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作成年月日:2016年7月6日

海外情報プラス

海外情報−中国6月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務、異文化、その他(企業経営)

目標管理における定量目標について

日系企業における目標管理の導入状況

既に多くの日系企業が人事制度において目標管理を導入しています。ちょうど上期が終了し、中間面談で目標の達成状況確認や修正を実施している企業も多いかと思います。

目標管理の導入目的として、先ずは「評価」が挙げられます。目標の達成度を人事評価の基準のひとつとし、評価結果を昇格や昇給、賞与に反映させる目的です。

中国においては昇給や賞与支給時に、従業員から金額に対する不満や質問が出されるケースが非常に多く、目標管理は従業員に対して評価を通知する際の「根拠」としての役割を果たしています。

評価基準改定の傾向

近年、目標管理における評価基準を改定する日系企業が増加しています。多くの日系企業は目標管理の導入時に、先ずは目標管理の考え方に慣れ、制度として定着させることを目的としたため、比較的シンプルな形式で目標管理を開始したケースが多いのですが、企業の成長や環境の変化に伴い、企業側も従業員側も、より正当な評価のために評価基準を改める必要性を感じているようです。

評価基準の改定を行っている企業では、「定量目標」の設定と評価比重の配分をポイントにしているケースが多く、これに伴い目標管理のフォーマットも改定が必要となります。また、評価基準の改定は賃金制度にも影響するため、同時に賃金テーブルを改定し、人件費の高騰にも対応しているケースも発生しています。中国における日系企業の事業環境の変化に伴い、今後も評価基準改定の傾向は強まるものと推測されます。

プロセスも評価する目標管理ツール

目標管理を実施する上で、目標及び結果、評価を記録するツール(フォーマット)が不可欠ですが、近年では「どんなゴールにどのように到達するか」というストーリー式の目標管理ツールが主流になっています。ゴールという結果だけでなく、そこにどのようなプロセスで到達するかまで含めて目標を設定する必要があり、結果だけでなくプロセスも評価の対象としています。

難しい定量目標の設定

日系企業の目標管理の導入或いは改定において、定量的な目標の設定が難しいというお話しを良く耳にします。営業、製造などのプロフィット部門においては、定量的な指標を目標として設定しやすいのですが、ノンプロフィット部門において、どのように定量的な指標を設定し、企業と従業員の共通の目標に落とし込んでゆくべきかに苦心されています。背景には、ノンプロフィット部門の従業員が、評価に対する不満を持っていることも考えられます。

結果指標(KGI)とプロセス指標(KPI)

ご存じの方も多いかと思いますが、目標管理における指標設定の考え方のヒントとして、KGIとKPIを簡単にご紹介したいと思います。

KGI(key goal indicator、重要目標達成指標)とはゴールとしての目標の達成度を表す指標です。売上高や利益額などがこれに当たります。

KPI(key performance indicator、重要業績評価指標)とはゴールに至るプロセスのうち、特に重要なプロセスの達成度を表す指標です。引合い数や訪問数などを数値で管理します。

企業の目標を部門、従業員の目標に落とし込んでゆく際に非常に参考になります。

目標設定のポイント

目標設定時には、企業や部門の目標を提示することが前提となります。従業員に企業における自分の位置と役割を認識させ、そこから落とし込んだ個人目標を上司と部下が共同で設定してゆきます。

個別の職種或いは従業員によっては、人事制度における目標と自身のキャリアプランにおける目標を混同して捉えているケースも見受けられますので、普段からコミュニケーションが良く取れているという場合でも、人事制度における公式な面談の場を持ち、上司と部下が一緒に作った目標とすることが非常に重要です。

ケーススタディ

上記の状況を踏まえ、先日、ある日系メーカーの目標管理面談に同席した際に感じた点をご紹介します。同社は目標管理の導入から3年が経過しており、ほとんどの従業員は目標管理の考え方を理解しています。今回の面談は、上期終了時点での年度目標の達成度の確認と必要に応じた目標の修正を行うために実施されました。

《営業》

営業職の従業員は、上期の業績が目標を下回っており、上司は年度目標を達成するために下期においてどのような巻き返しのプロセスが必要かについて面談をする予定でしたが、従業員は市場環境を理由に、プロセスよりも目標数値を見直し、目標を下方修正したいと主張しました。この従業員は前年度に目標を達成できず昇給幅が少なかったため、今年こそは目標を達成したいと考えていましたが、上司からは「達成可能な目標を設定しても意味がない」と厳しく注意されました。目標管理が自身の評価と昇給に関連していることを意識するあまり、目標さえ達成すれば昇給できると思い込み、目標を低く設定するケースです。その後の面談で上期の売上実績から販売製品を絞り込んだ営業プロセスへと修正し、最終的には当初の目標を変更せずに下期に臨むこととなりました。

《会計》

会計担当者の目標は毎年ほぼ変わらず、目標というよりもジョブディスクリプションのような内容でした。上司からは以前より定量目標を設定するよう指示をされていたようですが、会計業務において取り扱う数値と自らの業務における目標数値が混同しており、定量目標を設定できていませんでした。ノンプロフィット業務においては、担当業務は把握していても業務のフローやプロセスを再分析することが少なく、自分の業務では定量目標を設定できないと思い込んでいるケースが 多いのではないでしょうか。

第三者として、会計担当者にはISOや業務改善の観点から定量目標を見つけ出すよう助言しました。

《営業マネージャー》

営業マネージャーは前職の日系大手企業在職中に目標管理を経験しており、目標、目標に到達する過程ともに客観性の高い内容でした。目標設定に際しては、事前に総経理とも十分にコミュニケーションを取っており、部門としての課題を明確化するところから目標設定をスタートしています。定量目標についても様々な角度から分析し、現在の状況において、重要度が高いプロセスから優先に取り組むこととし、そのプロセスが翌年の営業活動の布石にもなっているという内容でした。

 

各社によってケースは異なりますが、実例としてご参考にして頂ければと思います。目標管理は企業の裁量で活用の可能性が広がる人事施策のひとつですが、現実的には評価を昇給や賞与にどれだけ反映してゆくが効果を高めるポイントとなっています。

 

以 上