各国・地域情報

中国

作成年月日:2017年7月11日

海外情報プラス

海外情報−中国6月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務、法務・税務、その他(企業経営)

法務人材のニーズについて

 

日系企業で高まる法務人材のニーズ

早いもので中国では既に上期が終了しています。日系企業の人事労務業務をサポートさせて頂く立場からは、上期だけでも様々なケースに遭遇し、日系企業の人事労務に関する問題や課題を目の当たりにしてきました。

総じて、日系企業の問題や課題は現地法人だけでは解決できないものも多く、日本本社の協力や関心の重要性をあらためて実感しています。

今年の上期は、特に採用面における法務人材のニーズが高まっています。従来は大手企業の現地法人にしか法務専任担当者のポジションはありませんでしたが、最近では規模や業界に関わらず法務人材を確保しようとするトレンドが感じられます。

法務人材ニーズ増加の背景

法務人材ニーズ増加の背景として、第一に「中国国内市場でのビジネス拡大に伴うローカル企業との取引の増加」が考えられます。多くの日系企業にとって中国国内市場での売上拡大のため、ローカル企業とのビジネス増加が重要な課題となっています。従来は中国国内といっても日系企業同士のビジネスがメインであったこともあり、ビジネス上のトラブルもさほど多くはありませんでしたが、ローカル企業とのビジネスの増加に伴い、ビジネス上のトラブルは急増しています。このため、特にビジネスにおける契約書が「トラブルが発生した際の法的根拠としての役割」を強めており、業界や製品の特色や中国の商習慣、知的財産権等の各種リスクを想定した契約書の重要性が高まっています。

次に考えられるのは、急増している労働問題への対応です。ご存じの通り、2008年に施行が開始された「労働契約法」により、労働者の権利意識は非常に成熟してきました。これに伴い。労務関連のトラブルは増加の一途を辿っており、日系企業のリスク管理意識も強まっています。特に従業員の退職時にトラブルが発生するケースが非常に多く、人事労務に限らず、日頃からコンプライアンスを重視した会社経営がなされていなければ、退職時に何を理由に高額な経済補償金を要求されるかがわからない状況になっています。一方、人件費の高騰は持続しており、企業経営に必要な人材の確保もますます難しくなっています。

日系企業における人事労務管理は、関連法令に基づいた労働契約書や社内規則の整備はもちろん、人事労務リスクの防止マネジメントや従業員の流出防止のための福利施策(従業員満足度の向上)等、多様な課題を同時並行で実施しなければならない状況となっています。

法務業務の内製化と組織のローカル化

日系企業がトラブルに遭遇した場合は、訴訟には至らず協議により問題解決を図ろうとする場合も含めて、法律事務所や弁護士に相談して解決を依頼する方法が一般的です。法律事務所や弁護士に解決を依頼するメリットのひとつとして、豊富な案件経験と解決策のノウハウを利用し、より的確な方法でスピーディーにトラブルの解決や損害の最小化を図れる点があります。また、トラブル解決の過程において、再度同様の問題が発生しないよう社内管理制度の整備について助言を得られることも大きなメリットです。

これにより、トラブル発生の可能性は減少し、万一、同様のトラブルが発生した場合でも社内で解決を図ることが可能になります。また、「発生し得るトラブルの傾向」は企業によって限られているケースが多く、関連する法律も一定範囲に限られるため、トラブル解決と防止のための法務業務の内製化は、ある意味で必然的な流れです。

大手企業では、日本国内の若手法務人材を中国に派遣し、駐在員として語学の習得と実務を通じて中国法務のスペシャリストに育成しているケースもありますが、多くの企業では人材確保や育成の面から、そこまでの注力はできません。駐在員の帰任や転勤を考えれば、ノウハウ蓄積という面でも現地の法務人材の確保と育成が現実的で、法務業務のローカル化にも繋がってゆきます。

法務人材のイメージ

日系企業からの法務人材の採用に関するご相談で感じるのは、中国における法務人材に対するイメージをお持ちでないという点です。一般的には日本国内と同じように大学で法律を専攻した人材が基本となります。中国でも弁護士(中国語では律師といいます。)の資格試験があり、弁護士としての実務経験はなくても、この試験に合格している人材は数多く存在しています。また、インターン(実習)で法律事務所や裁判所で数ヶ月の経験を有している新卒の学生も多数見受けられます。

しかしながら、これらの法務人材のなかで日本語ができる人材となると非常に少ないのが現状です。法律を専攻しながら第二外国語或いは独学で日本語を学習し2級レベルの能力を習得した人材、日本留学経験を有し日系企業向け法律事務所に勤務している1級レベル以上の人材、あるいは既に日系企業で法務を担当している人材などが実際の法務系の求人情報に応募してきています。(要求言語が日本語ではなく英語の場合、対象者は大幅に増えます。)

総じて、中国市場の成熟に伴い、今後は日系企業の法務人材に対するニーズが更に高まるものと考えられます。法務人材の確保においては、中長期的な視点で法務人材の業界や自社内でのキャリアプランを準備し、法務業務のローカル化を実現する計画に落とし込んでゆくのが理想的です。業界や企業によってケースは異なりますが、ご参考にして頂ければと思います。

以 上