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インド

作成年月日:2009年10月20日

雇用労働関係法令

1.1 雇用労働関係法令一覧

 インドでは、中央政府及び州政府が労働関係法令を制定することができる。中央政府によって以下を含む44の規定がなされている。現行労働法規の概要は以下のとおりである。

  1. 労働基準関連
    1. 労働契約
      • 請負労働(規制及び禁止)法(Contract Labour(Regulation and Abolition)Act, 1970)
    2. 解雇規定
      • 産業雇用(就業規則)法(Industrial Employment(Standing Order)Act, 1946)
    3. 賃金、労働時間、休暇、年休、超過労働、休日労働、割増賃金等
      • 工場法(Factories Act, 1948)
      • 賃金支払法(Payment of Wages Act, 1936)
      • 賞与支払法(Payment of Bonus Act, 1965)
      • 最低賃金法(Minimum Wages Act, 1948)
      • 店舗及び施設法(Shops and Establishments Act)
    4. 成人、女性、作業安全、健康、アウトソーシング
      • 工場法(Factories Act, 1948)
      • 出産給付金法(Maternity Benefit Act, 1961)
      • 均等報酬法(Equal Remuneration Act, 1976)
      • 児童労働(禁止及び規制)法(Child Labour(Prohibition and Regulation)Act, 1986)
    5. 職務規定、労働契約
      • 産業雇用(就業規則)法(Industrial Employment(Standing Order)Act, 1946)
    6. その他の重要法規
      • 州間出稼ぎ労働者(雇用及び役務条件)法(Inter-State Migrant Workmen(Regulation of Employment and Conditions of Service)Act, 1979)
      • 販売促進従事者法(Sales Promotion Employees(Conditions of Service)Act, 1976)
  2. 労働管理に関する法規
    1. 労働組合
      • 労働組合法(Trade Union Act, 1926)
    2. 労働争議の調停制度の法規
      • 労働争議法(Industrial Disputes Act, 1947)
  3. 労働保険に関する法規
    1. 労働者の事故弁済保険
      • 労働者補償法(Workmen Compensation Act, 1923)
      • 公的責任保険法(Public Liability Insurance Act, 1991)
    2. 雇用保険
      • 労働争議法(Industrial Disputes Act, 1947)
      • 農村雇用保障法(National Rural Employment Guarantee Act, 2005)
    3. 健康保険
      • 従業員国家保険法(Employee State Insurance Act, 1948)
    4. 年金
      • 従業員積立基金及び雑則法(Employees Provident Fund and Miscellaneous Provisions Act, 1952)
      • 退職金一時支払法(Payment of Gratuity Act, 1972)
  4. 職業能力開発に関する法規
    1. 他の能力派生の保険や積立金
      • 非組織労働者への社会保障法(The Unorganized Workers’ Social Security Act 2008)
    2. 職業能力開発制度、評価制度
      • 徒弟訓練法(Apprenticeship Act, 1961)
  5. 雇用と労働に関するほかの法規
    1. 職業紹介制度
      • 雇用交換(求人情報公開の義務)法(Employment Exchanges(Compulsory Notification of Vacancies)Act, 1959)
    2. その他
      • 拘束労働制度(廃止)法(Bonded Labour System(Abolition)Act, 1976)
      • 特定企業における財務諸表提出及び会計記録保管の免除に関する労働法(Labour Laws(Exemption from furnishing Returns and maintaining Registers by certain Establishments)Act, 1988)

 なお、上記は企業固有の法規は含まない。企業固有の法規とは、以下のような企業や労働者タイプなどが、その特殊性から個別に定める規定である。

  • 石炭鉱山
  • 港湾労働者
  • 雲母鉱山
  • 石灰石、ドロマイト鉱山
  • 鉄鉱石、マンガン鉱石、クロム鉱石鉱山
  • ビディ(インド固有のたばこ)と葉巻の製造
  • プランテーション労働者
  • 自動車輸送労働者
  • ビル建築・他の建設労働者
  • 映画産業及び映画館労働者
  • ジャーナリストと他の新聞従業員
  • 商船関係者
  • 街路掃除人

1.2 労働基準関係法令

1.2.1 労働契約

【請負労働(規制及び禁止)法(Contract Labour(Regulation and Abolition)Act, 1970)】

  1. 本法は、請負労働者の雇用を規制することを目的としている。労働者が主たる雇用主を知っているかどうかにかかわらず、請負業者によってもしくは請負業者を通じて、施設の仕事に雇用される場合に請負労働者となる。
  2. 政府は請負労働者の施設での労働条件、特典に配慮し、全施設のすべての仕事の雇用を禁止することが可能である。また、当局は業務が一時的に生じるものか、恒常的に必要とするものかを見極める。
  3. 本法は、20人以上の請負労働者を雇用する施設と、20人以上の労働者を雇用する請負業者のすべてに適用される。
  4. 施設で請負労働者を雇用するためには、登録証明書を取得する必要がある。登録証明書は、主たる雇用主が該当する登録局に登録申請し取得する。
  5. 請負業者は、認可局から請負労働者を雇用するための免許を取得しなければならない。請負業者は、有効な免許なしにはいかなる仕事を請け負うことも、実行することも禁止されている。
  6. 請負業者は請負労働者の健康と福祉のために以下を用意しなければならない。
    • 請負労働者が使える1つ以上の社内食堂(請負労働者が100人以上の場合)
    • 休憩所や夜間の職場は、十分に照明・空調が整備してあり、清潔で快適であること
    • 便利な場所にトイレ、洗い場、健康的な飲み物が用意されていること
    • 作業時間中は、身近に救急箱が完備されていること
  7. 請負業者が上記を用意できない場合、主たる雇用主がそれらを提供する義務が発生し、その費用を請負業者から回収できる。
  8. 請負業者は、主たる雇用主指定の代理人の面前で、適切な金額を適切な時期に請負労働者へ賃金の支払いを行わなければならない。もし適切に支払われない場合は、主たる雇用主が全賃金もしくは不足分を請負労働者に支払うことが義務付けられている。主たる雇用主が請負労働者に支払った金額は、請負業者から回収することができる。
  9. 請負業者に雇用される者は、従業員積立基金及び従業員国家保険の給付を受ける権利を有し、工場法、最低賃金法、賃金支払法、労働争議法、労働者補償法の条項が請負労働者に適用される。

