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中国

作成年月日:2009年11月30日

労働力の送出・受入れについて

5.1 関係法令及び制度の概要

 中国において、労働力送出入に関する法律の整備が始まった時期は極めて遅く、労働力の送出入を統一する系統的な法律は今に至ってまだ存在していない。現在は、以下にある複数の法律法規内で規定されている。

  • 中華人民共和国労働法
  • 中華人民共和国労働契約法
  • 中国における外国人雇用管理規定
  • 国外労働力送出に関する仲介業務の管理に関する規定

 また、実施においてはさらにいくつかの規定があり、対外労働力提供に係る争議及び突発事件の解決に関する通知(商務部)、対外労務研修管理規定(商務部)、出国労働者の契約に関する手続き、外国との労働力送出協力の経営資格の管理に関する規定などが挙げられるほか、地域によってはさらに地方の条例もある。現在、人的資源社会保障部は、人材市場の管理規定を起草中であり、その中には、中国で働く外国人の問題についても独立した項目が設けられる可能性がある。
 上述の法律法規は、労働力の送出入を明確に規定するものである。例えば、「出国労働者の契約に関する手続き」は、外交部、対外貿易経済協力部、公安部が2002年に発行したものであるが、出国労働者が公用旅券で渡航する慣例を終結させ、国際慣例に合わせることとした。また、人的資源社会保障部、公安部が2002年に公布した「国外労働力送出に関する仲介業務の管理に関する規定」は、国外就労や積立金保留制度について、仲介機構に対する管理や認可の制度を定めているほか、仲介機構の行為の規範化や国外で働く労働者の合法的権益の保護を規定している。国家財政部、商務部は、2003年に外国との経済協力において、企業が国外派遣される労働者から保証金を受け取る行為禁ずる規定を発表したことで、保証金制度は取消され、その代わりに「業務保障保険」が設定され、出国する労働者の負担がある程度軽減されることとなった。また、2001年には財政部、対外貿易経済協力部が「対外労務協力の積立金に関する暫定規定」を公布し、2003年に改訂され、市場の規範化に役立つとともに、国外で働く労働者の合法的権益を保護することとなった。商務部が2004年に公布した対外労務研修管理規定は、対外労務研修の作業を強化し、対外労働力送出協力の継続的で健全な発展を促進することを定めている。
このほか、労働力送出の新たな条件に適合するために、次のような一連の規定が公布されている。
 「外国との労務提供協力におけるプロジェクト審査に係る問題に関する補充通知」
 「外国との労務提供協力におけるプロジェクトの厳格な認可に関する緊急通知」
 「商務部:対外労務提供に係る紛争や突発事件の解決に関する通知」

 要約すると、商務部は中国における労働力送出の主管部門であり、主として外国側機構との間の労務提供協力を実施している。労働力受入については、主管部門が曖昧であるが、人的資源社会保障部、公安部(特に出入国管理部門)の両部門が、労働力受入の管理に重要な役割を果たしている。

5.2 労働力移動の規模

  1. 受入れ労働力の規模
     中国で働く外国人の数は過去10年間に著しく増加した。労働社会保障局教育雇用部門の労働市場課長である高林氏によると、2005年末時点で、9万人を超える外国人が労働就業証を所持して中国で働いているとのことである。人民日報は、外国人労働就業証の批准数は、同年1月~11月末の間に1万人を超え、2003年比で30%増と報じている。申請者のほとんどは、中国における多数の日系企業、韓国系企業で勤務する日本人と韓国人であり、その他は欧米、東南アジア、オーストラリア、インドなどである。中国で働く外国人の92.7%が大学卒又はそれ以上の学歴を有している。彼らの職場での地位は主として高級管理職、高級技術者、駐在員事務所の首席代表などである。
     中国人的資源社会保障部発行の「2006年度労働及び社会保障事業発展統計広報」によると、2006年末には、外国人就業証を所持して中国で働く外国人は18万人に達し、2003年末に比べると2倍にも及ぶとのことである。外国人労働者は主として東部の大都市に集中しており、上海で働く外国人が2006年末時点で最多の5万4,608人に達している。次いで第2位の北京では3万484人、第3位の広州では、2009年第1四半期に約6,800人となった。さまざまな国籍を持つ18万人の外国人労働者は、中国の労働力市場の特色ある風景ともなっている。
     北京出入国検査局係員によると、現在北京で働く外国人は主としてアメリカ、韓国、日本、イギリス、ドイツ、カナダなどから来ており、上海で働く外国人は130以上の国家(日本が28.6%、アメリカが12.3%、韓国が8.9%)、広州で働く外国人は108の国家(日本、インド、韓国、アメリカが上位4カ国で、うち日本は29%)から来ているとのことである。これにより、日本、アメリカ、韓国は中国の外来労働者の最大の送出国であると見ることができる。
     上海市人的資源社会保障局によると、2008年11月末時点で、上海で働く外国人は6万8,648人、主として日本、アメリカ、韓国、シンガポール、ドイツ、フランス、カナダ、マレーシア、オーストラリア、イギリスから来ており、これら上位10カ国で総数の80%を占めている。一方、台湾・香港・マカオ籍は計2万5,157人で、主として台湾人(76%)である。上海で働く外国人のうち、高級管理職(投資者、正副董事長、正副総経理、首席代表、尾パートナー、地区総裁及び総監等以上の職位)は32.1%、高級技術者(高級工程師、高級会計士、高級建築士等以上の職位)は7%、一般管理者(主要として部門のマネージャーや主管等)は45.9%、一般技術者(工程師、会計士、カメラマン、料理人等)は9.7%を占めている。これら外国人労働者はいずれも比較的高学歴で、修士以上が20.43%、学士以上が68.76%を占めている。上海市外国人(台湾、香港、マカオ)雇用センターの責任者によると、1996年から現在に至るまでに受理した上海における外国人の就業申請は14万5,633人、台湾・香港・マカオ籍の就業申請は6万2,571人に上るとのことである。
     しかしながら、2009年11月16日付け中国日報が伝えるところによると、専門家の話では、「北京では外国人労働力市場が収縮しており、雇用主は適性の選り好みをする傾向が増えている」とのことである。中国国家外国専家局(State Administration of Foreign Experts Affairs:SAFEA)の広報担当者楊氏は、過去5年間に中国で職を求める外国人の数が大幅に増加しており、外国人を求める産業としては、教育、金融、ITが挙げられる。過去には、多くの求人情報があっても応募者が不足していたが、今では状況が大きく変化している」と述べている。SAFEAは週末に北京で就職フェアを開催し、700人が参加した。SAFEAは2005年から毎年4月に主要な仕事の就職フェアを開催している。2005年の第1回フェアに参加したのは200人であったが、2009年4月には1,200人に増加している。
     チャイナエキスパートインターナショナル社の取締役であるコリン・フリードマン氏は、「外国人に対する中国の労働力市場は収縮している。優れた英語力のある中国人がどんどん増加しているためだ。国際的な人材が中国で相応しい仕事を見つけるのはより難しくなってきている」と語っている。IP Chine社のヒューマンリソース部長である楊氏は、「フランスのIT企業が5名の採用を望んでいたが、条件に符合する者はいなかった。我々は、英語で流暢にコミュニケーションできるだけでなく、IT技術をも備えた人材を求めている。しかしながら、ほとんどの応募者はIT産業における専門的バックグラウンドを備えていない」と語っている。中国の英語スクールであるイングリッシュ・ファーストの外国人教師招聘を行っているモリー・レイトン氏は、「国際金融危機により、中国で職を探す外国人は増加した。今年、英会話教師の募集に対して、多くの履歴書を受け取ったが、中には専門的な職業バックグラウンドを持つ人、例えば弁護士からの応募もあった」と語っている。2000年に設立された人材派遣会社ワイセスト社のCEOであるダイ・ケビン氏は、「金融危機とは別に、新興経済における就業の機会は外国の人材にとって非常に魅力的なものである。2008年10月以来、我が社は、外国から中国の就職に関するEメールを毎週2~3通受け取っている。以前は月に2~3通だった」と語っている。国際ビジネス経済大学で中国語を勉強するアメリカ人学生のジェームズ・タレント氏は、「英語教師になりたくない外国人にとって、中国で仕事を見つけるのは難しい。いい仕事が見つからなければ、年末には国に帰るつもりだ」と語っている。
     国家統計局の報告によると、2008年末時点で約21万7,000人の外国人が中国の就業許可を得ており、これは対前年7,000人増とのことである。

