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インド

作成年月日:2010年12月4日

海外情報プラス

ホテル産業における日系企業のマネジメントについて

 日系大手企業の子会社H社は2010年、デリーでインド法人を設立、インド人オーナーが所有するAホテルのマネジメントを同年9月より引き受け、邦人向けのホテルとして運営している。

 インドにホテルは数多いが、その多くは5つ星ホテル、もしくはバックパッカー向けの星無しホテルで、その間を埋めるビジネスマンが気軽に利用できる3星や4星ホテルが少ない。この差を埋めるべく、H社が4星ホテルの運営に乗り出した。邦人顧客に焦点を合わせたホテルはインドには今まで存在しなかった。日本人スタッフが1〜2人常駐している高級ホテルはあるのだが、宿泊料金が異常に高く、ビジネスマン向けではなかった。

 Aホテルは今後激増すると見込まれる日本人のビジネス出張をターゲットに、日本流の「おもてなし」をモットーにマネジメント体制を整備している。基本は日本人による対応で、日本人が監督者として各部門に配属され、インド従業員を訓練指揮している。インドで初の本格的な日本料理店もホテル内に併設、また、インドでは珍しい日本式浴場も12月に完成予定だ。施設は高級ホテル並み、しかし価格帯は中級ホテルということで、9月のオープンから3カ月経った現在、稼働率は7割強と言う、好調な出だしとなっている。

日本経営ホテルの2つの悩み

 このAホテルの悩みは、大きく分けて2つある。一つは、タクシートラブルだ。インドの交通事情は非常に悪く、交通渋滞は日常茶飯事、予定時刻に目的地までかかる時間が時間帯や曜日によって数時間違うことは当たり前である。時間厳守の日本人と比較して、インド人は時間にルーズで、15分〜30分の遅れは気にも留めない。配車の時刻にタクシーが来ていない、運転手に英語が通じない、運転手と連絡が取れない、など、タクシー関連のトラブルは多い。

 二つは、ランドリートラブルだ。インドのホテルは日本のホテル同様、ランドリークリーニングを専門の業者に外注する。しかし、その業者の質が一定せず、ランドリーが傷つけられて戻ってくる事例が少なくないという。ビジネスマンの高級スーツや、高級婦人服などが間違った方法で洗濯され、謝罪もなく返却され、客からクレームが来る。ランドリーを預かるホテルスタッフと、実際に洗濯をする業者が異なるせいで、ホテルスタッフも自分の非を認めるわけにもいかず、クレームが大きくなるケースがあるようだ。これはAホテルだけの問題でなく、デリーで営業している世界的な5つ星ホテルのクリーニング部門でも同じ問題が起きているという。クリーニングとドライクリーニングの区別がわかっていない、素材を見極めないままアイロンをかける、乾かないうちに返却時間だからと洗濯物が湿ったまま返却される、など、タクシー問題と同様、一流ホテルとしては信じられないようなケースが起きている。

日本流サービスの教育訓練の必要性

 国民性の違い、と言ってしまえばそれまでだが、Aホテルのように「日本のおもてなし」を目指すのであれば、やはりスタッフの教育が唯一の解決策になるだろう。運営スタッフ全員が日本人であれば問題はないが、それは不可能な話なので、インド人によるサービスを如何に日本人レベルまで引き上げられるかが鍵となる。インドのホテルスタッフの大半は、インドのホテル専門学校でホスピタリティを学んだ人材だ。しかし、それはあくまでもインド流であって、まだまだ世界レベル、日本レベルからは程遠い。忍耐力、根気、時間が必要だが、日本流のサービス、日本文化を教育することから始めなければならない。インド人は好奇心が旺盛なので新しいことには興味を示す半面、飽きればすぐに投げ出してしまうところがあるので、興味を失わせないように教育訓練していかねばならないだろう。 

 人材の定着率がそれほど高くないサービス産業において、育成されたスタッフがライバル会社に引き抜かれるなどのリスクはあるが、スタッフ教育に力を入れない限り、Aホテルが真に目指すホテルとはなれないだろう。

専門学校設立も視野に入れて

 日系企業がインド市場に注目し、このままのスピードでインドに進出する企業が増加していけば、日本語だけでなく、日本の文化や日本のサービスとは何かを理解している人材の需要は必ず増えてくる。そうなれば「日本文化、日本流」サービスに特化した専門学校の設立を視野に入れたホテル経営も必要になってくるだろう。