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作成年月日:2017年6月9日

海外情報プラス

海外情報−中国5月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務、異文化、その他(企業経営)

働き方改革について

 

はじめに

最近、働き方改革という言葉を耳にすることが多くなりました。日本国内の各企業が働き方改革の実現に向け、検討を進めているかと思います。企業によってはグループ全体で取り組むべき課題として位置付けており、中国の現地法人でも働き方改革に取り組もうという兆候も見られます。

働き方改革は、日本政府が主導する日本国内の企業と労働者を対象とした取り組みではありますが、海外の現地法人も含めて考えてゆくことに良い意味での日本企業らしさを感じます。

実際には、多くの日系企業は「働き方改革」という言葉が提唱される以前から、働き方改革が目指す企業と労働者の双方が満足できる状態の実現を目指した様々な施策を積み重ねてきました。そうしなければ、人材を確保できず、事業の推進に影響が出てしまうためです。

この1ヵ月間だけでも、複数の日系企業から「働き方改革」を進めたいというご相談がありましたので、ご紹介したいと思います。

女性従業員の確保と定着

上海郊外にある日系メーカーは製造部門のほとんどが女性従業員となっており、長年、女性従業員の確保と定着という問題を抱えています。女性従業員のライフ・ワーク・バランス(仕事と生活の調和)を考える時、生活面では、やはり出産と育児(学校送迎等を含む子供の世話)が重要になりますが、現実的には生活面が優先され、仕事面に支障を来して退職せざるを得ないというケースが頻繁に発生してきました。女性従業員の生活面で抱えている問題の解決に向けた取り組みを行わなければ、長期安定就業を期待することができず、メーカーとしての技術や品質レベルにも影響を来す可能性が懸念されています。働き方改革をテーマにした社内でのブレーンストーミングでは、保育施設設置や子供の送迎時間に合わせたフレックス勤務の導入等のアイデアも出されたそうですが、製造工程や個々の従業員の熟練度、保育施設を設置した場合の法的責任等を考慮すると、出されたアイデアが新たな懸念材料になってしまうという状況です。

また、働き方改革を進めるうえで発生する新たなコストも企業にとっては重要な問題で、コストをかけずにアイデアで働き方改革を進めたいという点が働き方改革の難度を高めています。なお、同社では最新の中期経営計画に働き方改革の実現を盛り込んでいるそうです。今後の動向を注視し、別の機会に推進状況をご報告したいと思います。

自動車通勤とフレックス勤務で従業員を確保

同じく上海郊外の工業区にある日系メーカーは、公共交通機関で通勤すると非常に時間がかかる場所にあります。通勤時間もライフ・ワーク・バランスにおいては重要な要素のひとつです。設立当初は専門業者に通勤兼業務用車を依頼していましたが、通勤車の運行時間が業務終了時間を制約しており、残業で通勤車に乗れない場合はタクシーで帰宅させていました。当然、かなりのコストが嵩み、副次的な問題となっていました。

また、新入社員が会社付近にアパートを借りる場合には家賃を考慮した給与設定(住居手当)もしていましたが、開発されたばかりの工業区で生活環境が市内とは大きく異なるため希望者はいませんでした。そこで、数年前より社用車で通勤する制度を導入し、一定の条件のもと、自動車免許取得のための費用も会社が負担することとしました。最初は社用車で通勤していた従業員も徐々にマイカー通勤するようになり、現在では社用車で通勤しているのは総経理だけになっています。通勤の利便性を柔軟にしたことで、勤務地による人材確保難を緩和した実例と言えるでしょう。  

同社では、業務の性質上、江蘇省や浙江省にある客先への出張も多く、そのほとんどは製品や器材を積んだ社用車を運転しての移動です。会社に来てから出発したり、或いは出張先からいったん会社に戻ってから帰宅していては移動時間が増えるばかりです。そのため、事前申請と管理者への報告を条件に自宅から社用車を使った直行直帰の出張を許可しています。これにより、従業員の時間管理に対する意識も高まったとのことです。今後は客先での業務が増加することを見込んでおり、フレックス勤務の導入も計画しています。いずれも、従業員の意識とルールの徹底が条件ですが、これまでの施策の実施状況から、フレックス勤務の導入にも成功すると思われます。

中国における働き方改革の注意点

上述の2社のケースは日本でも発生し得るため、状況としては比較的理解し易いと思います。企業が必要に応じて改善施策を講じている状況ですが、働き方改革と言えば、その一環にはなっています。但し、やはり国が異なれば注意しなければならないこともあります。特に挙げられるのは法律の違いです。中国の労働関連の法律では明らかに労働者の保護に重点が置かれています。言い換えれば、従業員のライフ・ワーク・バランスにおいて、法的には最初からライフ(生活面)のバランスが優先されているということです。

また、仕事観或いは就業意識の差異にも注意を払う必要があります。日本的には良いと思われることでも、現地従業員にとっては必ずしも良いとは感じない(他の方法のほうが良い)こともありますので、本社での検討時には現地を理解したメンバーやコンサルタントの意見も聞かれることをお勧めします。業界や企業によってケースは異なりますが、ご参考にして頂ければと思います。

以 上