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作成年月日:2016年4月7日

海外情報プラス

海外情報−中国3月分

作成者:中国 上海 佐藤 忠幸
分野:人事、法務・労務、その他(企業経営)

中国子会社の諸規則のあり方

上海に昨年設立したT社のN社長が相談にみえた。T社は、いよいよ4月から社員を採用し営業活動を開始することとなったので就業規則を作りたいがどうすればよいのか、そして他にどのような規則・規定が必要なのか教えて欲しいというものである。

N社長に同行されたD部長は1年前から上海に駐在しているが両氏とも労務管理については全く知見が無いし興味もなかったようだ。会社設立代行業者に「せめて就業規則だけでも作るべきだ」と言われて相談にみえたというわけである。

中国では入社ではなく契約締結

日本で言うところの、「入社」や「退社」は、中国では「労働契約の締結」と「労働契約の解除または終止」である。つまり全てが契約社会である。

そもそも、中国すなわち中華人民共和国は労農国家のはずであり、労働者や農民が主役の国家である。しかし、1990年頃から始まった改革開放政策及び市場経済の導入により急速に資本主義的な労使関係が産まれた。結果は、労働者は資本家や経営者に対しては弱い者であり保護しなければならない対象となった。

労働者を保護すべき法律も、日本の労働基準法に相当する「労働法」があるにあるが労農国家時代の法律であることから罰則も曖昧であり経営者の解釈で抜け穴となる項目も多いことから全く形骸化したのである。

労働者は保護すべきものであり、労働団体として対等な関係として権利擁護することなどを体系的にまとめた斬新的法律が2008年1月より施行された「労働契約法」である。この法律は日本の労働三法(「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」)を合体させたような新法である。

現在では、労務管理や労使関係の全てがこの労働契約法を基に運用されている。そして、「労働法」も形骸化した存在から「労働契約法」施行と同時に位置づけが高まり産まれ変わったのである。

最近では、労働者の権利意識は日本以上であることを認識すべきである。

労働者との契約根拠は諸規則にある

労働者は所謂入社しようとすると、様々な面接や交渉を経て労働契約書の締結をして初めて雇用関係が成立し、役務に就き、その報酬として賃金が支払われる。役務に就いている間の条件や守るべき事項の全てを契約書に表すことは不可能である。

このことから普遍的な項目については、一般的に次のような契約となる。

*○○については、就業規則の定めによる。

*△△については、△△規定の定めによる。

したがって、その規則や規定が無ければ、その該当項目については「契約なし」となってしまう。その項目によってはその労働契約そのものが無効となりかねない。

法的にも必要なことは日本も同じ

会社として就業規則が絶対に必要だということが諸法律で決まっていることは日本と同じである。これが無ければ労働者を働かせることも契約することも出来ない。そして最も困ることは悪いことをした労働者との契約解除(馘首)も出来ないということである。

仕事は、朝何時から始まって何時までやる。

休憩はどうする。

給料はいつからいつまでのものをいつ支払う。

あれをしてはいけない。

これをしてはいけない。

あれをしたら労働契約は解除する(馘首だ)

こういう態度で仕事をせよ。・・・最も大事なこと。

とにかく、これら実に多くの決め事が必要なのは日本と同じである。中国はどちらかというと性悪説である。しかも逃げ道を探すのが得意なお国柄である。日本よりも遥かに詳細な規定が必要であろう。

中国ではサラリーマン社長や副社長など経営者も管理者も、資本家でない限りは労働者である。したがって、中国人副社長との労働契約を打切ったら、即ち馘首にしたら間違いなく高額な罰金や様々な報酬を取られるだろう。

その代表が「残業手当」である。

副社長が辞めるとき「就業規則には労働者には残業手当を支払うと書いてあるが、私は残業手当をもらってないので○○万元くれ」という要求が出されることは度々ある。「残業代は副社長手当に含まれている」と言って拒否しても法廷で争ったら、「副社長手当○○元」「残業手当△○時間で○○元」と明記されていない契約や規定が有って、しかも周知徹底されていることが証明されない限り絶対に会社が負けるだろう。

日本のように「管理者だから残業手当は不要だ」は中国では全く通じない。

日本の諸規定・諸規則は適用できない

T社のN社長は、中国子会社に諸規定を作成するにあたって、日本の就業規則や諸規定を持参し、これをアレンジすればよいのではと言われたが、全くの誤解である。

日本にある子会社ならば、同じ法律を基にしたものであるので、社名と多少の条件を変えるだけで済むが中国の子会社は全く違うものとなる。中国の諸法規・法律に従うのであり、習慣も異なるからである。その代表例が前記の残業手当問題である。

何よりも異なる習慣は、中国は契約社会であり性悪説で成り立っていることである。

なお、仮に詳細な規定が有っても、該当者が見た、読んだという証拠が無い限りその規定は適用されないことも注意を要する。

諸規定・諸規則には経営ポリシーの反映が必要

日系企業の多くが犯す間違いの一つは、コンサルタント会社が売っている既製の諸規定を購入し、社名と少しの内容を変えるだけというお手軽な諸規定と諸規則の導入である。

なかには既製品で済む規定もあるが、社内規定にはその会社のポリシーが反映されているべきである。

日本企業は「人(社員)を大事にする」ということで世界的に有名である。それが経営方針で明確に示されているはずである。社員をどう見てどう扱うかの思想や方針が、中国の子会社だと就業規則や諸規則に反映していない企業が多いのが不思議な現象である。

中国子会社の存在を軽視し見下しているとしか見えないが、どうだろうか?

中国在住国際アドバイザー(中国情報員)交代のお知らせ

私、佐藤忠幸は2010年より情報を発信し続けましたが、まもなく帰国となりましたので今号をもって佐藤の中国情報最終号とさせていただきます。

次号からは杉川英哲国際アドバイザー(情報員)にバトンタッチいたします。私以上にご愛読ご意見くだされば幸いです。

なお、私は5月以降日本在住の国際アドバイザーとして頑張る所存です。引き続きご指導こ鞭撻のほどお願いいたします。

以 上