各国・地域情報

中国

作成年月日:2018年3月23日

海外情報プラス

海外情報−中国2月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務

個人所得税と社保、住宅積立金について

 

春節後に集中する人事・労務関連業務

中国では毎年春節が過ぎると、ビジネスの動きが急速に活発化します。人事・労務関連の話題では、春節後の退職者とそれに伴う欠員補充の採用活動が予想通り急激に増加しています。

また、各企業によって異なりますが、新年度の1月から昇給を実施した企業では、2月に支給する1月分から昇級後の給与が反映されます。また、今年の春節が2月中であったことから、多数の企業が2月に賞与の支給を実施しています。このように、毎年この時期は人事・労務業務が集中して発生する時期になっています。

個人所得税と社保・住宅積立金が人件費の予実差異に

人件費予算を作成する際、評価に基づく昇給を反映しますが、意外と見落としがちなのは昇級に伴う個人所得税と住宅積立金の変更です。給与計算ソフトや人事システムを使用している場合、昇給後の給与額をマスター入力すれば、自動的に所得税や社保、住宅積立金が反映されるため問題は起こりにくいのですが、一般的には、多くの企業がエクセル等の計算ソフトを使用して算出しており、どうしても計算ミスや変更漏れが発生してしまいます。

先日も、ある日系メーカーの日本人社長より、昇給に伴う個人所得税と社保、住宅積立金変更の時期と金額について確認のご相談がありました。日本人社長は毎年この時期にこれらの数字を確認し、予算の再確認を実施されています。これらの数字は、月々の個別の数字はそれほど大きく感じられませんが、年間ではまとまった数字となり、更に従業員数によって大幅に増加してゆくため、年度の早期に確認修正をしておかなければ、人件費予実に大きな差異が出てしまうためです。特に、今年は人事、財務担当者に入れ替わりが発生しており、担当者は同社で初めての業務となったため、更に注意が必要でした。

原因不明の人件費予実差異が発生している企業の多くは、予算作成時の個人所得税、社保・住宅積立金の算出に問題があり、また、これらの基数の変更時期を反映していない可能性が高いと言えるでしょう。

既にご存じの方も多いかもしれませんが、この機会に中国の個人所得税、社会保険、住宅積立金について復習したいと思います。

個人所得税について

日本の所得税に相当し、個人の所得が課税対象となります。ここでは賃金給与による所得に限ってご説明します(所得種別は分類されています)。日本同様、収入に応じた累進課税方式となっており、基本的に毎月申告納付が必要です。下表に基づく、次の計算方式により算出します。

個人所得税=(税込給与月額-基礎控除額)×適用される税率-速算控除額 (税込給与月額とは、社保・住宅積立金本人負担分控除後の月額給与を指します。)

 

基礎控除額:中国人3,500元、外国人4,800元

 

 

税込給与月額

手取給与月額

税率

速算控除額

1

1,500元以下

1,455元以下

3%

0

2

1,500元以上〜4,500元

1,455元以上〜4,155元

10%

105

3

4,500元以上〜9,000元

4,155元以上〜7,755元

20%

555

4

9,000元以上〜35,000元

7,755元以上〜27,255元

25%

1,005

5

35,000元以上〜55,000元

27,255元以上〜41,255元

30%

2,755

6

55,000元以上〜80,000元

41,255元以上〜57,505元

35%

5,505

7

80,000元以上

57,505以上

45%

13,505

例:給与月額(税込)が6,500元の場合

(6,500元-3,500元)×10%-105元=195元(個人所得税)

 

なお、年間所得12万元以上となった場合、別途、翌年3月末までに年間所得の自己申告を行う必要があります。

また、賞与も個人の所得の一部ですが、年1回の賞与については通常の個人所得税よりも優遇された基準で個人所得税を算出することが可能になっています。このため、賞与支給月は給与と賞与をそれぞれの基準に基づき個人所得税を算出する必要があります。

 

社会保険について

中国の社会保険は、養老保険、医療保険、失業保険、生育保険、労災保険で構成されており、前年度の所得総額を基数(各都市の前年平均賃金の60%を下限、300%を上限とする)に各都市によって異なる保険料率により算出します。保険料率は企業と個人に分別して設定され、毎年4月に金額を更新します。

 

【参考:上海の保険料率】

 

養老保険

医療保険

失業保険

生育保険

労災保険

保険料率

企業

個人

企業

個人

企業

個人

企業

企業

20%

8%

9.5%

2%

0.5%

0.5%

1%

0.2%-1.9%

なお、外国人も加入対象ですが、上海においては本稿執筆時点で任意加入となっています。

 

住宅積立金について

住宅積立金は主に住宅購入、住宅賃借、住宅内装等の歳に利用でき、社会保険同様、加入が強制されている制度です。前年度の平均賃金を基準に一定の比率により算出され、上海の場合、負担比率は企業7%、個人7%となっていますが、企業の福利厚生の一環として7%以上に設定するケースもあります。金額は毎年7月に更新します。

総じて、人件費は管理費のなかでも大きな比率を占める費用です。昇給実施後は個人所得税、社保、住宅積立金の算出ミスにより、特に予実差異が発生し易く、放置してしまうと経常利益にも影響が及びます。業界・会社によってケースは異なりますが、念のため、再度確認されることをお勧めします。

 

以 上