  2. 送出労働力の規模
     2008年、中国の労働力輸出による取引額は80.6億ドル※1で、昨年同期に比して19.1%増加した。また、新規契約は75.6億ドルで、昨年同期に比して12.8%増加している。人数にすると、通年で送出された各種労働者は42万7,000人で、昨年同期に比して5.5万人増加した。2008年末時点における在外中国人労働者は74万人であり、昨年同期に比して0.3万人減少している。しかしながら、商務部の調べによると、2009年1~10月における中国の労働力送出による取引額は70億ドルであり、2008年同期に比して6.8%増加している。また、同時期に新規締結した契約額は55.6億ドルで、10.8%の減少となっている。国外へ送出された各種労働力は31万7,000人で、2008年同期から8.6%減少した。2009年10月末時点では、世界的金融危機により、取引額が62.8億ドル、新規締結契約額が65.4億ドル、各種労働力の送出が493万人となった。
    ※1
    1米ドル=86.29日本円(2009年11月30日現在)

  3. 中国の対外労働力送出協力
     中国は、対外労働力送出協力について、二国間経済協力の下に組織し、管理を行っている。対外労働力送出に従事する企業は、政府商務部から認定を受け、国内の労働者を国外雇用主に向けて送出し、雇用主の求めに応じて、また受入国政府の許可を得るために、種々のサービスを提供している。国外雇用主へのサービスには、資質のある労働者の選定、国外労働者の管理や期限満了に伴う中国帰国に関する各種サポートが含まれる。また、中国人労働者に対しては、次のようなサービスを提供する。
    • 出国手続き
    • 適性訓練の実施
    • 国外雇用主との契約締結のサポート
    • 国外雇用主とのコミュニケーションの促進や争議解決のサポート

     中国は、対外労働力送出企業、国外雇用主、労働者の三者が、それぞれの権利や義務を明確にした、当事者間に拘束力を有する三者間契約を締結することにより、対外労働力送出協力を行っている。
     労働者は、中国の対外労働力送出協力の規定に基づき、契約期間が満了すれば中国に戻らなければならない。中国は、雇用の問題を解決するために、労働力送出に頼って、他国にその責を担ってもらっているのではなく、雇用問題は、中国自身の経済発展により解決するとしている。したがって、対外労働力送出協力のルートにより国外で働く労働者は、当該国で雇用されたり当該国に移住するのではなく、任務の完了とともに、中国に帰国しなければならない。
     中国は二国間経済協力の枠組みの中で、対外労働力送出協力を実施している。商務部は、相互経済貿易委員会やFTA交渉等の経済の枠組みを通じて労働力受入国との間に経常的な交流メカニズムを構築し、相互労務協力の協力体制を強化している。
     労働力送出は、対外経済協力の一環として、中国の対外労働力送出協力を推進している。中国では、企業は、国外投資やプロジェクト契約をする際の労働力供給において、地元の労働者を優先的に考慮する。適切な地元労働力が得られない場合、企業は、国外プロジェクトにおいて中国国内の労働者を雇用するか、もしくは自社の社員を使用し、任務完了と同時に中国に帰国することを保証するのである。

5.3 労働力移動の要因

  1. 対外労働力送出協力に関する主要政策
     中国は、豊富で優秀な労働力資源を有している。中国政府は、中国の企業に対し、さまざまな形で労務協力を開発することを奨励している。中国の対外労働力提供は、相互に利益のある経済活動であり、協力プロジェクトの指導の下に実施される。中国政府は、対外労働力送出サービスに従事する中国企業の経営資格の審査批准制度を構築している。経営資格を取得していない企業は、対外労働力送出サービスを実施することができない。対外労働力送出に従事する資格を得た企業は、国外において発生する労働力送出に関する突発事由に備え、現金又は信用状の形式で基金を積み立てなければならない。また、中国政府は関連の企業に対し、労働者に対して事前研修を実施するとともに、国外派遣中の管理を行うよう要求している。労働者は国外雇用主との契約が満了した時点で中国に帰国するため、移民については関与しない。
     相互労務協力の円滑な促進を保証するために、中国政府は一連の対外労働力送出協力に関する政策を制定し、商務部に指示して、それら政策実現の監督管理機能を負わせている。監督管理機能の中には、対外労働力送出に従事する企業の資格認定も含まれている。

