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作成年月日:2018年11月14日

海外情報プラス

海外情報-中国10月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務、法務・税務、その他(企業経営)

日本における外国人労働者の雇用について

はじめに~外国人労働者の受け入れ拡大

秋の臨時国会における2019年4月からの外国人労働者の受け入れ拡大を前提とした入国管理法の改正案に関する議論に大きな注目が集まっています。(本レポート執筆時点)

特に、建設、農業、造船、宿泊、介護の5分野、或いはそれ以上の分野において外国人の就労が新たに認められる在留資格が設置される点、また、従来からの技能実習制度における優秀な技能実習生を対象とした在留資格「特定技能(仮称)」の設置で、一定条件をクリアした技能実習生が同じ業務に従事する場合、最長5年間の技能実習期間の終了後、更に5年間、日本での就業が可能になる点が大きな変更点になっています。

在留資格「特定技能(仮称)」については、技能実習制度における対象職種・作業がそのまま対象になると考えられ、具体的には農業関係(2職種/6作業)、漁業関係(2職種/9作業)、建設関係(22職種/33作業)、食品製造関係(9職種/14作業)、繊維・被服関係(13職種/22作業)、機械・金属関係(15職種/27作業)、その他(12職種/24作業)、総じて75職種/135作業において新たに外国人の就労が認められることとなります。

因みに、企業がこれまで外国人を雇用する場合は「技術・人文知識・国際業務」或いは「企業内転勤」という在留資格が一般的で、審査においては学歴や専攻、実務経験等の要件と従事しようとする業務との関連性が重視されてきた経緯があります。

外国人労働者雇用へのアクション

ご存知の通り、中国では毎年10月に国慶節休暇のため業務日数が3週間ほどしかありませんが、この短い期間に日本国内の企業2社から立て続けに同じ内容のご相談がありました。いずれも「日本国内で中国の人材を雇用したい」という内容でした。

このように、現時点で既に外国人労働者の受け入れ拡大に向けたアクションや検討をスタートさせている企業は多いはずです。また、入国管理法の改正後は幅広い業界の企業にとって外国人労働者の雇用が更に重要な課題になってゆくことも明白です。 ご参考までに、ご相談の内容を実例としてご紹介したいと思います。

中国人技術者の大量採用を検討するIT企業

スマホ向けアプリを開発、運営するIT企業からのご相談です。日本国内だけではIT技術者の採用が間に合わず、中国から日本語のできるIT技術者を多数採用する計画です。そのため中国国内で新たな採用ルートを開拓することが急務になっています。

同社は中国にも子会社があるため、中国人IT技術者の能力を理解、評価したうえでの採用計画です。中国の子会社で採用したIT技術者が在留資格「企業内転勤」により日本で就業することも可能な環境です。

一方、中国国内でも「日本語のできる中国人IT技術者」のニーズが非常に高く、中国にある日系IT企業でも採用が難しくなっており、賃金水準の高騰にも拍車をかけている状況です。企業によっては、既に中国人IT技術者の賃金が日本国内で就業する同職種の日本人技術者の水準を超えているケースもあり、先ずは日本国内における中国人IT技術者の賃金設定が採用の成否を左右する要因になるでしょう。

同社の場合、従来からある在留資格での雇用となるため、入国管理法改正により発生する新たな外国人労働者雇用ニーズとは言えませんが、人手不足を外国人労働者で解決するという構図は共通しています。優秀な外国人労働者を雇用するために、企業側の努力も必要となるであろうケースです。

外国人労働者の採用支援を行う人材会社

日本国内の人材会社からのご相談です。人手不足が経営課題となっている業界の企業に対し「外国人労働者の採用支援」というサービスを提供しています。既存の海外採用拠点に新たに中国を加え、顧客企業の外国人労働者の雇用ニーズに対し優秀な外国人労働者を継続的に供給できるルートの構築を計画しています。

現在、外国人労働者の雇用ニーズが最も高い業界はサービス業で、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の範疇の業務で採用支援を行っているとのことでした。 他のアジア諸国における採用支援は順調ですが、中国に関しては数年前に顧客企業の採用を支援した際、在留資格の申請要件はクリアしていても、実際に日本国内で就業可能と判断できるレベルの候補者は皆無だったとのことです。 同社の場合、入国管理法の改正により外国人労働者の採用支援サービスを提供できる顧客範囲が拡大する見込みです。また、従来の在留資格で判断が難しかった業種が新たな在留資格によって明確化される可能性が高まっています。(本稿執筆時点で同社の既存顧客の業種が受け入れ検討14職種に入っているとの報道あり。)

 

外国人労働者の雇用ニーズが拡大に伴い、外国人労働者の雇用に関するサービスに参入する人材会社は一気に増加するはずです。企業の雇用ニーズに応えるためには優良な外国人労働者の確保が大前提となり、中国においても日本の人材会社による人材の争奪戦が繰り広げられると思いますが、コンプライアンスに基づく良質なサービスの提供を期待したいところです。

 

総じて、中国を含む外国人にとって、今や日本は最も魅力のある海外旅行先のひとつとなっていますが、最も魅力的な就業先であるかどうかは外国人労働者を雇用する企業の対応がポイントになるはずです。

本項執筆時点では、まだ入国管理法改正案は審議中で、具体的な改正発表を待つ必要がありますが、外国人労働者の雇用が企業の重要課題になることは確かです。

入国管理法の改正を控え、外国人労働者の主な出身国のひとつとなる中国から、この問題を引き続き注視してゆきたいと思います。

 

以 上


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