 2008〜09年度経済調査報告書は、非主力部門の活動、もしくはその活動が年間を通して断続的な場合は請負労働を許可するように、請負法は変更されるべきだとの見解を示した。その上で、請負労働者に賃金を与える会社にも、労働法は適用されるべきだとした。

1.2.2 解雇規則

 産業雇用(就業規則)法を除き労働者の解雇を規定する特定の法律は存在しない。同法では、企業は公開就業規則に解雇手続きを規定することができる。労働者の解雇を正当化するため、雇用者は労働者の不正行為を証明しなければならない。不正行為とは単なる誤り、怠惰、非効率ではなく、故意による怠慢、服務違反、不服従を意味する。明文化されているか否かにかかわらず、労働者に課された義務の不履行は解雇の正当な事由となる。会社の就業規則は企業の労働要件に合致した不正行為の概念を定義することが可能である。定義した不正行為は包括的とは見なされず、雇用者はこれらを実例として明確にすることができる。解雇を実行する前に雇用者は通常の公正の原理、及び種々の判例によるガイドラインに従うことが必要となる。雇用者は解雇理由調査書を作成し、社内で内部審問を行う必要がある。審問者の報告を検討し、労働者に対し解雇理由通知書が発行され、最終的に解雇命令もしくは解雇より軽度の処罰が通告される。

1.2.3 賃金、労働時間、休憩、休日、年次有給休暇、時間外及び休日労働、時間外の割増賃金

  1. 産業雇用(就業規則)法(Industrial Employment(Standing Order)Act, 1946)
    1. この法は、特定の産業施設の雇用主に対して雇用条件や就業規則を明確に定義するよう求めている。また、雇用主は労働者に対して、ワークマン(workmen)※1であることを明確に通知する必要がある。この就業規則の目的は、労働条件を無秩序で随意の不安定なものでなく安定的、かつ一律なものにすることを目的とする。
    2. この法は100人以上の労働者を雇用する産業施設に適用される。また、管理者以外のあらゆる職種に従事する労働者すべてに適用される。
    3. この規則ではワークマンの分類、労働時間、勤務日、休暇、雇用の終了、停職、解雇及び不法行為などに関して定める。
    4. すべての施設は、雇用主と労働者の双方を拘束する就業規則を策定し、労働委員会あるいは地域労働委員会等から認証を受けなければならない。中央政府と州政府は就業規則の見本を提示しており、これを基にして各雇用主は独自の就業規則を起草し、専任の認証局から承認を得る必要がある。
    5. 同法は2001年に改定され、職場のセクシャルハラスメントに関するガイドラインが盛り込まれた。
    ※1
    ワークマン(workmen)とは、各種技術職人や職人見習いなどの肉体労働者(事務系労働や監督的作業を含む)を指す。経営管理職者はワークマンには該当しない。インドの労働法では、ワークマンとそうでない労働者とを区別し、経営管理職者等は個別の雇用契約の条件により規定する。

  2. 工場法(Factories Act, 1948)
    1. 工場法の主な目的は、工場における労働条件を規定することにある。また、工場労働者の安全、衛生、福利厚生に必要とされる基本的最低条件を備えることを目的とする。
    2. さらに労働時間、休暇、祝祭日、時間外労働及び子供、女性、若年者の雇用に関しても規定している。
    3. 本法はすべての工場に適用される。工場とは、「10人以上の労働者が雇用されている、又は過去12カ月間のいずれかの日に労働していた、動力を使用して製造工程が実施されている場所」、又は「20人以上の労働者が雇用されている、又は過去12カ月間のいずれかの日に労働していた、動力が使用されず製造工程が実施されている場所」と定義されている。
    4. 本法では工場におけるあらゆる事項に関して最終的な権限を有するものを「工場長」と定義している。工場長は工場の建設地について州政府の事前許可を取得しなければならず、また工場長は操業許可を取得するため工場を登記しなければならない。
    5. 工場長は工場内で就業中の労働者の安全、衛生、福利厚生を確保しなければならない。このために必要な方策が本法に包括的に定義されている。重要項目は次のとおりである。
    • 材料の安全な取り扱い、保管、輸送及び安全訓練
    • 清潔さ、産業廃棄物の適切な処理
    • 換気及び温度、湿度のコントロール
    • 塵芥及び排気の防止
    • 作業者の過密防止
    • 適切な照明、飲料水
    • 適切なトイレ、痰壷の設置
    • 危険な機械及び機械の稼動部分の囲い込み
    • 床、階段等から障害物の除去
    • 危険な工程、健康に悪影響を与える原材料に対する特別な注意

    労働者に常に下記の福利厚生が確保されるべきである。
    • 衣類の洗濯、乾燥
    • 作業者(通常立って作業を行っている者)が休憩時座れる席
    • 救急箱
    • 救急室
    • 食堂
    • 休憩室及び昼食室
    • 託児室(女性労働者が30人以上いる場合)

    労働時間に対する代表的な規則は下記のとおりである。
    • 女性労働者は19時〜翌朝6時の間は就業が許可されない。
    • 14歳未満の子供を雇用してはならない。
    • 複数の会社での雇用は許可されない。
    • 労働時間は1週間当たり48時間、又は1日当たり9時間を超えてはならない。
    • 連続5時間労働後、最低30分の休憩時間を与えなければならない。
    • 1週間に最低1日の休暇を与えなければならない。
    • 所定の労働時間を超えて勤務させる場合は限度時間数が決められており、通常の賃金の2倍の割増金を支払わなければならない。
    • 労働日数20日ごとに1日の割合で有給休暇を与えなければならない。