  2. 商務部による対外労働力送出機構の資格認可の実施
     対外労働力送出協力に従事する企業は、中国で登記された企業であり、商務部の認可を受け、対外労働力送出を行う資格を取得しなければならない。また、中国の個人及び法人、外国機構は、中国の法律法規に基づき、中国において直接対外労働力送出のための労働者を採用してはならない。
     商務部は、対外労働力送出協力に従事する企業に対して動的な管理を実施している。対外労働力送出企業が法律法規や管理規定に違反した場合、商務部は警告を与えるとともに、罰金を課す、対外労働力送出企業の資格を剥奪する、などの措置を取るほか、違反の状況が重大で犯罪を構成する場合は、商務部が司法に訴え、その法的責任を追及する。

  3. 対外労働力送出協力プロジェクトの審査
     県級商務部門は、所管地区における対外労働力送出企業による労働力送出の審査を担当し、対外労働力送出企業、雇用主及び労働者による三者契約が締結されているか否か、中国及び外国雇用主所在国の法律を遵守しているか否か、労働者が研修を受けられるか否か、などについて確認しなければならない。

  4. 対外労働力送出協力プロジェクトの確認
     中国大使館の経済商務諮詢処が、労働力送出プロジェクトの適性(労働力送出プロジェクトの存在証明、当地政府の監督管理部門による労働力受入や国外雇用主の認可などを含む)確認を担当する。

  5. 費用基準の確定
     これまでの中国政府の規定によると、対外労働力送出協力に従事する企業は、労働者から、国外の雇用主との間に締結した雇用契約で約定する賃金の最大12.5%をサービス料として徴収することができ、さらに、パスポート、ビザ取得、健康診断、適性訓練、契約の証明取得、及びその他の必要経費についても、労働者自身が負担するものと定めている。これら費用は、実際に、必要に応じて対外労働力送出企業から要求されるが、両者間協議により、適切な基準が定められている。

  6. 国外送出する労働者の適性訓練
     対外労働力送出に従事する企業は、送出する労働者に対して、出国前の適性訓練を実施し、労働力送出試験センターの試験を受けさせ、試験に合格した者については、労働力送出訓練合格証を発行する。この訓練は、国外雇用主所在地の法律法規や習慣を守り、外国語の知識を有し、雇用契約を厳密に履行することにより、国外雇用主との間により良い協力関係を構築することを目的としている。

  7. 中国から送出される労働者の保護
     中国大使館は、送出された中国人労働者を保護する義務がある。また、労働者の合法的権益は、政府間の労務協力協議、労働力受入国の法律法規、対外労働力送出企業と国外雇用主との間に締結した労務協力の規定により保護されなければならない。

5.4 送り出しの所管機関

  1. 労働力送出機関
     商務部が送り出しの所管部門であり、対外労務協力に関する法律法規を制定し、法律に基づいて監督管理を実施している。すべての省級商務主管部門は、主管地区における、対外労働力送出企業による労働力送出の審査を担当し、労働力送出企業、国外雇用主、労働者の三者間の契約が中国及び国外雇用主所在国の法律に基づいているか否か、労働者が訓練を受けているか否か、などを審査しなければならない。
     中国政府の規定によると、対外労働力送出協力に従事する企業は、送出する労働者から、国外雇用主との間に締結した雇用契約に定める賃金の12.5%を超えないサービス料を要求することができる。パスポート、ビザ取得費用、健康診断費用、適性訓練費用、契約認証費用、及びその他の費用は労働者自身の負担となるが、労働力送出企業のサポートを必要とする場合は、サービス料が要求される。特別な費用基準については、相互協定の中で合意に達し、定めることができる。
     中国大使館は、送出された労働者に対し、保護する義務がある。また、労働者の合法的権益は、受入国の法律法規や労働力送出企業と国外雇用主との間に締結した労務協力契約の規定に基づくとともに、政府間の労務協力協定により合意して保護される。

  2. 対外労務協力の管理体制
     中国の対外労働力送出は元来対外工程請負、対外援助プロジェクトを主として始まったものである。長年にわたる実践を経て、今日では批准を得た対外労働力送出企業と国外の雇用主と国外派遣労働者の三者が契約を締結し、組織的に各種の労働力を関係各国/地域に派遣し、国外の雇用主にサービスを提供している。経営企業を通じて対外派遣労働者のトレース管理も可能となり、最大限に対外派遣労働者の合法的な権益や双方の経済協力活動を保護して、今や非常に整備された、中国の特色ある国内外管理体制を備えるに至っている。その概容は以下のとおりである。

    1. 商務部によるマクロ管理の実施
       商務部が対外労働力送出の促進や監督管理政策を制定し、各項規律制度を整備している。これらの制度は主として経営資格の批准や年度審査制度、対外派遣する労働力の研修制度、対外労務協力準備金制度、対外労務援助制度、統計制度等を包括している。

    2. 各部門による協調と協力
      • 商務部と公安部門の協力体制:共同で対外派遣労働者の出国手続きを完備する、労働者出国証明制度を構築している。
      • 商務部と外事部門との協力体制:共同で国外労働紛争や突発事件の処理メカニズムを構築している。
      • 商務部と公安、工商、外事等の部門との協力体制:共同で対外派遣労働市場の経営秩序を整理している。
      • 商務部と財政部門との協力体制:対外派遣労働の費用徴収制度を制定し、対外派遣労働者の保障保険制度により、労働者の経済的負担を大幅に軽減した。
      • 商務部と関連専門部門との協力体制:対外派遣する船員、フライトアテンダントの管理を強化している。

