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作成年月日:2016年11月7日

海外情報プラス

海外情報−中国10月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務、危機管理、その他(企業経営)

インセンティブ制度について@

インセンティブに関する相談が増加中

ここ数年、インセンティブ制度の導入に関する相談が増加しています。

インセンティブ制度とは、従業員個々の業績に基づく歩合給制度です。日本型の報酬制度においてはあまり普及していませんが、中国では、ごく一般的に浸透している報酬制度のひとつです。

営業職に適用されるケースが多く、売上=評価=報酬となる、シンプルでわかり易い仕組みとして企業と従業員の双方に受け入れられています。ご経験のある方も多いかと思いますが、初めて日系企業に応募する営業職との面接では、必ずと言っていいほど「インセンティブはありますか」という質問が出されます。

日系企業におけるインセンティブ制度導入については、メーカーが生産現場の効率や生産職の出勤率を向上させるための施策として活用されるケースが多かったのですが、最近は、特に営業職のモチベーション向上による売上拡大を目的として、インセンティブ制度の導入を検討するケースが増えています。

近年、中国市場におけるローカル企業への売上拡大を図るため、日系企業でも日本語を必要としない営業職の採用が増加していますが、営業職に対する業績管理や評価基準についても、ローカル方式のメリットをうまく取り入れながら対応してゆく必要があります。

 

制度導入の課題

多くの日系企業は、日本国内ではインセンティブ制度を実施しておらず、また、従来の賞与制度との兼合いや他職種とのバランスを考慮する必要もあり、導入までに解決すべき課題が山積しているのが現状です。

先ず、インセンティブ制度の導入に際しては、業務フローと個別従業員の担当が明確になっており、個々の売上に対する従業員の関与の度合いを把握できていることが必要です。

インセンティブ制度の導入を検討する多くの企業は、業務フローや個別従業員の担当業務を整理するところからスタートすることになります。整理の過程において曖昧な点があれば、基準の見直しを行います。

また、個々の売上についても誰が関与したのかを記録する仕組みが必要です。担当についてはすぐにわかりますが、担当以外に誰がその売上に関与していたかは見え難くなっているケースが多いはずです。

例えば、営業職が担当する顧客や商品が明確になっている場合でも、それをサポートする業務職やアシスタント職は、特に担当が決まっておらず、個別の売上について誰がサポートしているのかがわからない場合があります。この場合、従業員が納得する公平なインセンティブ制度の導入は難しくなります。

 

個別業績に対する関与の公平な考え方

従業員ごとの個別売上関与の公平性について、サッカーでの得点を例にご説明したいと思います。

サッカーでは、シュートで得点した選手にゴールポイントが付与され、それをアシストした選手にはアシストポイントが付与されます。また、ポイントは付きませんが、得点に繋がる起点となるパスを出した選手も高い評価が与えられます。これを業務と業績に置き換えた場合、次のように考えられます。

 

◆シュートで得点した選手=担当営業職による売上

◆シュートをアシストした選手=担当営業職をサポートする業務職/アシスタント職

◆得点に繋がるパスを出した選手=売上に繋がる提案や発見をした従業員

 

シュート=売上が担当営業職だけの手柄ではなく、どのようなパスワーク(=チームワーク)の結果によって成立したものなのかを明確化し、それぞれの業務に応じた公平な評価基準でインセンティブ制度を構築してゆくことが制度構築のポイントです。

勿論、サッカーでは敵からボールを奪った選手がそのままドリブルからシュートに持ち込み得点を上げる場面や、パスがそのままゴールに入り得点となるケースが多々あり、業務においても様々なケースを想定し、公平な評価基準として設定しておく必要があります。

従業員の社内におけるポジションや役割、他の従業員との連携を考える上でも面白い例だと思います。

また、制度の説明に際し、女子従業員に対してはバレーボールのレシーブ・トス・アタックの例のほうが理解し易いかもしれません。

 

別業績に対する関与の公平な考え方

インセンティブ給の設定 それでは、実際にどのくらいのインセンティブ給を設定すればよいのでしょうか。企業として関心の高い部分だと思います。第一に、インセンティブ給は、対象となる「従業員のモチベーションを刺激できる金額設定」であることが必要です。従業員のモチベーションを刺激できなければ、インセンティブ制度を導入する意味がありません。インセンティブ給の金額設定次第では、逆に従業員のモチベーションを低下させてしまうこともあります。インセンティブ制度において、金額設定は非常に重要なポイントとなります。

 

通常、インセンティブ給の金額は制度の内容に応じて決定し、次のように大別できます。

@ 目標達成の成否に応じてインセンティブ給を決定する方法(以下、目標達成型)

A 実際の売上額に応じて一定比率によりインセンティブ給を決定する方法(以下、売上リンク型)

B 実際の利益額に応じて一定比率によりインセンティブ給を決定する方法(以下、利益リンク型)

C 上記@にAまたはBを加えて決定する方法(目標+売上または利益リンク型)

 

上記@の目標達成型は、会社が独自に目標や金額を設定することができるため、業界を問わずに導入しやすい方法ですが、売上や利益への貢献度から見ると、金額的にはあまり高いインセンティブ給を設定できません。例えば、ターゲット顧客やターゲット製品を決め、新規取引を開始するという目標を設定した場合、新規取引の金額に関わらずインセンティブ給が発生するため、従業員は売上や利益よりも新規取引の成立を優先する可能性があり、売上、利益に対してマイナス貢献である場合にもインセンティブ給が発生することがあります。

 

A及びBについては、予算作成時から考慮することにより従業員のモチベーションを十分に刺激できる方法で、中国では最も一般的な方法だと言えます。通常、取扱う製品やサービスの販売価格をもとにインセンティブ給の算出比率を設定します。

 

Aの売上リンク型は、売上から確保すべき利益額を保持したうえで、売上金額に対する一定比率をインセンティブ給とします。一般的に販売価格と業務難度は比例するという前提のもと、売上額の1〜2%以内で設定するケースが多く、従業員にとっても魅力となるインセンティブとなります。

 

Bの利益リンク型は、業績賞与に近い考え方です。プロジェクトベースによる取引額の大きなビジネスを行う企業で設定しているケースが多い方法です。利益額に対するインセンティブ給の設定は企業により大きく異なっています。かつて、求職者との面接において、あるローカル系企業在職時に年収以上のインセンティブ給を支給されたことがあるという話も耳にしたことがあります。

 

Cの目標+売上または利益リンク型は、営業方針や売上目標をより具体的に設定できる反面、管理面が複雑になります。一般的にシンプルな制度が歓迎される中国では、目標達成の難度のほうが先に立ってしまうため、モチベーションへの影響を考慮し、インセンティブ給を高めに設定する必要があるでしょう。

 

総じて、中国市場に適応し、売上の維持拡大を図るため、インセンティブ制度の導入を検討する日系企業は今後も増加してゆくと思われます。本テーマについては、来月のレポートで実例をご紹介させて頂きながら、更に掘り下げてゆく予定です。ご参考にして頂ければと思います。 以上

 

以 上