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インド

作成年月日:2011年2月2日

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インドの交通事情

 インド進出日系企業の現地駐在員の交通手段は、ほぼ100%が自動車だ。インドの自動車業界は年率20〜25%と驚くべきスピードで成長しており、世界不況の中でも需要に供給が追い付かないという成長市場だ。日系企業も健闘しており、スズキの現地子会社マルチ・スズキが乗用車市場シェアの約半分を占め、トヨタやホンダも世界戦略車のインドでの生産を発表している。中流階級が購買能力を身につけ、インドの自動車メーカー、タタ・モーターズが発売した10万円台の小型車「ナノ」の売れ行きが好調など、日本人だけでなく、人々の主流な交通手段は自動車といえるだろう。その一方、自動車と同じ道路を牛が歩き、日本ではあまり聞かないクラクションが鳴り響くインドの道路交通事情は、お世辞にも良いとは言えない。車線が引いてある道路もあるが、車線を守る車はいない。インドの道路に譲り合うという文化はなく、皆が我れ先にとわずかな隙間をぬってクラクションを鳴らしながら進んでいくのだ。インド最大の商業都市ムンバイはインド国内で最も交通事情が悪い都市として有名で、通常30分足らずで辿りつける距離に、2、3時間かかることもざらである。首都デリーから、日系企業をはじめ外国企業がこぞって進出している新興都市グルガオンに向かう通勤ラッシュ、帰宅ラッシュもひどい。そんな中、注目されているのが大量高速輸送システム、メトロだ。

 現在インドにはデリー、コルカタの2都市にメトロが運航しており、ムンバイ、チェンナイ、バンガロールでも建設中だ。中でもデリーのメトロは非常に発達している。デリーのメトロ建設には、日本のODA(円借款)が大きく貢献した。第1期工事では、1996年度から6度にわたり総額約1,627億円の円借款が供与され、建設費の6割を占めている。第2期工事の円借款も5期にわたって行われ、2006年3月に149億円、2007年3月135.83億円、2008年3月721億円、2009年3月777.53億円、2010年3月336.40億円と、総額2219.76億円が投資された。

 資金だけでなく技術供与にも日本のコンサルタントや建設会社、商社等が参加し、工事現場でのヘルメット着用、指さし確認、資材・機材の整理整頓など、日本方式で建設が進行した。日本では当たり前の、安全第一の工事現場での習慣はインドでは浸透しておらず、日本人が毎日現場に足を運び、指導にあたったという。

 デリーメトロの路線は2011年1月現在、6線が運航中だ。デリー中心部からグルガオンや工業地区ノイダへの路線は毎日ほぼ定刻通りに走行しており、自動車やバスに替わるインド市民の新しい交通手段として定着している。運賃は8ルピーから30ルピーで、切符はICチップ内蔵のコインまたは日本のスイカやパスモと同様のICカード、入場口も日本と同じく自動改札機が採用されている。一つ日本と異なるのは、ホームに入場する前に身体検査、手荷物検査があることだ。空港のシステムと同様、男性と女性で入口が分けられ、金属探知機のゲートをくぐり、男性、女性警官による身体検査が行われる。手荷物はX線を通すレールに乗せ、入場前に受け取る。このため、混雑時には入場には少々時間がかかる。テロ防止のために欠かせない手順とはいえ、セキュリティチェックに慣れていない日本人には少し戸惑う部分でもある。しかし、一旦改札を抜ければ、きれいなホームと車両が乗客を出迎える。

 インドの交通事情は推測し難い。前述の通り、平均所要時間を曜日や時間帯によって大幅に超過するからだ。時間厳守の日本人にとって、移動時間が読めないことは大きなストレスとなっている。特に、ミーティングやアポイントへの遅刻が深刻で、対策にテレビ電話会議を導入し始めた企業も多い。

 しかし、重要な決議事項がある場合、幹部の集合は必要不可欠である。通勤だけでなく、インドでは日本の「当たり前」が通用しないことを認識しつつ、インド人を見習って、時間にルーズになるのではなく、良い意味で時間に対しておおらかになる必要もあるだろう。それでも時間を気にするのが日本人の国民性。近い将来、インド進出日系企業でメトロ通勤を推奨する企業も出てくるかもしれない。