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インド

作成年月日:2009年8月9日

雇用労働事情

2.1 労働市場の状況

2.1.1 過去3年間の労働力人口、就業者数、失業者数及び失業率

  1. 労働力人口
     中央政府統計計画履行省(Ministry of Statistics and Programme Implementation, Govt. of India)傘下の全国標本調査機構(National Sample Survey Organization:NSSO)が2005年7月~2006年6月に実施した第62回標本調査によると、経済活動人口と呼ばれる15~59歳の男女の人口は農村地域では総人口の58%、都市部では65%を占めている。同調査機構の用語上の分類では、労働力人口は労働力と呼ばれ労働を提供する、もしくは労働の提供を希望する経済活動人口を意味しており、これには就業者、就業を希望する労働力(失業者)も含まれる。1,000人当たりの労働人口については、活動状況により4つの異なる推定値が規定されている。
    1. 経常雇用形態(Usual Principal Status:UPS)・・・385人
       調査実施前の1年間に比較的長期にわたり就業した者、もしくは長期間仕事を探していた者の人口に基づく推定値
    2. 経常雇用形態(UPS)+ 臨時雇用形態(Subsidiary Status)・・・423人
       調査実施前の1年間に比較的長期間就業もしくは仕事を探した者の人口に加え、期間中30日以上就業した者の人口を加えた推定値
    3. 週単位雇用形態(Current Weekly Status:CWS)・・・398人
       調査前の1週間に1日1時間以上の就業、もしくは1日1時間以上仕事を探した者の人口による推定値
    4. 1日単位臨時雇用形態(Current Daily Status:CDS)・・・375人
       調査期間中の1日の平均労働者数

    表2‐1 就業形態別1,000人当たりの労働力人口(単位:人)
      農村部 都市部
    男性 女性 平均 男性 女性 平均
    経常雇用 551 229 394 561 131 356
    経常雇用及び臨時雇用 561 314 440 566 152 368
    週単位雇用 548 265 410 562 143 361
    1日単位雇用 536 219 381 557 131 353
    ※出典:
    NSSO, “Statement No. 15 of the NSS 62nd round Report”.

     上記表により農村地域の約44%が経常雇用形態の労働者に属する一方都市部では36.8%である。経済的活動人口の残りは明らかに就業の機会がない。さらに、現状の推定値では就業人口の一部が就業の機会を失っているが失業中とは報告しないため、低い数字が推定されている。

  2. 就業者数
     NSSOでは就業者数を労働力と規定している。週単位雇用形態(CWS)及び1日単位雇用形態(CDS)に基づく推定値は、年間の断続的な活動パターンの変化による影響を反映している。CDSの場合は1週間内に生じた変化を反映している。CWSとCDSの違いは当該週において雇用を得た者の不完全就業状態を示している。

    表2‐2 人口1,000人当たりの就業者数
      農村部 都市部
    男性 女性 平均 男性 女性 平均
    経常雇用 537 224 384 534 121 336
    経常雇用及び臨時雇用 549 310 433 540 143 350
    週単位雇用 524 257 394 529 132 339
    1日単位雇用 491 202 351 513 118 324
    ※出典:
    NSSO, “Statement No. 15 of the NSS 62nd round Report”.

  3. 失業者数
     表2‐3は雇用形態に基づく農村、都市部別失業者の推定値である。

    表2‐3 労働力人口1,000人当たりの失業者数
      農村部 都市部
    男性 女性 平均 男性 女性 平均
    経常雇用 14 5 10 27 10 19
    経常雇用及び臨時雇用 11 4 8 25 10 18
    週単位雇用 24 9 16 32 11 22
    1日単位雇用 44 16 31 44 13 29
    ※出典:
    NSSO, “Statement No. 15 of the NSS 62nd round Report”.

  4. 過去3年間の失業率
     表2‐4は週単位雇用(CWS)に基づく連続3期間の推定失業率を表すが、この数値は経常雇用形態に基づく数値より保守的な推定値である。 なお、仕事が季節的要因から年間を通じて就業していない者もいるが、彼らは不完全就業者の範疇に含まれている。逆に、自営業者など一部の就業者は年間を通じて働いており、労働者に数えられているが、期待する十分な収入を生み出していない場合もある。

    表2‐4 推定失業率     (単位:%)
      期間 農村部 都市部
    男性 女性 男性 女性
    第60回 2004.1~2004.6 4.7 5.7 4.5 9.0
    第61回 2004.7~2005.6 3.8 4.2 5.2 9.0
    第62回 2005.7~2006.6 4.3 3.3 5.8 7.7
    ※出典:
    NSSO, ”Statement 16R & 16U in NSS 60th Round Report; Statements 6.1 of the NSS 61st

2.1.2 業種別労働者数

表2‐5 国際標準産業区分(ISIC-3次)による産業別労働者数 (単位:百万人)
産  業 労働者数
(1) 農業、狩猟、林業 250.4
(2) 漁業 (1)に含める
(3) 鉱業、採石業 2.6
(4) 製造業 50.0
(5) 電気、ガス、水道業 1.3
(6) 建設業 23.9
(7) 卸売、小売業、自動車、オートバイ修理、家庭用品修理 44.0
(8) ホテル、レストラン (7)に含める
(9) 運輸、倉庫業、通信業 16.3
(10) 金融仲介業 (7)に含める
(11) 不動産、賃貸業、その関連事業 (7)に含める
(12) 行政、防衛、強制社会保険 (7)に含める(防衛を除く)
(13) 教育 (15)に含める
(14) 医療、社会的事業 (15)に含める
(15) その他地域、社会、個人サービス活動 39.7
(16) 従業員のいる家内工業 (15)に含める
(17) 国外組織 0
合  計 428.2
※注1
「応用人材調査研究所」の「人材プロファイル・インド年鑑2007年」に基づく2004~5年に関するデータであり、2009年8月における最新版から産業部門別推定総雇用数、産業別総雇用数の割合から筆者が計算したもの。
※注2
防衛については公表されていない。

