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作成年月日:2016年6月7日

海外情報プラス

海外情報−中国5月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務、異文化、法務・税務、危機管理、その他(企業経営)

2016年上期、最も多い募集理由は欠員補充

独自の統計ですが、2016年1月より本レポート執筆時までの期間中において、上海地区日系企業の人員募集理由は「欠員補充」が最も多くなっています。新規設立や事業拡大などの「攻めの募集」は非常に少なくなっており、従業員の退職に伴う後任の募集という「受け身の募集」が9割以上を占めていると言っても過言ではありません。

欠員補充が採用活動の大半を占めているということは、その分だけ退職者が発生しているということであり、日系企業共通の悩みと言えるでしょう。

欠員補充は最も難度の高い採用活動

1.そもそも想定外の採用活動である

退職者の発生は常に突然であり、欠員補充は想定外の採用活動です。従業員が退職を申し出た場合、企業は先ず慰留を試みますが、ほとんどの場合は成功せず、後任の募集を余儀なくされます。例外として、昇給を要求するために退職を申請するケースがありますが、一定の昇給を実施すれば実際に退職することはありません。また、労働契約の満了に伴う退職の場合、事前に採用活動の計画を立てることができますので欠員補充ではなく「計画的な人員の交代」になります。

2.引き継ぎのため採用活動に締め切りが存在する

《労働契約法》第37条において「労働者が30日前までに書面により使用者に通知した 場合には労働契約を解除することができる」と規定されています。ほとんどのケースにお いて、この30日間が欠員補充の採用スケジュール期限となります。退職者との引き継ぎ 期間を考慮すると、2〜3週間で後任を採用したいところですがスケジュール通りに採用が 完了しないのが現状です。往々にして、後任として採用したい応募者は、現在も他社での 勤務中であり、同様に退職に30日間を要するためです。

3.採用対象の幅が狭く、人件費の増加に繋がる

後任の採用に際しては、どうしても退職者の能力や給与が基準となります。業務への 影響と人件費予算の両方を考慮しながら採用活動を進める必要があるためです。必然的 に採用対象の幅は狭くなり、特に人件費については、労働市場における近年の賃金上昇 幅が大きいため、企業の予算と応募者の希望給与にギャップが発生しています。引き継 ぎのスケジュールや業務への影響を最優先して採用せざるを得ず、結果として人件費が 増加するケースがほとんどです。退職者の発生は人件費の増加に繋がっています。

4.退職者の業務を他の従業員に任せる場合の注意点

後任の採用が完了するまで、退職者の業務を他の従業員に任せるなどの対応が可能 ですが、これにより他の従業員の負荷が増え、モチベーションにも影響する可能性がある ため細心の注意が必要です。退職者の業務を任せている期間だけでも、特別手当などの 名目で給与面でも配慮を示しておくことをお勧めします。万一、退職者の業務を任せてい た従業員まで退職した場合、業務への影響は計り知れません。

5.最悪のケース、欠員補充の欠員補充

「ようやく後任が採用でき、退職者との引き継ぎも完了、ひと安心していた矢先に後任 が試用期間での退職を申請。」実際に多発しているケースです。同じく《労働契約法》第37 条では「労働者が試用期間において3日前までに使用者に通知した場合、労働契約を解 除することができる」と規定されています。3日間で「後任の後任」を採用することはほぼ不 可能です。この場合、業務への影響はもとより、企業全体の業務レベルが低下します。企 業にとっては最も避けたいケースですが、求職活動のタイミングの差異により試用期間中 に他社の内定が出ることもあり、試用期間中のリスクとして認識しておくことが必要です。

退職者発生をプラスに捉える

上記の状況を踏まえ、突然の退職者発生をプラスに捉えた人事施策を実施し、見事に成功しているケースをご紹介します。

ある日系サービス会社では出納兼総務担当者の退職に伴い、出納業務は会計専門業者への外注化で対応し、総務業務は他従業員への兼任という施策を実施し、成功しています。

先ず、外注費用と兼任社員への昇給を実施しても退職者の人件費より約50%のコストダウンとなりました。専門業者は専門性の高い人員と豊富な経験を有しており、外注化の対応スピードが速く、業務とともに責任やリスクも外注化できることがメリットです。外注する業務内容にもよりますが、退職者人件費の福利厚生分はコストダウンが図れるかもしれません。

また、総務業務を兼任することになった他従業員は昇給によりモチベーションが高まり、総務担当として前任者よりも周囲の評価が高いとのことです。総務業務としては、会社全体の業務レベルが向上したことになります。

 

このように、退職者の業務内容によっては専門業者への外注化が可能なケースもあります。他の企業では、給与計算担当者の退職に伴い、給与計算を外注化し、コストダウンと同時に給与の機密性が高まるメリットが得られたというケースもありました。

 

もちろん、「なぜ退職者が発生するのか」という真の原因を追究、解決することが最も重要であり、退職者が出ない企業にしてゆくことが人事・労務の課題です。

業界・会社によってケースは異なりますが、実例としてご参考にして頂ければと思います。

 

以 上