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作成年月日:2018年7月9日

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海外情報-中国6月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務

採用活動の停滞について

気になる採用活動の停滞

中国では早くも下期に突入していますが、今年上期においても日系企業の人事労務に関する様々なご相談に触れる機会がありました。従業員のモチベーションや定着率の向上のための人事制度の構築や改定、福利厚生の整備や充実化等、積極的で前向きなご相談が目立った一方、退職者の続出や採用活動の停滞等、企業が後手に回るようなご相談も絶えません。

特に、今年は採用活動が停滞している企業が多いことが非常に気になります。自社データからも多くの日系企業が上期中に必要としていた人材を未だに採用できていない現状が浮かび上がっています。人材の採用が進まず、上期の事業計画や予算が達成できず、下期に修正変更せざるを得ない企業も多いのではないでしょうか。勿論、個々の企業や職種、募集条件、ひいては人材市場のトレンドによっても採用活動停滞の原因は異なりますが、実際には企業側の要因が採用活動の停滞を招いているケースも少なくありません。今回は上期に遭遇した実例をもとに、採用活動が停滞している企業の問題点をレポートさせて頂きます。

ケーススタディ

ある日系販社の事例です。今年2月、販売拡大のためマーケティング要員と営業要員の採用を開始しました。欠員補充ではなく事業計画に基づく採用活動です。業界経験を有することが応募の条件となっており、比較的難度の高いと感じられる募集でしたが、時期的に求職者の動きが活発化していたこともあり、幸い、両ポジションとも採用できる可能性の高い候補者が見つかり、早急に面接を行うこととなりました。但し、ちょうど展示会の時期と重なっていたため、面接スケジュールの調整には2週間近くかかってしまいました。

一次面接は日本人である現地社長が一対一で直接実施し、経歴確認や業界、取扱い経験の確認や企業、製品等について説明を行い、待遇条件についても話し合いました。一次面接での感触は双方ともに良く、その後、現地社長が約10日間の出張から戻るタイミングで二次面接がセッティングされ、現地社長及び現地中国人幹部社員に加え、テレビ電話により本社関連部門の日本人部員が面接を行いました。二次面接の内容は一次面接とほぼ同様でしたが、現地幹部社員と直接コミュニケーションする機会が得られ、企業や製品、業務への理解が深まりました。因みに、本社関連部門の部員からは中国市場に関する質問が出され、候補者が部員にレクチャーするようなかたちとなりました。

二週間ほど空き「三次面接」が行われることとなりました。テレビ電話による本社関連部門部長との面接です。部長の予定を優先してスケジュールを組んだため日程調整に時間がかかったことは言うまでもありません。採用活動の終盤とも言える状況ですが、質疑応答はやはり一次及び二次面接の内容と重複しており、業界や取扱い製品の経験の確認がメインとなりました。当然、候補者は「本社部長による面接=最終面接」と認識しました。 三次面接から数日後、待遇条件の確認のため、現地社長と再度面接を設定することとなりました。同時に本社で中途採用者に採用している「適性検査試験」を行うとのことでした。現地社長の上司である本社部長との三次面接に通過し、双方が待遇条件を最終的に確認するための「四次面接」となります。待遇条件については双方ともに問題がなく、口頭で最終合意に至り、面接結果の最終通知を待ち書面オファーが作成される予定でした。適性検査試験は日本国内で有名の会社のものでしたが、受検した候補者は内容がやや難しいと感じていました。 最終的な面接結果が通知されたのは、四次面接から約1ヶ月後のことです。適性検査の結果が理想的ではなく、不採用という判断でした。

ご存じの通り、現在ではWEBの利用により、何時、どこででも適性検査試験を受検できるようになっていますが、同社は従来からの紙による筆記試験を利用しており、試験用紙の提出や採点結果の通知は全て郵送によるものでした。国際郵便であることに加え、日本国内でも本社を経由して転送しており、適性検査試験の実施会社による採点にも一定の時間がかかったため、面接結果の通知が遅れたとのことでした。

本来の目的を見失った採用活動

お気づきの通り、今回の実例における最大の問題は採用活動サイクルが異常に長すぎる点です。計4回の面接を3ヶ月間かけて行い、待遇条件の同意にまで至った候補者を最終的に適性検査試験の成績により不合格としています。一見、慎重に採用活動を進めているようにも見えますが、合理性に欠けていると言わざるを得ません。

先ず、内容が重複する面接を一次と二次に分ける意味がありません。また、合否決定の主要因となった適性検査試験は一次面接で実施しておくべきです。テレビ電話による本社部長との面接については、往々にして合否判断という面接本来の目的のために行われるものではないケースのほうが多いと感じます。これらにより面接よりも面接スケジュールの調整に時間が費やされ、採用活動サイクルが長期化し、いつまでも人材が採用できない状態が続いています。

他社においても、面接官が出張で不在という理由で、面接実施までに1ヶ月近く空いてしまうケースがよくあります。このようなケースでは、多くの場合において応募者が他の就職先決定を理由に面接を辞退し、採用活動が振り出しに戻ります。採用活動が進まないため、面接官の業務負荷が増大、業績にも影響し、更に採用活動が停滞するという負のスパイラルともいえる状況です。

問われる現地社長の覚悟

このような問題が発生している企業は、現地社長である駐在員が交代したばかりという共通点が見受けられます。採用活動を含む中国のビジネス事情に対する理解はこれから深めてゆくとして仕方がありませんが、日本勤務からの延長で「上に対して仕事をする」習慣が採用業務を複雑化させています。社長を経験された方であれば、実感としてご理解頂けると思いますが、自身の責任において採用を決定する覚悟がなければ現地法人の社長としては不適切です。

別の視点からですが、往々にして優秀な応募者ほど在職中であり、事前に業務を調整し、限られた有給休暇を利用して面接に来てくれています。今回の事例では、この点も全く考慮されていない点も問題です。採用活動を順調に進める企業の面接では、面接の冒頭で在職中の応募者に対し「今日は有休を使って面接に来て頂いたのですよね、ありがとうございました。」という感謝の気持ちを伝えることを忘れません。

結果は別として、お互いに貴重な時間のなかで効率的に面接を進めましょうという企業のメッセージだと感じます。

総じて、現地社長として最も留意すべき点は「採用活動の停滞が招く業績への影響」です。この点も中国で現地法人の社長を経験された方には理屈抜きにご理解頂けるかと思います。業界・会社によってケースは異なりますが、実例としてご参考にして頂ければと思います。

以 上