 NSSOの第62回調査報告書における産業別労働者に関する最新情報は表2‐6に示しているが、絶対数の推定値ではなく1,000人当たりの推定値にとどまる。

表2-6 主要産業別労働者1,000人当たりの常勤労働者数(2004~05年)
  農村部 都市部
男性 女性 男性 女性
第一次産業 652 813 63 148
第二次産業 165 120 343 330
第三次産業 183 68 594 522
総 計 1,000 1,000 1,000 1,000
※出典:
NSSO, “Statement No. 20 of the NSS 62nd round Report”.

 「Statistic Outline of India07-08(188)」では2004年の組織部門の総被雇用者は2,644万人、このうち1,820万人が国営、州営企業で、824万人が民間企業で就業していると報告されている。組織部門(Organized Sector)とは、すべての国営企業及び農業以外の10人以上を雇用する企業を意味する。したがって、組織部門はすべての公共企業を含むが、民間部門のすべてを含むものではない。組合、団体、同業者組合も非農業部門で10人以上が雇用されている場合は組織部門に含まれる。一方、非組織部門(Unorganized Sector)とは、組織部門未満の規模の場合や、労働者が臨時雇用の場合、あるいは、識字能力が十分でないなどの何らかの問題で労働者共通の利益を追求する組織に参加できない労働者と定義されている。たとえば1~2名の従業員を雇用し、テレビの修理店のような個人商店を非組織部門と称している。すべての産業における2004年の組織部門労働者の詳細を表2‐7に述べる。

表2‐7 産業部門別組織部門の雇用数
産業部門 総雇用数(単位:千人)
農業、林業、狩猟業、漁業 1,410
鉱業、採石業 1,095
製造業 5,678
電力、ガス、水道業 921
建設業 977
卸売、小売業、ホテル、レストラン 532
運輸、倉庫、通信業 2,896
サービス 12,934
※出典:
Tata Services, Department of Economics and Statistics, “Table 188 of Statistical Outline of India 2007-08”.

  1. 第11次5カ年計画
     インド政府、計画立案委員会(Planning commission)による第11次5カ年計画(2007年4月~2012年3月)では、経済における就業行動評価の重要な問題は、組織部門のみならず非組織部門の雇用の拡大であると述べられている。しかし、過去数年にわたって国内GDPの高い伸びにもかかわらず組織部門の雇用は1994年から2005年ではむしろ0.3%減少しており、就業機会が増大すると期待した教育を受けた若年層の間では欲求不満が高まっている。 雇用の減少は主として国、州の公共部門で見られ、民間部門では雇用が拡大しているものの、公共部門での減少を相殺するほど十分ではない。増大する労働力を吸収するほど十分かつ良好な労働条件を持ち、生産的、有益な雇用を創出して、包括的な経済成長を達成するための戦略が重要である。
     インドの雇用状況における最大の弱点は、労働市場への新規参入者を吸収する質の高い雇用機会を創出できていない点である。質の高い、良好な労働条件を備えた雇用を最大限に創出することを通じてのみ、経済成長による利益を公平に分配することができる。持続的な雇用創出のためには、さまざまな部門、職種、異なる目標グループの必要性の特定に重点を当てた新たな政策が必要である。
     第11次5カ年計画では、期間中における労働者の目標増加数を4,500万人とし、さらに5,800万人の雇用機会の創出を目標にしている。計画期間中に現状労働人口の6割を占める農業部門は雇用増進には貢献しないと予想され、雇用創出のためには農業部門の余剰労働力を高所得の非農業部門に移動させるといった戦略が必要である。そのほか、同計画では特に食品加工、皮革産業、靴、繊維、木材加工、宝飾品産業、手工芸部門、旅行業、建設など労働集約型の製造及びサービス部門を雇用創出の対象に挙げている。政府は2009~2010年のGDPを、世界経済が回復すれば7.75%、景気後退が長引けば6.25%と予測している。

  2. 国家雇用政策(National Employment Policy:NEP)
     国家雇用政策の草案は、インド政府の雇用訓練局(Directorate General of Employment and Training:DGET)のウェブサイトに掲載されており、政府の雇用問題に関する考え方を示している。草案の内容は下記の3項目から構成されている。
    1. 前文
      雇用は政府の数年にわたる重要な関心事項であり、依然として雇用創出のための包括的戦略が必要である。雇用目標をインドの社会及び経済開発戦略の中心に据えることが重要である。 NEPの目的は、労働者に有利な所得と適正な雇用を確保する枠組みを備えることである。
    2. 政策提言
      • マクロ経済政策
      • 部門別政策
      • 労働市場政策
      • 零細企業、小規模企業の発展政策
      • 技能開発政策
      • 女性労働者
      • 弱者労働者
       雇用拡大の成長モデルの基本計画は、高い潜在雇用を有し、早期成長が期待される部門を中心に部門別重点アプローチを採用すべきである。財政、金融政策、信用供与政策などは雇用に結びつくよう配慮して直接的な取り組みを実施する。草案では下記の部門が高い雇用の潜在性を持つと認定し、これら部門に対する個別の政策策定の方向性が述べられている。
      • 農業
      • 製造業
      • 建設業
      • 小売産業
      • 旅行業
      • 情報、通信技術
    3. 実施とモニター
       雇用がマクロ経済の成長戦略上の中心課題であり、政策主導の成果をモニターする制度上のメカニズムを開発すべきである。 また、雇用影響評価(Employment Impact Assessment)システムを開発し、主要なマクロ経済発展に関するすべての前提条件とすべきである。