     2005年、工場法が改定された。これにより、適切な保護を与えるためにいくつかの項目について修正がなされ、また、適切な相談窓口の設置に関する項目、女性従業員、組織の代表、雇用主、その代理人並びに当該工場の労働者の代表組織に関する項目が追加された。
     2008〜09年度経済調査報告書は工場法を改定し、超過勤務で季節的需要に対応できるよう1週間当たりの労働時間を週48時間から60時間、1日当たりの労働時間の上限を12時間に延長するよう求めている。

  3. 最低賃金法(Minimum Wages Act, 1948)
     本法は最低賃金を保証し、労働者(特に非組織部門※2)の利益を保護することを目的としている。中央政府及び州政府は、それぞれの権限内で最低賃金の決定、改定、見直しを行わなければならない。中央政府は45職種、州政府は1596職種について、両政府が指定職種の最低賃金を随時改定する。最低賃金は、収入、主要な生活必需品の価格、生産性、支払い能力、地域性などの種々の要因により決定する。これらの要因は、地域や企業ごとに異なるため、国全体で見れば多様に異なっているといえる。また、インフレから最低賃金を守るため、中央政府は消費物価指数にリンクした物価上昇手当(Variable Dearness Allowance)を設けた。全国統一最低賃金制度は未だ策定されていない。その代わりに、中央政府は最低賃金の全国的な最低レベルを示し、定期的に見直しを行っている。2007年9月施行の最低賃金は、1日80ルピー※3である。州政府は、この国が定めた最低賃金レベルを下回ることがないよう、監視する役割を担っている。
    ※2
    非組織部門とは、農業及び零細規模の製造業・サービス業をいう。一方、組織部門は公共部門(中央・州・地方政府の行政機関及び公的企業)並びに一定規模以上の民間企業からなる。
    ※3
    1ルピー=約1.9614円(2009年10月20日現在)

  4. 賃金支払法(Payment of Wages Act, 1936)
     本法は賃金の支払い周期、支払い方法等を規定することにより、不要かつ不当な賃金の未払い、罰金の賦課、賃金からの天引き等といった慣習を排除することを目的としている。法で規定された特定の事由以外では賃金からの天引きは許されない。また、天引き総額はいかなる支払対象期間においても、賃金の50%を超えてはならない。本法は、月給1万ルピー以上の労働者に適用される。

  5. 賞与支払法(Payment of Bonus Act, 1965)
     本法は企業で働く従業員に対し、利益、生産性に伴った賞与が支払われることを規定している。

  6. 店舗及び施設※4法(Shops and Establishments Act)
     本法の目的は、雇用条件を規定する工場法及びその他の法の適用外となる、非組織部門労働者の雇用条件を法制化することである。労働時間、休憩時間の間隔、時間外労働、休日、休暇、雇用の終了、店舗の保守、雇用主と労働者間の権利と義務について規定している。
    ※4
    インドの労働関係法令では、施設(establishment)を産業、取引、事業、製造又は職業が実行される場所と定義している。

  7. 週休法(Weekly Holidays Act, 1942)
     本法は、店舗やレストラン、映画館で働く従業員に週休取得の権利を与えることを目的としている。

1.2.4 年少者、女性、民族、外国人労働者、労働安全衛生、アウトソーシング(委託業務や派遣労働)

 若年者に対する特定の法律は現在定められていないが、児童労働に関する法律は存在する。また、アウトソーシングに対する法も現状では定められておらず、労働者安全衛生については先述の工場法がある。

  1. 出産給付金法(Maternity Benefit Act, 1961)
     本法は特定の企業において産前、産後及び妊娠期間中の一定の期間における雇用及び給付に関する規定がなされている。雇用主国家保険法の対象となる労働者を除き、鉱山、工場、サーカス、工業、農園、10人以上を雇用する店舗に適用される。
     2008年の本法改定以後、中央政府の官報によって、3年ごとに医療給付を強化できるようになった。

  2. 均等報酬法(Equal Remuneration Act, 1976)
     本法は同一労働、類似労働に対し男女労働者に同一の報酬を支払うこと及び性別を理由に女性の雇用において差別を行うことを禁止している。雇用主は同一労働、又は類似労働に対する労働者雇用、昇進、訓練、転勤及びその他において女性を差別してはならない。雇用主が本法の規定に違反した場合、労働者は苦情を申し立てる権利を有し、また同一労働に対して男女同一の賃金が支払われなかった場合に提訴する権利を有する。

  3. 児童労働(禁止及び規制)法(Child Labour(Prohibition and Regulation)Act, 1986)
     児童労働法では、危険かつ有害と思われる特定の職業、工程に児童を従事させることを禁止している。また、その他の特定の仕事において児童の労働条件を規定することを目的としている。本法においては児童とは満14歳未満の者を指し、そのような者が賃金又はその種のものを得ている時、“児童労働者”と呼ばれる。
     児童労働が禁止されている職業は下記のとおりである。
    • 商店での爆竹及び花火の製造
    • 手動繊維及び自動織機を操作する仕事、鉱山、屠殺場、自動車組立工場、鋳造所、樹脂、ガラス繊維工場
    • 有毒又は引火性の物質又は爆発物の取り扱い

     2006年に次の職業が児童労働禁止一覧表に追加された。
    • 家事労働、使用人として児童を従事させること
    • 路上の飲食物屋台、レストラン、ホテル、モーテル、喫茶店、保養地、温泉及びその他レクリエーション地区における労働

     児童労働が禁止されている製造工程は下記のとおり。
    • 絨毯織り
    • セメント製造
    • 衣類の印刷、浸染及び機織り
    • マッチ、爆発物の製造
    • 石鹸製造
    • 建築、建設業
    • 有害な金属及び物質の製造
    • カシューナッツの皮むき及び加工
    • 電子産業におけるハンダ付け

