。取り消しにより現在の契約者に不便が生じないよう、取り消しまでに4カ月の猶予を与え、電気通信規制庁(TRAI)に2カ月以内に周波数帯交付のための競売ガイドラインを策定し、3カ月以内に新たに競売を実施するよう命じた。

  最高裁は、チダンバラム内相(当時財務相)を捜査するかどうかについては判断せず、免許交付を汚職事件として審理している中央捜査局(CBI)特別法廷が4週間以内に判断するよう指示した。また、2G不正事件の捜査を監督する特別捜査チーム(SIT)設立の請求は退けたが、代わりにCBIは捜査の経過を中央監視委員会(CVC)に報告するよう命じた。  最高裁のこの違法判決で、携帯電話会社や契約者にも影響があるとみられている。影響を受ける免許が取り消される携帯電話会社の契約者数は合計4千6百万人から9千万人といわれるが、インド全体の契約者数約9億人からすると10%に満たないようだ。エアテルやボーダフォンなどの大手企業は違法とされた交付以前にすでに免許交付を受けているため、今回の判決による契約者への影響はない。免許が取り消される会社が事業を継続するかどうかが不透明なことで多少の混乱はあるが、すでに番号ポータビリティ制が施行されており、大きな問題はないとする見方が強い。  免許を取り消される会社が事業を継続しようとする場合、新たに行われる入札に参加して免許を取得しなければならず、多額の支出を強いられる。

 今回の判決で免許を取り消される会社は、当時、政府が示した手続きに従って免許を取得しており、不正交付の被害者ともいえる。このため、一部の企業が政府を相手取り損害賠償訴訟を起こす可能性もある。   今回の最高裁の判決は、今後の政局にも大きな影響を与えそうだ。 最高裁は、シン首相やチダンバラム内相(当時財務相)の直接の関与については否定的で、この点では政府に有利な判決となった。最高裁は、チダンバラム内相の関与について捜査を求めるスブラマニアン・スワミ・ジャナタ党総裁の訴えについて判断をせず、決定を中央捜査局 (CBI) 特別法廷に委ねた。また、周波数帯の交付が競売によって行われなかったのは、ラージャ元通信相がシン首相などの助言に従わなかったためとしており、首相は直接の責任を免れた形となった。


 しかし、判決が免許交付を違法としたことで、免許交付が不正事件であり、国庫に損害を与えたとする見方が確定したことは政府にとって大きな痛手となった。これまで政府は、免許交付による国庫への損害はなかったとしてきたが、その主張は完全に否定された。


  インド人民党(BJP)や左翼政党は、首相や内相の責任追及を強めるとみられている。BJPのプラサード主席報道官は判決を受け、「なぜ首相はラージャ元通信相が免許付与を止めるために介入しなかったのか?」と疑問を投げかけた。インド共産党(CPI)のダスグプタ国会議員団団長は「ラージャ元通信相が単独で行えたはずはなく、首相府や財務省が関わっていたはずだ」と述べた。

  判決は、今月投票が行われるウッタルプラデシュ州議会議員選挙にも影響がありそうだ。マヤワティ州首相を不正疑惑で追及したい国民会議派にとって判決は大きな痛手となる。また、国民会議派との対決姿勢を強めている社会活動家のアンナ・ハザレ氏らのグループも政府の批判を強めるとみられている。