  3. 構造改革の課題
     TeamLease社が作成した「インド労働報告書2008」では、雇用のマッチングに関する雇用改革、需要と供給のミスマッチを改善する雇用可能性の改革、需要に適した人材を育成する教育改革の3つを挙げている。それぞれの課題について次のような提案が示されている。
    1. 雇用改革
      • 求人情報の公表を義務化する制度を転換し、カウンセリング、徒弟制度、求人と職業能力証明書を提供するキャリアセンターに一元化する。
      • 技能中心の雇用を強化するため労働法の概念を見直す。
      • 組織化企業による雇用拡大を図るため、労働法の現状の規定、許認可などを簡素化する。
    2. 雇用可能性の改革
      • 実践による学習と収入を得ながら学ぶことを推進するため1961年徒弟法を改正する。
      • 州ごとに技能を発展させる技能ミッションの設立を奨励する。
      • 技能開発のための国家枠組み及びインフラを創設し、職業体系、評価、職業証明書を整備する。
      • 技能開発で企業、個人のためにプロジェクト資金を創出する全国技能公社の活動を強化する。
      • 英語能力を持つ応募者はこの能力を持たない者と比べ就職機会が300%と高いことから、さらなる英語学習を推進する。
    3. 教育改革
      • 公立学校の教師に対し、教育の結果に応じた報酬、あるいは懲罰などを行う業績評価制度を導入する。
      • 英語を含めたバイリンガルは職業技能の取得及び雇用のための重要な要素であることから、教師のバイリンガルによる指導を強化する。
      • 単位を適切に移転することにより、職業訓練学校、カレッジ、学校間で学生が双方向に移動できる国家資格枠組みを創設する。
      • 最高レベルの教育統制局を設立する。
      • 政策枠組みを能力の認証制度から学習成果及び品質を図り公表する方向に移す。

  4. ITを利用した雇用情報管理
     インド政府は農村・都市間の雇用の需給及び教育レベルと収入、各州にまたがる需給を網羅したIT雇用情報システムの構築を計画している。このシステムには技能レベルの情報も含まれる。

2.1.3 新規学卒者の就職状況

表2‐8は異なる教育水準別の常用就業者の比率を示している。

表2‐8 15~29歳グループの正規被雇用者の比率(単位:%)
  農村部 都市部 全体
識字能力のない者 62.8 46.5 60.7
初等教育まで 63.7 55.1 62.2
前期中等教育 52.5 42.5 49.4
後期中等教育 40.6 28.6 36.5
高等教育 37.5 22.4 30.9
学位修了者 61.5 46.5 53.3
大学卒業生 53.0 41.9 46.6
※出典:
NSSO, “Statement No. 17 of the NSS 62nd round Report”.

 義務教育の終了年齢は14歳で、インド工場法(Indian Factories Act)では就業開始年齢を14歳と規定している。インドの国会では、5~14歳までのすべての子供が無料で義務教育を受ける権利に関する法案が通過している。すべての学校は国家カリキュラムに対応し、必要なインフラを整備するため3年間の猶予が与えられている。
 第11次5カ年計画によれば、労働年齢人口に対する依存率(Dependency Ratio)は1991年の80%から2001年には73%へと低下し、今後さらなる低下が予想されている。この傾向は労働人口依存率が上昇している先進国や中国に比べ、人口統計上大きな違いを見せている。依存率は労働年齢人口に対する依存人口の比率と定義され、依存人口は15歳以下と65歳以上の総人口である。一方、労働年齢人口は15~64歳の年齢グループで2006年の依存度は59%(2007~2008年インド統計概要中のデータを基に計算)で、インドの依存率が低下している理由は過去の出生率が高く労働年齢人口が増大していることによる。 今後20年間さらに多くの人口が労働年齢層に移り、その結果依存率が次第に減少する。2006~2007年の出生率は1,000人当たり23.5人である。インドにとって、依存率の低下はコスト比較で有利であり、この比率が段階的に下がることにより、インドの競争力が今後25~30年間改善する。インドは世界で最も若い労働力を持ち、高年齢層が上昇する経済では世界的に技能労働者が不足するため、もしインドが若年人口から技能労働者を輩出すれば世界的な人材の宝庫となり、こうした不足をインドが埋めることができる。

表2-9 労働年齢人口(15~64歳)に対する依存人口の依存比率
  2006年 2011年 2016年 2026年
0~14歳 360 340 337 327
15~64歳 702 850 908 957
65歳以上 52 78 95 116
依存人口 412 418 432 443
依存率 59% 49% 48% 46%
※出典:
Tata Services, Department of Economics and Statistics, “The Statistical Outline of India 2007-08”

 2006年11月8日付エコノミックタイムズ紙は、「インド企業が学校、カレッジ中退者を歓迎」と題し、雇用者が臨時雇用の組織的予備軍としてカレッジ(専門学校)中退者の採用に好意的であると報道した。基本的な技能が必要とされる職種においては、大学卒業者より専門学校中退者のほうが職業能力の点で優れており、企業は採用を見送った場合の費用が高いことを実感している。人材派遣業者は、中退者の人材プールが今後の雇用拡大・経済発展を引き出す大きな機会となるだろうと述べている。2006年12月13日付エコノミックタイムズ紙では、専門学校中退者及び卒業生の就業が増大しており、労働者の平均年齢は技能労働者の不足により次第に低年齢化するとしている。
 TeamLease社の「2007年インド労働報告」によれば、インドでは失業よりも若年者の雇用不適性が大きな問題となっており、若年者の57%が雇用適性に何らかの問題を抱えている。8,250万人の雇用不適性とされる若年者は3つのレベルに分けられる。