     児童労働が認められている場合でも、次のような厳格な規制を設けている。
    • 児童を19時〜翌朝8時の間は労働させてはならず、また時間外労働も禁止される。
    • 勤続労働時間は3時間を超えてはならない。継続労働3時間以内に少なくとも1時間の休憩を与えなければならない。
    • 毎週1日の休日を与えなければならない。
    • 雇用主は児童労働者の健康及び安全に対する適切な配慮を取ることが求められる。

     2008年9月、インド政府は児童の雇用を禁止する業務に、著しく冷熱にさらされる工程、機械による漁業、食品加工、飲料産業、木材の運搬、積み下ろし、機械による伐採、倉庫業、遊離シリカの取り扱いを追加した。

  4. 職場でのセクシャルハラスメントに対する女性の保護
     「セクシャルハラスメント防止法」の草案が女性児童開発省(Department of Women and Child Development:DWCD)によって作成された。この法案では、すべての女性はセクシャルハラスメントを受けない権利があり、また、いかなる雇用主、上司又は同僚は、職場もしくはそれ以外の場所において女性労働者に対する性的嫌がらせを禁ずるとしている。セクシャルハラスメントが生じた場合、女性労働者は、加害者から賠償金を得る権利がある。また、加害者は罰金を科される。セクシュアル・ハラスメントに対する苦情の手続き及びセクシャルハラスメントの定義については、法案に詳細に述べられている。しかし、この法案は法務省により女性がこの法を悪用するのを防ぐための条項を追加するように求められたため、DWCDに差し戻されている。

1.2.5 就業規則、労働協約

 1946年産業雇用(就業規則)法に準拠する。

1.2.6 その他

  1. 州間出稼ぎ労働者(雇用及び役務条件)法
     この法の目的は、州を越えて就労する労働者の雇用を規制すること、労働者の利益を保護すること、労働条件を規定することである。
  2. 販売促進従事者法
     製薬企業の販売促進を担当する従業員のサービス条件を規定するもので、労働者補償法、最低賃金法、出産給付金法、賞与支払法等もこれら販売促進従事員に適用される。

1.3 労使関係法令

1.3.1 労働組合

【労働組合法(Trade Union Act, 1926)】

  1. 労働組合とは、労働者・雇用主間、労働者同士、雇用主同士の関係を規定する目的で一時的又は恒久的に形成された団体であると定義される。また、2つ以上の組合から成る連合組織も含まれる。
  2. 労働組合法では労働組合の登録について規定しており、労働組織(雇用主の団体も含む)は登録することにより団体交渉を行う法的な権利が与えられる。雇用される労働者の最低10%又は100人いずれか少ない人数の組合員を持つ組合は登録可能で、組合員が7人を下回る場合は登録できない。
  3. 本法では登録された労働組合に一定の保護と権利を供与している。登録組合の事務局員は、総事務局員の3分の1、もしくは5人のいずれか少数を除き、企業に実際に雇用されている者でなければならない。

1.3.2 労働争議解決システムに関する法令

【労働争議法(Industrial Disputes Act, 1947)】

  1. 本法は労働争議をストライキ、ロックアウト等の実力行使ではなく、交渉を通じて調査や解決するための手続きを規定することにより、労使間の平和及び調和を図ることを目的としている。登録労働組合及び雇用主協会の代表者には、調停の権限が与えられている。
  2. 違法なストライキ、ロックアウトを防止し、レイオフ、解雇から労働者を守ることを目的とする。
  3. 団体交渉についても重視する。
  4. 本法は雇用主間、労使間、労働者間における雇用、雇用以外の事項、雇用条件に関係するすべての争議を労働争議と定義しており、何らかの要求が労働者により行われ、雇用主側がこれを拒否する場合に争議が生じる。
  5. 本法では調停、仲裁、裁判を通じて争議を解決することを規定している。また、ストライキ、ロックアウトが合法的と見なされるための前提条件を規定している。
  6. 調停により争議を解決するために中央政府は調停員を任命する権限を有し、調停による解決ができない場合政府は裁判に委ねる。
  7. 裁判による裁定のため労働裁判所、産業裁判所、国家裁判所からなる3段階の制度がある。
    1. 労働裁判所は、雇用主による従業員の解雇命令の正当性、合法性等の小さな争議を取り扱う。
    2. 産業裁判所は、賃金、手当、労働時間、休暇、休日等の重要事項について裁定を行う。
    3. 国家裁判所は、国家重要事項に関する疑問点、複数の州の企業に影響する問題解決を行う。

 本法では100人以上を雇用する企業において、労使双方の代表による作業委員会の設置を規定しており、作業委員会は労使間の協調と良好な関係を維持するための方策を推進する。
 2009年2月、苦情申し立て当局に関する規定の改定案が国会に提出されている。

1.4 労働保険関係法令

1.4.1 労働者災害補償保険

  1. 労働者補償法(Workmen Compensation Act, 1923)
    1. 本法は労働者が就業中に業務が原因で生じた事故により死亡、又は障害を負った際に、当該労働者あるいはその扶養家族に対して救済を講じるものである。ただし、1948年労働者保険法が適用される企業、工場では適用が除外される。
    2. 本法が適用される企業の雇用主は、労働者が就業中に業務が原因で生じた事故により死亡、永久全労働不能、永久一部労働不能、又は全体、一部を問わず一時労働不能となった場合、補償を行わなければならない。また、労働者が雇用中に職業病に罹患した場合も補償しなければならない。
    3. けがによる障害が3日以内の場合、けがが当該労働者による故意の安全規則無視に直接起因する場合、又は事故や業務に直接起因しない疾病の場合には、雇用主はその補償を行う義務はない。
    4. 補償額は障害の程度により定められている。永久全労働不能及び死亡に対する最低補償額はそれぞれ9万ルピー、8万ルピーと定められている。
    5. 補償金は労働者のいかなる債務に対し、差し押さえ、充当、相殺することは認められない。