    3. 経営企業に対する所属地管理の実施
       対外労働力送出作業においては地方政府部門がその指導作用を充分に発揮し、対外労働力送出プロジェクトの審査、経営企業の合法的な経営の監督、所属地区における経営企業の労働力送出作業で発生する困難や問題の調整や解決に責任を負っている。

    4. 産業組織の調整と自律
       中国対外工程請負商会は民政部の批准を受けて設立された、全国の対外労働力送出を担当する業界社団組織である。中国対外工程請負商会は、労働力受入国の産業組織との間に業務連絡メカニズムを構築し、国内経営企業の国際労働力市場の開拓を助けるとともに、経営企業内部における調整メカニズムの構築についても、産業組織としての作用を発揮して、経営企業の経営行為に対して具体的な指導、調整、コンサルティングを実施し、業界の自律を図っている。

    5. 在外経済商業機構による監督管理
       対外労働力送出の監督管理は在外公館の経済商業機構の重要な日常業務であり、関連機構が専従職員を置いて、主として対外労働力送出プロジェクトの確認、駐在国主管部門との関係の調整、指導、経営企業への監督作業、労働紛争の調整や処理の業務にあたらせている。

    6. 両国政府間の協力
       現在、両国政府の経済貿易連合委員会の枠組みの下で、商務部は主要労働力受入国/地区との間に政府間協商メカニズムを構築し、関連国との間に政府間労務協力協議を締結している。例えば、ロシアとの間には「中華人民共和国公民とロシア連邦、ロシア連邦公民と中華人民共和国との短期労働協定」を、バーレーンとの間には「労務協力及び職業訓練領域に関する協力協定」を、マレーシアとの間には「中国の労働者を雇用することに関する協力諒解備忘録」を締結している。現在、商務部はモーリシャス、カザフスタン等の国家と労働協力協議の締結について協議中である。上述の協調メカニズムは、両国間の労務協力を促進し、対外労務協力に対する両国政府の共同管理を強化する上で重要な作用を発揮している。

 現在、中国の対外労働力送出は既に「商務部のマクロ管理下において、各部門が協力、調整し、地方政府部門が所属地管理を行い、産業組織が調整、自律し、在外経済商業機構が監督管理を行い、労働力受入国との共同管理を行う」という体制を形成している。

5.5 送出労働力の属性

 対外経済協力の枠組みの中で、中国は主として2つのルートで労働力を国外送出してきた。2006年、中国は労働力送出の収入35億3,700万ドル(前年同期比 33.3%増)を達成し、 71億2,300万ドル相当の新規契約を締結し、各種労働力35万1,000人(前年比7万7,000人増)を送出した。
 下表を見ると、1990年から2008年までの19年にも満たないうちに、労働力送出は驚異的な成長を遂げていることが分かる。2008年6月末には労働力送出2億4,890万ドルを達成し、これは1990年の13倍以上である。2008年まで、送出労働力数 (プロジェクト契約による労働者と労働協力による労働者送出を含む) は、着実に増加を続けている。

表5‐1 送出労働力(単位:百万ドル)
年度 新規
契約額
取引額 送出
労働力
(人)
送出労働
力累計
(人)
年度 新規
契約額
取引額 送出
労働力
(人)
送出労働
力累計
(人)
1990 26.03 18.67 52,906 57,939 2000 147.10 111.92 252,575 425,667
1991 36.09 23.63 87,065 89,837 2001 163.67 120.77 263,666 475,176
1992 65.85 30.49 118,220 130,984 2002 178.07 142.65 213,046 489,622
1993 68.00 45.38 136,657 173,654 2003 207.54 171.46 210,015 524,844
1994 79.87 59.78 169,558 222,578 2004 273.47 207.77 248,000 535,000
1995 94.91 64.55 194,258 264,535 2005 338.59 265.49 274,000 563,485
1996 100.08 75.33 199,481 285,763 2006 712.30 353.70 350,985 675,149
1997 110.66 82.01 234,996 333,761 2007 679.50 390.30 326,000 753,000
1998 116.33 100.45 230,572 352,125          
1999 128.31 111.45 233,942 382,281          
※出典:
中国統計出版社、「中国対外経済統計年鑑2005」
※出典:
中国商務部、「商務部年次統計報告」
http://www.mofcom.gov.cn/

