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作成年月日:2019年4月11日

海外情報プラス

海外情報-中国3月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:異文化、危機管理、その他(企業経営)

詐欺的営業行為について

はじめに

中国では既に第1四半期が終了しています。懸念される経済の展望については、各業界により異なりますが、相変わらず不透明なままと感じられる方が多いのではないでしょうか。このような景気状況において、売上確保に苦しむ企業は少なくないはずです。 中国在住の方はご存知かと思いますが、春節の前後から携帯電話には毎日のように不動産や証券の投資セールスの連絡が絶えません。景気のバロメーターのようにも感じます。 今回は、先日遭遇した商標に関する詐欺的営業行為についてレポートします。


商標事務所を名乗る電話

自社の事例です。先日、浦東新区商標事務所を名乗る電話連絡が入りました。連絡内容は次の通りです。

① 自分は浦東新区商標事務所の者である。
② ある企業が貴社名の一部を商標として登録しようとしており、同企業の業務内容の一部は貴社の業務内容とも重複している。
③ 同社が貴社名の一部をブランド化し業務を展開する可能性があり、貴社の顧客が混乱することが懸念される。
④ 我々は法律に基づく事前通知の義務に基づき貴社に連絡を取っている。
⑤ 状況の詳細と対応方法を説明するので、明日こちらに来るように。(住所を指定) ⑥ その際に営業許可証のコピーと会社印(公章)を持参するように。

 

以前もご紹介しましたが、中国では商標法を逆手に取り金銭を得ようとする悪質な行為が後を絶ちません。自社に関する商標保護対策は非常に重要なため、私自身で指定した日時に訪問することにしました。

詐欺的営業行為

指定の住所は浦東新区中心部にあるオフィスビルでした。公的機関でも一般のオフィスビルに入居しているケースはありますが、念のため、ロビーで指定の部屋の入居者を確認したところ、指定の部屋は浦東新区商標事務所ではなくローカルの商標代理会社でした。私はこの時点で、本件が詐欺的営業行為の一環であるとピンと来ました。また、忙しかったため、事前に調べてこなかったことを反省しました。私は浦東新区商標事務所が商標局管轄下の浦東新区分所だと勝手に思い込んでしまっていたのです。

私はその場から法律事務所に電話をし、本件の概要を説明しました。法律事務所からは、先ずは先方の説明を聞いて情報を取ることと、如何なる書面にも署名や捺印をしないことを助言されました。勿論、私自身もそのつもりでした。

 

事務所に入ると、壁一面に世界的企業の商標が貼られており、それが却って胡散臭い雰囲気を漂わせていました。自社に電話連絡してきた担当者は電話と同じ内容を再度説明し始めました。自社名の一部を商標として申請するクライアントを待たせているので、早急に事前通知を行いたかったとのことでした。また、商標申請を阻止するため、クライアントよりも早く自社で商標登録申請を行う方法もあると提案してきました。笑止千万ですが、詐欺的営業行為である可能性を更に高めるような提案です。その後も、事前通知は済んだので、今後について責任は持てない、商標申請は基本的には早い者勝ちなので自社による申請を早く決めて欲しいなどと説明を繰り返し、決定を促してきました。

 

私は最も気になっていたことを質問しました。「電話では浦東新区商標事務所と聞いているが、拝見したところ商標局管轄の組織ではなく、一般の商標代理会社ではありませんか。」回答は「我々は浦東に登録した認可を受けた商標代理事務所である。」というものでした。よくある質問への慣れた回答といったところでしょう。

 

また、「社名は工商局への登記で商号として保護されているはずだが、社名の一部を商標登録することでそのクライアントにはどんなメリットがあるのか。」という質問に対しては、「最近は社名ではなく商標をサービスの名称とすることがトレンドになっており、有名な○○や××のようにインターネットサービスや携帯アプリサービスで貴社名の一部をサービス名称として使用する可能性が高い。」と、有名企業やブランドの実例を挙げて信憑性を高めようとする意図が強く感じられました。 結局、その日は董事会への報告を理由に回答まで3日間の時間的猶予をもらうこととなりました。担当者はクライアントに確認もせず、その場で3日間の猶予を決定していました。

 

怪しいと感じたら法律事務所に相談を

その後、法律事務所による背景調査を通じ、同商標代理事務所の本店は上海ではなく他省にあり、本店の商標申請認可は既に取り消されていることが判明しました。

過去の商標申請実績にも怪しい点があり、自社名の一部を商標登録しようとしているというクライアントの存在も信憑性は低いとの調査結果でした。 3日後、法律事務所を通じ、今後、連絡が必要な場合、代理人である法律事務所に連絡することを通知し、本件を一段落させました。

 

他の日系企業には政府補助金の支給対象となる特許申請代行のセールスなども発生しているようです。政府補助金の支給は審査の結果によりますが、特許申請代行は申請時点で費用が発生する仕組みです。 総じて、商標や特許などの代行会社による詐欺的な営業行為は、申請結果に関わらず、申請の時点で代行業者への代金支払い義務が生じる点で共通しており、危機感や必要性を抱かせるようなシナリオをもとに話を進めてゆきます。景気先行きの不透明さが増すほど、このような詐欺的営業行為により売上を確保しようとする代理会社はますます増加するでしょう。

 

特に日系企業はコンプライアンス意識が非常に高く、却って詐欺的営業行為に引っかかり易くなっているのではないでしょうか。十分な注意と検証が必要であり、法律事務所に相談のうえで対応することをお勧めします。業界、企業によって状況は異なりますが、ご参考にして頂ければと思います。

 

以 上