1.4.2 雇用保険

  1. 労働争議法(Industrial Disputes Act, 1947)
     本法は従業員のレイオフ、解雇(retrenchment)、事業の閉鎖(廃業)について規定を設けているが、雇用保険についても下記の規定がある。
    1. 本法で規定された事由により雇用主が労働者に労働を提供できない場合、その状態をレイオフと称する。レイオフを実施する場合、雇用主は7日前までに事前通告をしなければならない。レイオフする場合、雇用主はその労働者に補償をしなければならない。
    2. 解雇(retrenchment)とは、労働者が不正行為による解雇、定年退職、雇用契約の不更新、長期間にわたる健康不良以外の理由により雇用を打ち切ることを意味する。解雇を実施する前に、雇用主は一定予告期間内に事前通知を行い、管轄政府機関の事前承認を取得しなければならない。解雇される労働者は勤続期間1年につき平均所得の15日分を補償金として受け取る権利を有する。
    3. 本法では事業の閉鎖に関して規定している。事業を閉鎖しようとする雇用主は事前に政府の許可を取得し、労働者に対し一定の予告期間を設け、上述の率による補償を行わなければならない。

     2008〜09年度経済調査報告では、管轄政府機関からの事前承認規定を廃止し、現行では勤続1年当たり15日分の解雇補償金を増額するよう提言している。

  2. 農村雇用保障法(National Rural Employment Guarantee Act, 2005)
     農村地帯において、世帯の成人が1年を通じて未熟練労働に自発的に従事する家庭に対し、会計年度ごとに最低100日以上の賃金保証を提供することにより農村家族の生活の安全を強化するものである。中央政府の指示により、各州政府はそれぞれの州の農村部において雇用を与える責任がある。この制度に基づいて就業した者は、一般的に支払われている日当額に相当する賃金を受け取る権利を有する。

1.4.3 健康保険

  1. 従業員国家保険法(Employee State Insurance Act, 1948)
    1. 本法は労働者に対し生命、業務上の事故(職業病を含む)に関わる医療救済、疾病に関する現金給付及び補填を行うことを目的とする。また、女性労働者に対し出産給付及び労働者の遺族に対し年金給付を行う。
    2. 本法は積立金による制度運営となっている。雇用主は各賃金期間における労働者の総賃金額の4.75%を積み立てなければならない。労働者は賃金の1.75%を積み立てる。ただし、賃金計算期間における労働者の1日当たりの平均賃金が25ルピーに満たない場合は、労働者の積み立ては免除される。労働者の積み立て分は雇用主により賃金から源泉徴収される。
    3. 雇用主が積み立てを怠った場合、その未払い期間に応じて年率5〜25%の損害賠償をしなければならない。
    4. 雇用主が労働者の積立金を払い込まず、その結果労働者が受給の権利を喪失したり、本来より低額の給付率になった場合は、従業員国家保険(Employee State Insurance:ESI)は労働者に本来の率の給付を行い、雇用主からその差額又は雇用主により払い込み済みの積立金の2倍のいずれか大きい方の額を取り立てる。
    5. 本法は10人以上を雇用し、動力を使用して製造工程を営む工場、又は、20人以上を雇用して動力を使用せずに製造工程を営む工場すべてに適用される。本法が適用される労働者は妊産婦給付法及び労働者補償法は適用されない。
    6. 対象となる企業に直接又は労働者請負業者を介して雇用され、賃金月額が7,500ルピー以下の労働者に本法が適用される。この労働者保険制度は従業員国家保険公社(Employee State Insurance Corporation:ESIC)と呼ばれる独立組織により運営される。
    7. 本法の適用を受ける雇用主はESICに企業登録を行わなければならない。
    8. 本法により給付を受ける権利を有する労働者は、この制度による給付を受けるため所定の手続きにより保険制度に加入しなければならない。すべての加入者及びその家族は同機構指定の病院、施療所、診療所で所定の医療を受けることができる。
    9. 同機構は加入労働者の健康、福祉の改善、後遺障害やけがを負った者の障害回復訓練及び再雇用の諸施策を講じる権限が与えられている。
    10. 企業の衛生状態の悪さが原因で、労働者間に通常起こり得ない過度の疾病が発生していると同機構が認定した場合、医療給付としての枠を超えて支出した額を雇用主に請求することができる。

 永続的機能障害者給付と扶養者給付の基本還付率は2008年2月に1%〜464%に強化された。これはインフレの結果で還付率が著しく損なわれていたためである。本法に基づく査察に関しては、雇用主による自己申告制度が導入されており、それによって従業員40人以下の雇用主は遵守しているとの自己申告書を出す義務を負い、一方、40人を超える雇用主は特許会計士が正式に証明する自己申告書を申請しなければならない。これは、雇用主を対象とする定期的な査察を極力少なくするために導入された。
 2008〜09年度経済調査報告書は、本法下での運営費用、罰則と遅延支払いの利息について現行制度を見直すよう提言している。

1.4.4 年金

  1. 従業員積立基金及び雑則法(Employees Provident Fund and Miscellaneous Provisions Act 1952)
     本法は労働者に対し、積立基金による退職年金、家族年金及び預金付帯保険を提供している。本法の適用は、現在のところ従業員20人以上の企業に限定されている。また、下記の事業体も除外されている。
    • 従業員50人以下の協同組合及び動力を使用しない業種
    • 設立後3年に満たない企業
    • 中央、又は州政府が設立する事業体で自身の積立基金や年金制度を有する事業体

     企業の従業員が本法の規定より良い条件を備えた積立基金制度の適用を受ける場合、政府はこれら企業を本法の前文あるいは一部の条項から除外する権利を有する。月額賃金が5,000ルピー以下の労働者は、この積立基金に加入することができる。ただし、満60歳に到達した時点で退会となる。

