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インド

作成年月日:2010年11月4日

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製造業における日系企業の経営方針について

日系大手OA機器メーカーR社は、1993年に現地企業と合弁で現地法人を設立した。最高経営責任者にインド人を採用したが、多額の不良債権を出し1995年に社長が日本人に交代。その後、経営状況は改善、2002年に再び社長はインド人となり、現在に至っている。  

現在インド国内に14支店を開設し、680人の従業員を雇用している。OA機器関連のオフィス事業を手掛ける日系メーカーはインドに数社進出しているが、それぞれターゲット層が多少異なり、各社が強みの分野で事業を展開、住み分けが出来ており、日系企業同士の競争は見られない。

R社はオフィス用機器に強みがあり、製品の販売だけでなく、ITの総合サービスの実現を目標としている。R社は販売会社で副社長は日本人だが、セールスマンは全員インド人だ。離職率の高さが一番の悩みで、年間二割弱の従業員が辞めていく。日系企業の独特の企業文化についていけないセールスマンも多いという。

日系自動車部品メーカーS社の事例
一方、日系自動車部品メーカーS社は従業員200人。日本人は3人。1995年に現地企業と合弁で社長をインド人として現地法人を設立したが、その後経営が悪化、2000年から日本人が社長に就任し経営している。日系自動車メーカーの下請けとしての実績はインド国内ではトップの企業だ。インドの他にもアジアに2カ所海外支店があり、海外支店から人事担当者が定期的に社員教育に来るが2〜3年で職を変える人材が多く、なかなか日本式の企業文化が根付かないという。

インド人は交渉事が得意だが・・・
インド人は話すことを得意とし、会話ではいかに相手を論破できるかに注力する。S社では営業責任者はインド人であることを必須としており、営業部門の全権限を与え、海外から来る教育担当者もインド人の交渉話術には一目置いている。
R社でも、インド人セールススタッフの自己PRや自社製品の売り込みに関しては日本人より優れているという。交渉事が得意な一方で、インド人は事象の分析が不得意のようだ。R社は事業計画の作成には日本人が必ず立ち会わなければならないという。S社は日本人のみで事業計画を作成し、その計画の下、インド人部門責任者たちが指揮をとる。

物事を全体的にみる視点が日本人と比較すると狭いのだという。

セールスマンには顧客満足という認識が必要不可欠だが、インド人のセール
スマンは教育しないと認識できないことがほとんどだ。売り込みは得意だが、
話を聞くことが不得意ということだ。

インド人との会議の長さも問題
R社の場合、インドではまだ知名度が低く、商品イメージも浸透していない。その状況下では自己PRも必要であるが、顧客が抱えている悩みや問題を吸い上げることができなければ、最終目標に掲げている総合的なIT事業の提供は難しいだろう。
S社は会議の長時間化が悩みだという。1つの議題に3〜4時間かかることも珍しくなく、一日の大半が会議室で終わってしまい、生産ラインの半分も稼働できない日もあるという。S社は部品メーカーなので、製品を製造しないと売り上げにはならないが、議論に火がついたインド人は相手を論破するまで生産ラインに戻らないという。

日本式でいくか、インド式か
日系企業がインドで事業を展開する際、日本式のやり方で経営するか、インド式でやるかは議論が分かれるところである。またトップに日本人を据えるか、インド人を置くかで社内風土は大きく変わってくる。インド人に顧客満足をはじめとする概念や、日本式企業文化を教えるのは容易ではない。 お互いがお互いの主張に理解できないこともあるだろう。一例として、「インド人は言い訳が上手い」というがまさにその通りで、「沈黙は金なり」の日本文化とは対照的だ。

適材適所の人材配置
ただ、インドで事業を行う限り、何もかもが日本と同じというわけにはいかない。対インド人の営業には日本人の顧客第一の姿勢では、販売実績が上がらないこともあるだろう。上記2社のように交渉事にはインド人を重用し、日本人にしかできない仕事は日本人が行う。限られた人材の中で、インド人の長所短所を見極め、適材適所の人材配置を行うことがインドでの事業成功の鍵といえるだろう。