  • 修復の最終段階(半年未満):530万人
  • 介入が必要な修復段階(半年~1年):2,190万人
  • 構造的な修復段階(1~2年):5,540万人

 求人の90%が職業能力を要求しているがインドの高校、カレッジ卒業生は机上の知識しかなく、機会不平等を拡大するため、インフラ面の欠陥よりも技能不足がむしろ大きな問題を引き起こす。

2.1.4 離職者の現状

 現在の世界経済の後退により企業は雇用の削減を開始し、一部の企業では希望退職制度(Voluntary Separation Scheme:VSS)を進めている。航空分野では、民間航空会社は業務の削減を開始し、希望退職制度を計画した。希望退職制度では、航空会社で6カ月働いた者に対し6カ月分の給与に相当する退職金の支給を計画している。他の航空会社ではコストの引き下げ、合理化、業務の有効性を達成するために考案した一連のリストラを開始した。退職者に対し航空会社は勤続年数1年当たり2カ月分に相当する退職手当を支払うケースもあるなど、航 空会社は直面する現状の困難を最小限にする努力を行っている。
 また、国営インド鉄鋼公社(Steel Authority of India:SAIL)では、60歳に達する労働者への退職年金制度や希望退職制度による合理化で、2012年までに約2万人の人員削減を計画している。 他にも、ITサービス会社のマステック社は希望退職を計画するほか、会社の利益率を維持するため労働者の賃金引き下げなどを行っている。会社は「待機席」を設置し、ここでは労働者に対して1年間の給与を保障し、強制的に退職するよう別のトレーニングや能力開発プログラムを実施する。労働者がそれを望まず直ちに退職を希望する場合は特別手当を支払う制度を設けている。

2.1.5 職種別技能労働者数

 職種別技能労働者数に関し、単一の情報源に基づく総合的な情報はない。しかし、ソフトウェアサービス、IT関連サービス(Information Technology Enabled Service:ITeS)、小売、繊維産業部門などにおいては限られた情報は入手可能である。「統計概要2007-08 102」では、2006~2007年のソフトウェアサービスの技術者は70万7,000人でユーザー企業向けの専用ソフト開発者及び国内企業向け開発者は37万8,000人でITeS部門の技能労働者は54万5,000人と推定されている。インデイアトゥデイによれば、インドのIT、ITeS産業部門の直接雇用は1999~2000年の28万4,000人から2006年末には129万3,000人に増大し、さらに間接雇用が300万人創出された。2009~2010年までに200万人の直接雇用が創出される。
 以下は、そのほかの各産業部門での雇用状況である。

  • 小売業では2006~2007年に20万人の雇用があり、2007~2008年にはさらに25万人が雇用される。今後2年間で200万人に近い雇用が創出されると予想され、その時点で教育を受けたインド人総数のうち15%近くを雇用すると思われる。
  • 通信産業は150万人近くの技能労働者を雇用した。今後5年間で300万人に倍増する予定である。将来は顧客サービス要員への高い需要が見込まれ、通信部門では2014年までに雇用の需要は11.3%増加すると見ている。ネットワークシステムオペレーター及びデータ通信アナリスト部門の雇用に対する需要は、25%の増加が予想されている。
  • 医薬品部門における高度研究開発に携わるインド人バイオ技術者は、ほぼ7万5,000人となっている。
  • サービス業では現在2,400万人を雇用している。近い将来、観光客の増大により観光分野で年間310万人の雇用創出が見込まれている。
  • 航空部門の成長により、今後3~4年の間に客室乗務員として4万人の雇用創出が予想されている。
  • インドのバイオ技術産業においては、今後2~3年の間に5万人近い職業が創出されると考えられる。
  • アニメーション産業では、2009年だけでも2万人のアニメ製作者の不足が予想されている。
  • 現在、銀行部門では150万人近くを雇用しているが、当部門の大きな成長によって2010年までに雇用は250万人増加すると考えられる。
  • 現在、インドの保健部門では400万人以上雇用しているが、この中には訓練を受けた医師50万人が含まれている。
  • メディア及び娯楽産業(映画、テレビ放送、コンテンツ提供、ケーブル及びマルチサービス運営、ラジオ放送、音楽、アニメーション及びイベント企画管理等)では、今後5年間に約700万人の雇用創出が期待されている。
  • 繊維産業では、今後5年間で約700万人の雇用創出が予想されている。

 2007年6月12日付エコノミックタイムズ紙は、建設部門が農業に続いて2番目に多くの雇用を創出しており、同部門では2012年までにほぼ9,000万の新規雇用の創出が予想されていると報じた。 同記事によると、そのうち6,000万人は未熟練技能労働者であり、2,500万人は熟練労働者及び半熟練労働者であると報告している。組織化された小売業※1は今後3年間で50万人の訓練を受けた人員が必要となる。
 小売、繊維部門から金融サービスまでの20の産業分野では雇用主は、厳しい労働力不足に直面している。この労働力不足は、熟練、半熟練及び未熟練労働者すべてに見られる。中等教育以上の教育機関は企業が求める技能を持つ十分な数の卒業生を輩出しておらず、労働市場は需給条件が厳しくなっているため、より良い機会を求めて労働者の転職が増加している。 バイオ技術分野では、博士号取得の科学者を現在の人数のさらに80%以上を必要としている。2006年、銀行・金融業ではリスク管理者が90%不足しており、専門技術者は65%、財務管理職は50%、与信専門職では75%また財務分析担当者では80%がそれぞれ不足している。技術分野では、2010年には50万人に達する技術者の不足に直面すると予測されている。 技術及び金融サービスといった分野では、雇用の機会が多いため転職希望者も多くなっている。しかし、不動産、小売等の新規分野においては、適切な経験を持つ十分な経験者が市場には存在しない。 同レポートによれば、インドでは毎年250万人のカレッジ及び大学卒業生を量産しており、この中には40万人のエンジニアも含まれてはいるが、この数値は誤解を生じる可能性がある。つまり、米国では人口の50%がカレッジでの訓練を受けるのに対してインドでは10%であり、カレッジ、大学の卒業生数は人口と比較すると少なく、またその教育の質に関しても疑問がある。2005年に全国ソフトウェアサービス企業協会が実施した調査によれば、毎年量産される卒業生のわずか4分の1が外国及びインドの技術産業に雇用される能力を有しているに過ぎない。

