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インド

作成年月日:2009年7月9日

職業能力開発政策とその実施状況

3.1 職業能力開発の背景

  1. 職業能力開発の必要性
     国家の職業能力開発の必要性はインド中央政府の労働雇用省が策定し2009年1月に発表した技能開発政策に明確に述べられている。この政策によれば、いかなる国でも技能と知識は経済成長と社会発展の原動力である。それゆえ、国が職業能力開発の効率的なシステムを持つことはきわめて重要である。
     第11次5カ年計画では、インドは訓練定員を現在の2~300万人から最低でも新規労働者1,500万人にし、技能育成の拡大とインフラを強化する必要があると指摘している。

  2. インド労働雇用省雇用訓練局(Directorate General of Employment & Training:DGET)による職業訓練
     労働雇用省は、DGETを通じて職業技能訓練の責務を果たすことになる。職業訓練については中央政府及び州政府が同等の権限を持ち、中央政府の責任は、政策、手段、基準及び規範等の策定であり、州政府は職業訓練の実施にかかわる責任を負う。ほとんどの州が州都に雇用訓練局を設置し、またDGETは、特定の対象者向け訓練機関を運営している。

    DGETの下での訓練制度は以下のとおりである。
    1. 職工訓練制度(Craftsmen Training Scheme:CTS)
       CTSの目的は、すべての産業、サービス分野に技能労働者を安定的に送り込むこと、潜在的労働者に対して組織的訓練を行うことにより工業生産の質の向上及び生産量を高めること、教育を受けた若年者に対し適正な雇用に見合う技能を習得させ、失業率を減少させることである。この制度の下での訓練には、全国に設置されている政府のITI(Industrial Training Institutes:産業訓練研修所)、民間のITC(Industrial Training Centres:産業訓練センター)を通じて110職種教科があるが、その特徴は次のとおりである。
      1. 訓練期間は、職種により6カ月~3年である。
      2. 入学に必要となる学歴は、職種により第8~12学年とさまざまである。
      3. 入学資格年齢は14~40歳である。
      4. 訓練期間のおよそ70%が、実務訓練となる。
      訓練を無事修了した者には、雇用者、労働者及び中央、州政府の代表で構成されるNCVT(National Council for Vocational Training:国家職業訓練審議会)によるAITT(All India Trade Tests:全インド職業検定)の受験資格が得られる。検定合格者には、中央政府関係の補助的職位及びサービス部門への就職の際に資格として承認される国家職業証明書(National Trade Certificate)が付与される。
    2. 徒弟訓練制度(Apprenticeship Training Scheme)
       1961年徒弟法による 制度の下で、187職種の技能労働者育成を目的とし、学校中途退学者及びITI卒業者を対象として企業内でOJT(On-the-job Training:実地訓練)が提供されている。本法の主な目的は、規定された講習概要及び訓練期間に従い、実務訓練の実施を目的として産業設備機器を十分利用することである。また本法では、公共及び民間両部門の雇用者に対し、法に定められた訓練施設を備えること、また法律で規定された254種の産業分野に徒弟訓練を取り入れることを義務付けている。徒弟訓練制度の特徴は次のとおりである。
      1. 入学に必要となる学歴は、第8~12学年とさまざまである。
      2. 訓練期間は、職種により6カ月~4年間である。
      3. 規定の講習教科は、基礎訓練、作業現場訓練及びその他関連の訓練から構成されている。
      4. 訓練期間中、徒弟訓練生には本法の規定による給料が支給される。 NCVTは年2回、徒弟訓練生のためのAITTを実施し、合格者には政府及び公共企業への就職の際に資格として認められるNAC(National Apprenticeship Certificate:国家徒弟訓練証明書)が付与される。
    3. 職工訓練指導員訓練制度(Craft Instructor Training Scheme)
       この制度の下で、ITIの訓練指導員及び企業の徒弟訓練指導員に対する1年間の訓練が計画されている。
    4. 女性職業訓練プログラム(Women’s Vocational Training Programmes)
       当プログラムは、女性に対して職業訓練の場を提供することにより雇用機会を増やし、経済活動に参加させることを目的としている。提供されるコースは、基礎、中級及び上級と3段階に分けられる。そのほかには、特定の高度な技能が必要となる分野への女性に対する短期コース及び特別技能訓練コースが設けられる。
    5. 高度職業訓練制度(Advanced Vocational Training System:AVTS)
       AVTSの下で、選別された高度な技術分野における産業の労働者の技能向上を目的とした訓練が、1~6週間の短期コースとして提供されている。また特定の企業及び産業のニーズに対応した特別プログラムも提供される。
    6. 監督者訓練プログラム(Supervisory Training Programme)
       この制度の目的は、現職あるいは将来の作業現場の長、監督者に対して、短期及び長期コースを通じた技術的、管理的技能にかかわる訓練を実施することである。
    7. タッフ訓練及び調査(Staff Training & Research)
       当計画の下では、中央、州政府訓練機関及び企業の訓練部門の初級、上級両レベルの管理職に対して短期の訓練プログラムが実施される。
    8. 教材メディア開発(Instructional Media Development)
       当計画の下では、ITIの訓練受講者及び企業における徒弟訓練に使用される教材の開発が行われる。

  3. 人材開発省(Ministry of Human Resource Development:MHRD)による職業能力開発
     MHRDの下での職業教育訓練に関する主要な制度は次のとおりである。
    1. 上級中等職業教育化計画
       当制度は、個人の雇用可能性の強化、技能を持つ人材の需給ミスマッチの低減、目標の定まらない高等教育就学者を対象とする選択肢の提供を目的とする教育機会の多様化を規定している。当制度では、第11~12学年在籍の学生を対象に職業訓練コースが提供されているが、これまでのところ、当制度は9,619校の2万1,000学科において膨大な設備を作り出し、第11~12学年での約100万の学生に対して選択の幅を提供している。また当制度は、さまざまな機関による評価及び検証を受けており、それらのさまざまな委員会及び評価グループによる提案を基礎として、現行の制度の再検討が進行中である。
    2. MHRDによる徒弟訓練
       MHRDの下で徒弟法は、技術学校及び大学卒業生、職業教育学校卒業生に対して徒弟訓練を提供している。
    3. 公開教育国立協会(National Institute of Open Schooling:NIOS)
       NIOSは、未就学の児童、学校中途退学者、社会・経済的に学習が困難な人々に対し、遠隔教育による教育を提供することで教育のニーズに応えることが第一の目的である。通常の教育課程とともに、2~3つの職業教育コースに生徒が参加できる選択肢が提供されている。(NIOSによる職業教育コース、http://www.nios.ac.in/vocpros2008.pdf

