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中国

作成年月日:2018年5月10日

海外情報プラス

海外情報-中国4月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務

日本人現地採用ニーズの背景について

日本人現地採用のニーズ

2017年11月の海外情報で「日本人現地採用の難航について」をテーマにレポートしました。

中国(上海)における外国人就業者数は増加傾向にあり、国籍別では依然として日本人が最も多いものの2013年から2014年を境に減少傾向に転じた見方があることや、日系企業或いはローカル企業が日本人を募集しても、かつてのように応募者が集まらない現状、日本人が中国で就業する魅力を再考する必要性についてご紹介しました。先日も日本人の現地採用ニーズに関するご相談が続きましたが、前回とは別の視点で日本人の現地採用について考えさせられるものでした。

駐在期間の長期化と駐在員の高齢化

ある日系メーカーの日本人副社長からのご相談です。副社長曰く、ご自身の「引退活動」の一環として、中国で就業経験のある50代の日本人男性を現地採用し、これまで、ご自身が担当してこられた社内の管理業務全般(人事、総務、経理)を引き継ぎたいとのことでした。

採用ターゲットを50代に絞っているのは「日本に若手社員はいるものの、今の日本の若手では能力的にも経験的に中国の経済成長スピードには対応できない」との持論からでした。

副社長のお話からは、人材不足に悩む日本企業に共通している潜在リスクが垣間見えます。実際、次期駐在要員が社内にいないという企業は多数存在しており、その結果として現駐在員の駐在期間が更に長期化し、駐在要員の育成も更に遅れるというケースは多いはずです。この状況が進行し、中国の就業ビザ取得要件における年齢制限も考慮すれば、今後、同様の問題が表面化する企業が急増することは明白です。

現地従業員への影響

従来は、本社から派遣された駐在員が行ってきた業務を現地で採用する日本人社員に任せてゆくという計画についても、現場レベルでは様々なリスクが潜在します。特に、本社における計画時に想定していないリスクとして、現地従業員への影響が挙げられます。駐在員の現地採用者への置き換えにより、コスト削減効果ばかりに目が行きがちですが、数字に表れないリスクの方が企業経営にとってはより脅威となることは言うまでもありません。

中国人求職者のヒアリングからは、現地従業員が駐在員と現地採用者をシビアに区別していることがわかります。現地従業員も日本人駐在員や現地採用者に対し、業務能力や貢献度を客観的に評価し、自分のなかで「デキる、デキない」に分別しています。この分別が実務において徐々に影響してゆくのです。また、日本人現地採用者の待遇が現地従業員よりも優遇されている点に不満を感じている現地従業員は少なくありません。これは現地従業員自身の待遇の不満へと繋がってゆきます。

駐在員の現地採用者への置き換えはコストだけの問題ではなく、現地従業員のモチベーションや現地法人の実務、経営にまで影響するリスク要因になり得るということです。尚、日本で採用した中国人社員を駐在員として現地法人に経営者或いは管理者として赴任させるケースにおいても同様のリスクを考慮して検討すべきでしょう。

東南アジアへの転勤を前提とする現地採用

別の日系メーカーからは、現地採用で日本人営業マンを採用したいとのご相談がありました。日本人担当者からのお話によると、現在、同社グループでは東南アジア地域に拠点を設立中で、先ずは中国で日本人営業マンを現地採用し、一定期間の営業経験を積んだ後、東南アジア拠点へ転勤し、現地の営業を任せてゆく計画です。

日本国内でも東南アジア駐在候補者として募集を行っていますが、応募者が非常に少なく、採用活動が全く進んでいないため、中国でも同様の募集を行うよう本社から指示があったとのことでした。

日本国内においても人材確保の難度が高まっている現状を反映している事例ですが、人材募集のチャンネルを海外に拡大する以前に、日本国内で応募者が出ない原因を分析する必要があると感じます。「労働力不足による採用難」の一言で片付けてしまうことは簡単ですが、自社の募集要項の見直しや待遇の改善等、内的要因を変更しなければ、どの地域で募集をしても結果は大きく変わらないでしょう。

転職市場の成熟と人材育成の衰退

募集チャンネル拡大の点では、中国で日本人を募集することは理解できますが、東南アジア拠点への転勤を前提とした現地採用という点は求職者側の理解を得ることが難しいはずです。求職者にとって現地採用の最大のメリットは、自分が住みたい国で仕事ができることだからです。実際に現地採用で活躍されている多くの優秀な日本人は、中国に住みたい或いは事情により中国に住む必要のある方々ばかりです。

同社のケースにおいても、本来は事業計画の一環として、東南アジアでの事業展開に必要な人材を既存の営業マンから選出し、プロジェクト段階から参画させることが理想的ですが、その準備を怠ってきたために現状を招いています。かつて、転職市場が現在ほど成熟していなかった時代であれば、きっと社内の人材を活用する努力をしていたはずですが、転職市場が成熟した今日でも、必要な人材がすぐに採用できるとは限らないのです。

今回は、駐在要員の確保と育成を怠ってきた企業が、安易な発想で現地採用者を募集する事例とその問題点をご紹介しました。業界・会社によってケースは異なりますが、中国に現地法人を持つ全ての企業は同様の問題に直面する可能性があると考えますので、ご参考にして頂ければと思います。

以 上