※1
組織化された小売業は、大規模ショッピングモール等の大型小売部門を示し、非組織小売業は、日用品の販売をする家族経営の販売業をいう。

2.2 賃金

2.2.1 法定最低賃金の最近の動向

 2005年7月~2006年6月の期間に実施された第62回全国標本調査は、給料制の労働者の平均賃金、臨時雇用の賃金及び自営業の収入に関する情報を提供している。

表2‐10 15~59歳の学歴別常勤給与労働者の1日当たりの平均賃金(単位:ルピー)※2
学 歴 農村部 都市部
男性 女性 平均 男性 女性 平均
識字能力なし 84.05 41.40 72.07 106.10 53.10 83.44
初等教育まで 95.65 61.17 90.32 117.82 69.32 111.35
中等及び高等教育 148.87 102.18 142.35 183.40 142.77 178.27
学位取得者 236.36 212.91 232/41 288.04 215.96 277.60
大学卒以上 252.99 170.58 239.21 350.39 273.80 332.69
平均 138.74 87.71 130.02 205.81 158.23 197.09
※出典:
NSSO, ”Statement 24 of the NSS 62nd round Report”.
※2
1インドルピー=2.0306円(2009年8月10日現在)

  1. 給与制の労働者の平均賃金
     農村部の常勤給与所得者の1日当たり平均賃金は約130ルピーであるが、都市部は197ルピーで農村部の約1.5倍となっている。農村部において男性の常勤給与所得者の賃金は、女性の1.6倍となっているが、都市部ではその比率は1.3倍である。教育水準が上昇するとともに賃金も急激に増加しており、特に大学卒業以上の教育水準ではこの傾向が最も高くなる。しかし、農村部の女性に関してはディプロマ・コース資格者が大学の卒業資格以上よりも高くなっている。この変則的な例に関してはNSSOから特に説明はない。
     臨時雇用労働者においても、農村部、都市部の双方で男女間には大幅な賃金格差が存在する。

    表2‐11 臨時雇用労働者の1日当たりの賃金  (単位:ルピー)
    地 域 男 性 女 性 平 均
    農村部 59 38 53
    都市部 81 45 74
    ※出典:
    NSSO, ”Statement 24 of the NSS 62nd round Report”.

  2. 自営業者の賃金
     第62回全国標本調査では自営業者の賃金に関する情報は提供されていないが、第61回全国標本調査によれば、農村部の自営業者の約51%及び都市部では、自営業者の44%について現在の所得を給与とみなしている。農村部では、給与所得者とされる者の約21%が月給1,000ルピー以下、約42%が月給2,000ルピー以上となっている。一方、都市部においてはその数値は、前者が10%、後者は68%となっている。男女間の格差に関しては、農村部においては全体ではほぼゼロであるが、都市部では約10%の格差が存在している。

      2007-08年インド統計概要によると、2004年12月時点での各州政府が定めている1日当たりの最低賃金は、45ルピーから189ルピーとなり、各州において最低賃金が決定あるいは改定された定期雇用の種類は、18から83種となっている。

2.2.2 賃金もしくは給与の実態調査結果

表2‐12 職業別平均給与   (単位:ルピー)
業 種 職 種 平均給与
航空 パイロット 15万 / 月
客室乗務員 2万~2万5,000 / 月
保守整備士 6,000 / 月
地上業務員 1万3,000 / 月
広告 制作 8,000~1万 / 月
顧客サービス 8,000~1万2,000 / 月
会計 7,000~1万3,000 / 月
美容、健康 美容師 1万5,000~4万 / 月
フィットネス指導員 1万~1万5,000 / 月
食事療法士 1万~2万5,000 / 月
スタイリスト 1万5,000 ~上限なし
バイオテクノロジー 農業バイオ 20万~150万 / 年
ゲーム制作 グラフィックデザイナー 20万~30万 / 年
プログラマー 20万~40万 / 年
コンセプト開発者 同上
ゲーム検査員 12万~33万 / 年
ファッション アパレルデザイン 1万4,000~1万5,000 / 月
販売 1万5,000 / 日
写真及びスタイリング 1万 / 1回
科学捜査 捜査官 5,000~7,000 / 月
サービス 調理場スタッフ 8,000~1万 / 月
食品及び飲食 5,000~2万 / 月
客室整備 1万 / 月
顧客窓口 6,000~1万 / 月
保険 保険数理士 60万~250万 / 年
マーケティング・引き受け 3万~4万 / 月
顧客窓口 3万 / 月
ITeS 事務管理 1万~1万5,000 / 月
顧客コンタクト 7,000~1万1,000 / 月
研究開発 3万 / 月以上
メディア 編集スタッフ 1万2,000~1万5,000 / 月
デザイン 8,000~1万1,000 / 月
制作 1万5,000 / 月
商船 航海士 4万5,000 / 月
機関士 同上
ラジオ ディスク・ジョッキー 1万 / 月
プロデューサー 1万5,000~2万 / 月
音楽マネージャー 1万5,000 / 月
電気通信 ソフトウェア開発者 40万 / 年
顧客サービス 5,000~7,000 / 月
※出典:
India Today Aspire, “2008 Careers”.