  4. その他の省庁及び政府機関による訓練
    訓練を実施する他の省庁は以下のとおりである。
    • 農務省
    • 食品加工産業省
    • 保健家族福祉省
    • 重工業国営企業省
    • 通信IT省
    • 農村開発省
    • 小規模産業開発機構
    • カディー・村落工業委員会
    • 社会正義権限付与省
    • 女性児童開発省
    • 織物省
    • 観光省
    • 部族問題省
    • 都市開発・貧困緩和省

  5. 民間部門における訓練
    1. 企業による訓練
       民間部門における訓練は、一般的に大規模企業での整備状況は良好である。例えば、タタ自動車は同社の自動車製品及び関連するすべてのサプライチェーンに対して実質的な訓練を行っている。また、民間部門ではあるが、訓練はすべてが自社の従業員に対する便益のためだけに開発されたものではない。
    2. 民間訓練機関による訓練
       民間訓練機関による訓練は、多様な分野に広がっており、訓練の多くはDGETと提携した民間のITCを通して実施されている。コンピュータを中心とした訓練分野は、民間訓練機関によるもう一つの主要な訓練分野で、通信IT省のDOEACC(Department of Electronics Accreditation of Computer Courses)を通じて管理されている。
    3. NGOによる訓練
       NGOによる訓練は、大多数が組織化されていないインフォーマルセクターに関係している。NGOのプログラムには 1) 生活水準向上のためのビジネススクール(Livelihood Advancement Business Schools:LABS)、2) 若年者の起業(Business and Youth Starting together:BYST)、3) 地域社会と進展 (The Community & Progress:CAP)がある。

3.2 職業能力開発を進めるための国の政策

インド中央政府による2009年2月国家技能開発政策の骨子は次のとおりである。

  1. 序文
     能力開発プログラムの現在の訓練定員は310万人である。第11次計画では年間1,500万人に訓練定員を増やす。また、2022年までに技能労働者を5億人にすることを目標とする。

  2. 展望
     技能開発戦略を包括的に活用することにより、日々変化していく雇用や技術の要望に適応できる技能労働者の供給を支援する。技能評価の枠組みは学位と同等のシステムに移行し、技能が確実に利益をもたらすようにしなければならない。また、政府は財政支援を実施し、民間投資を補完しなければならない。訓練コースについては、モジュール(単位制)訓練、オープン・アーキテクチャ※1に基づく訓練、短期間訓練に焦点を当てる。

  3. 綱領
     国家技能開発戦略では、すべての人に技能、知識の向上及び国際的に認知される資格によって、適正な雇用への手段と世界市場におけるインドの競争力を確保する。

  4. 技能開発戦略の管理
     技能開発戦略を管理するため、次のような機関を提案する。
    • 首相の国家技能開発諮問委員会
      首相を議長とする政策の方向づけや再検討を行う最高機関。
    • 国家技能開発調整委員会
      副首相を議長とする計画委員会。
    • 国家技能開発協会
      1956年会社法に基づく非営利団体。技能開発ニーズの特定、分野別技能開発計画や能力基準・資格の策定、能力認定プロセスの標準化、技能訓練の計画立案支援・提供を目的とする分野別のLMIS(Labour Market Information System:労働市場情報システム)設立などを行う。
    • 国家職業訓練審議会(National Council for Vocational Training:NCVT)
      国家レベルでの情報伝達と国家技能開発の効果評価等、広範囲にわたる権限を持つよう改革された組織。
    • 社会的パートナー
      国家技能開発政策では、政府、雇用者/企業、労働組合及び市民社会団体といった社会的パートナーの役割と責任を明確に定義している。

  5. 援助の拡大、公平性とアクセス
     政策のガイドラインは以下のとおりである。
    • 技能開発への援助拡大
    • 公平性とアクセス
    • 女性のための職業訓練
    • 農村部や国境、山岳地帯等の地域による機会不均衡の是正
    • 指定カースト(Schedules Castes)※2、指定部族(Schedules Tribes)※3、社会的に不利な立場にある人々
    • 少数民族
    • 障害者
    • 学校中途退学者、児童労働
    • 貧困者

  6. 品質と適切性
     企業が国際市場で勝つためには、訓練の品質は国際基準に達していなければならない。品質保証は次の5つの主要な機能に基づいている。
    • 資格の認定
    • 訓練プロセスの認定
    • 学習者の評価を保証する品質
    • 訓練提供者と訓練機関の認定
    • 研究と情報
     品質及び適切性は、社会基盤の向上や指導員の質の向上、並びに国家職業資格枠組み(National Vocational Qualification Framework:NVQF)の改善により実現される。

  7. 非組織部門※4の技能開発
     インドの労働力人口の約93%は非組織部門で占められる。非組織部門は都市部、地方を含むすべての経済活動にわたっており、非組織部門の技能基盤を強化することは、生産性、職場環境、労働者の権利、社会保障、及び生活水準を向上させることにつながる。
     したがって、非組織部門の技能開発を計画、実行、監視する、独立した仕組みが今後検討されることで、非公式な徒弟制度や学習がNVQFで認定されていくと考えられる。その実現のため、技能開発へ参入する際に障害となる学歴、交通手段、賃金減少、言葉などについては適切な取り組みがなされる。

  8. 不足する技能の選定と2022年までに目標達成するための計画
     当計画では、インド工業連盟(CII)、ボストン・コンサルテイング・グループ及びPHD(Process Harmony Development)商工会議所が収集した、必要とされる技能の包括的な情報が提供される。
     その他、技能開発と訓練プログラムが複数の省や部局で研究され、国家技能開発協会が毎年技能開発計画を準備する。
     2022年までに計画されている訓練人数は、各訓練提供者によって算出された。

  9. 技能開発の資金手当
     当政策で想定した任務実行のため、中央政府が適切な予算を支出するほか、計画委員会も州政府の技能開発計画に特別予算を与えるなど、すべての利害関係者と直接受益者が技能開発のために資金提供や現物支給をすることで財政負担を分担する。
     さらに、民間部門の技能開発への投資も奨励されている。国家技能開発センター(National Skill Development Centre:NSDC)は中央政府が100億ルピーを投入して建設されたが、他の政府、公共事業体、民間部門など複数の資金源から1,500億ルピーがさらに拠出される。

