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中国

作成年月日:2016年5月7日

海外情報プラス

海外情報−中国4月分

作成者:中国 上海 杉川 英哲
分野:人事・労務、異文化、危機管理、その他(企業経営)

営業責任者の現地化

後任のご挨拶

前任の佐藤忠幸先生のご帰国に伴い、4月より中国在住国際アドバイザーを拝命致しました杉川英哲と申します。中国で15年間人事・労務関連の仕事をさせて頂いております。

皆様のお役に立たせて頂くべく、最新の情報をご提供して参りますので、ご指導、ご鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。

中国国内販売を行う日系企業の動向と課題

先行き不透明感が強まる中国経済ですが、中国国内販売を行っている日系企業は各業界とも売上を読むことに苦心されているのが現状です。売上予算の作成が年々難しくなっているなか「現状の体制と人員で売上増加を図らざるを得ない」日系企業が多いはずです。

 

近年の動向として、従来は主に日系企業を対象としていた製品の中国系企業への販売強化を図る日系企業が増加しています。多くの日系企業は品質には絶対的自信を持つものの、価格では中国系競業企業が絶対的優位に立っており「中国系企業の市場開拓を課題と認識していながら、なかなか営業に注力できなかった」という現状が浮かび上がります。

中国系企業への営業で再浮上する商習慣の差異

実際に中国系企業への営業を進めてみると、品質の高さはすぐに認められるものの、価格が合わずに次のステップに進めないというケースが多いようです。同時に、多くの日本人営業責任者が「商習慣の差異」にあらためて直面します。

 

ご存じの通り、中国においても、日系企業間のビジネスでは日本的な価値観や方式に基づいたビジネスが成立しますが、中国系企業にはこれが通用しません。日系企業が営業対象にするような中国系企業であれば、ほとんどが日系企業との接触経験があり、日本的な価値観や方式も知識やイメージとして理解しているはずですが、日本式に合わせて対応してくれることはほぼありません。ビジネスにおいて買い手が売り手の土俵に降りてこないのは当然であり、売り手は先ず「買い手の土俵に上がる」ところからスタートしなければなりません。

日本人営業責任者に共通する課題とリスク

従来、日系企業の多くは人的資源としての「日本人営業責任者の価値を高めてゆく」ことで中国系企業の土俵に入り込んでビジネスを進めてきました。つまり、日本人営業責任者が中国に対する理解を深め、経験を蓄積することにより、会社として中国系企業とのビジネスを進めてくることができたのです。

結果として、日本人営業責任者の駐在期間が長期化し、本社における「人事的な課題」になっている企業も多いはずです。また、会社によっては現地業務が駐在員に「属人化」しているという批判があるかもしれません。しかし、「会社として施策を講じてこなかった結果」であることも忘れて頂きたくありません。このような会社は日本人営業責任者の交代に伴い、数ヶ月以内で売上が大きく後退します。

 

また、後任の日本人営業責任者が現地営業人員の信頼を得られず、人員の流出やモチベーションの低下に繋がったケースを耳にされることも多いでしょう。日系企業が想定しておかなければならない「駐在員交代の副次的リスク」です。

営業責任者の現地化と効果

上記の状況を踏まえ、同様の課題を抱えていたある日系メーカーが実施した人事施策をご紹介します。

 

同社はA、Bふたつの業界を主な販売ターゲットとしています。A業界ではもともと中国系企業が主要顧客でしたが、ここ数年A業界の景気が非常に悪化しており、B業界での販売を強化してゆく方針です。B業界はほとんどの顧客が日系企業であったことから、中国系企業の開拓が販売拡大の主な要因となります。

 

同社では設立以来、日本人駐在員が営業責任者のポジションに就いていましたが、本社取締役も出席する董事会において、現行日本人営業責任者の帰任に伴い「営業責任者を新規に採用する現地社員に置き換え」、後任の駐在員を派遣しないことを決定しました。

 

現地営業責任者の採用活動は駐在員の帰任予定時期の約1年前からスタートさせていました。早めに開始することにより、時間をかけて慎重に人選を行い、採用後の業務引継ぎにも十分な時間を確保しました。また、現地営業責任者には中国系企業の開拓のほか、日本式にこだわらない新たな営業管理方式の構築を課題として与えています。中国企業では当たり前でも、日系企業がほとんど導入していない「インセンティブ給制度」の導入とこれまで着手していなかった「中国系代理店」の開拓です。

 

最後に、同社が営業責任者の現地化により目指している効果を纏めてみます。

@ B業界の中国系企業の開拓

A 中国系代理店の開拓

B インセンティブ給制度のノウハウ導入

C 上記Bによる営業人員のモチベーション向上

D 上記@〜Cによる売上増加

E 総体的人件費コストの節減

いずれも、後任として日本人営業責任者を派遣した場合には得ることが難しい効果です。

 

上記のケースは中国国内販売を行っている日系企業の共通の課題であり、今後、このような人事施策の実施が増加してゆくことが見込まれます。必然的に日本人駐在員の役割も変化してゆきます。

業界・会社によってケースは異なりますが、実例としてご参考にして頂ければと思います。

以 上