 国内14地域の13産業部門及び主要な8公共事業体における264職種の臨時雇用スタッフの技能、給与データがTeamLease社の年次給与報告書2009で報告されており、求職者や雇用者が技能、昇給率、給与などに関する情報を得るために提供されている。
 このデータは2006年12~2008年12月間の所得を基礎にしたものである。同報告書には下記の職業能力が示されている。

  • 農業
  • 自動車
  • 銀行、金融サービス、保険
  • 通信
  • 消費財
  • エネルギー
  • FMCG(日用品)
  • 食品、サービス
  • 保健、医薬品
  • IT
  • ITeS
  • 製造
  • 小売
  • 会計
  • 総務
  • ブルーカラー
  • 支援サービス
  • エンジニアリング
  • 人材開発
  • 販売及びマーケティング

 TeamLease社のデータは市場の給与と応募者の技能及び勤務の継続期間に関する統計的モデルを基準にしている。「Skill Pay」と呼ばれるほかの項目は、技能と給与の関係を精査する現在進められている研究の詳細データから抽出されたものである。「理想的な候補者のプロファイル(ICP)枠組み」の項目も設けられており、就職希望者が当該業務を取得するのに最適と考えられる個性、能力、知識、資格等についても述べている。
 同報告書の結論として、主要な点は下記のとおりである。

  • 09年の2四半期中の雇用上昇率25~30%成長は第3四半期4~6%に低下する恐れがある。
  • IT、ITeS産業部門の賃金成長率は一桁台に大幅に低下する。現在の9.2%の成長率はさらに低下する。
  • 賃金上昇率、雇用率の低下はすべての産業部門で共通する。
  • 今日、技能は技能者に対する報酬の基本的な比較指数であるが通信、銀行及び金融サービス部門、サービス産業部門は技能に対する給与の水準を明確に設定している。

評判の高い仕事に関する情報、求職ガイドの概略は下記のウェブサイトより参照できる。

 政府の第6次賃金委員会は公務員の最低レベルの月額最低賃金を2,550ルピーから6,660ルピーに改定し、また、最高レベルの公務員の給与を月額2万6,000ルピーから8万ルピーに増額した。2009年7月17日付エコノミックタイムズ紙によると、第三次産業の労働者は2009年に12%以上昇給し、業務実績が平均を上回る労働者の昇給は12~17%となった。一方、調査対象のうち6分の1の企業が2009~2010年の昇給を凍結し、6%の企業は給与を引き下げた。 医薬品、製造業、通信、日用消費用品(Fast Moving Consumer Goods:FMCG)産業において昇給幅が最大となり、昇給率が最も低かったのはIT、ITeS及び金融サービス部門であった。3社に1社が賃金改定時期を3カ月から6カ月ごとに遅らせている。

2.2.3 役職別給与体系のサンプル

 代表的なソフトウェア開発会社の開発担当者に対する給与体系は下記である。

  • 基本給
  • 賃金保障
  • 家賃手当
  • 医療費手当
  • 交通費手当
  • 有給休暇旅行手当
  • 児童教育手当
  • その他手当
  • 休暇買い上げ
  • 退職積立手当
  • 年間ボーナス

また、最高経営陣、上級管理者レベルには以下のさまざまな特典が提供される。

  • 住居
  • 自動車
  • 掃除人、庭師、警備員又は付き人
  • ガス、電気、水道
  • 無利息ローン
  • 会社負担の休暇費用
  • 会社負担の旅行費用
  • 無料の食事
  • 無料教育費
  • 贈り物、商品券
  • 社会クラブ費用
  • 動産の利用(社有車の個人目的の使用)
  • 資産の移転(例:社有車を経営陣等に所有権を移転)
  • ストックオプション(従業員自社株購入権)

 2008年1月1日付エコノミックタイムズ紙は、「雇用主負担による従業員の楽しみ」と題する記事で従業員が無税の福利厚生を享受していると述べている。

  • 休憩及びレクリエーション
  • 昼食補助、食費補助クーポン
  • ギフト券
  • ヘルスクラブ及び類似の施設
  • ビジネス図書及び定期刊行物
  • 退職積立給加給
  • 電話設備
  • 自動車設備

 しかし、従業員に対するこれらの福利厚生については、所得税法の規定により雇用主に対して福利給付税が課されてきたが、2009年度予算案でこの福利給付税は廃止された。

2.3 労働時間の現状

 労働時間は1948年工場法で規定されている。

  • 午後7時から午前6時の間は女性労働者は勤務できない
  • 14歳以下の児童の雇用禁止
  • 二重雇用の禁止
  • 所定労働時間は、週48時間以内あるいは1日9時間以内とする
  • 最長5時間の労働時間の後に30分以上の休憩時間を与えなければならない
  • 1週間につき1日の休業日を設けなければならない
  • 認められた時間外労働には、通常賃金の2倍の額を支払われなければならない。
  • 労働者は20日間の労働当たり1日の有給休暇が与えられる。