5.5.1 受入国

 中国は、180を超える国や地域に対し、さまざまな形で労働力送出市場を開拓し、拡大する方向にある。中国は、国外経済の変遷に伴い、伝統的な中東市場をアフリカ、東南アジア、欧州、中南米、北米市場にまで広げている。近年中国は、伝統的な労働力送出市場を強化する一方で、新たな市場を開拓し、バーレーン、マレーシア、モーリシャス、イギリスとの間に相互労務協力協定を締結し、ドイツ、オーストリア、ノルウェー、スウェーデン、オランダ、オーストラリアへも労働者を送り出している。中国の労働力送出市場の多様化は加速しており、2007年6月末時点で、中国は160を超える国や地域との間に労務協力関係を構築している。受入国は、日本(13万人)、シンガポール(8万3,000人)、韓国(5万4,000人)、アルジェリア(3万5,000人)、マカオ(3万3,000人)、ロシア(2万5,000人)、香港(2万1,000人)、アラブ首長国連邦(1万8,000人)、スーダン(1万2,000人)、ヨルダン(1万2,000人)、サイパン(1万2,000人)、台湾(1万2,000人)、モーリシャス(1万人)などである。要約すれば、中国は労働力送出において、アジア市場に焦点を当てているということができる。2006年までに、アジア市場で働く労働者は50万人を超え、全国外労働者の74.3%を占めていた。主たる市場はシンガポール、韓国、日本、マカオ、香港及びASEAN諸国である。2006年、東アジア及び東南アジアで働く送出労働者は15万9,819人であり、これは年間送出労働者の45.5%、アジアにおける年間送出労働者の64.6%を占めていた。年末には送出人口が41万3,970人に達し、送出総人数の61.3%、アジアへの送出総人数の82.5%を占めるに至った。
 1990年代初め、中国は日本へ労働力送出を開始し、日本は外国人に対する調査並びに技術研修制度を構築した。現在、日本は中国の伝統的かつ最大の対外労働力送出市場である。2006年、中国は日本に65万1,890人を労働力送出し、年間国外労働者の18.6%、アジアにおける年間労働者の26.3%を占めている。同年末時点では当該人数は14万3,154人に上り、送出労働者総数の21.2%、アジア向け送出労働者総数の28.5%を占めている。中国が日本に送出するのは、人数は多いが、雇用産業の観点から見ると、比較的資質の低い労働力である。中国人研修生の60%は縫製や機械、農業分野、食品製造工場、建設現場などで働いている。その一方で、日本の人材派遣企業は、仲介機関を通じて、あるいは中国に進出した日系企業を通じて、日本企業において技術職に就くコンピュータソフトウェア技術者、機械設計技術者、電気エンジニアなどを採用し始めている。
 シンガポールは中国にとって、2番目に大きい労働力送出市場であり、労働力提供では緊密な協力関係にある。中国の労働者はシンガポール市場では非常に優位にあり、同国の雇用主から望まれている。その理由として、シンガポール政府がインフラ投資を拡大し、サービスや建築の分野で人材を必要としていることが挙げられるが、中国とシンガポールは言語や文化的背景が似ており、中国人労働者は技術や能力が高いと評価されているのである。2006年末時点で、8万4,000人の中国人労働者がシンガポールの建設現場、電気工事、製造業などの分野で働いている。
 韓国も中国にとっては重要な労働力送出市場であり、中国からは主として工業、漁業、建築業の分野で、労働者が研修生として送出されている。2006年、1万9,689人の労働者が韓国で働き、年間送出労働者の5.6%、アジア向け送出労働者の8.0%を占めていた。労働力送出人口は5万8,618人に上り、送出労働者総数の8.7%、アジア向け送出労働者総数の11.7%に相当する。
 中国はアフリカや中南米市場向けにも労働力送出を加速している。1990年、アフリカ向け送出労働者はわずか1,026人に過ぎなかった。中南米の継続的な経済発展により、また、中国と中南米諸国との経済協力の強化促進により、中国は中南米向けの労働力送出を開拓した。2006年までに、中国は2万人を超える労働者を中南米に送出しており、割合で見ると、1990年の1.8%から2006年には3.1%にまで増加している。また、改革開放以来30年間に、中国政府は自国企業が、その技術や管理経験をもとに、アフリカ諸国との間にビジネスを開拓し、プロジェクト契約を締結することを奨励、管理してきた。それにより、建築分野におけるアフリカ向け労働力送出は年々増加し、2006年末には約14%を占めるに至っている。
 2006年には、欧州向けの労働力送出も増加し、市場シェアは5.6%に達した。これは主としてロシアの建築市場で若干の労働力需要があったこと、ドイツで調理人の需要があったこと、イタリアで製造業分野の需要があったことなどによる。しかしながら、概して言うと、西欧州市場への中国の労働力送出の参入は未だ障壁が大きく、市場参入制限や、EUに新規参加した国々との競争に直面している。今年のEU拡大により域内人口は約7,500万人に達するが、ほとんどの欧州諸国は、EU加盟国にのみ労働市場を開放しており、中国は含まれていない。EUは、加盟国内の労働市場の需要に符合する場合を除き、中国からの労働者を含む移民労働者を許可していない。EUは、中国国民の資格について差別を適用しているだけでなく、入出国についても異なる取り扱いを行っている。さらに、ほとんどの欧州諸国では、非EU加盟国に対し、通過について厳しい税関検査や出入国手続きを実施している。2006年、欧州に送出された中国人労働者は2万9,040人で、中国の全送出労働者の5.8%を占めた。年末には3万7,487人に達し、これは国外労働者総数の5.6%に相当する数字である。労働力提供協力の人数2万1,589人のうち、建築プロジェクトに従事する労働者が7,396人となっている(2006年末には前者が2万7,780人、後者が9,698人に達している)。
 ロシアは中国や欧州にとって、労働力送出の重要な市場である。改革開放以来、中国は外国との労務協力、特にロシアへの労働力送出に大いに力を入れてきた。1992年、中国は企業向けに焦点を当てたロシアへの労働力送出を実施した。商務部によると、2006年までに、中露間で締結された労働力送出契約は6億6,200万ドルに上り、3億3,600万ドル回収の任務を達成している。また、中国は2万2,852人を超える労働者をロシアに送出し、2006年末時点では2万5,272人に達している。この二国間契約により入国する中国人材や労働者は、労働市場において高い技術、能力、適応性を持ちさらに勤労であるため、ロシアの雇用主に歓迎される場合が多い。極東ロシア、シベリア地域及び国境地区に至るまで、中国人労働者は農業栽培、家畜生産、建築、木材伐採、ビジネスサービス、ケータリング、医療などを主とする、さまざまな分野で、小規模かつ潜在的能力の開発を伴わない領域においても、労働に従事している。

5.5.2 職種

 中国は国外へ膨大な労働力を供給している。表5‐2を見ると、送出労働力の大多数、75%は製造業、建築業、牧畜・農林水産業に従事していることが分かる。2006年には21万7,000人が国外で製造業に従事し、送出労働力の34%を占めた。近年では主として建築業の領域における送出労働力が増加を続けている。2003年にシンガポールが建築業における労働力市場を再開し、多くの建設プロジェクトが実施された結果、中国からの送出労働力が急増し、2006年末には21万5,000人に達している。全体に占める割合を見ると、2001年の15%から2006年には34%に増えたことが分かる。中国は国際的な建設業労働者、繊維業労働者や船員の送出元となっている。一方、教育、科学、文化、ヘルスケア、設計、コンサルティング、ITの分野で国外に送出される労働者は平均で2%にも満たない。2004年11月において、設計、コンサルティング、監理の分野で国外送出された労働力はわずか3,000人であり、全体の2%未満である。船員を主とする交通運輸業や飲食業に従事する在外人数は最近2年間安定した数字であるが、全体に占める割合は年々減少している。交通運輸業や飲食業に従事する在外人数7万人が全体の占める割合は、2006年で12%である。

