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作成年月日:2019年1月11日

海外情報プラス

海外情報-中国12月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務、法務・税務

個人所得税における専項附加控除について

昨年も海外情報(中国)をご愛読頂き、誠にありがとうございました。実際に発生しているケースを題材に中国における人事労務関連の最新情報をご提供して参りました。微力ではございますが、少しでも皆様のお役に立たせて頂いていれば幸甚です。

本年も引き続き宜しくお願い申し上げます。

専項附加控除とは

昨年11月にも概要をレポートさせて頂きましたが、今回の個人所得税法修正の大きな目玉として、子女教育、継続教育、重大疾病医療、住宅ローン利子、住宅賃借費用、老人扶養(介護)の6項目が新たに附加控除の対象となっています。社会の変化と個人所得税納税者の生活を考慮した減税措置ですが、昨年11月の時点ではまだ具体的な内容は発表されておらず、多くの日系企業が情報収集と対応準備に追われていました。

昨年12月22日付で国務院より《専項附加控除暫行弁法》として詳細が発表されましたので、各項目の概要と申告方法についてご説明したいと思います。

① 子女教育

個人所得税納税者の子女(実子、継子、養子)満3歳以上から小学校入学前のいわゆる「学前教育」の費用、小学校入学後から博士研究生までのいわゆる「学歴教育」の費用が対象範囲で、控除基準は子女1人につき毎月1,000元となっています。両親(継父母、養父母)のいずれか一方で100%、または両親がそれぞれ50%ずつ控除を申告することが可能です。控除方法は納税年度で1年間は変わりません。また、入学許可証やビザ等の証明書類の提出を条件として海外の学校で教育を受けているケースでも申告が可能となっています。

② 継続(学歴)教育

個人所得税納税者が中国国内において本科以上、或いは本科以下の学歴取得を伴う教育を受ける場合、及び子女(実子、継子、養子等)が本科以下の学歴取得を伴う教育を受ける場合が対象範囲となり、控除基準は一学歴(一学位)あたり48ヵ月を上限に毎月定額400元となっています。また、個人所得税納税者本人が職業資格等の取得を伴う教育を受けた場合の控除の基準は、資格取得年度で3,600元となっています。いずれも、資格証明書等が必要となります。

③ 重大疾病医療

個人所得税納税者が納税年度1年以内において発生した基本医療保険関連の医療医薬費用の支出から医療保険精算後の個人負担部分の累計が15,000元を超過した部分について80,000元を限度として実費を控除されます。本人または配偶者のいずれか一方からの控除が選択できます。また、未成年の子女かかる医療医薬費用の支出は両親(継父母、養父母)のいずれか一方からの控除が選択できます。いずれも医療医薬サービスの支払いや医療保険精算の証明書が必要となります。

④ 住宅ローン利子

個人所得税納税者或いは配偶者が銀行ローン或いは住宅積立金を使用し、単独或いは共同で中国国内において初めて住宅を購入した場合、実際に住宅ローンの利子が発生した年度において毎月1,000元の基準で定額控除されます。控除期間は最長240ヵ月で、個人所得税納税者が初めて購入する住宅に限り1回だけ適用されます。控除方法は納税年度で1年間は変わりません。夫婦が結婚前にそれぞれ住宅を購入していた場合、一方の住宅で1,000元を控除するかそれぞれの住宅で500元ずつ控除するかを選択することができます。住宅ローン契約書やローン返済証明書が必要となります。

⑤ 住宅賃貸費用

個人所得税納税者が主に就業している都市に住宅を所有しておらず、住宅賃貸費用を支出している場合、居住している都市の区分けにより、それぞれ毎月1,500元、1,100元、800元の基準で控除されます。配偶者が同都市に住宅を所有している場合は対象にはなりません。夫婦が主に就業する都市が同じ場合、いずれか一方からしか控除できません。また、個人所得税納税者及び配偶者は納税年度1年において、それぞれが別々に住宅ローン利子と住宅賃貸費用を控除することもできません。住宅賃貸契約書等が必要となります。

⑥ 老人扶養(介護)

個人所得税納税者が満60歳以上の父母或いは子女のいない60歳以上の祖父母を扶養する場合において、個人所得税納税者に兄弟姉妹がいない場合は毎月2,000元が控除基準となります。兄弟姉妹がいる場合には毎月2,000元の基準において1,000元を上限とした分担控除が可能です。分担控除の場合の控除額は均等か分担者の協議決定、或いは被扶養者の指定により決定できますが、協議書の締結が必要となります。また、決定に際しては、被扶養者の指定が最優先されます。分担方法や控除額は納税年度で1年間は変えることができません。

申告方法について

《専項附加控除暫行弁法》の第1章にも「国民生活にとって便利、簡単でやり易い(利于民生、简便易行)」という原則が明記されていますが、実際の申告は個人所得税納税者が個人の携帯電話などに国家税務総局が発行する「個人所得税(个人所得税)」というアプリケーションをダウンロードし、画面に従い必要な情報を入力或いは選択する方法となっています。

 

スマートフォンの普及により実現した方法ですが、各企業の人事担当者は個人所得税納税者である従業員自身で申告する方法に安堵したのではないでしょうか。 実際の控除は勤務先経由と本人の直接申告のいずれかを選択することが可能になっていますが、申告に必要な情報のほとんどが個人情報であり、直接申告を選択する従業員もいることでしょう。

 

また、中国における外国籍の個人所得税納税者も対象になっていますが、主な専項附加控除の範囲が中国国内となっていることや、個人情報に対する考え方などから、現時点では申告に対し慎重な態度を取られているケースが多いと考えられます。

 

尚、本レポートは《专项附加扣除暂行办法》を参考に作成しています。実際にご対応の際には《关于修改《中华人民共和国个人所得税法》的决定》、《关于2018年第四季度个人所得税减除费用和税率适用问题的通知》、《专项附加扣除暂行办法》等の関連法令を必ずご確認下さい。

 

以 上