  10. 将来への対応
     仕事のパターンは変化しており、雇用者の求める技能はより高度なものへと移行している。したがって、インドでは技能レベルを上げ、高等教育や新たな知識労働に適応できる包括的な訓練をより多くの人に施すことが急務である。新しい知識や技術の分野において、中級技能労働者が知識専門家を支援する必要があるとされている。技能開発制度はこの要求に応じる必要があり、将来の需要を予測し、変化に対応した国家技能開発戦略の策定が政策では奨励されている。地球環境だけでなく技能開発においても、差し迫った変化に一貫して素早く対応しなければならない。進取の気性に富む文化が将来の制度を動かし、国際開発、組織的実践、及び教育的アプローチの研究が戦略や継続的活動の鍵となる。このような目的のため、常設機関が設置される。国家技能開発政策は、5年ごとに見直しが行われ、実施の進捗状況とインド、国際環境の動向を考慮に入れて修正される。

  11. 第11次5カ年計画書の政策指針
     2007年12月に計画委員会から発表されたインドの第11次5カ年計画は、国家技能開発制度の全面的な改定を提案し、そうすることにより一定の政策枠組みを発展させた。第11次5カ年計画書の技能開発と訓練の章では、包括的に状況を分析し、戦略を提案している。
     計画書に含まれる政策枠組みの主要な信条は次のとおりである。
    • 第11次計画は、技能開発プログラムや戦略の取り扱いにおいてパラダイム変化をもたらす国家技能開発に着手することを目指す。
    • 産業、商業、サービス分野などのエンドユーザーの要求に見合う能力を持ち、かつ十分な数の技能者を育成することが目的である。
    • 新規労働者の訓練機会が増すように、20の高成長、高雇用分野に重点を置く。
    • インド経済の要求を満たすに十分な技能労働者を育成し、余剰人員で他の成熟経済における技能者不足の求めに応じることを目指す。
    • 公共部門も民間部門も共生関係にする必要がある。

 技能開発の目的は、5~8年以内に急成長する経済において国内での要求を満たすに十分な技能労働者を育成し、余剰人員で他の成熟経済の技能者不足を満たすことである。そのため、インドの競争上の優位性と人口配当を効果的に活用する。
 第11次5カ年計画書は人口配当(demographic dividend)に言及している。人口配当とは、ほとんどの国の依存人口比率が上昇すると予測されるのに対して、インドの依存人口比率は減少すると予測されることからインドの利点とされることをさす。人口配当は今後25~30年続くと見られ、技能開発が正しく役割を果たせば、インドは技能労働者の世界的宝庫になることが可能である。一方、技能開発戦略の計画が不十分で失敗に終われば、人口配当は人口統計上の悪夢となり、インドにとってこれが技能開発の成功と失敗の分かれ目になる。
 計画書では、国家技能開発政策で提言されたものと同じ組織的枠組みを構想し、さらに特定分野の技能開発ニーズの評価、訓練機関の実績評価及び分野別基準策定のため、技能開発における最高機関の創設を構想している。
 2009~10年度のインド中央政府の経済調査によれば、産業、商業、サービス分野などのエンドユーザーの要求に見合う技能を持ち、かつ十分な人数の技能者を育成することが奨励されている。その目的を達成するためには、特に農業従事者から非農業従事者へと余剰労働力が移行することも含めた、包括的な成長の結果として想定される雇用の拡大を支援する必要がある。

※1
製品などを設計思想(ア-キテクチャ)に基づき独立性の高い単位(モジュール)に分解して、社会的に共有、公開されたインターフェースでつなぎ、多様な情報を結合して価値の増大をはかること。
※2
カースト制度の外側にあり、不可触賤民として社会の最下層に位置付けられている。アチュート、アンタッチャブル、アウトカーストとも呼ばれる。彼ら自身は、自分たちのことを壊された民(Broken People)を意味するダリット(Dalit)と呼ぶ。カーストの差別を是正する措置として、教育や雇用などで優遇措置が取られている。
※3
山岳地など隔離された場所に居住する民族集団。文化的独自性に富み社会経済的に後進している。教育や雇用などの優遇措置が取られ経済的に保護されている。
※4
非組織部門とは、農業及び零細規模の製造業・サービス業をいう。一方、組織部門は公共部門(中央・州・地方政府の行政機関及び公的企業)並びに一定規模以上の民間企業からなる。

3.3 政府及び関係団体の制度、組織、機能

  1. 第11次計画書及び国家技能開発政策により新たに創設される機関
    • 首相の国家技能開発諮問委員会
    • 国家技能開発調整委員会
    • 国家技能開発協会

  2. 雇用訓練局(DGET)の管理下にある訓練関係機関
    1. DGET
       DGETの役割としては、訓練計画の開発、政策の展開、訓練基準の開発及び手続き、規範、職種テスト、認証を行うための指針の設定が挙げられる。DGETは、6カ所の地域徒弟訓練局を通じ中央政府の事業及び部局において、1961年徒弟法に基づいた徒弟訓練の実施責任を負っている。
    2. 国家職業訓練審議会(National Council for Vocational Training:NCVT)
       NCVTは、雇用者、労働者及び中央・州政府の代表者からなる団体である。各州においても州職業訓練審議会(State Councils for Vocational Training:SCVT)が同じ目的で設立されている。
    3. 中央徒弟制度評議会(Central Apprenticeship Council)
       徒弟訓練計画にかかわる、政策、規範、基準の策定に関して政府にアドバイスを与える最高機関である。
    4. 技術訓練/雇用及び訓練に関する州理事会
       州政府レベルでさまざまな制度の実施に責任を負う。主として職工訓練に取り組むITI及びITCは、この理事会の指揮下に入る。
    5. 州における徒弟訓練アドバイザー
       徒弟訓練アドバイザーは、州政府事業、部局及び民間事業所における職業徒弟訓練に関する徒弟法の実施・運営の責任が課されている。

  3. 人材開発省(MHRD)の訓練活動
     MHRDの職業能力開発制度は、同省教育庁が全責任を負っている。さらに、州政府で同様の官庁があり、教育庁の下にあるNIOSはよく知られている。
    1. 職業教育制度
       共同職業教育評議会(Joint Council of Vocational Education:JCVE)が職業教育制度の調整、政策、立案、見直しのための国家レベルの機関として設立されている。州政府も州職業教育評議会(State Council of Vocational Education:SCVE)を設立している。職業教育分野の調査・開発機関であるPSSCIVE(Pt. Sundar Lal Sharma Central Institute for Vocational Education)中央学院は、職業教育分野における最上級の調査、開発組織として活動している。
    2. MHRDの徒弟制度
       MHRDの下で徒弟教育局がこの制度の計画及び運営に責任を負っている。