表5‐2 中国における送出労働力の産業分布(2002~04年)(単位:人、%)
産 業 2002 2003 2004
送出労働力 比率 送出労働力 比率 送出労働力 比率
農業、林業、
牧畜業、漁業
63,025 15.4 75,178 14.3 74,000 13.9
製造業 174,640 42.5 195,188 37.2 200,000 37.6
建設業 67,909 16.5 132,417 25.2 140,000 26.3
ケータリング、
サービス業
14,316 3.5 14,496 2.8 14,000 2.6
教育、科学、文化、
ヘルスケア
2,774 0.7 2,821 0.5 2,000 0.4
運輸 44,360 10.8 49,946 9.5 49,000 9.2
設計、コンサルティング 1,165 0.3 3,095 0.6 3,000 0.6
コンピュータサービス 1,131 0.3 1,441 0.3 1,000 0.2
その他 41,051 10.0 50,262 9.6 49,000 9.2
合 計 410,371 100.0 524,844 100.0 532,000 100.0
※出典:
中華人民共和国商務部、「中国対外労務合作年度報告2004」
http://chinca.mofcom.gov.cn/aarticle/tongjiziliao/200504/
20050400052051.html

5.6 送出労働力の技能水準の評価制度

 2002年1月、対外貿易経済協力部が「対外派遣する労働者の研修作業管理規定(改訂)」を公布し、すべての労働者は、国外に派遣される前に研修を受け、送出労働者としての資格証書を取得するよう定めた。この資格証書は、送出労働者の資質の証明であり、出国に際しての必要書類でもある。2004年、商務部は送出労働者の研修に関する規定を公布して、国外送出労働者への研修の管理を強化し、送出労働者の質を確保し、労働者の合法的権益を保護し、外国側との労務提供協力関係を促進するとした。同規定によると、すべての国外送出労働者は、有資格の企業によって国外へ派遣される前に、オリエンテーション研修を受けなければならない。オリエンテーション研修は、中国及び相手国の法律法規、相手国の習慣を理解するとともに、語学教育を受けるものである。

 規定によると、オリエンテーション研修の主たる内容は次のとおり。

  • 中国の対外労務協力分野における法律法規並びに規定
  • 安全、秘密保持、外事規律、礼儀等、出国にあたっての常識
  • 送り出し単位と国外雇用主、労働者との間に締結した契約の内容
  • 国外労働に従事する場合に負うべき義務、享受する権利、並びに国外雇用主との関係の正しい処理、サービス意識の向上、業務の質の保証、法に基づく契約の履行、自身の合法的権益の正当な保護など
  • 相手国(地域)の関連法律法規、宗教、民族などの分野における状況
  • 相手国(地域)の政治、経済、人文、地理などの分野における状況
  • 科学を信じ、迷信に打ち勝ち、反動的な性質を持つ外国の宗教勢力や邪教組織の新党を自覚して阻むこと
  • 言語、通常の専門技能及びその他必要な研修内容

 規定によると、研修時間は以下のとおり。

  • 公共課程の内容研修:通常40時間を下回らないこと
  • 言語研修の時間:労働者が派遣される国家の企業が提出した基準に基づいて計画し、外国語の水準が定められた基準に達しない場合は、40時間以上の研修を施し、簡単な生活用語や業務用語の強化研修を行う
  • 専門技能の研修時間:国外送出単位が、労働者の技術状況や国外雇用主の要求に基づいて、研修センターと協議の上確定する

 各省、自治区、直轄市及び計画単列市の商務主管部門は、専門機関1社に委託して、当該地区の対外労働派遣試験センターとすることができる。試験センターは、当該地区の実際需要に基づき試験会場を設置することができる。試験センター及び試験会場は、研修機構と分離しなければならない。
 研修の試験問題は中国国際契約協会が統一して作成し、試験センターに提供して使用する。地方商務主管部門及び中国国際契約協会は、試験の監督や検査を担当する。労働者が試験に合格すれば、試験センターから研修合格証が発行される。

5.7 受入れの所管機関

 中国国家外国専家局(SAFEA)が、労働力受入れを担当する部門であり、国務院令No. 12 [2008]により、部に準ずるレベルの機関として、人的資源社会保障部の管理の元に設置された。同局の主たる機能は次のとおりである。

  • 外国専門家招聘(OEI)の計画や政策を制定し、関連の法律法規を起草し、受入れた外国専門家の管理方法を制定し、監督管理を実施する。
  • 国費補助による重点外国専門家招聘計画の審査批准、国家外国専家重点招聘計画の組織並びに実施に責任を負う。
  • 外国専門家の招聘費用の予算を作成し、経費使用について監督や検査を実施するとともに、外国専門家招聘に伴う重大事件について、処理をサポートする。
  • 関連の国際交流や国際協力業務を担当し、外国専門家招聘に対するサービスシステムを構築し、外国専門家招聘の仲介組織を規範化し、外国専門家招聘の情報管理作業を担当する。
  • 香港、マカオ、台湾の専門家の交流事業の協調を図る。
  • 出国研修の年度計画管理、国費補助により出国研修するプロジェクトの審査批准やその他の研修項目の審査批准、重点出国研修プロジェクトの組織と実施に責任を負う。
  • 国務院及び人的資源社会保障部から指示されるその他の事項。

 SAFEAは、中国で働く外国人専門家を管理する政府機関であると同時に、高級人材の国外研修を所管する部署でもある。中国国際人材交流協会、中国国際人材交流基金、SAFEA研修センター、国際人材調査情報センター(中国job.com)などは、SAFEA傘下の機関である。詳細については、ウェブサイトを(http://www.safea.gov.cn/)参照のこと。
 一方、「中外合弁・中外協力職業紹介機構設立管理暫定規定」によると、労働保障行政部門、外経貿行政部門並びに工商行政管理部門が、各自の職権範囲内において、中外合弁、中外合資の職業紹介機構の審査批准、登記、管理並びに監督、検査作業に責任を負う。中外合弁・中外協力の職業紹介機構を設立する場合は、省級人民政府労働保障行政部門と省級人民政府外経貿行政部門の批准を得るとともに、企業所在地の国家工商行政管理総局が授権した地方工商行政管理局で登録登記を行わなければならない。外商独資で職業紹介機構を設立することはできない。また、外国企業の中国代表機構や中国で設立した外国の商工会議所は、中華人民共和国で職業紹介サービス機構に従事することはできない。
 中外合弁、中外協力の職業紹介機構を設立するには、法に基づき企業を設立しようとする予定地の省級外経貿行政部門に申請し、設立に必要な資料、文書を提出しなければならない。省級外経貿行政部門は、申請を受理した後、以下の文書を同級の労働保障行政部門に転送する。

