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作成年月日:2011年8月

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政府、汚職防止法案を国会に提出

不十分との見方も

 

 汚職はインド社会(人)のDNAになっており、それが、一見無秩序に見えるインド社会に秩序をもたらしている、とか、インドで仕事をする場合、避けては通れない社会慣行であると喝破する日本人のインド通がいるが、インド人の中でも汚職の横行は目に余るものとして、特に汚職の恩恵に預かれない(?)草の根グループからの「断食」という無抵抗行動を伴った批判が表面化している。 来年のウッタル・プラデシュ州州議会選挙、2年後の国政総選挙を控えた会議派政権としても放っておくわけにはいかず、728日の閣議で、閣僚や政府高官の汚職を調査して訴追を勧告する独立組織「ロクパル」の設立を規定した汚職防止法案(ロクパル法案)を承認し、81日に開会された国会に提出された。

 

 この法案の下で組織される「ロクパル」は、閣僚、国会議員および、すべての政府機関に所属する上級公務員に対する汚職の訴えを独自に調査し、汚職が明らかになった場合、事前に政府の許可を得ることなく、最高裁判所に訴追を勧告できるほか、汚職によって不正に得られた財産を没収する権限を有する。

しかし、同法案は首相、上級裁判官、国会内での国会議員の行動をロクパルの管轄外としており、野党および市民グループからは不満の声が出ている。断食を行い、同法案の制定要求運動を進めてきた社会活動家のアンナ・ハザレ氏は、「これでは汚職を防ぐには弱すぎる。とても受け入れ難い」と述べている。

 

 原型のジャン・ロクパル法案は1969年に提案され、その後何度か制定の動きがあったが、実現していなかった。今年になってハザレ氏が率いる市民グループが同法の制定を求める運動を新たに展開、4月にハザレ氏が断食を行った際、同氏を支持する世論が高まったため、政府が制定を約束していた。

 

 初日の審議は野党側が第2世代(2G)携帯電話サービス周波数帯割り当てをめぐる不正疑惑へのマンモハン・シン首相の関与を厳しく追及するなど紛糾し、議長が同日の途中休会を宣言する波乱の開会となった。

 同日の審議でインド人民党(BJP)のアルン・ジャイトリー野党下院議員団代表は、2G不正疑惑について、入手できる情報から判断して「首相が電気通信政策や2G周波数帯割り当ての『細部の運営』にまで関わっていたことに疑いの余地はない」と述べ、首相の責任を追及した。

野党のウッタル・プラデシュ州で州政権を担っている大衆社会党(BSP)は、政府による土地取得を規定する土地取得法の制定が遅れて農民が苦境に陥っているとして政府を批判した。このあと野党側議員が立ち上がって叫ぶなど議場が騒然となったため、議長は休会を宣言、この日の審議は終了した。

 今国会には汚職防止法案(ロクパル法案)、土地取得法案、食料保障法案などの重要法案が提出されるほか、物価上昇、海外不正蓄財、テロ対策などが審議される予定。

 

 一方、汚職問題で批判を浴び、党本部から辞任を迫られていた野党インド人民党(BJP)が連立政権を担っている南インド・カルナタカ州のユディラッパ首相は731日、州知事に辞表を提出し、州首相を辞任した。次期首相を選出する州与党インド人民党(BJP)の会合は3日に予定されているが、ユディラッパ首相が後継者を指名したことにより、選出が混乱する可能性もある。

 ユディラッパ首相は知事官邸への出発前の記者会見で、元党州代表のサダナンダ・ゴウダ氏を次期首相に推薦した。そのあと同首相は、州知事官邸に支持者の州議会議員約60人を同伴し、自らの影響力の大きさを誇示した。同首相によるゴウダ氏の推薦には、同氏を通じて州政治に影響力を維持する狙いがあるとみられている。

 今後、BJPは、ユディラッパ首相の提案を受け入れてゴウダ氏を州首相に選出するかどうかの判断に苦慮することになる。対立候補のエシュワラッパ州党代表、ジャグディシュ・シェッタル農村開発・パンチャヤトラージ大臣を支持するグループはゴウダ氏の選出に反対しており、州首相選出をめぐる混乱、さらには党内の分裂を予想する声も出ている。

 

 このように国政、州政の違いはあれ、また政党の違いはあれ、いったん権力を握るとインドの政治家はわずかな例外を除き、汚職に走るようだ。

 ロクパル法案の成立でインドの歴史ある汚職体質は変わるのであろうか。インドが名実ともに世界の一流国として認められる国になるには汚職根絶は避けて通れない道であろう。(終)