  2. 従業員積立基金及び雑則法における3つの制度
     以下の制度のもと、中央政府はそれぞれ個別の基金を設立し雇用主と労働者双方が拠出金を預託する。
    1. 従業員積立基金制度(Employees Provident Fund Scheme, 1952)
       これは従業員の積立基金制度で、この基金の積立金は「特別積立制度」に基づき特定の証券に投資される。積立基金委員会は、中央政府が毎年あらかじめ公表する利率に基づき加入者の積立基金口座に利息を払い込む。加入者は次のような特定の理由があれば自己の基金口座から一定の限度内で引き出すことができる。
      • 生命保険の掛け金の支払い
      • 住宅の購入又は建設
      • 住宅の増築、改築、改善及び修理
      • 借入金の返済
      • 子女の結婚
      • 子供たちの高等教育
      • 自然災害による財産の被災
      • 勤務先の閉鎖、ロックアウト又は疾病による緊急の資金需要

       加入者が定年退職、退職又は解雇された場合には、その加入者は積立基金から全額を引き出すことができる。雇用契約満了前の退職であっても自己の積立金に利息を加えた全額の支払いを受ける権利を有する。加入者が死亡した場合、その加入者が指定した受取人又は法定相続人、あるいはその両方に支払われる。加入者の保有する残高は債務の返済に充当されたり、裁判所の決定により差し押さえられることはない。

    2. 従業員年金制度(Employees Pension Scheme, 1995)
       この制度は加入者が20年以上勤務し、58歳で定年退職した場合、定年退職として毎月年金が支給される。58歳以前に退職した場合には退職年金が支給される。加入者が10年以上20年未満の勤続であった場合には短期就労年金が給付される。当該加入者が就業を続けていても満58歳に達した時点で給付が開始される。加入者が最短資格の10年勤続に満たず、退職あるいは定年退職した場合、一定の割合で脱退給付金を受け取ることができる。また、加入者が雇用期間内に全労働不能の障害を負った場合は、年金受給資格にかかわらず毎月の年金を受け取ることができる。これに加え、毎月の寡婦年金、子女年金及び遺児年金制度がある。

    3. 従業員預金付帯保険制度(Employees Deposit Linked Insurance Scheme)
        この制度は従業員に生命保険金を給付するものである。加入者が雇用期間内に死亡した場合、過去12カ月間又は加入期間中の積立基金の平均残高のいずれか低い金額が有資格遺族に支払われる。

  3. 基金への拠出金(上記3制度に共通)
     雇用主は各従業員の積立基金及び年金基金へ次の金額を拠出しなければならない。
    • 従業員数20人未満の企業においては、規定された手当を含む基本給の10%
    • 従業員数20人以上の企業においては、規定された手当を含む基本給の12%

     積立金の一部は年金基金に送金し、残額は積立基金に残る。雇用主は自己の給与の0.5%を預金付帯保険基金に拠出しなければならない。さらに雇用主は、積立基金の管理費用として従業員賃金の1.1%の金額、及び預金付帯保険基金の管理費用として従業員賃金の0.01%の金額を拠出しなければならない。従業員の拠出金は、雇用主が当該従業員に関して拠出すべき金額と同額でなければならない。ただし、従業員は預金付帯保険基金へ拠出する必要はない。従業員が希望する場合は、規定よりも高い率での積み立てることが認められる。また、中央政府も加入者の給与の1.6%に相当する金額を年金基金に積み立てる。
     雇用主が拠出金の支払いを怠った場合、規定の罰金が課される。(年間17〜37%)また、支払いを要する期日から実際に支払った日までの期間に応じて、未払い額に対し年率12%の利息を支払わなければならない。雇用主が支払うべき拠出金、損害賠償金及びその他は当該雇用主の財産の差し押さえ、売却により回収することができ、また逮捕もあり得る。

  4. 免除規定(上記3制度に共通)
     従業員100人以上の企業は積立基金委員会の承認を得た後、民間積立基金に加入することが許される。しかしその民間積立基金は労働者にとって政府による基金より不利なものであってはならず、従業員の過半数の同意を得なければならない。基金に集められた資金は特定の証券、特別積立制度及び公的金融機関、銀行の債券・証券に対し特定の投資パターンにより投資される。
     従業員が本法に適用されない企業に転職した場合、当該従業員の希望があれば積立基金の累積残高を就職先の口座に移転しなければならない。本法が適用される企業に転職した場合は、当該従業員の希望により積立基金の累積残高を転職先の積立基金口座に移転することができる。

  5. 積立基金委員長の責任
     雇用主は、所定の拠出金を所定の期限内に所定の方法により払い込むことで、義務を果たすことになる。従業員は積立基金委員長から積立基金及び年金の給付を受ける。給付が申請された後、何の欠点がないにもかかわらず30日以内に給付しない場合、同委員長はその遅延に対し個人的に責任を問われ、給付額に対し年率12%の率の罰則的利息が課され長官の給与から差し引かれる。

  6. 積立基金の母体
     積立基金機構の基金全体は、政府の指名した「マルチ・ファンド・マネージャー」1人によって行われる。より大きな効率、より少ない運営コスト、ハイリターンを実現するためである。

  7. 職金一時支払法(Payment of Gratuity Act, 1972)
     本法は従業員が長期にわたり問題がなく勤務を行い、退職する際に退職金を給付することを目的とする。本制度は工場、鉱山、油田、大規模農場、港湾、鉄道及び自動車運送業、会社及び小規模商店に適用される。
     勤続年数1年当たり15日分の賃金相当額、6カ月以上1年未満についても同率で35万ルピーを上限として退職金の支払いを規定している。季節営業の企業の場合、各季節につき7日分の賃金相当額が給付される。雇用主との間でこの規定より有利な条件を受ける規定や契約がある場合、本法は従業員のその権利を妨げない。
     2009年2月、私立の教育機関の教師にまで対象を拡大する改定法案が国会に提出された。

  8. 非組織労働者への社会保障法(The Unorganized Workers’ Social Security Act 2008)
     織物師、手工職人、漁師、皮革職人、プランテーション労働者などを含む非組織部門の労働者の福祉を確かなものとするため、2008年に本法が制定された。機能・能力障害の支援、健康管理や出産給付、老齢者保護のほか、中央政府によってさまざまな支援給付や社会保障について包括的に定められている。また、積立基金や労災給付、住宅手当、児童の教育、職業訓練、慶弔見舞金、州政府による老人ホームの提供などについても定められている。労働雇用大臣が議長を務める国家社会保障委員会の構想もあり、同委員会では、非組織労働者のそれぞれの業種に即した適切な計画を提言し、計画実施について監督する。同種の委員会は州政府レベルでも設置する。