  4. 最近の取り組み
    1. 技能開発イニシアチブ制度(Skill Development Initiative Scheme:SDIS)
       労働雇用省は職業訓練の卓越性の追及において、産業界、州政府及び専門家との緊密な協議の下で、雇用可能な技能のモジュール(MES)と呼ばれる技能開発の新たな戦略的枠組みを開発した。MESは、労働市場で職を得るのに十分な最低限の技能セットであり、就職を目的とし、公式又は非公式な職業訓練施設あるいは専門家を通じての学習が可能となる。MESは柔軟なやり方で、技能の向上、多技能化、垂直的移動及び生涯学習機会の取得を可能とする。またMESでは、過去の学習(非公式に取得した技能証明)の効果的な認証も可能となる。
       SDI制度は5年の期間中、MESの枠組みにおいて100万人が訓練を受講、あるいは既に取得した技能を検査、認証されるプロジェクトである。産業界との協議により決定される需要主導の短期MESコースは、当制度の下で提供される。またコースは第5学年を修了したものも受講が可能となる。中央政府が訓練を促進する一方、産業界、民間部門及び州政府は個人に対する訓練を実施する。当制度は、訓練費用の効率化のために、既存インフラの最大限の稼働及び多様な対象グループのニーズに見合うよう柔軟な受講制度(パートタイム、週末、フルタイム、実地教育又は現場外教育)を目指している。全国での訓練の等質性を維持するため、学習教育メディアが開発されている。当制度の顕著な特徴としては、訓練生の技能テストが、公平性の確保のために訓練には関与しない独立した組織あるいは企業団体によって実施されることである。また、当制度の最も重要な部分は、証明書が国内及び国外における政府機関、ビジネス関連組織に承認されることである。VTP(Vocational Training Providers:職業訓練提供者)及び候補者に対しては奨励金が付与され、また訓練予定者の意思決定に情報が役立つようVTPに対して格付けが与えられている。実績が良好でないVTPについては、登録が取消されることもある。
       プロジェクトの実施については、中央政府では最高委員会、州政府では州委員会が助言、指導する。最高委員会は中央政府の労働雇用相を議長として行われ、州委員会は州政府関係機関の長官もしくは第1秘書官を議長として行われる。これら委員会には主な利害関係者の代表者も参加する。DGETの国家プロジェクト管理室(National Project Management Cell:NPMC)及び地域徒弟訓練局(Regional Directorate of Apprenticeship Training:RDAT)における6つの地域管理室では、各州政府及び連邦直轄地区が設置したSDI Cellの管理により計画を実行に移す。州及び連邦直轄地区は、地域の職業訓練提供者との調整や、評価団体に支援を与えるのも政府ITIの役割だと表明している。訓練提供者は、訓練生の雇用を支援し、有給で雇用されるまで追跡調査を行う。訓練終了後の評価で毎年1%の訓練生が資格を取得する。インターネットのソフトは、計画の実施及び監視に使われると同時に、オンラインの職業安定所として就職希望者に仕事の機会を与える。DGETは産業界との協議により雇用可能な技能を特定し、MESコースのカリキュラム、学習教材及び評価ツールを開発する。また、DGETは能力試験を実施する評価団体を指名し、当該評価団体は試験センターに通知し、評価人を選ぶ。
    2. センター・オブ・エクセレンス(Centre of Excellence:COE)へ向けたITIの高度化を目的とする中央政府支援制度
       当制度の目的は、世界標準の多技能労働者を育成するため、100カ所の既存ITIをセンター・オブ・エクセレンスに高度化することである。当制度の重要な点は、1年目に多技能コースを導入し、2年目には上級又は専門モジュールコースを採用していることである。この方式では、訓練のあらゆる面で産業界のより大規模かつ活発な参加を確保するため、産業別の集団的アプローチ、複数受講・複数修了制度及びIMC(Institute Managing Committee:訓練機関管理委員会)の形態をとる官民の連携が採用されている。20の広範な訓練コース及び上級モジュールのカリキュラムは既に完成している。
    3. 世界銀行の支援による400カ所のITIの改良
       400カ所のITIが世界銀行の支援で改良され、2006-07年度補正予算において23の州及び連邦直轄地区にある100カ所のITIが組み込まれた。残りの300カ所のITIは、2007-08年度、2008-09年度予算において選択される。州政府はIMCへの権限委譲、ITI責任者の権限強化、及びプロジェクト期間中からその後まで当制度の実行と継続に深く関与するため、覚書を締結する必要がある。
    4. 官民の連携を通じた1,396カ所の政府のITIの改良計画
       財務大臣は、2007-08年度予算演説において、官民の連携を通じた1,396カ所の政府のITIのセンター・オブ・エクセレンスへ向けた改良計画を発表し、この計画を実現するための施策が策定された。当施策の下で、産業界のパートナーは高度化プロセスを主導するために政府のITIと協力することになる。IMCは、産業界のパートナーあるいはその代表が議長となり、協会として登録されるように構成又は再構成される。ITIの訓練インフラ高度化のため、2,500万ルピーを上限とする無利子融資が直接IMC協会に対して実行される。IMCに対しては、ITIへの入学者数の20%までの選択の権限が付与され、またITIの運営のために財務及び教育の自主性もIMCに与えられる。州政府は引き続きITIの所有権を有し、IMCによって決定される20%の入学者を除いては、入学許可及び学費の規制を継続する。一方、異なる利害関係者の間で合意に関する覚書に署名が行われる。

3.4 予算と財源

 DGET関連プログラムに対する2008-09年度予算案は、表3-1のとおりである。雇用訓練制度の合計予算額は、99億3,440万ルピー で、そのうち訓練関連は98億6,440万ルピー※5、雇用関連は7,000万ルピーとなっている。MHRD及びその他の省庁の下での職業訓練教育分野の政府予算に関する情報で公開されているものはない。また同様に、民間部門、NGOといったその他の機関による職業能力開発事業の予算に関する情報についても政府により推計される仕組みは存在していない。