 しかし、この法律にもかかわらず非組織化部門の労働者は、有給休暇なしで、1週間に40時間以上の労働が課される場合がある。2005年にILOが実施した調査では、労働者の80%以上が有給休暇あるいは年次休暇を与えられていなかった。また、8時間ごとの3交代制の替わりに、労働時間を長くして少ない労働者による2交代制を好む雇用主が多い。実際、労働者は1日当たり10~12時間労働をするため、1週間当たりの労働時間は70~84時間となっていた。夜間労働は強制的ではないが、不安定な電力供給の結果として労働者は度々不規則な時間に労働に従事していることが調査の結果判明した。

2.4 労使関係の現状

2.4.1 労働組合の現状

 労働雇用省労働局のウェブサイトでは、2002年時に登録された労働組合数は7,732組合、総組合員数は692万3,000人でこのうち6,869の組合が州レベル、865の組合が全国レベルで組合員は前者が606万4,000人、後者は85万9,000人と報告されている。 全国レベルの主要な組合は下記のとおりである。

  • インド全国労働組合会議(Indian National Trade Union Congress:INTUC)
  • 全インド労働組合会議(All India Trade Union Congress:AITUC)
  • ヒンドゥー労働者連盟(Hind Majdoor Sabha:HMS)
  • 統一労働組合会議(United Trade Union Congress:UTUC)
  • インド労働組合センター(Centre for Indian Trade Unions:CITU)
  • インド労働連盟(Bhartiya Mazdoor Sangh:BMS)
  • 全国インド労働組合戦線(National Front of Indian Trade Unions:NFITU)
  • 労働組合調整委員会(Trade Union Coordination Committee:TUCC)
  • 全国労働者機構(National Labour Organisation:NLO)
  • インド労働者連盟(Indian Confederation of Labour)

2.4.2 労働争議の現状

 表2‐13は過去5年間の年間労働争議を示している。

表2‐13 労使紛争の発生数
労働争議数
(単位:件)
参加人員
(単位:万人)
損失労働日数
(単位:万日)
2001 674 70 2,400
2002 579 110 2,700
2003 552 180 3,000
2004 477 210 2,400
2005 456 290 2,970
2006 460 180 2,220
※出典:
Tata Services, Department of Economics and Statistics, “Table 195, Statistical Outline of India 2007-08”.

【調停・仲裁機関】

 雇用労働省の下に設立された中央労使関係機関(Central Industrial Relation Machinery:CIRM)が中央領域において労使関係を維持する役割を委任されている。 同機関は労働争議を解決するため、労使関係の調査、介入、斡旋、及び調停の責任を持ち、ストライキやロックアウトを回避するため介入する権限を持っている。中央領域以外の企業の労使紛争の解決には各州が権限を持っている。

2.5 募集、採用、雇用、解雇の現状

  1. 雇用
     世界及び国内の景気後退により雇用状況が悪化し、2008年には100万人の雇用が失われ、このうち70万人が繊維、衣料品産業と見られる。ほとんどの産業部門で雇用が30%から50%減少し、2009年の雇用創出は30万人にとどまるとされている。

    表2‐14 世界経済の崩壊による雇用の縮小
    産業部門 雇用予測 見 解
    ITeS 計画から33%減 国内需要で危機回避
    教育、訓練、コンサルティング 計画から20%減 教育は引き続き成長
    銀行、金融部門 計画から21%減 80%の銀行が国営であることから問題は少ない
    電力 51%の雇用が削減される可能性  
    メデイア、娯楽 採用が65%減少見込み
    小売 雇用計画の70%が保留
    医薬品、化学 採用の66%が影響
    エンジニアリング 雇用の51%に影響
    運輸及びロジスティック 雇用の78%が翌年に削減
    サービス 予想雇用の50%が削減
    自動車及び自動車部品 新規計画雇用の51%が削減
    ※出典:
    Press Information Bureau, Government of India, “Survey on High Job Loss, Press Note, July 29, 2009”.

     経済の減速により悪化したと見られる産業部門の雇用に対する影響を調査する観点から、労働雇用省は2008年10~12月における鉱山、繊維、金属、宝飾品、自動車、運輸及びIT/BPO等の主要部門について11州の2,581社を調査した。
     これら部門は2007~08年のGDPの60%を占めている。調査結果では約50万人の労働者が2008年10~12月の期間中雇用を失ったと報告している。特に景気後退の影響は輸出指向企業で顕著である。2009年1~3月期の雇用に関する第2次調査では皮革、手織り、機械織り繊維部門も含まれた。対象となる部門の総就業者数はこの時期0.6%増加し、非輸出企業が0.92%の高い成長率で輸出型企業の0.28%を上回っている。10~12月期と対比した場合、これらの特定部門の雇用は09年1~3月期では約25万人増大している。これら部門における2008年4月~09年3月の年間就業者は0.15%増の28万人が追加増となった。
     政府の商業省も輸出減少及び輸出企業の雇用減少に関する標本調査を実施し、2008年8月~09年1月16日の期間、調査した企業402社から約10万人の雇用が失われたと報告した。また、同省が実施した最新の調査では、08年8月~09年4月の間で輸出指向企業とは別に13万4,593人が職を失ったと報告している。
     TeamLease Service社が国内の人材に関する計画、管理の目的で継続的に四半期ごとの雇用展望調査を実施しており、この調査は製造、エンジニアリング、金融サービス、IT、ITeS、インフラ、小売、メデイア、FMCG、通信、保健及び医薬品部門の種々の職能全般を代表する組織部門を対象としている。調査は今後3カ月における雇用成長率の見通し、雇用予測に焦点を当て地域、企業のプロファイルに関する雇用パターンの概観を報告している。09年7~9月の調査結果では、雇用展望指数※3は46ポイントで前期から22ポイント上昇した。雇用展望指数はすべての産業部門で上昇し、通信が最大でIT及びインフラ産業部門が続いている。上級職を除き、すべての管理者レベルでは雇用を増やす意思が減少している。 マーケティング部門を除くほとんどの部門において、雇用を増やすとの回答が増加している。