1.5 職業能力開発法令

1.5.1 職業能力開発制度

  1. 徒弟訓練法(Apprenticeship Act 1961)
     本法は、雇用主が企業内で徒弟訓練を実施することを義務付けている。また、徒弟訓練制度の条件を規制するガイドラインを規定している。本法は公的部門及び民間企業双方の雇用主に対し、指定職種において、従業員数(未熟練労働者を除く)の一定の割合に応じて徒弟訓練生を従事させなければならないことを規定している。その割合は設備、徒弟訓練修了技術者数及びその他関連事項によって決められる。また、この割合より多くの徒弟訓練生を受け入れることには慎重であるべきである。複数の雇用主が共同でこれらの義務を果たすことも認められる。雇用主は、要望に応じて、本法で規定する割合以上の徒弟訓練生に訓練を実施することが要求される。
     雇用主と徒弟訓練生との間で書面による徒弟訓練契約を結び、その契約書は登録しなければならない。徒弟訓練生が年少の場合、保護者が代理で契約を結ぶことができる。企業の性質により、中央政府徒弟訓練相談所(Central Apprenticeship Advisor)又は州徒弟訓練相談所(State Apprenticeship Advisor)のいずれかに登録する。
     本法は当初、職人技術者の徒弟訓練のみを対象としていた。1973年の改定により大学卒業生及び技術者(専門学校卒業生)も対象に加えた。本法は1987年に再度改定され、12学年職業高校卒業者を技術徒弟訓練生として加えた。徒弟訓練契約に基づき、徒弟訓練を受ける者を徒弟訓練生と称する。徒弟訓練契約及び所定の条件に基づき産業あるいは企業において実施される一連の訓練を徒弟訓練と規定している。本法の施行は労働雇用省の雇用訓練局(Directorate General of Employment & Training:DGET)と、旧徒弟訓練部の中央徒弟訓練相談所が全責任を持つ。本法により中央徒弟制度評議会(Central Apprenticeship Council:CAC)と称する組織が設立され、政府に対して徒弟訓練に関する政策事項、基準及び標準について助言する。CACは労働雇用大臣を議長とし、州教育大臣及び人材開発大臣を副議長として運営する三者組織で、雇用主、労働組合及び産業、労働、技術教育に関する豊富な知識、経験を有する代表者が委員となっている。多くの州政府が州の徒弟訓練制度評議会を設立し、それらの委員会の構成は中央の組織に類似している。
     雇用訓練局は中央政府の公営企業、部局における徒弟訓練制度の実施についても責任を負っている。州内の事業体や民間施設での職人徒弟訓練については、州徒弟訓練相談所が実施について責任を持つ。人材開発省は大学卒業生、技術者徒弟訓練生に対する実施の責任を負う。本法では職人技術者の徒弟訓練として下記の3種類を想定している。
    1. 基礎訓練
       過去に組織的な訓練を受けたことのない徒弟訓練生は基礎訓練コースを受講しなければならない。500人以上の労働者を雇用する企業は基礎訓練を行う施設を整えることが求められる。従業員数がこれに満たない企業、又は徒弟訓練生の数が12人未満の場合は、基礎訓練センターもしくは政府の産業訓練研修所(Industrial Training Institute:ITI)に委託することも可能である。
    2. 実地訓練
       雇用主は企業内に実地訓練コースを設けなければならない。
    3. 関連教育
       企業内で実地訓練を受けている徒弟訓練生には、関連教育を実施しなければならない。資格熟練工になるために理論的裏付けとなる知識を与える。

     種々の職種に関する資格並びに徒弟訓練期間が規定されている。31種の職種の中に137の職種が分類されている。訓練期間は職種により6カ月から4年である。雇用主は所定の最低手当を徒弟訓練生に支給しなければならないが、これは労働に対する手当ではない。
     大学卒業生、技術者、技術徒弟訓練生に対する主な形態は下記のとおり。
    • すべての担当部門において訓練期間は1年間
    • 定員は管理面、訓練教師及び訓練施設の実情に基づいて決められる。
    • 徒弟訓練相談所及び企業の共同作業により訓練プログラムが準備される。
    • 手当の額は法で規定されている。
    • 雇用主は訓練修了後当該徒弟訓練生を雇用する義務はない。同様に徒弟訓練生にも当該企業に就職する義務はない。ただし、徒弟訓練契約の中で訓練修了後雇用について規定されている場合は、その条文が効力を持つ。

     徒弟訓練生は労働者ではなく、あくまで訓練生である。したがって、労働関連法令は徒弟訓練生には通常適用されない。ただし、工場法の健康、安全、福祉に関する規定、労働補償法の徒弟訓練生に関する規定は適用される。業績、規律については企業の規則類に従う。従業員250人以上の企業においては、職人技術者徒弟訓練生の基礎訓練に関して継続的に発生する経費(手当の支払いも含む)は雇用主が負担する。250人未満の場合は、一定の限度額まで政府と雇用主双方が負担する。大学卒業生、技術者及び技術徒弟訓練生に対する経費は雇用主の負担となるが、手当は中央政府と雇用主が折半で負担する。雇用主は各徒弟訓練生の訓練の進捗状況を記録しなければならない。徒弟訓練相談所はこの記録の維持のため、企業に立入り検査をすることができる。
     特定の職種においては、指定カースト及び指定部族に対し訓練の場を確保しなければならない。2008年、「その他の後進階級層(Other Backward Classes:OBC)」にも徒弟制度が提供されるよう徒弟訓練法が改定された。

