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作成年月日:2019年10月23日

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海外情報-中国9月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務、企業経営

人事労務実例(9月)

はじめに

中国では建国70周年となる10月1日の国慶節を迎え、早くも第4四半期に突入しています。懸案の米中貿易摩擦はワシントンでの通商会議で部分的ながら昨年来初めての合意に至り、今後の進展のきっかけとして期待が持たれています。今回は9月に日系企業からご相談頂いた人事労務関連の事例をご紹介したいと思います。


働き方改革について

日系専門商社での事例です。本社常務が中国に出張された際にご相談頂きました。日本国内では働き方改革に関する様々な情報が発信され、企業の重要課題のひとつとなっています。個々の企業によって状況は異なると思いますが、日本で進めている働き方改革を中国の現地法人に応用しようと考えている企業は他にも多いようです。

各企業に共通しますが、先ずは働き方改革という言葉や概念が中国には存在しないことを認識して下さい。働き方改革は日本政府による日本国内の労働環境見直しのための日本の法律に基づく取り組みであり、必ずしも中国の現地法人に応用できるとは限りません。また、労働者保護に主眼を置いて労働法令が制定される中国では、日本では改革の対象となる取り組みであっても、特に目新しいことではない内容も存在します。更に言えば、日本の働き方改革の先を行くような法律や施策が既に実施されている分野もあり、事前に現地法人における労働環境や規則を再確認しておくことが必要です。日本の労働事情に基づいて定めたルールは現地法人に直接応用できないという前提で考えられることをお薦めします。

企業としての採用主権について

日系販社での事例です。オブザーバーとして何度か採用の助言を行っていますが、企業としての主権に疑問を感じざるを得ない点があります。同社では財務スタッフの採用において、社長(総経理)による一次面接を通過した候補者に、財務コンサルが同席する二次面接を実施しています。表向きは専門知識や経験、考え方などの確認を目的としたオブザーバーの役割であることは理解できますが、本来は一次面接に同席させ、財務コンサルの確認を経た候補者に対し、社長が最終面接を行うというプロセスを踏むべきです。候補者たちは社長面接に合格しても、最終的には外部の人間が合否を決定する採用プロセスを持つ企業をどのように思うでしょうか。仮に採用が決定した場合でも、採用された財務スタッフは財務コンサルの顔を見ながら仕事をするようになるでしょう。採用プロセスを通じて社長ではなく財務コンサルが自分の評価をすることがわかっているからです。因みに、同社では財務スタッフの採用活動に既に2年以上を費やしており、その間、募集職位や業務内容が二転三転しています。

体制不備が招く労務リスクについて

日系メーカーでの事例です。特殊技術を要する職種の休日出勤が多く、代休が取得できていない悪循環に陥っています。社内規則は比較的細かく整備されており、当初は問題なく代休が取得できていましたが、業務需要の増加に伴い、この1年間は一切の代休が取得できていない状況で、ルール上の問題というよりも、経営上の問題と言えるでしょう。根本的な解決策としては、特殊技術を要する職種を増員し休日出勤を減らすと同時に、代休が取得できる体制にするか、休日出勤扱いによる給与を支給することになります。増員に対しては現在の業務需要の継続性が懸念され、休日出勤扱いによる給与支給では他職種の従業員が問題なく代休を取得できているため、公平性において新たなリスクとなることが想定されます。リスクへの懸念や想定は必要ですが、現状自体が既に大きなリスクであることを再認識し、過渡期も含めたスケジュールを組み、徐々に解決してゆくしかありません。先ずは、特定技術を有する職種の増員に向けた募集を開始する必要があると考えます。万一の場合、特定職種の採用難度が高いことを証明する根拠にもなるでしょう。

日本人現地採用者について

日系商社で現地採用日本人従業員(以下、現地採用者)として長年勤務されていた方よりご連絡を頂きました。退職し、日本に帰国されるとのことでした。詳しい退職理由は伺っていませんが、中国の景況の変化に伴い、この方にとってキャリアプランやライフプランが描き難い状況になっていたであろうことを感じました。日本の雇用を離れ、海外で勤務された経験をお持ちの方はご理解頂けると思いますが、業務のプレッシャーや将来への不安、生活面でのストレスなどは駐在員の立場とは全く性質が異なるものです。因みに、この方の担当していた業務は社長に引き継ぐとのことでした。つまり、現地採用者の欠員補充は行われないということです。 別の日系企業の現地採用者は、来年、中国以外の国のグループ会社に転籍することが決定しているそうです。 ご本人が希望したためではなく、会社側から相談があったということですので、事実上の転籍命令となります。辞退する場合は労働契約満了をもって退職し、中国で新たな仕事を探すか日本に帰国しなければなりません。二つの事例から2008~2009年のリーマンショック(金融危機)の時期にも多くの現地採用者が退職、帰国されたことが思い出されました。

 

今月発生した複数の実例をご紹介させて頂きました。それぞれテーマは異なりますが、筆者自身はそれぞれの根底には共通する問題が存在するように感じています。次月以降も日系企業の実例をもとに、共通する問題が何なのかを考えてゆきたいと思います。業界、企業によって状況は異なると思いますが、実例として参考にして頂ければと思います。

以 上


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