表3-1 DGET管轄プログラム予算概算(2008~09年) (単位:100万ルピー)
事業計画 推定予算 推定追加予算
1 職業訓練(婦人職業訓練を除く) 中央政府計画 412.45 0
中央政府支援計画 2,627.00 6,750.00
婦人職業訓練プログラム 中央政府計画 74.95 0
合計 3,114.40 6,750.00
訓練関連総合計 9,864.40
2 雇用局 中央政府計画 70.00 0
雇用関連合計 70.00
訓練及び雇用の総合計 (1 + 2) 9,934.40
注:
中央政府計画は、全額中央政府による支出でまかなわれる一方、中央政府支援計画は、中央政府及び州政府共同分担となっている。
※出典:
Ministry of Labour and Employment, Govt. of India, “Annual Report 2008-09”.
http://labour.nic.in/annrep/annrep2008.htm
※5
1インドルピー=2.08円(2009年7月9日現在)

3.5 外国・国際機関からの援助

  1. 世界銀行
     2007年5月、世界銀行は職業訓練改善プロジェクトを承認した。プロジェクトの目的は以下のとおりである。
    • 産業界の積極的な運営参加によるセンター・オブ・エクセレンスとしての500カ所のITIの質の向上
    • ITI指導員に対する訓練の向上
    • 種々の職業訓練関係の調査支援
    • コンピュータ化された管理情報システムを通じてのプロジェクト管理及び実施体制

  2. ドイツ技術協力公社(German Agency for Technical Cooperation:GTZ)
     GTZは、非政府部門に重点を置いた国家職業訓練制度の再構築に関するプロジェクトを支援している。このプロジェクトの下で、就労あるいは自営の準備における技術的技能及び起業能力が育成されている。当プロジェクトは、インド・ドイツ協力による持続可能な経済開発プログラムの優先分野である。当プロジェクトの下で、政府部門、民間部門及びインフォーマルセクターの代表との間の相互承認につながる協力の新しい形態が試されている。例としては、公立学校が職業訓練を目的としてインフォーマルセクターの労働者に開放されるといったことが挙げられる。プロジェクトの活動は、関連機関における試験的手法の構築及び実行に関する助言及び支援に集中している。国、州及び地方自治体は、革新的な訓練モデルの利点及び付加価値を認識しており、それらが動機となって単独で訓練モデルを再現できるようにしている。試験的手法の選択、計画及び監視を通じて、プロジェクトでは男女に同一の報酬が与えられることを保証した。当プロジェクトの主体となる組織は労働雇用省であり、全体の期間としては、2004年1月から2007年12月までであった。

  3. ILO
     ILOは、インドの職業能力開発分野において次の事項に取り組んでいる。
    • 国立雇用サービスの下で、非公式経済関連においてもその役割が果たせるよう、職業安定所の機能を再構築すること。
    • 選別されたNGOを通じた雇用技能モジュール制度の運営
    • DGET、州政府、ITI及び地域NGOとの協力で、生計の選択に関する「津波後のプロジェクト」の運営
    • インドの女性の適正な雇用に関するプロジェクト
    • 非公式経済における女性労働者の適正な雇用と持続可能な生計に関するプログラム
     ILOはまた労働雇用省と連携し、4つの集団に焦点を当てた試験的プログラムの企画及び実施によって技能開発イニシアチブ(SDI)制度の運営をしている。ここでの集団とは、真ちゅう製品、ガラス製品、織物及び家内労働者である。

  4. 国連開発計画(United Nations Development Programme:UNDP)の生計及び生活水準改善のための技能及び知識に関する「SKILLS」プロジェクト
     現在UNDPは、その他のスポンサーや団体と協力し、失業中の若年者の技能開発を目的とする全国的プロジェクトである「SKILLS(Skills and Knowledge for Improved Livelihood and Living Standards:生計及び生活水準改善のための技能及び知識)」プロジェクトを実施中である。当プロジェクトのウェブサイトが2007年10月18日に立ち上げられたが、その目的は、賃金労働者及び自営業者の双方に役立つ職業訓練コース及び職業の情報提供としての役割を果たすことである。ウェブサイトでは、いくつかの職業における訓練教材、道具一式の詳細及び技能について情報が提供されると同時に、これらの職業の訓練機関及び当該機関のインフラ、能力に関する詳細情報も提供される。ウェブサイトに利用者登録することによって、新たな職業訓練教材、関連物品、白書、及びコミュニティーに役立つ他のいかなる情報にも貢献できる。

  5. 米国国際開発庁(United States Agency for International Development:USAID)
     USAIDは、2006年に首都、マハラシュトラ州及びジャルカンド州で実施された研究と同様の実験研究を基礎とした「若年失業者の雇用機会及び課題」に関するプロジェクトの実行中である。プロジェクトの中心は、第10学年及び第12学年レベルでの学校中途退学者に対する技能開発である。

3.6 職業能力開発の政策評価

 第11次計画書が強調する技能開発制度の質的欠陥は、次のとおりである。

  • 需要と供給のミスマッチにより、労働市場に仕組みが対応していない。
  • 低水準のインフラ設備、教員、カリキュラム、権威のない試験及び資格認定制度による品質の問題
  • 地域及び経済格差

 世界銀行の「職業訓練改善プロジェクト(2007年5月)」の報告書では、次のようなインドの職業能力開発に関連した評価が提供されている。
 DGETによる職工訓練制度卒業生の内、30%以下が卒業時に職を得るに過ぎず、雇用機会が貧弱である。これらの卒業生は、基礎となるチームワークあるいは改善を行う意欲等のソフト面の能力に欠けており、この結果、就業が困難となると雇用主は考えている。同報告書では、次のような問題点を指摘している。