1.5.2 職業能力評価制度

【徒弟訓練法(Apprenticeship Act, 1961)】
 職人技術者の徒弟訓練を修了した訓練生は、雇用主、労働者、中央・州政府の代表で構成される国家職業訓練審議会(National Council for Vocational Training:NCVT)が実施する全インド職業試験を受けることが義務付けられている。このテストの合格者に国家徒弟訓練証明書が与えられ政府、半官半民の部局、公営企業の雇用の際資格として認められる。大学卒業生、技術者、技術徒弟訓練生は訓練修了時に人材開発省から証明書が交付される。これ以外には職業訓練資格の評価に関する法制度はない。

1.6 その他の雇用労働関係法令

1.6.1 職業紹介制度

【雇用交換(求人情報公開の義務化)法(Employment Exchanges(Compulsory Notification of Vacancies)Act, 1959)】
 本法は求人情報を公開することを義務付けている。すべての公営企業及び指定民間企業は、採用を行う前に労働市場にその求人情報を開示しなければならない。次を除くすべての企業に適用される。

  • 農業及び園芸
  • 家内労働
  • 3カ月未満の短期雇用
  • 未熟練事務作業
  • 国会の事務員
  • 既存従業員の昇進又は過剰従業員の吸収により求人枠を埋める場合
  • 月額報酬60ルピー未満での雇用

 2009年現在、労働雇用省は本法の改定を提案している。その内容は、「雇用交換(Employment Exchange)」という言葉の代わりに「雇用支援・促進センター(Employment guidance and promotion centres)」という言葉を使うべきだというものである。

1.6.2 外国投資法により進出した企業で、海外から招聘され就労する者の労働許可条件

 海外から就労のためにインドに来る外国籍者は、有効な雇用ビザを取得しなければならない。ビジネスビザやツーリストビザは入国後に雇用ビザに変更することはできない。また、現行の外国為替法では雇用ビザを持たない就労者は、給与の国外送金を認められていない。180日以上インドに滞在を希望する外国人及びその家族、もしくは180日以上のビザを保有する外国籍者は、インド到着後2週間以内に、地域の外国人登録事務所(Foreigners Regional Registration Office:FRPO)に登録しなければならない。FRROから承認されると、居住許可が得られる。外国企業の本社から、一時的にインド国内の支店に派遣される外国籍者は、給与(控除等前の総額)の10%まで家族の生活のための送金が許可される。外国籍で一時的にインドに派遣される労働者は、必要な税金をインドに納めることを条件に、その給与の75%までを海外の企業により海外で支払われることが許可される。通常、非居住者は外国企業の支店、事務所、現地法人等のビジネスを行う上で必要な特定のケース除き、不動産の取得は許可されない。

1.6.3 その他雇用労働に関する法令

  1. 拘束労働制度(廃止)法(Bonded Labour System(Abolition)Act, 1976)
     拘束労働とは、債務者が債権者との契約(特定期間もしくは不特定期間、無賃金もしくはわずかな賃金で、債権者に労働もしくはサービスを与えるという契約)の下で行われていた強制労働である。ここでの「債権者」とは、債務者本人もしくはその親族や先祖に金銭の貸しがある者を指す。労働者は雇用主に負債があることで、自身やその家族が労働を強いられていた。高速労働制度(廃止)法は、こうした社会の弱者を、経済的にそして物理的に利用する拘束労働制度を廃止するためのもので、州政府はこの法の成立により、飢えと貧困から逃れようと拘束労働を強いられた貧者と困窮労働者の保護を拡大した。現在、そのような拘束労働はいかなる場合も認められず、すべての拘束労働者は自由になり解放されている。

  2. 労働法(特定企業における財務諸表提出及び会計記録保管の免除について)
     本法は労働関連法令で定められた正式な財務諸表提出の代わりに、従業員数が10人以上19人未満の小規模企業と従業員が9人以下の零細企業に関しては、財務諸表の簡略化を認めるものである。管理登記数及び提出報告数を減らすことにより、人材や組織の資源をより有効活用するべきという考えにより定められた。この件に関しては、1988年労働法の改正法案(財務諸表並びに会計記録保管を特定の法人には適用除外する)が2005年8月に導入された。改正法では、維持保管が義務付けられている財務諸表と会計記録の書類の簡素化を示している。この改定書類はコンピューターで維持保管され報告書はE-メールで送ることができる。

  3. ITサービス産業の従業員に関する条項
     労働雇用省は、ITソフトウエア及びITサービス産業に関しては、日常的あるいは定期的な査察を必要としないと、関係事務所に助言をしている。これは、IT産業に従事する従業員は通常関係資格取得者であり、また常に関連分野に対する興味を保てる環境にあるからである。しかしながら、その他の労働法の下で雇用主が提出する財務諸表を通して、これらの法人への労働法の適用強化は今も続けられている。

  4. 国会審議中のその他重要な改正案
    • 組織部門の社会保障拡大のために、従業員国家保険公社(ESIC)と従業員積立基金機構(Employment Provident Fund Organization:EPFO)で対象とする組織の最少従業員数を20人から10人に引き下げること
    • IESIC法を改正し、ESICを全国健康保険計画(Rashtriya Swasthya Bima Yojana)に参画させること
    • I労働者補償法と州間出稼ぎ労働者(雇用及び役務条件)法を改正し、男女平等にすること

 インドの労働規制を総括すると、組織部門の一部の労働者には過大な保護を与えている一方、圧倒的多数を占める非組織部門の労働者には完全な保護を与えていないのが特徴である。この理由の一つは、法律の多様性による混乱、定義や法律の管轄権の問題である。労働者の多様性を許さない条項は、関連労働者に適切な補償が与えられるよう議論を重ね改定する必要がある。一方、社会保障の条項の執行は、現行制度や仕組み自体の効率向上が伴わねばならない。また、これまで社会保障から除外されていた労働者も、今後は法的に保護される必要があるだろう。


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    http://indiacode.nic.in/fullact1.asp?tfnm=196337
  19. The Weekly Holidays Act, 1942.
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