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作成年月日:2018年2月9日

海外情報プラス

海外情報−中国1月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務

日系企業のローカル化について

 

ローカル化は日系企業の共通テーマ

中国では既に新年度が始まっています。この時期に日系各社の社長や副社長とお会いすると、必ず新年度への展望が話題になりますが、今年はお話のなかにローカル化や現地化といった言葉を多く耳にします。

ローカル化は長年、日系企業の課題のひとつとして掲げられてきましたが、いよいよ各社がそれぞれの目指すローカル化に向け、具体的な計画をもとに取り組みを強めている印象です。ローカル化は日系企業の再トレンドになっているとも言えるでしょう。

なぜいま再びローカル化なのか

ローカル化の定義は多様ですが、その範囲は広く、また細部に渡り、ローカル化の要否や可否を検討するうえでは、個々の企業の状況により優先度が異なると言えます。

また、企業としてローカル化という認識をしていなかった場合でも、結果的にローカル化されていたというケースも多いはずです。経営課題として再びローカル化を掲げている日系企業の多くは、現地従業員の育成や成長、駐在員の帰任や交代がきっかけになっているケースが多いように感じます。

人事戦略としてのローカル化

前述の通り、ローカル化の対象は多岐に渡りますが、人事面から捉えた場合、業務のローカル化と人的資源のローカル化のふたつに大別できると考えています(現地における業務及び人材のアウトソーシング化を含む)。

ローカル化の背景にある状況はそれぞれ異なり、業務または人的資源のいずれかを先にローカル化する場合と業務と人的資源を同時にローカル化する場合がありますが、これらを結果オーライではなく、計画的に進めることが重要です。

業務のローカル化

業務のローカル化を先に進める例としては営業や購買が代表的です。特に、近年は営業のローカル化を進める日系企業が増えています。以前、本欄でも取り上げましたが、ビジネスの重心を中国市場に置く日系企業は、必然的に現地の担当者や消費者が顧客となり、中国の商習慣や市場ルールに基づいてビジネスを展開することが求められます。これにより、業務の方法やフローを現地の市場観や商習慣にマッチさせ、業務の効率や成果を更に高めてゆくことが業務のローカル化だと考えます。当該業務を担当していた日本人が業務のローカル化に対応できない場合、或いは現地の人的資源が担当したほうが更に経営効率が高い場合に人的資源のローカル化を進めます。

人的資源のローカル化

人的資源のローカル化を先に進める場合、日本人駐在員の帰任や現地社員の成長に起因する場合が多いでしょう。多くの日系企業では、日本人駐在員が社長や副社長をはじめとする主要部門の責任者(兼任含む)になっているケースが多いのは周知の事実ですが、近年では駐在員の帰任を機に、担当していたポジションを現地社員に任せてゆくケースも増加しています。従来日本人駐在員が担当していた業務を現地社員が担当することにより、業務や部門運営をより効率化することが人的資源のローカル化だと考えます。

背景には、現地事業の成熟と、それに伴う現地社員の成長、或いは親会社の人材不足なども挙げられます。また、帰任した駐在員が、その後は出張ベースでサポートを継続してゆくケースも増えています。親会社と子会社が中長期的な視点から、計画的に人的資源のローカル化に取り組むことが最も重要です。

業務と人的資源のローカル化

業務と人的資源の同時ローカル化は、事業の発展や経済状況の変化に伴い、日系企業が新たな部門や職種を設置する際に発生しています。現地の必要性に応じて新たに設置するため、設置目的が明確で、最初から現地の人的資源が担当することを前提にしています。 例として、法務や内部統制に関する部門や職種を新たに設置する日系企業が増えています。この分野で日本人駐在員が派遣されているケースは大手企業に限られており、一般的には現地での社員の異動や新規募集で人的資源を確保します。部門や業務の立ち上げ段階では、日本本社からの出張者が指導やサポートを行っています。

ケーススタディ(ローカル化と機密保持)

ある日系企業におけるケースです。 管理部門で主に人事と財務を担当していた日本人副社長が帰任し、同じく駐在員の日本人部長が業務を引き継ぎました。副社長の帰任後、後任は派遣されず、管理部門の日本人駐在員は減員となりました。本社の人事施策の一環だと考えられますが、日本人部長は現地社員の育成により、できるだけ業務をローカル化してゆきたいとのことで、副社長から引き継いだ業務の一部を現地社員に任せることにしました。結果として「副社長」の業務が「一般社員」に引き継がれたことになります。現地社員は当該業務の経験がほとんどなく、本人の希望により業務内容が変更されたばかりでした。

現地社員に引き継いだ業務には、それまで日本人副社長が取り扱っていた非常に重要な機密も含まれており、機密保持の点において大きなリスクを抱えることとなりました。当然、当該業務のローカル化には社長及び本社の承認が得られているはずですが、日本人副社長の帰任時点でこれらが計画化されていたか否かは不明です。ローカル化の対象業務として、機密流出リスクの防止について検討がなされていたのか疑問に感じます。

また、帰任した日本人副社長は中国語にも堪能で中国語による重要な契約書も作成していましたが、引継ぎ後に現地社員が作成した契約書が内容不備のまま締結されたという問題も発生しました。

日本人駐在員削減に伴う現地運営の負荷増、業務ローカル化における計画性、業務引き継ぎ先の適性及びリスク検討と防止など様々な重要な要素が潜在しているケースですが、当該業務を従来は副社長が担当していた理由を考え、検討されていれば、ローカル化すべきでない業務という結論が出ていたかもしれません。

 

総じて、ローカル化のトレンドが日系企業の実際のニーズから発生していることは確かです。また、現地社員を信頼し、育成してゆくことが大変重要であることに疑う余地はありません。但し、実際にローカル化を進める場合にはケーススタディのように様々な影響を想定し、リスクをコントロールすることが必要です。本社の主導により駐在員の帰任を検討する場合にも同様の注意が不可欠です。

業界・会社によってケースは異なりますが、実例としてご参考にして頂ければと思います。

 

以 上