  1. 制度の運営及び管理における分断化
     制度の運営及び管理は、中央政府(NCVT)及び州政府(SCVT)で分担されており、両政府の機能は明確に規定されているにも関わらず、責任を分担するための協力体制はほとんど取られていない。異なる組織が同様の機能を果たしており、努力の重複が見られる。
  2. 訓練に関する情報不足
     訓練の提供と資金に関心を示すあまり、政府は訓練プログラムの有用性及び効果に関する情報の提供という重要な役割を怠っている。
  3. 職業訓練制度において産業界の参入不足
     最近まで、訓練政策あるいは研修内容の開発について、雇用者側の参加が限られていた。現在では変化が見られ、産業団体あるいは個々の経営者はITIの発展及び運営に自らが関与することにかなりの興味を示している。
  4. 訓練機関レベルで実績を改善するための動機不足
     訓練機関には、学生を満員にする、新しい職業訓練コースに切り替える、学生に対する質の良い訓練の保証といった運営に関する自由がほとんどない。
    これらの難題は、長期的な課題であると同報告書は指摘している。システムが計画経済時代の閉鎖的なものと類似し、時代遅れであることが認識されたことから、中央政府は政策展開、基準の策定、資金、監視及び評価において、政府が重要な役割を果たすシステムへ向けた改革を行うことに意欲的である。その一方で、訓練機関はより競争心や説明責任が増すという事態が起きている。
  • 世界銀行職業訓練改善プロジェクト覚書
     2008年9月6日~10月3日まで、プロジェクトの第1回共同見直しミッションが実施された。これは、世界銀行、DGET、計画委員会及び産業界代表が協力して実施され、産業界からはインド工業連盟(CII)、インド商工会議所連合会(FICCI)、インド商工会議所協議会(ASSOCHAM)が参加した。ミッションの覚書は次のとおりである。
    1. 2007-08年度に250カ所のITIを選択する目標は首尾よく達成された。当プロジェクトで資金援助する400カ所のITIから、これまでに331校のITIカ所が選定された。
    2. 国家推進会議(NSC)及び州推進会議(SSC)では、民間部門代表者の参加と、そうした団体が積極的な役割を果たすことを規定している。
    3. バンガロールの高度先端技術研修所(Apex Hi-Tech Institute:AHI)は、最高の民間訓練を提供する10団体にセンター・オブ・エクセレンス(COE)の指導員訓練を委託し始め、約200人のCOE指導員が訓練を受けた。AHIはCOE指導員訓練のため、12分野の指導員訓練カリキュラムを作成する。
    4. 国家職業資格枠組みについて、2つの協議、提案が行われる。
    5. ITIの大半はCOEへの高度化のために工業、製造業を選択し、技能労働者の需要が高いサービス業を選択するITIはごくわずかである。
    6. COEに入学する学生は、1種類のみの職業訓練と比較してCOEは優れていると認識している。彼らは、異なる制服と学生証を持ち、良い訓練機材や設備が与えられ、場合によっては良い雇用が見込めると自負している。しかし、専門モジュールに基づく産業の学習は限定されており、機械について十分な実務経験が得られず、産業界と学習ニーズが一致していないと彼らは考えている。
    7. 州政府とITIは、産業界において学生に学習機会を与えようとしているが、その一方で学習成果は十分に観察されていない。当ミッションでは、専門モジュールの幅広い学習成果を明らかにし、ITI関係と各産業の双方が学生の学習成果を綿密に観察するよう提言する。
    8. 産業界はCOEプログラムを有益だと理解しつつも、COE卒業生の能力には限界があり、雇用に結びつけるためには能力を強化する必要があるとする。産業界が求めるのは、コミュニケーション能力、チームワーク、積極的な姿勢、時間厳守を身につけ、安全衛生問題への知識や業界に関連した環境マネジメントへの理解がある学生である。
    9. 新しいプログラムであるCOEは、ITIに入学を志望する学生にも広範な産業団体及び潜在的雇用者にもほとんど知られていない。広範な基礎訓練(Broad Based Basic Training:BBBT)及び上級モジュール訓練を卒業した学生は、多くの産業で多技能の強みが認められていないと感じている。COEの周囲にソーシャル・マーケティング※6が欠如していることは、入学者数や卒業生の雇用に悪影響を与えるだろう。中等学校や短期大学から学生を引き付け、かつ雇用者団体、産業界に幅広く認知されるよう、COEはソーシャル・マーケティングを構築する必要がある。
    10. COEの2006-07年の中途退学者は、全国平均で約18%と非常に高い。この理由として、ITIの周囲に関連産業が集中していないこと、特定分野での就職の機会に関する学生の認識不足、指導員不足や不十分な訓練設備に起因する低品質の上級モジュール訓練があげられるだろう。
    11. ITIの全プロジェクトには訓練機関管理委員会(Institute Management Committees:IMC)が構成され、IMCには民間部門の参加が必要とされる。IMCは、州によっては活動的な場合もあるが、一般的には義務であるにもかかわらず受身的で、組織的な開発プロセスへの参加に関心がある。
※6
社会全体の利益向上を目的としたマーケティング。従来のマーケティングが企業と顧客の関係であったのに対し、その間に社会や生活が存在する。

3.7 職業能力開発の実施概況

  • ITI、ITCで実施されるさまざまな職工訓練及びDGETが実施するその他訓練については、ウェブサイト(http://dget.nic.in/lisdapp/nvtis/nvtis.htm)を参照のこと。
  • NIOSにより提供される通信教育コースの包括的な情報については、ウェブサイト(http://www.nios.ac.in/vocation.htm)を参照のこと。
  • 職業能力開発において、インターネットを活用した訓練コースは、現在、特に大きな動きは見られない。

3.8 公共職業能力開発実施機関

 以下の情報は、プネにある政府の産業訓練研修所ITI Aundhにより提供されている。

3.8.1 目的、組織、施設等

 ITI Aundhは1946年に設立され、マハラシュトラ州によって運営されるインドで最大級のITIの1つである。同時に設置された運営委員会(IMC)は、産業界のタタ自動車理事を議長とし、また、プネの地域産業代表により委員会が構成されている。日々の管理責任は校長に権限が与えられ、副校長4名、徒弟訓練アドバイザー2名、教務係1名、医務員1名、グループ指導員11名、訓練職員3名のほか、手工芸指導員を含む245の職務による体制がとられている。
 ITI Aundhは、800㎡の校庭を含め、総面積が約12万6,600㎡である。構内には、実習設備のある教室26室、作業所4カ所、上級職業訓練棟、図書館、集会場、学生食堂、診療所、卒業生運営の協同組合がある。ITI Aundhで実施される職業訓練に従って、利用可能な重要装置一覧がウェブサイト(http://dget.nic.in/lisdapp/nvtis/nvtis.htm)から入手できる。
 その他、以下の装置及び施設が利用可能である。

  • Pentium4搭載PC25台、マハラシュトラ州IT計画認定の100mbps LAN、256kbpsブロードバンド接続
  • シーメンス、キルロスカ、ファナックのCNC訓練用機械、CNCドリル
  • タタ自動車寄贈の自動車エンジン1基
  • ホンダ・アクティバ寄贈のスクーター
  • 環境に配慮した冷却装置における人材及び組織開発機関(Human & Institutional Development in Ecological Refrigeration:HIDECOR)プロジェクトの下での冷却装置
  • 産業界寄贈の最先端PLC

3.8.2 主要教材、予算と財源、訓練コース、訓練方法

  1. 主な教材
     ITI Aundhの教材には、それぞれのコースの原材料、消費財及びプラント、機器の維持のための部品等が含まれる。

  2. 予算
     ITI Aundhの年間総予算はおよそ3,200万ルピーであり、上級職業訓練及び生産指向訓練などを通じて、部分的にITI Aundh独自の収入を得ている。