  • 中外双方各自の登録登記証明(コピー)
  • 主要経営者の資格、職歴証明(コピー)及び履歴書
  • 任命を予定する専従作業人員の履歴書及び職業資格証明
  • 住所使用証明
  • 実施を予定する経営範囲に関する文書
  • 法律法規が規定するその他の文書

 省級労働保障行政部門は、本規定第7条により転送を規定する申請文書を受理した後、15日以内に回答を出さなければならない。条件に符合するものについては、中外合弁、協力の職業紹介機構の設立に同意する証明文書を発行する。条件に符合しない場合は、理由を説明した上で、上述の文書を省級外経貿行政部門へ戻さなければならない。省級外経貿行政部門が同級の労働保障行政部門の中外合弁、中外協力職業紹介機構の設立に同意する証明文書を発行した後、30日以内に、批准の可否を決定する。批准する場合は、中外合弁、協力企業批准証書を発行し、批准しない場合は、申請者に通知するものとする。批准を得た申請者は、中外合弁、協力企業批准証書を取得した日から30日以内に、企業の設立を予定する住所所在地の国家工商行政管理総局が授権を受けている地方工商行政管理局で登録登記申請を行い、登録登記から10日以内に、省級労働保障行政部門あるいはその授権を受けた地市級労働保障行政部門で手続きを行う。

5.8 受入労働力の属性

 欧米やアジア諸国が、過去10年で遭遇したことのない労働市場低迷の中にあり、若年層の外国人は、経済の冷え込みが少ない中国へ職探しに来ている。中国における外国人の就業については、次のような特徴が見られる。

  1. 「仕事」が見つかりやすい
     23歳のアメリカ人女性ミカラ・リーズベックさんはボストンのエマーソンカレッジを卒業し、文学学士の学位を持っているが、アメリカでは、ドラッグストアで時給7ドルの“錠剤の数を数える仕事”のアルバイトを探しだすのに2カ月を費やした。2008年、北京オリンピックのボランティアとして、彼女は飛行機に飛び乗って北京へ向った。彼女は職探しを開始して1週間後、オリンピックボランティアだった彼女は英語教師としてフルタイムの仕事を得た。今では、英語を教える以外に、ネイティブの英語教師をリクルートするアルバイトもしており、月に1万4,000~1万6,000元※2稼いでいる。彼女は「アメリカではどんなに職探しをしても、仕事がなかったけれど、中国では簡単に見つかるし、職はたくさんある。そんなに高給じゃなくても快適な生活ができるし、英語教師の需要は高い」と語っている。彼女のクラスメイトの多くはアルバイトをしているだけか、もしくは職もなく家にいるそうである。
    ※2
    1中国元=13.0047円(2009年11月30日現在)

  2. 機会が多い
     多くの外国人が、中国のビジネスマンや学生の需要に合わせて英語教師などの基本的な業務に従事しているが、近年ではコンピュータや金融等の分野でも技術者や専門家が中国に来て働いている。「中国は今や、外国人の母国に比べ、遥かにチャンスに溢れた国である。中国に働きに来る外国人の中には、大卒生だけでなく、企業家や企業役員も含まれている」と語るのはヘッドハンティングを専門とするMRI中国グループの中国香港担当マネージャーであるクリス・ワトキンス氏である。

  3. 求職手続きが簡単である
     ロシアやEU諸国に比べ、中国では求職が簡便である。企業が外国人を雇用するためには政府の許可を得なければならないが、他国では数カ月あるいはさらに長い手続き期間を必要とするケースが多い中で、中国における手続きは15労働日で済む。国家統計局の統計によると、2008年末時点で、約21万7,000人の外国人が就業許可証を保有しており、この数は2007年に比べて7,000人増加しているとのことである。また、臨時ビジネスビザを取得する人数は数千万に上るとのことである。

  4. 中国で働く=チャンスの源
     中国は就職の緊急避難所であるばかりでなく、母国では得られない「チャンスの源」であるという外国人もいる。中国で1、2年の経験を積めば、アメリカ本土での職も得られる可能性があったり、アメリカでビジネススクールに通う機会が得られるかもしれないのである。ロンドンの28歳の元銀行員は、母国で金融危機勃発の後訪中し、1年前に中国の民営持株会社で職を得た。彼は、「自分は中国語は話せないが、自分の業務経験や人脈は中国で多いに財産となっている。中国の市場は、トップの地位に就くまで極めて迅速なルートを提供してくれる」と語っている。アジアの他の国家からも、中国に職探しに来ている。30歳の韓国人カメラマンである安光真氏は、青島でフリーのカメラマンをして1年になる。彼は、「中国は韓国よりもチャンスを与えてくれる」と語っている。しかしながら、今や職を求めて中国に来る外国人にも、増加する「海外帰国組」の若き中国人との競争が待っている。「海外帰国組」は西側の教育を受け、英語を流暢に話し、西側国家での仕事経験を持つ者もいる。ワトキンス氏によると、過去18カ月に同社が受理した海外からの履歴書は2倍に増加しているとのことである。中国政府は4億元規模の経済刺激策で国内の就業マーケットに支援を行っている。

5.8.1 送出国

 北京出入国検査総署の職員によると、現在北京で働く外国人は主としてアメリカ、韓国、日本、ドイツ、カナダなどから来ており、上海で働く外国人は130以上の国から来ており(うち日本が28.6%、アメリカが12.3%、韓国が8.9%を占める)、広州で働く外国人は108の国から来ている(日本、インド、韓国、アメリカが上位4カ国で、うち日本は29%を占める)とのことである。このことから、日本、アメリカ、韓国が中国の外来就業者の最大の送出地であることが分かる。