    ※3
    雇用展望指数は雇用の必要性が増大していると発表した回答者及び今後3カ月雇用の必要性が減少すると回答した回答者の比率の違いを計算したものである。

  2. 解雇
     産業雇用(就業規則)法を除き労働者の解雇を規定する特定の法律は存在しない。この法律では、企業は公開就業規則に解雇手続きを規定することができる。労働者の解雇を正当化するため、雇用者は労働者の不正行為を証明しなければならない。不正行為とは単なる誤り、怠惰、非効率ではなく、故意による怠慢、服務違反、不服従を意味する。明文化されているか否かにかかわらず、労働者に課された義務の不履行は解雇の正当な事由となる。会社の就業規則は企業の労働要件に合致した不正行為の概念を定義することが可能である。定義した不正行為は包括的とは見なされず、雇用者はこれらを実例として明確にすることができる。解雇を実行する前に雇用者は通常の公正の原理、及び種々の判例によるガイドラインに従うことが必要となる。 雇用者は解雇理由調査書を作成し、社内で内部審問を行う必要がある。審問者の報告を検討し、労働者に対し解雇理由通知書が発行され、最終的に解雇命令もしくは解雇より軽度の処罰が通告される。

  3. 労働の現状
     世界銀行の「Doing Business」というデータベースは、各国のさまざまな労働法令に関する有益な情報源である。 表2‐15はこのウェブサイトに基づき、インドでの労働の現状、適用される労働法を集約している。

    表2‐15 インドにおける労働の現状とそれに対する回答
    労働の現状 回答
    有期雇用契約は期間が定まっている仕事にのみ適用されるか。 はい
    有期契約の場合の最長期間は何カ月か。 期限なし
    1年間につき2カ月は週間労働時間を50時間(時間外を含む)に延長できるか。 はい
    1週間当たりの最大就業日数は何日か。 6日
    「週休日」における労働に関する規制はあるか。 はい
    勤続20年以上の労働者に対する年間有給休暇日数は何日か。 12日
    人員削減による労働者の解雇は法的に有効か。 はい
    雇用主は、人員削減による労働者の解雇の前に第3者の承認が必要となるか。 はい
    雇用主は、人員削減による労働者の解雇の前に配置転換又は再訓練の選択肢を考慮しているか。 はい
    人員削減及び(あるいは)再雇用に適用される優先規定が存在するか。 はい
    勤続20年の労働者が人員削減による解雇の対象となる場合、通告期間は何週間か。 13週間
    勤続20年の労働者が人員削減による解雇の対象となる場合、解雇手当は何カ月分か。 9.9か月
    ※出典:
    Doing Business, “Employing Workers in India”, http://www.doingbusiness.org/ExploreTopics/
    EmployingWorkers/Details.aspx?economyid=89

      2005~06年度経済調査報告書によれば、インドの労働市場は明確に二分化されている。非組織部門の多くの企業は規制の外に置かれる一方、組織部門は公平かつ厳密な法制度下にある。 組織部門が長期にわたり多くの雇用保障が備わっているのに対し、非組織部門の雇用保障が極端に小さいことは明確である。 また、TeamLease社の「インド労働報告書2006」では、労働法は全体の経済成長に影響を与えないかもしれないが、雇用の創出、機械による労働代替の拡大に影響を与えると述べている。

2.6 転職の現状

 近年、人材不足により組織部門においては転職状況が懸念されている。表2‐16は2007年の組織部門における産業別離職率を表している。

表2-16 産業別離職率   (単位:%)
産 業 離職率
音声をベースとしたBPO
(Business Process Outsourcing:外部委託コールセンター)
50
小売 50
航空 46
金融 44
サービス 40
バイオテクノロジー 35
製薬 30
電気通信 27
IT/IT関連サービス(ITeS) 25
建設 25
資本財 23
日曜消費財(FMCG) 17
※出典:
Retention.Naukrihub.com, “Attrition Rates in Different Sectors in India”,
http://retention.naukrihub.com/
attrition-rates-in-different-sectors.html

 2007年6月15日付タイムズオブインデイア紙は、労働者は経済成長の拡大により雇用機会が増大していると考えることが多くなり、転職を狙った不適切な離職が増大したと報じている。サービス産業部門が最大の離職率を記録し、インド全体で20%を超えたと報じている。26~30歳の年齢層で最も離職率が高く、2~4年の経験を持つ労働者の転職傾向が強くなっている。 転職により直ちに高い給与を得ること、及び高い成長性を期待することが転職の主な理由である。成長拡大過程にある企業が伝統のある企業よりも高い離職率を示し、また、オンラインの転職サイトの存在が転職増大を助長している。
 現在の世界金融危機により、企業は現在のビジネスの見通しを基に雇用を実施している。労働者も転職について注意深くなり、転職者の数は減少しており離職率は下降している。

2.7 その他の雇用慣行

2.7.1 企業の慣行

 インセンティブとしてのボーナス、会社負担の社員旅行、社宅などの企業による慣行は一様ではなく産業界、産業界と政府、多国籍企業、国内民間部門、あるいは企業規模、労働者の地位などにより異なる。 2.2.3項で述べた給与体系の例は一般的な企業慣行の実例である。世界金融危機により、いくつかの国内企業は報酬パッケージについて構造改革を開始している。 以前の給与パッケージには目立つ特典、福利厚生などが含まれていたが企業は今や実質本位の給与パッケージを優先している。

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  44. Times of India. (2007, June 15). Attrition rate at 20%, service sector feels heat.

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