  3. コース
     ITI Aundhでは次の体系に基づき訓練コースが実施されている。
    1. 職工訓練
    2. 徒弟訓練
    3. 上級職業訓練
    4. 高度技術訓練
    5. 生産指向訓練
    6. 国民サービス(技能者がボランティアで訓練を実施)
    7. Lokseva Kendra※7(公共サービスセンター)
    8. 要望に応じた職業訓練
    9. マハラシュトラ州認定IT訓練
    10. CNC訓練センター
    11. センター・オブ・エクセレンス(自動車部門)
     職工訓練コースに関する情報は表3-2のとおりである。

    表3-2 ITI Aundhの職工訓練コース
    コースの種類 コース数 人 数 単 位
    技術職3年コース 3 80 5
    技術職2年コース 19 686 46
    技術職1年(工業)コース 8 240 16
    技術職1年(非工業)コース 7 144 9
    ※出典:
    ITI Aundh, Govt. of Maharashtra, “Craftsman Training Scheme (CTS)”,
    http://dget.nic.in/coe/main/ITI.ppt (accessed July 9, 2009).

     NCVTは2009年8月以降に実施する全職種の訓練に、新たなモジュールとして品質管理ツール、ITリテラシー※8及び言語熟達度の導入を決定した。
    1. 徒弟訓練
       87業種で徒弟訓練が実施され、定員1,420名のうち、1,227名が訓練を受けている。
    2. 上級職業訓練(AVTS)
       AVTSの下での訓練は1977年に開始され、年間207名が訓練を受けた。コースは次のとおりである。
      1. 上級工作機械メンテナンス(機械系)
      2. 上級工作機械メンテナンス(電気系)
      3. 計測及び技術検査
      4. 工具及び金型製作
      5. 油圧及び空気圧
      6. 技術工学の導入
      7. 印刷技術
      8. 高度プラスチック加工技術
    3. 高度技術訓練
       訓練は1997年に開始され、年間1,212名が訓練を受けた。コースは次のとおりである。
      1. 工業オートメーション
      2. オートCAD
      3. アナログ及びデジタル電子
      4. PCメンテナンス
    4. 生産指向訓練
       当訓練では、訓練生が企業のために仕事を行い、収益を上げている。仕事の種類は次のとおりである。
      1. 機械加工
      2. 製作
      3. 家具製作
      4. 溶接
      5. 塗装
    5. Lokseva Kendra
       当制度では、未組織部門や学校中途退学者に短期訓練が実施される。訓練は1日2時間、1~2カ月間実施される。また、オートバイ運転学校も設立され、1カ月半の訓練が実施される。年間300名が訓練を受けている。
    6. 要望に応じた職業訓練
       指定カースト訓練生に無料で訓練が実施される。対象分野は溶接、電気配線、乗用車運転、2輪車及び4輪車の修繕、裁断及び裁縫、携帯電話修理、ハードウェア及びPCメンテナンス、CAD、製作などである。また、2日間の起業家訓練も提供される。
    7. 国民サービス
       選ばれた200名のボランテイアがさまざまな分野で訓練を行う。
    8. マハラシュトラ州認定IT訓練
       2001年にITI Aundhで開始され、これまでに2,450名が訓練を受けた。
    9. 職人を技能労働者へ
       石工、配管工、大工といった未組織部門で技術を身につけた労働者に技能試験を実施する。認定証は合格者と共に企業にも与えられる。
    10. 高度溶接国際訓練センター
       高度溶接国際訓練センターは、JCバンフォードと共同で運営され、訓練期間は3カ月である。年間20名の訓練生が溶接工の訓練を受け、4名が溶接工指導員として訓練される。
    11. コールセンター支援訓練
       関連企業のインストラクターの援助を得て実施され、訓練期間は1カ月半である。
    12. HIDECOR訓練
       HIDECORでは、冷却及び空調設備のサービス技術者を対象とした2日間訓練プログラムが実施される。この訓練は、インド環境森林省(MOEF)のフロン消費の段階的削減計画の下で行われている。この数年、インド環境森林省のためにスイス政府がHIDECORプロジェクトの下で同様の訓練プログラムを実施した。全体で2,000名以上が訓練を受けた。
  4. センター・オブ・エクセレンス
     ITI Aundhは自動車産業群に囲まれていることから、DGETのセンター・オブ・エクセレンスの自動車部門として選ばれた。部門委員会が結成され、カリキュラムの作成、インフラ整備が行われ、教員もセンター・オブ・エクセレンス制度の基準で選ばれた。また、選抜された教員のために2日間のワークショップも行われる。センター・オブ・エクセレンス制度の下に、自動車部門における1年間の広範な基礎訓練(BBBT)と6カ月の上級モジュール訓練が実施される。
  5. 追加情報
    • 地方議会職員と高等学校教師の計2,000名がコンピュータ訓練を受けた。
    • インド石油化学公社(Indian Petrochemical Corporation Ltd.)の90名のオペレーターがAVTSの下で訓練を受けた。
※7
貧困層の雇用を促進し、生活水準を向上させる活動を行う。
※8
IT(Information Technology:情報技術)を使いこなす能力のこと。コンピュータリテラシーと同意。

3.8.3 代表的なカリキュラムとその開発方法、教材とその開発方法、指導員、訓練生の募集、訓練生に対する優遇措置

  1. カリキュラム
     NCVTに準拠した職種教科のカリキュラムは、DGETが構成する職業委員会によって作成されている。職業委員会は、産業界、教育界及びCentral Staff Training & Research Institute(CSTRI)等の現地DGETの代表により構成される。職業委員会が推奨する教科項目がNCVTによって承認される必要がある。これらのカリキュラムの教科書は、国内各地の書店で購入が可能である。

  2. 教材
     職種教科ごとに、IMP(Instructional Media Packages:教育メディア・パッケージ)が国立教育メデイア協会(前・中央教育メディア協会)により作成され、職種の実務、理論及びテスト・課題の3冊に分かれている。このほかに、標準的なIMPは、指導員の指導書、チャート等の視覚教材、参考書及び双方向の指導教材で構成されている。IMPは有料であり、学生及び指導員のために書店等で販売されている。