5.9 受入労働力の技能水準の評価制度

 中国における外国人雇用管理規定によると、雇用主は外国人を雇用する場合、就業許可を申請し、外国人就業許可証(以下、雇用許可と略する)を取得しなければならない。雇用主により招聘される外国人が就くポストは、国家規定に基づき、外国人である特別な必要性があり、中国国内の人材では対応できないものでなければならない。規定第9条(3)に定める人材を除き、商業演出に従事する外国人を雇用してはならない。
中国で求職する外国人は、次の条件を満たさなければならない。

  • 18歳以上で健康であること
  • 就こうとする職において求められる専門的技能や職務経験を有していること
  • 犯罪歴がないこと
  • 雇用主が明確であること
  • 有効なパスポート又はパスポートに代わるその他の国際旅客証明書(以下、旅客証明と略する)を有していること

 中国で求職する外国人は、入国時において、就労ビザを持ち(相互ビザ免除協定がある場合は、当該協定に準ずる)、外国人就業証(以下、就業許可と略する)並びに外国人居留証明を取得して初めて、中国国内で働くことができる。居留証明が発行されていない外国人(F、L、C、Gビザ保有者)、学生や短期プログラムにより中国に滞在する外国人、及びZビザ保有者の家族は、中国で働くことができない。特別なケースとして、外国人が雇用主により保証された就労許可と居留証明を取得し、公安部門で適切な滞在資格変更手続きを実施して、滞在資格を変更した場合、就労が許可される。中国にある外国の大使館、領事館、国連代表処及びその他の国際機関の職員の配偶者が中国で就労しようとする際にも、中国外交部が定める、「中国における外国大使館、領事館、国連代表処及びその他の国際機関の職員の配偶者の就労に関する規定」に準じなければならず、上述のように、滞在資格変更手続きを行わなければならない。就業証や就業許可は、人的資源社会保障部が担当する。

表5‐3 外国人就業証の申請
表5‐3 外国人就業証の申請
※画像クリックで拡大

※出典:
広州市労働就業管理服務中心、
http://gzjy.gzlm.net/waiguo/lct_wgr.doc

5.10 労働力送出・受入れに関する二国間・多国間協定

 現在、中国は既にイギリス、ロシア、ヨルダン、マレーシア、韓国、モーリシャス、サイパン、バーレーンの8カ国/地域との間に労働力送出・受入れに関する協定あるいは覚書を交わしているほか、イスラエル、アラブ首長国連邦、ポートランド、モンゴルその他の国との間で締結協議中である。
 二国間の労務協力は、各国の法律法規の下に実施され、政府間協力を強化し、人的交流を促進し、違法なルートを排除する効果的な方法として正式な公的ルートを提供することにより、二国間の協力を強化し、二国間の経済貿易関係や友好交流を促進することを目的としている。
 中国は現在、モーリシャスとの間に「相互労務協力協定」を、イギリスとの間に「専門看護師の招聘に関する協議」を、ロシアとの間に「中国及びロシア国民の短期労働に関する協定」を、バーレーンとの間に「労働及び職業訓練協力協定」を、マレーシアとの間に「中国人労働者の雇用に関する覚書」を、韓国との間に「韓国向け労働力送出に関する覚書」を、アラブ首長国連邦との間に「相互労務協力に関する覚書」を、オーストラリアとの間に「技術労働力の招聘促進に関する覚書」を、それぞれ締結している。
 最新の労働力送出に関する二国間協定は、「韓国への労働力送出に関する覚書」であり、2007年4月に締結された。覚書によると、中国商務部傘下の国際経済協力局と、韓国労働部傘下の人力資源局が、労働力の送出入を管理する公的機関である。覚書では、両国の政府及び政府管理部門機構が、労働力送出入の計画や実施に責任を負い、韓国語の試験や出国手続きをも担当するとしている。
 中国の管理部門である国際経済協力局は、労働者の募集、選定、労働者名簿の作成に責任を負う。商務部と国際経済協力局は、労働力送出に関してコンピュータシステムを立ち上げ、韓国側担当部門とつなげるとしている。韓国向け労働力送出に応募したい労働者は、ウェブサイトから登録することができる。応募者は、韓国語の試験に合格した後、国際経済協力局の作成する名簿に記載され、韓国の人力資源局又は雇用主に提供される。韓国の雇用主により受入れが決まった労働者は、コンピュータシステムを通じて労働契約を締結し、労働力送出の手続きが公開かつ公正に実施される。覚書に基づき、中国の国際経済協力局は特別事務所を韓国に設置し、当該事務所は、駐韓国中国大使館の指導の下に、韓国側に事後管理支援を提供する機能を有している。
 中国とニュージーランドは、2009年11月2日に労働力市場協定を締結した。これにより、ニュージーランドは、中国の労働者が同国で短期労働を行う上での制限を緩和した。同協定は、両国の相互自由貿易協定を実現する重要な成果の1つであり、中国国務院の李克強副総理と、ニュージーランド側責任者であるビル・イングリッシュとの間で交わされたものである。双方は、任意の時点において、ニュージーランドで働く中国の技術作業者は、20以上の作業種において、1,000人を超えていること、特殊職業従事者は5つの作業種で800人を超えていること、などに同意した。また、ニュージーランド移民政策に基づき臨時雇用入国許可を取得している中国人個人は、その臨時入国が、自由貿易協定により計画される最低許可人数の影響を受けないことを確認した。9月末時点で、ニュージーランドでは約320人の中国人が働いている。李副総理に同行した中国側関係者によると、この協定は、ニュージーランドで働く中国人労働者の合法的権益の保護に資するであろうとのことである。中国とニュージーランドは、2008年10月に自由貿易協定を実施して以来、相互貿易を迅速に発展させている。ニュージーランドは、中国との自由貿易協定を締結した最初の先進国である。中国は現在、ニュージーランドにとって2番目の貿易パートナーであり、3番目の労働力送出市場である。
 対外労務協力についてのさらなる情報は、ウェブサイト(http://www.mofcom.gov.cn/)を参照のこと。


参考文献

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