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インド

作成年月日:2011年1月3日

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インドの物流事情について〜食品産業を事例に〜

 2002年12月、Y社はデリーで初の日本式コンビニエンス・ストアを立ちあげた。インドが成長市場として注目され、日系企業が多数進出している中、日本人駐在員の生活を支える食料品店、生活雑貨小売店は、当時、存在しなかった。Y社は日本人の過酷な生活環境を改善すべく事業を開始した。味噌、醤油や米、乳製品などの日本食材や食器類、台所用品などの雑貨品、冷凍魚介類、冷凍肉類などを販売し、開店当初は苦戦したが、2010年5月に2店舗目をオープンするまでに成長した。社長は日本人で、デリー駐在の日本人は全員Y社を知っているほど身近な存在になっている。
 一方、2003年、T社がやはりデリーで初の日本直輸入の冷凍食品販売会社を設立した。主な販売商品は魚と肉。内陸地のデリーでは新鮮で安全な魚介類は入手しにくい。またインドの大多数が信仰しているヒンドゥー教では牛が聖なる生き物とされているため、牛肉は手に入らない。非正規のルートで入ってくる牛肉もあるが、品質があまりよくなく、日本人の社長が日本の鮮魚市場で商品を買い付け運んでくるT社の存在は瞬く間に知られ、日本人駐在員はもちろん、各五ツ星ホテルも仕入れをT社に依存しているという。
 更に、2008年P社は日本食材の卸売業を開始した。P社は倉庫を店舗代わりに利用しており、T社と比較して大量注文が可能なので、ホテルやレストランなどがまとまった材料を買い付けにくる。経営者は日本語が堪能なインド人で、品質管理も日本人同様に行っている。

インドの食品物流事情
 上記3社へのインタビューを通し、インドの物流、特に食品の物流事情が見えてきた。まずは法規制。現在インドは食品の輸入に関して非常に厳しく、家禽類・魚介類の輸入には特殊ライセンスが必要となっている。しかし、実際は申請しても却下されるという。輸入できないものは手荷物として入国するしかないが、空港で荷物が止められることも頻繁にある。空港の冷凍施設は整備されておらず、数少ない低温倉庫も原則としてベジタリアン専用のため、肉類の保管は不可。はるばる日本から運んできた食材を空港でだめにする前に、関係者は示談に入る。輸入の専門業者は空港の管理局、空港警備の警察にパイプラインを構築しておくことが必要不可欠なのだ。
 また、運よく空港から荷物を運び出しても、インド国内の物流は一筋縄ではいかない。鉄道輸送、自動車輸送、国内線での空輸、コンテナでの海運など方法は様々あるが、いずれも荷物は時間通りには到着しない。鉄道は発着・到着時刻が不安定で、車両の老朽化のため振動が大きく、輸送する貨物には十分な配慮が必要とされる。日本のODAを中心に、現在、デリーとムンバイを結ぶ高速貨物鉄道の建設が予定されており、この鉄道が完成するまでは鉄道輸送の優先順位は低い。自動車での運搬手続きも複雑だ。州をまたぐ輸送には必ず入域税が必要で、貨物の大きさや重量などの規制も州によって異なる。この規制は頻繁に改正されるため、インド人でも最新情報の収集が難しいという。整備不十分なトラックが多く、雨季には積載荷物の半分がだめになると言われ、運搬時期や量を毎回調整しなければならない。国内線の空輸についても、乗せるといわれた便に荷物が積載されていない、冷凍輸送が冷蔵輸送になっているなど、日本の物流事情からは想像できないトラブルが多い。

インド物流成功の秘訣は?
 上記3社のインド物流の成功の秘訣は、業務を日本人だけで決して行わないことで、必ずインド人に担当させることだそうだ。インドの事情はインド人が一番知っている。インド人との交渉もインド人が行うのが良いのだろう。貨物の追跡には信頼できる情報源が必要だ。その情報源である物流企業はやはりインド企業が多いが、日系企業も進出している。しかし、外資企業に対する規制面での制約や対費用効果、インフラの未整備などで本格的な展開は今後の課題として残されている。