  3. 指導員教材
     各職種の学生には単位ごとに1名の技術指導員がおり、技術指導員はITI卒業者又は学位保有者である。

  4. 訓練コースへの申込み
    1. 入学募集の開始日に年齢が14~40歳の志願者は、ITI及びITCに入学する資格を有する。入学志願者が退役軍人、障害者及び戦争未亡人の場合は、年齢制限の上限が緩和される。
    2. 入学に必要となる学歴は第8~12学年とさまざまである。それについては職工訓練が適用される職業の一覧に示されている。
    3. 各州/各連邦政府直轄領の人口に比例した指定カースト及び指定部族に属する志願者、障害者、退役軍人(とその子供)並びに女性は、優先的に入学できる。
    4. 各学期の開始時期の相当以前から、志願者の入学選考は開始される。入学選考は、志願者が個々の職業で定められた最低水準の公的試験において取得した成績に基づき行われる。
    5. 職工訓練制度を担当する各州の理事会、もしくはITI/ITCの校長から入学案内書が与えられる。
    6. 学期の始まりは、毎年、2月1日と8月1日である。

  5. 訓練生に与えられる特典
     ITI Aundhには2つの学生寮が設けられ、収容定員は合計600名である。技術図書館があり、1万3,000冊以上の本が所蔵されている。訓練生や職員の要望に応じて仕出しをする食堂施設、診療所、卒業生が運営する協同組合も備わっている。

  6. 求職支援
     ITI Aundhには正式な就職斡旋課はないが、産業界との強い連携により卒業生が好条件の就職を得ることを支援している。

3.8.4 修了生の取得資格、修了生へのアフターケア、修了生の就職状況

  1. 資格
    • 規定期間内に職業訓練を修了し、NCVTによる試験に合格した訓練生には証明書が授与される。
    • ITI卒業生の中には徒弟法の下で徒弟訓練に選ばれた者もいる。これらの訓練生には、中央政府徒弟制度審議会の試験に合格した場合、国家徒弟訓練終了証明書が与えられる。
    • SCVT提携コース受講者には、SCVT資格証明書が与えられる。

  2. コース修了者へのアフターケア
     訓練修了者に対する正式なアフターケアのシステムは存在しない。また、卒業者に対する追跡調査も行われていないが、非公式ながら修了後1~2年以内であれば就職情報を得ることができる。卒業生は、就職状況を継続的に報告するよう要請されるが、必ずしも報告されておらず、特別な場合を除き卒業生との連絡は徐々に消える傾向にある。

  3. 修了者の進路
     修了者の進路に関する情報は、一般に公開されていない。

3.9 民間企業が行う職業訓練への支援体制

 民間企業が職業訓練に対する支援を提供するいくつかの事例がある。この支援には、1) 徒弟訓練の支援、2) ITI、技術専門学校及び技術単科大学との連携、3) 財政支援の形態がある。例えば、Eicher Motors社は、製作所近くの4カ所のITIを選び、各ITIに25~30万ルピーの寄付を行い、また同社の費用でディーゼル・エンジンが提供されている。選択されたITIの指導員が製作所に派遣され、製品及び製造工程を学んでおり、徒弟訓練の下での関連教科クラスが1週間に1度、製作所内において実施されている。
 Maruti Udyog社及びハリアナ州にあるほかの3企業は、4カ所のITIの質の向上を目的としてハリアナ州政府と覚書に調印している。これらの企業は、学生及び指導員に対して現場訓練を行い、また視覚教材及び主要言語による教材作成、教科書、詳細な職務割当等、教材の品質向上を指導している。産業界は地場産業の必要性に応じ、教科内容を最新のものに改定し、州政府を通じてNCVTに実施するよう提案している。また各企業は、訓練終了後の就職も支援している。
 このほかの例としては、若年者のためのTTEP(Toyota Technical Education Program:トヨタ技術教育プログラム)が挙げられる。トヨタ・キルロスカ・モーター社は、ニューデリー、ムンバイ、フブリ及びチェンナイ各地域にある職業訓練学校1校ずつと職業訓練で提携を結んでいる。これらの学校は、15~18歳の若年者に機械部門に関する集中訓練を提供している。同社は、10年後にはプログラムを5倍に増やし、また学校も20校まで増やす計画を持っているが、2億5,000万ルピー(550万米ドル)を投資し、施設の改修、書籍及びマニュアルを提供し、技術訓練を行う計画もある。また、維持、診断、修理に関する独自のシステムに関して、同社の費用で資格保有の訓練指導員に対する訓練も目的としている。一方、10年後には卒業生を1,000人にする予定であり、彼らはトヨタ社認定の11カ所のディーラーでOJTを受講する。このプログラムは、同社が50カ国、393カ所の訓練学校と提携し展開しているプログラムの延長線上にある。
 SGTB ITCは、トヨタ社がTTEPで認定した職業訓練校のひとつであり、トヨタ社と同校が調印した覚書に基づいて、自動車機械受講の2年生19名がデリーのギャラクシー(サービスセンター)において週1日の現場訓練を受け、学校でも提供されたオーディオ設備のある教室及び最新エンジンの備え付けられた訓練施設を使用し、トヨタ社用の工具を使い、モデル車の組み立てができる等の現場訓練が行われている。また、SGTB ITCの指導員に対しては、ギャラクシーにおいて導入訓練が提供される。なお、卒業試験に合格した学生はギャラクシーで正社員として雇用される。
 「若年失業者のための雇用機会と課題」(2006年)の報告書によれば、雇用者は学生が正しい教材を学習し、学生、指導者双方が実務的な経験を積むことを保証するために、頻繁かつ直接的な介入を実行している。例として、ホテル学校を運営しているタージホテルとタタ社の子会社により運営されている2つのトップクラスのITIが挙げられている。当報告書により挙げられているその他の団体としては、CIDC(Construction Industries Development Council:建設産業開発評議会)があるが、建設関連教科における個人の技能の評価、構築及び証明を目的とするプログラムを実施中である。

3.9.1 公共職業能力開発機関による支援

  1. 施設と訓練費の支援を行っている機関
     既に説明したとおり、ITI Aundhは、産業界のために訓練施設を提供している。

  2. 訓練指導者の派遣
     ITI Aundh は、HIDECOR、環境森林省によるNCCoPPプロジェクトにおいて訓練指導員の訓練を目的として指導員を派遣している。

  3. オーダーメイド訓練コース
     ITI Aundhは、運営委員会の計画の下、企業の要請に応じたオーダーメイド訓練コースを作成し、実施する柔軟性を持っている。

3.9.2 その他

なし


参考文献

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    http://dget.nic.in/lisdapp/nvtis/nvtis.htm
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    VTIP_Aide_Memoire-FIRST-JRM.pdf

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